公務員制度の総合的な改革に関する懇談会報告書案
新聞等でも報道されていますが、報告書案が官邸HPにアップされています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/koumuinkaikaku/forum/h200131/pdf/siryou2.pdf
概要の方を引用しておきますと、
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/koumuinkaikaku/forum/h200131/pdf/siryou3.pdf
1.議院内閣制にふさわしい公務員の役割
(1)内閣中核体制の確立
○大臣等の政務を補佐する「政務専門官」の創設。
○各府省の立場を超えて、内閣の国家的重要政策の企画立案を行う「国家戦略スタッフ」の創設。
○公務員と政治家との厳格な接触ルールを確立し、政官の接触を集中管理。
(2)大臣人事権の確立
○指定職以上の幹部任用に際しての内閣総理大臣認可の導入。
(3)内閣一元管理
○縦割り行政の弊害を除去し、各府省横断的な人材の育成・活用を行うため、内閣一元管理システムを導入。
2.多様な能力、技術、経験を持つ人材の採用、育成、登用 (
1)学業終了時点での採用
○採用試験に基づき幹部候補を固定化している「キャリア・システム」を廃止。
○現行のⅠ・Ⅱ・Ⅲ種試験等を廃止し、一般職試験(院卒、大卒、高卒)、専門職試験(院卒、大卒、高卒)、総合職試験(院卒、大卒)を創設。
○総合職試験合格者からは、内閣人事庁が一括で採用し、各府省に配属。
(2)中途採用
○他の職業からの中途採用を積極的に行っていくため、中途採用試験(一般職、専門職、総合職)を導入。
(3)公務員育成の目標
○個々の職員が自発的に能力向上に取り組む公務員像を確立し、国際社会の中で活躍できる広い視野と深い教養、公務以外の分野でも活躍できる高い能力を有する人材の育成を目指す。
(4)幹部職員の育成と選抜の制度
○高い能力と倫理観を備えた幹部職員を確保するため、幹部候補を総合的計画的に育成する「幹部候補育成課程(仮称)」を導入。 ・幹部候補育成課程への選抜は、採用後2年程度の働きぶりを評価して行う。(一般職、専門職試験採用者からも選抜)。 ・絞り込みと補充による出入りのある育成課程とする。 ・内閣人事庁は、統一的な基準作成や運用管理を行う。
○本省管理職以上への能力本位で多様な人材登用。 ・本省管理職以上への公募拡大(数値目標を設定し、その比率を段階的に拡大)。 ・内閣人事庁による人事の調整、指定職以上の適格性審査。 ・将来的に、本省管理職以上に占める総合職試験採用者で幹部候補育成課程を修了した者の割合が、半分になることを目指す。
○高度な専門的知識・技能・経験を持つ専門職を育成・確保する。
○国家戦略スタッフは、内閣総理大臣の判断で、公務内外から公募により登用する。
3.公務員の倫理の確立と評価の適正化
(1)公務員共同体化の回避(「ゼッケンを外す」)
(2)職業倫理の確立(公正な人事評価システムと信賞必罰の原則徹底)
(3)評価と賞罰
○人事評価において、国民本位の評価視点を取り入れ、「全体の奉仕者」としての意識を涵養。あわせて評価者の資質向上を図る。
○評価は、採用年次にとらわれず、相対評価により行う。
○組織目標とリンクした目標管理を行い、組織目標から個人の目標を導き出す。
○評価の納得性を高めるため、評価結果を開示し、フィードバックを確実に行う。
(4)守秘義務違反の捜査および誤報に関する罰則の強化
4.国際競争力のある人材の確保と育成
○国際対応に重点を置いた採用と人材育成プログラムの創設。
○幹部候補育成課程では、海外勤務を一度は経験させる。
5.官民交流の促進
○官民の交流を促進するため、官民人事交流法を抜本的に見直し、「官民人材交流法」(仮称)を制定する。
○幹部候補育成課程においても、最低一回は民間企業等で勤務する。
6.働きに応じた処遇(ワーク・ライフ・バランス)
(1)公務効率向上意識の導入
○ビジネス・プロセス・リエンジニアリングの導入による勤務時間適正化や「業務簡素化計画」の作成と実施。
(2)給与体系の抜本的改革
○役職手当の導入や給与への勤務評価の反映徹底(メリハリのきいた処遇)。
(3)就職金および退職金の改革
