「働く」ワーキンググループの報告私案
労働政策は厚労省だけでやってるんじゃなく、内閣府の経済財政諮問会議や規制改革会議も(その中身の評価は別として)政府の労働政策を大きく左右しているということはご案内のとおりでありますが、その内閣府の国民生活局という消費者問題とかを扱っている部局が労働問題を取り上げているということは、案外知られていないのではないかと思います。
国民生活審議会の、総合企画部会の、生活安心プロジェクトの中に、「働く」ワーキンググループというのができて、昨年12月からいろいろと検討しているんですね。
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/shingikai/kikaku/21th/hataraku/hataraku-index.html
既に3回開催されて、直近の1月16日には、樋口美雄先生による報告私案までが提示されています。
えっと、その前にどういう人々がやってるかというと、
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/shingikai/kikaku/21th/hataraku/071205shiryo01.pdf
主査 樋口 美雄 慶應義塾大学商学部教授
副主査 川崎 あや 横浜市市民活動支援センター事務局次長
委員 岩田喜美枝 株式会社資生堂取締役執行役員常務
岡本 直美 NHK関連労働組合連合会議長
小林いずみ メリルリンチ日本証券株式会社代表取締役社長
佐々木かをり 株式会社イー・ウーマン代表取締役社長、株式会社ユニカルインターナショナル代表取締役社長
早瀬 昇 社会福祉法人大阪ボランティア協会常務理事・事務局長
穏当な人選ですね。
で、樋口先生の報告私案ですが、
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/shingikai/kikaku/21th/hataraku/080116shiryo06.pdf
>雇用は最大の福祉であり、安心して意欲と能力を発揮できる就業環境の提供は生活者の福祉向上にとって不可欠であるとの視点から、国は地方自治体や企業、NPOと協力・連携し、国民に対し、「働く人を大切にする」社会環境を保障しなければならない。
生活者とはまず何よりも働く人(あるいは働こうとする人、働きたい人)なんですよ。「どの業種でもサービス残業当たり前のご時勢に」などとほざいて消費者主権を狂ったように振り回す人じゃないんですよ。
緊急の具体的課題として、「就職困難者一人一人に対するサポート体制」が挙げられています。
>障害者や母子家庭の母、ホームレス等、就職困難者一人一人に対し、訓練から、職業紹介、就職に至るまできめ細かく支援する体制(一人別のサポート体制)が十分に整備されている状況にはない。これまでの行政の取組は受身の姿勢に止まっており、相談窓口に来た人へのサポートは行うが、自ら積極的に出向いてサポートすることには限界があったところである。このため、就職困難者一人一人に対する一人別のサポート体制が、労働・福祉分野の行政及びNPO等の民間団体により、一体的に講じられるようにすることが最重要な課題の一つである。
また、今までの労働法では救いきれない人々として、
>NPO活動で就労する者(「有償ボランティア」を含む)、ディペンデント・コントラクター、ダブルジョブホルダー等新たな働き方の増加により、既存の制度や法律の保護から漏れる者が生じている現状から、これに対する保護措置の検討が必要である。
こういう目配りもきちんとされています。
>なお、立場(バーゲニング・ポジション)の弱い労働者は苦情や相談を訴えることには困難を伴うところであり、企業内外で苦情・相談を受け付け、適切に処理する仕組みが整備されることが望まれる。
>働く人の安心を確保するための施策の的確な実施、更なる推進を図る上で、定員や予算の制約、地方公共団体における労働行政の機能低下等が課題となっている。
>未組織労働者や非正規労働者、失業者等を含む生活者の意見を幅広く吸い上げる取組が今後とも求められる。
こういう提起をするというところに、内閣府という組織の存在意義があるんだろうと思います。
>就職困難者に対する一人別の支援、雇用以外の新たな働き方への対応、働く場の創出、労働関係法令遵守、キャリア教育、ワークライフバランスなど、府省庁間の連携や内閣府の総合調整機能の強化が必要な課題が増加している。
正しい方向に進んでいくのである限り、「内閣府の総合調整機能の強化」は望ましいことであって、別に厚労省がケツの穴の狭いことをいう必要はないでしょう。
このあとの方に、「労働関係法令遵守、働くことに関する教育の充実等」として、こういうことが述べられています。心の底から賛成です。
>労働関係法令遵守は経営課題としても最重要な課題であり、労働行政のみならず産業振興行政・中小企業行政においても企業の健全な存続・発展を図る上で避けて通ることのできない課題である。また、我が国における労働関係法令遵守水準の低さは、学校教育段階で働くことの権利と義務を含めて的確な教育が行われていないことも大きな原因としてあげることができるところであり、これは若年者の職業意識の形成が十分に行われていないことにもつながっている。
このため、内閣府、厚生労働省、経済産業省、文部科学省等関係府省庁の連携の下に、学校教育段階から社会人に出てからの教育を含め、労働関係法令遵守や働くことに関する教育の充実等のための取組を進めることが必要である。特に、企業経営者への労働関係法令の周知徹底を図ることは緊急性を要する。都道府県の段階においても、これら各行政に係る官民の関係機関の緊密な連携の下に継続的な取組が進むような方策を検討する必要がある。
これもまた大変重要です。
>就職困難者一人一人に対する一人別のサポート体制や地域における相談機能の強化については、通常の行政手段(受け身の姿勢の行政や、働く人の自助努力に大きく委ねる方法)に比し格段に人の手間と予算が必要となるところである。このため、こうした取組を推進するためには、職員の専門性の向上や官民の連携強化を図りつつ、地域の労働行政に対する支援を含め、予算や定員を確保するための特別措置を講ずることが適当である。
カネやヒトが要るのですよ。もちろんムダはなくさなければなりません。しかし、そればっかり喚くことが「生活者」の立場ではないのです。
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「カネやヒト」がそもそも雇用対策になるし。
イギリスのコネクションズだったかな、NHKでやってましたよね、要員が複数で街に出て、ぷらぷらしている若者にアウトリーチ(早い話が、ナンパ、か)という。
投稿: ぶらり庵 | 2008年1月30日 (水) 23時02分