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2008年2月 7日 (木)

「店長は管理職」認識変えず 日本マクドナルド社長

5日の朝日の記事ですが、

http://www.asahi.com/job/news/TKY200802050379.html

>日本マクドナルドの原田泳幸会長兼社長は5日、朝日新聞の取材に応じ、店長を管理職とみなし、残業代を支払わなかったのは違法との東京地裁判決について「時間と無関係に結果を出すのが店長の仕事」などと述べ、全面的に反論した。

 1月28日の判決は、原告の店長について肩書に見合った待遇を受けていない「名ばかりの管理職」との認識を示したが、同社は控訴した。

 原田社長は「会社の構造的な問題とは考えていないし、無報酬の労働を強いてはいない。店長は今でも管理職で、自身の判断で残業時間を管理できるから『みなし労働』にはあたらない」として、残業代を支払う考えはないとしている

裁判官やマスコミが残業代!残業代!と、銭金のことしか目に入らないような言い方ばっかりするものですから、マクドの社長さんも残業代は払わん!と、銭金のことしか頭にないようです。

まあ、率直に言って、年収700万円の店長に残業代を全部払わせることが絶対的な正義かね、それよりも年収200万円もいかないその下で働いているフリーターをどうにかする方が先じゃないかね、と私は思いますよ。銭金の話だけをするんならね。

しかし、この高野広志店長が言いたかったことは、自分で残業時間を管理できる管理職と言うけどオレは過労死する寸前まで働かされたんだぜ、ということでしょう。ホントに死んじゃったら、それは過労死裁判ということになってしまうわけで、そうなったら管理職だから残業代払えるか!というのとは次元が別の話になってしまいます。そこの所に気が回っていないようなのが、社長としていかがなものだろうかと思われますね。

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コメント

>それよりも年収200万円もいかないその下で働いているフリーターをどうにかする方が先じゃないかね、と

>しかし、この高野広志店長が言いたかったことは、自分で残業時間を管理できる管理職と言うけどオレは過労死する寸前まで働かされたんだぜ、ということでしょう。(略)そこの所に気が回っていないようなのが、社長としていかがなものだろうかと思われますね。

私も上記の2点について同感です。
ただ,現行法の枠組みでインパクトのある形で過重労働を訴えるのは今回の店長さんのやり方しかないわけですね。
また,濱口先生は丸尾弁護士の評論を基本的に妥当と書かれています。しかし,丸尾弁護士は解決策としてホワイトカラーエグゼンプションを提案していますね。ホワイトカラー・・・では,長時間過重労働の問題は置き去りになってしまいます。丸尾弁護士も長時間過重労働をいかにして制限するかという観点は存在せず,単に残業代ばかりに目がいっているという点で,丸尾弁護士の評論は的外れかなと考えています。いかがでしょうか。

わたし、前にこの話題に関連して、「判例」なんて効果はない、というようなことを書いたと思います。君子は豹変しますので、前言を撤回いたします。
でも、そのとき、なぜそう書いたかというと、頭にあったのが、均等関係、つまり、女性労働判例だったからだと、後で気がつきました。男性の稼ぎ手ならば「残業代」で判決が出て報道にも大々的に取り上げられるのに、女性労働の場合には、残業代どころか、本俸でさえ、ン十年働いている正社員でも、新人男性と「いい勝負」、長年の闘争で勝訴(傾向としては、判決の出ない「和解」)でも、もらったなにがしかの補償は、闘った年で割ると、全然引き合わない。だからそもそも訴えない、ように思います。
ちなみに、今回の判決は、03年12月からの不払い残業代含め1,350万円の請求に対して、判決は755万円、ですね。
2004年6月29日に大阪高裁で成立した住友化学事件の和解では、1962年入社以来の差別を訴えていた女性社員3人(一番年長の方は61歳ですでに退職)の1億、6千万円の請求に対し、高裁が提示して受け入れられた解決金は1,500万円でした。賃金差額は最大で月20万円であったとのことです(04.6.30読売)。
2004年10月15日に東京高裁で成立した野村證券事件の和解では13人が2億2千万円を請求していたのに対して、地裁の命令は12人に5,600万円、一人500万円足らずです。高裁での和解では、解決金はどうなったか、わたしの見た記事(04.10.16日経)には出ていませんでした。

これらは、すべて当ブログ開設以前の事件です。なお、 証拠を示さずに申し上げますと、hamachanのとりあげる話題も、どうも男性労働者系が多いような。今や、かつてのEU「社会政策総局」も「雇用、社会問題、均等総局」になったんでしたよね。均等で「メインストリーミング」なんて、EU圏ではとっくに当然のこととなってもう話題にもならない時代になったと思いますが、「メインストリーミング」なしに、「ワークライフバランス」に突入したわが国では、そりゃ、WLBは(国の政策努力抜きの)企業の努力の話にしかならんわな、とため息です。 ちなみに「メインストリーミング」とは、国のあらゆる政策に「女性を対等に扱う視点を入れること」、ですよね、たしか。

