生活保護と在職給付
久しぶりに平家さんからトラバをいただきました。
http://takamasa.at.webry.info/200801/article_5.html
>記事では、就職して直ちに生活保護から抜け出せたかどうかでこの事業を評価をしている様子なのですが、やや疑問。
>おそらく、この就労支援は難しい仕事だろうと思います。期間で保護廃止という完璧な成果を上げなければだめ、としてしまうと担当する人の志気がくじかれてしまいます。じっくり取り組むことを認めるべきです。
平家さんのおっしゃることは、100%もっともなところと生活保護をどう考えるかに係るところがあります。
「働けるような生活習慣、働いてお金を稼ぐという意識を作り上げ(おそらくは福祉事務所で支援をしているのでしょう。)、それからこの事業を始め、就職することによって、徐々に働くという習慣を身につけ、仕事に慣れていく」といった、不活動状態から就労生活への移行に関わる部分は、まさに本人に対するカウンセリング的な面が最重要ですから、「働かないとカネやらねえぞ」的なハードなワークフェアは適切ではないでしょう。まさに「就職直後は生活保護の廃止につながらなくても、1年後あるいは2年後に保護廃止でも、この事業の効果はあったと考えるべきでしょう。逆に、直後には保護廃止になっていたとしても、すぐに失業してしまえば意味はありません」といわれるとおりです。
私の問題意識は、そういう就労意欲の面では何ら問題はなくても、労働市場が提供しうる就労機会が、それだけでは家族全員の生計を維持しがたいような低賃金でしかないような場合について、賃金収入を補充するものとして生活保護を充てることをどう考えるか、ということなんですね。
シングルマザーを例に出したのは、それが最も典型的であるからですが、もちろんそれ以外のケースも多々あり得ます。
思い切ってばっさりいえば、
市場のロジックは、「(子供世話に手を取られないといったことも含めて)能力に応じて働き、発揮された能力に応じて払う」
であり、福祉のロジックは、「必要に応じて払う」
である以上、本来的に両者には齟齬が生ずるはずです。
ところが、後者(生活保護)だけで制度設計すると、「能力に応じて働かなくても、必要に応じて払う」となり、まさにモラルハザードの原因となります。
今回の就労支援事業はいうまでもなく欧米のワークフェアにインスパイアされたものであり、その根っこにあるのはこのモラルハザードの解消である以上、恒常的に生活保護の活用が必要な就労状態というのは大変不安定なものとならざるを得ません。
「能力に応じて働き、発揮された能力に応じて払う、とともに、さらに加えて、(能力に応じて働いていることを条件として)必要に応じて追加的に払う」という二段構えの仕組みが必要になるわけです。
そういう在職給付は、生活保護とは切り離した形で、ミーンズテストのない形で、行われるべきだと、私は考えています。
>子供が小さいうちはパートというのは、普通の家庭でもよくあることです
が、
>時間がたち、給料が上がれば保護からの脱却ができる可能性は大きい
とは必ずしも言えませんし、何よりも、生活保護を受給していることによる本人及び子供への好ましくない影響を考えると、就労意欲には何も問題がないのに賃金水準が家計を支えられないからという理由で生活保護が恒常的に給付されることは望ましくないと考えるからです。
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欧米のニートについて記載されている本で面白い現象が起きています
就労できないので職業訓練を受けることを条件に生活保護をもらった→何らかの事情で適応できず(もしくはめんどうになって)職業訓練を受けなくなった→生活保護費がもらえなくなり、ホームレス→1か2に分岐
1.同じような女性とセックスし、子供を産む→周りからの支援を得ることもできず、ホームレス同然の環境で子育て
2.生活に困り、強盗などの犯罪を犯す→被害者が発生した→被害者のケアのための費用が発生する(+加害者を刑務所に閉じ込めておくための費用もこれにプラスされます)
生活保護費をケチったために平穏な生活が奪われ、かえってコストがかかる事態になってしまうような気もするのですが、それについてはどうお考えでしょうか
投稿: nanasi | 2010年3月 4日 (木) 07時53分