フォト
2024年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ

« 池田信夫氏と信者たちの麗しき世界 | トップページ | ラヴァル事件欧州司法裁遂に判決 »

2007年12月20日 (木)

高齢法を読んでいますか?

内閣府HPに11月26日に開かれた労働市場改革専門調査会の議事録がアップされています。私が出席した次の回で、報告者は藤村博之先生です。

http://www.keizai-shimon.go.jp/special/work/16/work-s.pdf

このやり取りの中で、阪大の小嶌先生がちょっと変なことを言っています。

(小嶌委員)資料1の13 頁「解決すべき課題」に「希望者全員の是非」と書いてあるが、改正高年齢者雇用安定法の条文には希望者全員という文言は出てこない。現場にいて思うが、厚生労働省が事業主向けに配布しているリーフレット等でこのメッセージが発せられたために、企業は高齢者を辞めさせにくくなっている事情もあるかと思う。要するに、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を設けて、その基準に満たない者へは継続雇用措置を適用除外できる場合でも、その基準は客観的でなければならないということになっている。このため、当初改正法が施行される前は、多くの企業は、例えば会社が必要とする者という条件を提示していたと思うが、それができなくなった。国立大学法人でも、協定を結んで適用除外を行っているが、その範囲は非常に限定的にならざるを得ず、実際には勤続年数が短い人、処分歴がある人、健康状態に問題がある人、成績が著しく悪い人等に適用除外の範囲は限られている。仮にその労使協定がなければ、問題がある人も含めて希望者全員を継続雇用する義務があるという考え方になってしまう。非常におかしなことだが、60 歳になるとかえって雇用保障が強まることとなる。これは、若干間違った認識もあるとは思うが、改正高年齢者雇用安定法の余波、副作用として、そうした風潮が出てきているのではないかとの印象を持っている。

高齢法第9条をお読みいただきたいのですが、

>(高年齢者雇用確保措置) 

第九条  定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
  当該定年の引上げ
  継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
  当該定年の定めの廃止
  事業主は、当該事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、前項第二号に掲げる措置を講じたものとみなす。

このように、原則は希望する者を65歳まで雇用する制度を導入せよと云うことであり、但し労使協定で例外を設けることができると云うことなのですから、その原則の方を「希望者全員」ということは何らおかしなことではありません。

この前の回で私が繰り返し述べたことですが、この制度は労働条件変更その他雇用契約の内容を一切捨象すれば、65歳を強制退職年齢の下限とするという規定であり、その雇用保障の程度は60歳未満と60~65歳とで変わるものではありません。というか、そういう制度設計なのです。どこがどうして「60 歳になるとかえって雇用保障が強まることとなる」というご発言になるかいささか理解に苦しむところがあります。

面白いのは、八代先生が例によって持論の「人事部はもういらない」論を展開しておられるのに対し、藤村先生がやんわりと反論しておられるところです。

>(八代会長)・・・・・エイジレス社会への動きを進めるために一番必要なのは、人事部の改革ではないかと思う。その改革の方向性の1つは人事部機能を原則として原課に全部降ろすことではないか。各原課の課長が人事権を持つことが、ある意味では一番簡単である。今のように人事部が強大な権限を持っているからこそ、それに伴う責任を追及されて、また対応できなくなる。特に高齢者の人事管理については、特に画一的な配置転換ではなく、人事の分権化が必要だと考えるが、・・・

(藤村教授)日本企業の人事部は中央集権的で強いというイメージがあるが、それは強権発動で従業員を無理やり動かす金融業界には当てはまると思う。しかし、製造業は、意外と本社の人事部が力を持っていない。無理やり人を動かすケースとしては、例えば、ある部署の長が、使い勝手が良いという理由で自分の懐刀のように長く部下として置いている、いわば塩漬けになっている人を、人事部が本人のことを考えて動かすと判断した場合に強権発動で動かすことがある。それ以外は、ほぼ現場の部長レベルで話し合いが付いて、それを後追いする人事となっている。したがって、人事部が非常に強いからという八代会長の御指摘は、全ての業種に当てはまるものでもないと思っている。ただ、人事部が説明責任をきちんと果たしていないとのご指摘はそのとおりであり、人を選ぶ基準、管理職に登用する基準を明確にして、その基準に見合わない場合は役職を下りる仕組みを作る、ということは本来あるべきことである。今、一番求められていることは、人事部機能を解体することではなく、人事部が本来持つべき機能をきちんと果たすことだと思う。最近、戦略的人事管理の必要性が言われているが、簡単に言うと企業の経営戦略と人事の採用・配置・育成との連携をきちんと取ろうということである。これは、1980 年代まで日本の会社が普通に行ってきたが、ここ15 年ぐらいできなくなっているため、もう一度きちんと戦略的人事管理をしようということだと思う。しばしば経営者は目前の利益を上げることに重点を置いて、人事の配置を決めることがあるが、人事部の役割は、人事として中長期の育成計画をちゃんと持って、例えば5年後、10 年後の会社のことを考えて、今この人を異動させてはいけない、こういう経験をしてもらう、ということを主張して、場合によっては事業部長と対峙するくらいの力強さが必要かと思う。八代会長が指摘された採用についての現状は、現場の課長クラスが誰々を採るという具体的な権限委譲までは難しいとしても、何人採るという程度の権限はあるようだ。ただ近年、会社全体として正社員が増えすぎないよう人事をコントロールしているので、ここ2年ぐらいのように景気が回復している局面で、本来であればもっと正社員を増やせたのに全体の制約で増やせなかった事情はあると思う。また、その結果として、技能伝承の問題、あるいは全体として高年齢者の所得の伸び悩みにも影響が生じたと思われる。したがって、私は、ある一定ルールの下では解雇ができるようにした方がいいと思っている。

« 池田信夫氏と信者たちの麗しき世界 | トップページ | ラヴァル事件欧州司法裁遂に判決 »

コメント

> 日本の労働市場の最大の問題は、大企業と中小企業の規模別格差問題と、この本工と臨時工の格差問題でした。

要するにこの問題の再来な訳で。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 高齢法を読んでいますか?:

« 池田信夫氏と信者たちの麗しき世界 | トップページ | ラヴァル事件欧州司法裁遂に判決 »