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2008年2月26日 (火)

学界展望:労働法理論の現在

日本労働研究雑誌の2/3月号に、「学界展望:労働法理論の現在──2005~07年の業績を通じて」というかなり長い座談会形式の論文批評が載っています。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2008/02-03/index.htm

出席者は、有田 謙司(専修大学法学部教授)、奥田 香子(京都府立大学福祉社会学部准教授)、道幸 哲也(北海道大学大学院法学研究科教授)、濱口桂一郎(政策研究大学院大学教授)です。

取り上げた論文は以下の通りです。

荒木尚志「労働立法における努力義務規定の機能-日本型ソフトローアプローチ」

鎌田耕一「安全配慮義務の履行請求」

川田知子「有期労働契約に関する一考察-有期労働契約の法的性質と労働契約法制における位置づけ」

内田貴「制度的契約と関係的契約-企業年金契約を素材として」

柳家孝安「雇用・就業形態の多様化と人的適用対象の在り方」

鎌田耕一「労働基準法上の労働者概念について」

毛塚勝利「労働契約変更法理再論-労働契約法整備に向けての立法的提言」

道幸哲也「労働契約法制と労働組合-どうなる労使自治」

福井秀夫・大竹文雄編著『脱格差社会と雇用法制ー法と経済学で考える』

なお、私たちも全然知らなかったのですが、同じ号に、福井・大竹編著の経済学者による書評論文が載っています。

書評論文

雇用法制を巡って 福井秀夫・大竹文雄 編著『脱格差社会と雇用法制──法と経済学で考える』

江口 匡太(筑波大学システム情報工学研究科准教授)

神林  龍(一橋大学経済研究所准教授)

読み比べてみるのも一興でしょう。

さらに、同号には、大竹先生と一緒に解雇規制分析をされた奥平さんの論文も載っています。

論文(投稿)

整理解雇判決が労働市場に与える影響

奥平 寛子(大阪大学大学院経済学研究科博士課程)

これは是非お買い求めいただく値打ちの高い雑誌だと思いますよ。

ちなみに、巻頭エッセイは仁田道夫先生が労働法教育について書かれています。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2008/02-03/pdf/001.pdf

>90%以上の人が学校を出れば働くのだから, 労働法を高校の必修科目にしたらどうかとも思うが,自分の経験に照らしても, 学校で学んだことは忘れやすい。とくに, 労働法のように, 自分が働く立場になってみると切実だが, それまでは, なんだかよくわからないというような科目は, 学校で教えてもなかなか身につかない。だいたい, 普通の市民は, ごく常識的なことを除いて, あまり法律を知らないものである。法律を知らなくても,普段の生活には困らないのだ。いざ必要になれば,専門家に相談すればよいとも思っている。しかし,労働組合を結成する権利を国民が知らないというのは, 少々問題ではないか。

>話は飛ぶが, マンションの管理組合理事を務めると, 防火管理者というものを置かなければならないことを知る。住民の中には仕事にからんで防火管理者の資格をもっている人が一人くらいいるから, その人にお願いすることになるが, 特定の人に負担をかけるのを避けようとすれば, 選ばれた理事の一人が消防署にいって防火管理者の研修を受け, 資格を取得しなくてはならない。防火は確かに大事だが, 労働法上の権利侵害を防ぐことも, 同様に大事だろう。どの事業所にも一人くらいは「労働法管理者」を置くべきではないか。会社の人事・総務担当は確かにそういう知識をもっているが, 彼らの立場は, 従業員側ではなく, 会社側である。
労働組合がない場合, 従業員側「労働法管理者」に最もふさわしいのは, 過半数代表であろう。私は, かねて, 過半数代表者に研修を義務づけるべきだと考え, 主張してきた。声が小さいので, 世間には, ほとんど知られていないが。法律上, 過半数代表者にはいろいろな役割が負わされている。その役割を遂行するためには, 常識や, 職場の事情を知っていることだけでなく, 最低限の労働法知識が必要とされる。労働基準法を全然知らないのに三六協定にサインしてよいはずがない。消防法を全然知らないで「防火管理者」になれないのと同じことではないか。全国に従業者10 人以上の事業所が120 万くらいあり, 少なく見積もっても80 万人くらいは過半数代表者が選ばれているだろう。この全員に研修をほどこそうとすると,最初は膨大な作業になるが, だんだん「労働法管理者」有資格者が増えていくから, それほどの負荷ではなくなるだろう。行政がサービスを提供し,講師は労使団体から出してもらえばよい。夢物語だろうか。

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コメント

法治国家、契約社会で暮らす者たちには、労働法だけでなく、そもそも法律、契約についてのリーガル・リテラシーが必要でしょうね。
ぶらり庵は、それって、ほんとうは学校以前に、親が子に約束をする、それをなぜするのかをきちんと納得させ、かつ、守る、そこらへんから始まるものじゃないかと考えています。

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