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2008年1月10日 (木)

民主党の介護労働者人材確保法案

朝日によると、民主党が介護職員の賃金を引き上げるための「介護労働者の人材確保特別措置法案」を衆院に提出したそうです。

http://www.asahi.com/politics/update/0109/TKY200801090306.html

>民主党は9日、介護職員の賃金を引き上げるための「介護労働者の人材確保特別措置法案」を衆院に提出した。介護現場で人材不足が深刻化しており、介護の質を確保するため待遇改善が急務と判断した。08年度予算での対応を政府に求めていくという。

 法案では、地域別や介護サービス別に平均賃金を算出し、それを上回る介護事業所の介護報酬を3%引き上げる。必要な900億円は全額国庫で負担する。これにより、半数の事業所の職員40万人(常勤換算)の賃金が月2万円増える計算だ。

民主党のHPに見に行くとありました。これですね。

http://www.dpj.or.jp/news/dpjnews.cgi?indication=dp&num=12484

>法案では、地域別、サービス内容別に平均的な賃金水準を決めた上、その基準を上回る賃金の介護事業所を「認定事業所」として、介護報酬を3%加算する。事業主にも、介護職員の労働条件を改善する努力規定を課す。

法案自体は、

http://www.dpj.or.jp/news/files/080109kaigo_hoan.pdf

第一条 この法律は、加齢により心身の機能が低下した場合等に高齢者等が安心して暮らすことのできる社会を実現するために介護労働者が重要な役割を担っていることにかんがみ、現在他の業種に従事する労働者と比較して低い水準にある介護労働者の賃金の向上に資するよう特別の措置を定めることにより、介護を担う優れた人材を確保し、もって介護サービスの水準の向上を図ることを目的とする。

つまり、介護という特定産業の労働者の賃金水準を他の労働者よりも引き上げることを法目的とするという未だかつて存在したことのない法律ということになります。

仕掛けはなかなか複雑で、まず、

第四条 厚生労働大臣は、事業の種類及び地域ごとに、介護労働者の賃金の当該地域における平均額を勘案し、次条の認定を受けるための基準となる介護労働者の賃金の事業所における平均額(以下「認定基準額」という。)を定めるものとする。

この認定基準額に基づいて、

第五条 介護事業者は、事業所ごとに、都道府県知事・・・・・に対し、厚生労働省令で定めるところにより算出した介護労働者の賃金の見込額の当該事業所における平均額が認定基準額を下回らない旨の認定を申請することができる。

2 都道府県知事は、前項の規定による認定の申請があった場合において、同項に規定する介護労働者の賃金の見込額の当該事業所における平均額が認定基準額を下回らないと認めるときは、その認定をするものとする。

こうして認定を受けたらどうなるかというと、

第八条 厚生労働大臣は、介護を担う優れた人材が確保されるようにするため、高齢者等が安心して暮らすことのできる社会の実現に介護労働者が重要な役割を担っていること並びに介護労働者が従事する業務が身体的及び精神的負担の大きいものであることを踏まえるとともに、他の業種に従事する労働者の地域における平均的な賃金水準を勘案し、事業の種類及び地域ごとに、加算介護報酬に関する基準を定めるものとする。

この基準に基づいて、

第九条 市町村又は特別区(以下単に「市町村」という。)は、認定介護事業者に対し、加算介護報酬を支給する。

2 加算介護報酬の額は、前条の基準により算定した額とする。

3 市町村は、認定介護事業者から加算介護報酬の請求があったときは、前条の基準に照らして審査した上、支払うものとする。

加算介護報酬というお金が高い賃金を払っている介護事業者に流れるという仕組みです。

第十三条 国は、市町村に対し、加算介護報酬の支給に要する費用を負担する。

そのお金は全額国が面倒を見ますよ、と。

で、後ろの方に、いささかとってつけたように、

第十五条 介護事業者は、介護を担う優れた人材を確保することにより質の高い介護サービスを提供することができるよう、介護労働者の賃金の引上げ、労働時間の短縮その他の労働条件の改善に努めなければならない。

という努力義務みたいなのがくっついています。要は、介護労働者に高い賃金を払う事業者に助成金をあげるということなんじゃないの、という気もしますが、それを加算介護報酬という介護保険制度の一部のような形でやるというところがウリなんでしょうが、それならそもそも介護報酬自体が介護労働コストも含めた介護コストを担保するもののはずで、介護給付とは別建てで加算介護報酬という形にすることはどういう意味になるんだろうか、というあたりが、頭の中が混乱するところですね。

社会保障政策としての介護報酬自体はいじらないのだ、あくまでも労働政策として介護労働者の処遇改善を図るのだという整理なのか、それともいやいや単なる労働政策ではなく、この加算部分も含めたトータルの介護報酬を引き上げる社会保障政策としての立法という整理なのかが、実のところ法文を読んでもよくわからない、というか、ごっちゃになっている感があります。

実をいうと、こういう特定の産業分野の「人材確保」のために賃金を高くしようという法律の前例は、学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法とか、

http://fish.miracle.ne.jp/adaken/law/zinzaikakuhoho.htm

>第三条  義務教育諸学校の教育職員の給与については、一般の公務員の給与水準に比較して必要な優遇措置が講じられなければならない。

看護師等の人材確保の促進に関する法律とか、

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H04/H04HO086.html

>第五条  病院等の開設者等は、病院等に勤務する看護師等が適切な処遇の下で、その専門知識と技能を向上させ、かつ、これを看護業務に十分に発揮できるよう、病院等に勤務する看護師等の処遇の改善その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

なんてのもあるんですが、認定基準額に基づいて認定をして加算報酬を払うなんてのは前代未聞でしょう。現実性はとりあえず措くとして、いろんな意味で興味深い法案ですね。

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