フォト
2020年10月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
無料ブログはココログ

« ビミョーなすれ違いぶり | トップページ | 佐川子会社が二重派遣 »

2008年1月 4日 (金)

規制改革会議「第2次答申」に対する厚生労働省の考え方

昨年末12月28日付で、厚生労働省から標題のような規制改革会議への反論文書が出されています。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/12/dl/h1228-4a.pdf

前半部分は例の混合診療関係ですが、後の方で労働政策に関する懇切丁寧な反論が書かれています。実によくできていますので、以下引用しますね。

○ 労働市場における規制については、労働者の保護に十分配慮しつつも、当事者の意思を最大限尊重する観点から見直すべきである。誰にとっても自由で開かれた市場にすることこそが、格差の是正と労働者の保護を可能とし、同時に企業活動をも活性化することとなる。
一部に残存する神話のように、労働者の権利を強めるほど、労働者の保護が図られるという安易な考え方は正しくない。

○ 一般に労働市場において、使用従属関係にある労働者と使用者との交渉力は不均衡であり、また労働者は使用者から支払われる賃金によって生計を立てていることから、労働関係の問題を契約自由の原則にゆだねれば、劣悪な労働条件や頻繁な失業が発生し、労働者の健康や生活の安定を確保することが困難になることは歴史的事実である。
このため、他の先進諸国同様、我が国においても、「労働市場における規制」を規律する労働法が、立法府における審議を経て確立されてきたものと理解している。
○ もとより、その規制の内容については、経済社会情勢の変化に即し、関係者の合意形成を図りつつ、合理的なものに見直されるべきではあるが、契約内容を当事者たる労働者と使用者の「自由な意思」のみにゆだねることは適切でなく、一定の規制を行うこと自体は労働市場の基本的性格から必要不可欠である。
○ 同様の理由から、「一部に残存する神話」、「安易な考え方」といった表現も不適切である。

○ 無配慮に最低賃金を引き上げることは、その賃金に見合う生産性を発揮できない労働者の失業をもたらし、同時に中小企業経営を破綻に追い込み、結果として雇用機会を喪失することになる。

○ 最低賃金は、最低賃金法に基づき労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められるものである。これらの考慮要素に照らして必要がある場合には、最低賃金の引上げが必要であり、また、こうした観点からの引上げは、直ちに労働者の失業をもたらすものではないと考える。

○ 過度に女性労働者の権利を強化すると、かえって最初から雇用を手控える結果になるなどの副作用を生じる可能性もある。

○ 女性労働者の権利の保護は、人権上の観点から図られるべきものである。例えば、男女雇用機会均等法等は企業に対し、人権上の観点から、性差別をせずに雇用管理を行うことや、妊娠・出産に係る女性の保護など、当然のことを求めているにすぎない。
「過度に女性労働者の権利を強化すると、かえって最初から雇用を手控える結果になるなどの副作用を生じる可能性もある。」という記載は、
・人権上の必要性の有無にかかわらず、一方的に女性労働者の権利確保を否定することにもなり得る
・「女性の雇用を手控える」企業については、その行為自体が女性に対する差別となり、男女雇用機会均等法上の指導の対象となる
など、人権上あるいは法制度上認められない行為を容認する記述であると考える。

○ 一定期間派遣労働を継続したら雇用の申し込みを使用者に義務付けることは、正規雇用を増やすどころか、派遣労働者の期限前の派遣取り止めを誘発し、派遣労働者の地位を危うくする。

○ 雇用の申込義務は、無制限な派遣労働の拡大に歯止めをかける役割を果たしているが、当該義務を撤廃すれば、直用の常用労働者から派遣労働者への代替が一気に加速するとも考えられ、当該義務の存在が派遣労働者の地位を危うくするとの主張は不適当である。

○ 労働政策の立案に当たっては、広く労働者、使用者を含む国民や、経済に及ぼす影響を、適切に考察するとともに、各種統計調査等により、実証的に調査分析することが必要なはずである。しかしながら、たとえば、労働政策審議会は、平成19 年のパート労働法改正に当たり、差別的取扱いが禁止される「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」が具体的にどの程度の規模、存在しているかを把握していなかったのである。

○ 労働政策の立案に当たって、実証的に調査分析する必要があることは当然であり、現に、労働政策審議会の平成19年のパート労働法改正審議においては、既存のパート法の規定について、詳細な実態調査結果に基づき実証的に検討が進められたところである。しかしながら、新たに法定することとした差別的取扱いの禁止の対象については、その是非も含めて検討したことから、新たに設定された要件に完全に合致する者がどの程度存在するかについて過去の調査結果から把握できないことは、それ自体やむを得ないところであると考える。したがって、今般の第二次答申において、「改正パート労働法」の例を挙げるのは極めて不適切である。

