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2007年12月 6日 (木)

生活保護基準の見直しと最低賃金

11月30日のエントリーで紹介したように、その日、生活扶助基準に関する検討会が生活保護の水準の見直しを求める最終報告書をまとめたと報じられているのですが、今までのところ、厚生労働省のHPには報告書がアップされていません。その間、いくつもの団体が反対の表明をしています。

日本弁護士連合会は、会長声明として、

http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/statement/071204.html

>11月28日に可決成立したばかりの改正最低賃金法は、「生活保護との整合性に配慮する」ことを明記して最低賃金引き上げに道を開いたが、生活保護基準が下がれば、最低賃金の引き上げ目標額も下がることとなる。

>生活保護の「捕捉率」(制度を利用する資格のある者のうち現に利用できている者が占める割合)が極めて低く、生活保護基準以下の生活を余儀なくされている低所得者が多数存在する現状において、現実の低所得者層の収入や支出を根拠に生活保護基準を引き下げることを許せば、生存権保障水準を際限なく引き下げていくこととなる。「ワーキングプア」が多数存在する中で、生存権保障水準を上記のようなことを根拠として切り下げることは、格差と貧困の固定化をより一層強化し、努力しても報われることのない、希望のない社会を招来することにつながりかねない。

と、批判しています。

その後、独立行政法人福祉医療機構のHPに、11月30日の検討会に提出された資料がアップされていることが判りました。

http://www.wam.go.jp/wamappl/bb16GS70.nsf/0/fb0d31ef3959da69492573a700085aa8/$FILE/20071204_4shiryou.pdf

これをみますと、確かに3人世帯では、年間収入階級第1十分位の生活扶助相当支出額は148,781円で、生活扶助基準額は150,408円はこれをかなり上回っているとしています。だから、ここのところは引き下げて良い、とは書いてありませんが、そういう趣旨であることは確かでしょう。ただ、世帯人員別の基準額の水準について、単身世帯に比べて多人数世帯では生活扶助基準額が生活扶助相当支出額を上回っていると書かれていますので、逆に言えば、単身世帯は必ずしも引き下げるべきということではなさそうです。

また、年齢階級別に見ても、高齢層に比べて、若年層では生活扶助基準額が生活扶助相当支出額よりも低いと指摘されていますので、若者の単身者(で受給できている人はほとんどいないでしょうけど)の基準額を引き下げよと云うことでもなさそうです。

最低賃金額に直接影響するのは、若年層の単身世帯の額ですから、これは必ずしも最低賃金を引き下げると云うことにはならないように思われます。

さらに、地域差のところで、「現行の地域差を設定した当時と比較して、地域間の消費水準の差は縮小してきている」と述べています。

この点については資料の14頁に、グラフが載っていますが、これを見ると、東京、大阪、横浜といった1級地-1は、生活扶助基準額は111ですが、生活扶助相当支出額は103になっています。これに対して、大部分を占める3級地-2では、生活扶助基準額は86ですが、生活扶助相当支出額は93となっています。

これはたいへん興味深いデータです。ここから導き出されるであろう結論は、都会地の生活扶助基準額は生活扶助相当支出額に比べて過度に高すぎるから引き下げるべきである、一方田舎の生活扶助基準額は生活扶助相当支出額に比べて低すぎるから引き上げるべきであるというものになるように思われます。

この結論の生活保護行政におけるインプリケーションを考えると、受給者の圧倒的多数は都会に住んでいるので、その人々の扶助基準額を切り下げることによって、田舎の生活扶助基準額を引き上げたところで、やはり生活保護費を削減することができ、財務省に言い訳をすることができると云うことなのでしょう。

ところが、最低賃金へのインプリケーションはまったく違った様相を呈します。

都会地でも若年単身者の生活扶助基準額は、多人数世帯や高齢者よりも低いので、必ずしも引き下げられず、最低賃金への影響もあまりなさそうです。

これに対して、田舎では生活扶助基準額がかなり引き上げられそうですので、これは最低賃金を引き上げるドライブになる可能性があります。14頁のグラフからすると、これは結構大きなものになるかも知れません。

いずれにしても、この報告書のインプリケーションは、日弁連の云うように「生活保護基準が下がれば、最低賃金の引き上げ目標額も下がることとなる」というような単純なものでは必ずしもなさそうです。

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