なお、今回のマクド判決についての、わたしの感想は、「判決が出て良かった」ではなく、「このように訴える人が出て良かった」です。上の人間がきちんと意識を持ってその上に対してもの申してこそ、さらにその下で働く人間も、「そういうふうにしていいんだ」とめざめるものだと思いますよ。

同感するところの多いエントリーです。
過労死裁判にならなくてよかった。

今後の裁判の内容は仕事の内容に突っ込んだものになるのでしょうね。目が離せません。

ええと、法律の世界で「判例」というと最高裁の判決だけを言います。下級審の判決は、「裁判例」と言って、「判例」じゃないんですね。
本件の管理監督者の解釈にしても、仰る男女コース別差別のしても、今のところまだ「判例」はないのです。ただ、男女コース別はまさに地裁、高裁レベルで裁判例が割れていて、まさに「最高裁で「判例」が求められる状況であるのに対して、管理監督者についてはだいたい一致していますから、まあ方向は明確だといっていい(もちろん、今までの下級審裁判例をことごとくひっくり返すような「判例」を最高裁が出す可能性もなきにしもあらずではありますが)のです。
あまり本筋ではありませんが、ちょっと注釈をつけてきます。

ご教示ありがとうございました。
ぶらり庵は、ハンレイときくと、「無きにしもあらず」(「太平記」好きなので)と出ちゃうような、もともとは人文系世捨て人(インセイ)崩れですので、法律の世界には苦労してます。わかるように書いてほしい、簡単に書いてほしい、実質的な内容を下位法令に落とすな!と、いつも思ってます。
判決も、どのレベルでも(一審から最高裁まで)簡単明瞭に、で、できるだけあいまいな和解でなく、理由を示して決着をつけてほしい。でないければ、裁判員制度、なんてなって、素人はどうやって、過去の判決だの経緯だのを調べられるんだ、って思いますもの。

あ、そうか、「判例」を最高裁が出す可能性も「なきにしもあらず」、って、そういう意味だったのですね、hamachan?

もしも、ごぞんじない方がいましたら、「天莫空勾践 時非無范蠡」というのを、ググってみて下さい。

ぶらり庵は、大きな記事を見過ごしていました。
1月31日に、東京高裁で男女賃金格差についての画期的な判決が出ていたのです。総合商社「兼松」の女性社員ら6人が差額賃金や慰謝料3億8千4百万円を請求し、地裁で敗訴、彼女達が控訴した東京高裁は、差別的賃金制度を「違法」として、4人について7,250万円の支払いを命じた、との記事です。
事務職の女性が定年まで勤めても一般職の27歳男性社員の賃金に達しなかったとのことです。
で、高裁での判決であること、賠償の金額が従来よりも格段に高いこと、判決が職務内容に踏み込んでの判断を示し、また、コース別採用でしばしば問題になる「勤務地限定」が賃金差別の根拠とはならないとの判断を示した、など、「画期的」との表現に値する判決と思えます。
それを、ぶらり庵は見落としまして、大変反省しております。そういえば、JILのメルマガでも、トップに出ていたのでした。
なぜ見落としたのか、振り返ってみました。一応、毎日、主要紙の一面くらいはさっと見るのですが、この判決が報じられた2月1日は、朝・毎・読3紙のトップは「中国ギョーザ」でした。で、この判決の記事を、マクドナルド残業訴訟のように、1面トップで扱う新聞はないどころか、日経での扱いが社会面の中程度の記事で解説なし、でした。トップではないにしても1面に掲載し、解説もつけていたのは、朝日と東京でした。そういえば、この日、「ギョーザが1面トップか」とうんざりしたのを覚えています。

マクドナルド判決の後には、社説・解説が次々に出ましたが、この兼松判決では、社説は見ていません。ただし、東京新聞は、当日の解説で、職務の内容に踏み込んだ判決はマクドナルド判決につながる流れにある、としていました。

以上、一応、事実のみ記しておきます。
なお、当ブログをごらんの方々、過去の新聞記事を手近で見ることができない場合、公共図書館で、日経の運営する新聞記事データベース「日経テレコン」を導入しているところがかなりあります。

兼松は上告の方針、との報道も付け加えておきます。

マクドナルド店長の残業代に関する判決についてお書きになっているブログを探していて、こちらを拝見しました。
私のブログでは、「労働基準法の説明」という視点からこの判決について書いています。ご覧いただければ幸いです。
http://news.compliance.bz/

本判決の解説評論(「判例評釈」に非ず)を、明日発売の『エコノミスト』誌に書いておりますので、ご参考までに。

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