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2008年1月28日 (月)

今後の労働時間規制の在り方

先週金曜日の講演メモです。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/jeckouen.html

中味はこれまでブログ上で各雑誌等で述べたきたことですが、はじめの方で現行労働時間法制についてちょっと違った観点から解説しているところがいささか面白いかも知れません。

特に、管理監督者に関するところは、意外にきちんとした議論がされていないのではないかという印象を持っています。これは、管理職は組合に入れないという扱いと相俟って、組合組織率の低下の一つの原因となっているという側面も重要です。

>(5) 管理監督者  

 さて、こういう奇妙な労働時間規制についても、もともと適用除外の規定はありました。そのうち、今回のホワイトカラー・エグゼンプションと大変関係が深いのが、第41条第2号に規定される「管理監督者」です。厚生労働省労働基準局のコンメンタールによれば、「これらの者は事業経営の管理者的立場にある者又はこれと一体をなす者」で、「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」(労働基準法の解釈通達)だとされています。
 え?ホント?と思った方、いい勘をしています。そう、この「管理監督者」は世間で言う「管理職」とは違う概念なのです。ところが、マスコミはこれを管理職とごっちゃにして報道してしまうのですね。もっとも、後に述べるようにそれには理由があるのですが、まずはこの「管理監督者」というものがいかなるものであり、いかなるものでないのかを、通達の文言を引きながら詳しく見ておきましょう。
 まず「企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であれば全てが管理監督者として例外的取扱いが認められるわけでは」ありません。「一般に、企業においては、職務の内容と権限等に応じた地位(職位)と、経験、能力等に基づく格付(資格)とによって人事管理が行われている場合があるが、管理監督者の範囲を決めるに当たっては、かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要が」あります。「管理監督者であるかの判定に当たっては、上記のほか、賃金等の待遇面についても無視し得ない」とはいうものの、「一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといって、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものでは」ありません。
 これが大原則なのですが、とはいえ一方で「法制定当時には、あまり見られなかったいわゆるスタッフ職が、本社の企画、調査等の部門に多く配置されており、これらスタッフの企業内における処遇の程度によっては、管理監督者と同様に取扱い、法の規制外においても、これらの者の地位からして特に労働者の保護に欠ける恐れがないと考えられ」るので、一定範囲の者については管理監督者に含めて考えてもよいという基準も示しています。
 厳密に考えれば、これは労働基準法の文言に反します。彼らスタッフ職の人々は、部下を管理しているわけでもなければ監督しているわけでもありません。どう考えても管理監督者ではあり得ない人々を管理監督者に含めてもかまわないとしているのは、それが企業の人事管理の実態に即しているからだというほかに説明のしようがありません。日本の企業では特に高度成長期以来、従業員を職務遂行能力によって序列化した職能資格制度を設け、これに基づいて人事管理を行うことが一般化しました。この制度においては、高い職能資格に対応する管理監督的職務と同じく高い職能資格に対応するスタッフ的職務とで、同じような賃金等の処遇が行われます。この場合に、管理監督者になった高給労働者には労働基準法に基づいて時間外手当を払わないが、管理監督者になっていないスタッフ的職務の高給労働者には時間外手当を払わなければならないということになると、かえって労働者間の公平感を損なうことになります。
 その意味で、このスタッフ職を管理監督者として認めるという解釈は、時間外手当の支給基準という観点から見れば、まことに妥当な結論であるわけです。同期入社の従業員の間で、同じ職能資格で同じくらいの給料を貰っていながら、一方には時間外手当が付いて、一方には時間外手当が付かないというのは、いかにもまずいだろう、というのは、この本をお読みのサラリーマンの方々にとってはよく理解できるところだろうと思います。
 ところが、ここで適用除外されているのは会社の人事管理上もっともな時間外手当の支給についてだけではありません。労働時間規制そのものも一緒に適用除外されてしまっているのです。労働基準法の精神からすればどう考えても正当化しがたいにもかかわらず、それがなんの問題もなく今まで受け取られてきたのはなぜでしょうか。一つには、管理職レベルの高給を貰っているスタッフ職が実際にはかなりヒマであって、労働時間規制を必要とするような状況におかれることがなかったからというのがいかにもありそうです。職能資格制度が実際には年功的な運用をされていることが多かった時期には、特にそういう傾向があったのでしょう。
 ところが、1990年代以来、企業の人事管理は大きな変化を被ってきました。その中で、組織のスリム化を目指し、管理職レベルに昇進する従業員を絞り込んでいくという傾向が見られます。これまでであれば管理職クラスのスタッフ職として処遇するという形で対応していた人々が、必ずしもそうではなく、管理職の一歩手前にとどまってしまうという事態が進んできているようです。この人々に対しては、もはや先ほどの解釈通達に基づいて管理監督者に含めて取り扱うというわけにはいきません。時間外手当を払わなければなりません。さもないと、サービス残業ということになってしまいます。ホワイトカラー・エグゼンプションの議論が1990年代から急速に盛り上がっていった背景にあるのは、実のところこうした企業の人事管理の変化なのではなかろうかと、私は考えています。

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コメント

「とおりすがり」はまぎらわしいので、ぶらっときた、という意味では似たような、でも、他の方が使われないような、というのを考えて「改名」いたします。

「管理監督者」的な名前がついていても、実態はかけ離れているところ、日本では特に多いのではないかと勝手に推測しています。上からも残業代節約などのために「管理職」扱いしたがるし、本人も業務の実態はどうあれ、とにかく「肩書き」ほしがるし、で。
だけど、わが社みてますと、課長って係長みたいなものだし、部長とか言っても、要するに「幹部会議」に出て、そこでトップから来た話を下に伝えるだけで、管理や配慮なんて何もしないし。歩く伝声管で本社部長のこの給与、実際に、どうかすると管理的な仕事まで押し付けられて働かされている若手と比べて・・・、という感じですね。これって、わが社だけなのかなあ。

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