○ 解雇権や雇い止めは著しく制限されており、しかも、これらはいずれも、どういう理由と手続きの下で解雇あるいは雇止めが有効となるのか、予測可能性が低い。
そこでまず、労働者保護に十分配慮しつつも、当事者の自由な意思を尊重した合意に基づき予測可能性が向上するように、法律によってこれを改めるべきである。
○ 労使それぞれが有する相手方に関する情報の質と量の格差を是正する対策、例えば、業務内容・給与・労働時間・昇進など処遇、人的資本投資に対する労使の負担基準に関する客観的細目を雇用契約の内容とすることを奨励することにより、判例頼みから脱却し、当事者の合致した意思を最大限尊重し、解雇権濫用法理を緩和する方向で検討を進めるべきである。

○ 労働者と使用者との間には交渉力においても格差があることや、労働者は経済的に弱い立場にあり、使用者から支払われる賃金に生計をゆだねていることなどから、契約の内容を使用者と労働者との「自由な意思」のみにゆだねることは適切ではなく、最低限かつ合理的な範囲において規制を行うことは必要であり、専ら情報の非対称性を解消することで必要な労働者保護が図られるとの見解は不適切である。
○ また、こうした実態を踏まえて、判例によりルールが整備され、労働契約法に規定された解雇権濫用法理について、その緩和を主張するのは不適切である。

○ 労働者派遣法は、派遣労働を例外視することから、真に派遣労働者を保護し、派遣が有効活用されるための法律へ転換すべく、派遣期間の制限、派遣業種の限定を完全に撤廃するとともに、紹介予定派遣の派遣可能期間を延長し需給調整機能を強化すべきである。また、モノづくりの実態において法解釈が過度に事業活動を制約している点、また、法解釈に予測可能性が乏しい点、実態と整合していない点等の指摘があることを踏まえ、法の適正な解釈に適合するよう37 号告示および業務取扱要領を改めるべきである。少なくとも、さしあたり37号告示の解釈が明確となるよう措置すべきである。

○ 労働者派遣制度については、労働者からの一定のニーズがある一方、直接雇用を望んでいるもののやむを得ず派遣労働者になる者がいたり、派遣労働者の労働条件が必ずしも職務にふさわしいものではないという指摘もある中で、派遣期間の制限や派遣業務の限定の完全撤廃などの規制緩和を行うことがすべて労働者のためにもなるという主張に同意することはできない。
○ 「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める告示(昭和61 年労働省告示第37 号)」は、偽装請負を判断するための基準であり、この基準が事業活動を制約している等の事業主側のみの主張を根拠に、当該告示が法の適正な解釈に適合していないとの主張は不適切である。

ただ、まああえていえば、昨年5月の「意見書」に比べると、依然としてむちゃくちゃではあるけれども、むちゃくちゃさの度合いが低減しているので、反論も昨年の意見書であればもっと木っ端微塵にしていたであろうところがいささかみみっちい反論になっているところもあります。

たとえば、労政審の三者構成についても、今回の答申はパート法にケチを付けているだけですが、意見書では「使用者側委員、労働側委員といった利害団体の代表が調整を行う現行の政策決定の在り方を改め、・・・フェアな政策決定機関にその政策決定を委ねるべきである」とまで言っていたのですから、拳の遣りどころがなくなっていささか残念ではありますね。

福井氏はそもそもパート法の作り方「だけ」がケシカランといっているのではなく、「行政庁、労働法・労働経済研究者などには、このような意味でのごく初歩の公共政策に関する原理すら理解しない議論を開陳する向きも多い。当会議としては、理論的根拠のあいまいな議論で労働政策が決せられることに対しては、重大な危惧を表明せざるを得ないと考えている」わけですから、この部分のやり取りは本音とは別のみみっちいものに過ぎなくなっているわけですね。

あと、男女均等のところの「人権上あるいは法制度上認められない行為を容認する記述」というのは、雇用均等児童家庭局の諸姉の沸々と煮えたぎる怒りが感じられますね。この際、規制改革会議の置かれている内閣府内部からも怒りの声を差し上げてみては如何かと愚考いたしますが。

こういう議論に対しては、馬鹿馬鹿しいから相手にしないという対応が一番いけないので、きちんと懇切丁寧に撃滅しておくことが必要であります。『日本労働研究雑誌』の次号(2/3月号)では、「学界展望・労働法理論の現在」という座談会が載りますが、その中でも福井氏編の「脱力」じゃなかった「脱格差社会と雇用法制」を取り上げて批判を加えております。刊行されたらご覧頂ければと存じます。

« ビミョーなすれ違いぶり | トップページ | 佐川子会社が二重派遣 »

コメント

そうか、内閣府にはD局がありますね。

橋本行革で、それまで労働省女性局女性政策課にあった女性政策の元締めの権限が内閣府男女共同参画局に移ったわけですから、それなりに活躍していただかなければねえ。
もと男女共同参画局長さまも、女性の品格を説教される前に、内閣府の品格を・・・。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 規制改革会議「第2次答申」に対する厚生労働省の考え方:

« ビミョーなすれ違いぶり | トップページ | 佐川子会社が二重派遣 »