« hamachan=八代尚宏? | トップページ | 学界展望における福井論文の紹介とコメント »

プリンスホテルvs日教組問題の文脈

この問題、その後もいろいろと火花を散らせているようですが、どうも世間は日教組を左翼思想を世に広めるための政治思想団体であるかのように考えて、集会結社の自由だなんだという方向でばかり議論されているようで、正直いって私には大変違和感があります。

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080226AT1G2604426022008.html

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080226AT1G2604H26022008.html

裁判所の命令を聞かないのは法治国家に反するだとか、旅館業法違反だとか、そういう議論もそれなりにもっともではあるけれども、なんだか個人の思想信条の自由の延長線上でのみこの問題を議論していくと、結局憲法学者が大好きな立憲主義の枠組みの中の議論になっていってしまって、個人の自由を守るために国家権力を動員するという話にしかならない。

いやもちろん、そういう枠組みも大事だし、憲法学者や法哲学者にとってはそれが飯の種だからそういう議論でいいのですが、そうじゃない視角があんまり見えないというのは問題だと思いますね。

逆に、労働組合の団結権の問題だと(連合のボイコットはまさにそういう考え方の上に成り立っているわけですが)考えれば、これは少数者の弱々しい権利を国家権力にお願いして守ってもらうような話ではなく、国家権力に頼らず多数者の力で労働者の権利を侵害する企業に対して言うことを聞かせるという話であるはずです。多数者がボイコットするから効き目があるのであって、少数者であることに自己満足している集団がボイコットしてみたところで、蛙の面にションベンでしかない。そういう集団ほど、自分たちの力不足を補うために国家権力に頼りたがるのですがね。

これを言い換えれば、労働者の団結は多数者であることが唯一の武器なのですから、労働者の労働者としての利益と直接関係がないような政治思想運動には距離を置いた方がいいということでもあります。様々な政治的立場の労働組合が、教育労働者の団結への攻撃には共通してボイコットするというのが労働者の連帯というものでしょう。余計な話ですが、日本の労働運動は平和運動とかなんとかに余計な精力を使いすぎてきた嫌いがあるのは否めません。

労働運動の歴史からすれば、あまり司法権力に頼る方向ではなく、まさに「団結は力なり」を自分たちの力で示していくことこそが本筋だと思います。

(追記)

よく判らないのは、プリンスホテルがケシカランと言っている人々が、もしホテル側が最初から「いやあ、日教組さんは右翼を連れていらっしゃるからお断りさせていただきます」と言っていたら、それはしょうがないと考えるのかと言うことです。法律的には、それは私的自治の世界ですから、一方が嫌だというものを強制することはできません。

初めから契約していない相手に、会議を開かせろ、宿泊させろという裁判を起こすこともできないでしょう。法治国家云々と言ってみたって、一回目のうっかりして日教組と契約してしまったときだけは通用するにしても、それに懲りた二回目以降は通用しませんね。

しかし、そうやって排除されてしまって手も足も出ないという情況が、労働組合の団結権にとってはもっとも望ましくないことなのですから、必要なのはそういう風にさせないことでしょう。それはもはや法治国家だとか旅館業法だとかといった話ではないはずです。

初めから「労働組合はお断り」というようなホテルこそ、労働組合の総力を挙げて(国家権力に頼ることなく)ボイコットしないといけないわけでしょう。それはもう、(暴力ではないが)実力行使の世界です。そういう感覚がなくなってしまうことの方が、逆に心配なんですが。

|

« hamachan=八代尚宏? | トップページ | 学界展望における福井論文の紹介とコメント »

コメント

>(暴力ではないが)実力行使の世界です。そういう感覚がなくなってしまう

現にあんまりないし…。

投稿: とす | 2008年2月28日 (木) 18時05分

そもそもw 一旦契約したものを一方的にキャンセルされそのキャンセル事由に一方の当事者が納得できないから裁判で決着つけましょうというシンプルな構図です。思想的な問題、少数派や多数派という問題は肉ずけにしか過ぎないのでは?
契約自由の原則があるのでそもそも契約する必要もなかったわけです。こんな安い金額では商品を卸せないといって 断るでしょ?w だれでもw
連合がプリンス系を利用しないと決めたことと同様にこの団体でも今後使用を控えることでしょうが、僕が思うに、騒音によって迷惑を受けた近隣住民はまず、通報し心的ストレスやそのた疾患により自己の権利を侵されたのなら・・・・
訴える対象が日教組になってしまうのでしょうか?
もしくは予約を取ったプリンスホテルを訴えればいいのでしょうか?
近隣高校で受験した受験生が騒音を理由に正当な試験を受けれなかったことを訴えたい場合は さてどちらの誰を訴えればいいのでしょうか?

もしホテルが訴えられたのなら・・・ホテル側は全力をもって自分たちに責任のないことを証明するでしょうねwwww
自分たちの商行為に一切 違反は無かったとwww

投稿: なべりん | 2008年3月16日 (日) 04時37分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/3288/10789847

この記事へのトラックバック一覧です: プリンスホテルvs日教組問題の文脈:

« hamachan=八代尚宏? | トップページ | 学界展望における福井論文の紹介とコメント »