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2007年12月18日 (火)

『世界』1月号についてその2

昨日に続いて、『世界』1月号の論文にコメントします。木下武男氏の『ワーキングプアの貧困からの離陸』という論文です。

>格差・貧困社会にどう立ち向かうのか。2006年、深刻化する状況を背景に若者たちの異議申し立ての運動が台頭してきた。新しい世代のユニオン運動はどのような展望を見出しているのか。ワーキングプア層は職種別ユニオン運動を確立することができるのか。

というわけで、木下氏の持論の企業横断的職種別労働市場を実現することがワーキングプアの解決になるのだという論です。

このブログでも何回か指摘してきたように、市場メカニズムを信頼する経済学者と、木下氏のような反主流派の労働運動にシンパシーを持つ人々が、企業別労働組合に対して不信感を持ち、労働現象を基本的に労働力売買として純化する方向でものを考えようとする点で共通するのは興味深いところです。

木下氏が称揚し、そのすぐあとでその闘争史が語られる全日本建設連帯労組関西生コン支部などは、そういう労働市場闘争型の労働組合の典型例なのでしょう。

そういう眼差しからは、企業別組合というのは労使癒着型のエセ組合と云うことになるのでしょう。

しかし、もちろん労働現象は労働力売買にとどまるものではなく、社会学的には集団・組織に関わる現象であり、権力現象であり、ミクロな政治現象でもあります。ここで重要なのは、マクロ政治的な国民参加に対比されるべきミクロレベルの労働者参加であり、経営意思決定に対して労働者の利益をいかに反映させるかと云うことになります。

欧州諸国では、マクロ経済的な労働力売買に関わる行動を産業別ないしナショナルレベルの労働組合に割当て、ミクロ社会学的ないし政治学的な集団・組織に関わる行動を企業ないし事業所レベルの労働者代表システムに割当てることにより、労働の持つ二面性に対応して、労働者の利益を代表するメカニズムを構築してきました。

日本では、企業別組合が労働力売買に関わる問題とミクロ社会学的問題の双方を担う形で形成されてきたため、後者が前者に優先するようにみえると、それがある種の人々から労使癒着と非難されるということであるわけですが、逆にいうと、欧州の労働者代表システムはもっぱらそれをやっているわけです。

木下氏の論文から離れたように見えるかも知れませんが、結局ここを抜きにした議論では、一見威勢はよいけれども、地に足のつかない議論になってしまうということを云いたいわけです。

私はむしろ、非正規労働者の問題は、本来ミクロな利益代表システムの中にはいるべき人々がそこから排除されている問題だと考えるべきだと思っています。先週アップした『労使コミュニケーションの新地平』所収論文の中でいささか詳しく論じたように、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/sankachap5.html

>企業内部の問題解決機能の存在を企業別組合というミクロな自発的結社の存在に委ねてきたということになる。このため、企業別組合が存在しない企業ではこの機能を担保するメカニズムは基本的に存在しない。それだけでなく、企業別組合が自発的結社である以上、そのメンバーシップは企業内部で決定され、公共政策的観点から決まるわけではない。そのため、管理職やとりわけ非正規労働者の大部分が、自発的結社たる企業別組合のメンバーシップを持たないということのために、企業内部の問題解決とりわけ企業リストラクチュアリングへの関与から排除されることとなってきた。

という問題なのです。したがって、課題はまず何よりも、

>まず第1に、自発的結社たる労働組合が存在する場合を前提に、そのメンバーシップから排除された人々を企業内部の意思決定に参加させるメカニズムをいかに構築するか、という問題がある。第2に、労働者にとって極めて重要な意味を持つ企業リストラクチュアリングへの関与をいかに確立していくかという問題がある。そして第3に、実効的な労働組合がない場合に、それに代わる企業内意思決定への参加システムをいかに構築するかという問題がある。

という風に設定されなければなりません。私なりの答はその続きにありますが、いずれにしても企業外部に職種別ユニオンを構築することが全ての解決の鍵であるというのは、労働現象を労働力売買という観点でしか見ない発想だと思うのです。

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