○国家戦略スタッフや特定専門職への採用の際の就職金(支度金)制度の創設。
○公金で賄われている機関への再就職は、再就職先での退職金辞退・削減を条件化(渡り天下り防止)。
(4)定年・退職
○60歳定年まで勤められることを原則として、能力・実績により処遇される環境を構築する。
○60歳以降については、当面は、再雇用制度の拡充により雇用機会を確保する。
○一定年齢で年功昇給が停止する給与システム、役職定年や職種別定年延長の検討。
7.国家公務員の人事管理に関する責任体制の確立
(1)内閣人事庁(仮称)の創設
○内閣一元管理の実施機関、国家公務員の人事管理について政府を代表して説明責任を負う機関として、国務大臣を長とする「内閣人事庁(仮称)」を設ける。
○総務省人事・恩給局や人事院の中央人事行政に関する部門等の関連機能を内閣人事庁に統合。
(2)労働基本権等
○労働基本権の付与については、専門調査会の報告を尊重。あわせて、国における使用者機関のあり方について検討。
※改革の推進 平成21年の通常国会に内閣人事庁を設立するための法律案提出。改革の実施に必要な関係法案について、平成23年の通常国会に提出し、遅くとも5年以内に改革を実施。
一点だけ指摘しておきますと、(4)定年・退職のところで、
>② 60歳以降については、民間における高齢者雇用の取り組み状況や国家公務員の早期退職慣行の状況を踏まえれば、現状において、国家公務員について一律に年金受給開始年齢まで定年延長をすることは困難であり、当面は、再雇用制度の拡充により雇用機会を確保する。
と書かれていますが、高齢者雇用安定法の2004年改正によって、民間企業は既に年金支給開始年齢までの継続雇用義務を課せられています。
もちろん、それには労使協定によって穴を開けることはできるわけですが、原則は年金支給開始年齢までの雇用継続となっているのであって、希望者全員ではない特例的再雇用制度となっている公務員の方がそっちに到達できていないのだということは、関係者の方々は頭の中に置いておかれても罰は当たらないと思いますよ。
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日本の公務員の人事管理は、民間を「指導」ないし、法規制しておきながら、自分たちのことは棚にあげて、が多いと感じます。欧米では、パブリック・セクターから導入、が多いのではないでしょうか。
高齢者雇用もながら、女性雇用。『平成19年版男女共同参画白書』によりますと、民間では、課長相当の女性5.8%、部長相当3.7%、地方公務員(都道府県)の女性管理職5%、なんと国家公務員で上位の役職に占める女性割合が1.8%(2005)となっています。近年、女性採用、特に総合職的なI種採用を増やしていると宣伝しています。その通りに新規採用は増加だろうと思いますが、その後の歩留まりは発表されていないように思います。家庭、特に子どもを持とうと考えると、霞ヶ関型の転勤・残業はなかなか大変だと思われます。
若年雇用も、民間には発破をかけながら、来年再チャレ採用があるかどうかは不明とのこと。今年もたった162人でしたが。
また、これは労働法学者としてのhamachanにおたずねしたいのですが、民間に右に倣え、で人事院が推進している成果主義評価。成果に応じて、A-Eランキング、というものですが、公務サービスは、商品の売り上げのように、誰が担当するとサービスの質・量があがり、他が担当すると下がる、という種類のものでしょうか。不特定多数の国民に対し、誰にでも均質のサービス、が公務サービスではないのでしょうか。で、人事院規則や人事院の指導は「法律」ではないですが、省庁がその業務に鑑みて、独自の評価体系を構築する、即ち、人事院の基準には従わない、というのは「違法」でしょうか?
投稿: FiscalYear | 2008年2月 1日 (金) 22時04分
えー、公務員について、小耳にはさんだところによりますと、人事院規則とか人事院の指導の強制力よりも、問題なのは、従わない場合、Z省からの兵糧攻めに合うんだとか。はー、そういう仕組みになってるんだー、とがっくりでした。地方だけじゃなくて、国だって、省庁により、現場により、いろいろ。必要な分権化をすべきだと思いますが、それじゃね。
投稿: FiscalYear | 2008年3月 1日 (土) 11時20分