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2007年11月19日 (月)

不安定雇用という虚像

4326653310社研の佐藤博樹先生とリクルートワークス研究所におられた小泉静子さんの共著『不安定雇用という虚像』をいただきました。

けっこう、挑発的な題名ですが、内容は佐藤先生の篤実で穏和な性格と同様、きちんとしたデータに基づく手堅い研究です。

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4326653310.html

>非正社員急増に伴い不安定、低賃金かつ能力開発の機会も乏しい等、否定面ばかりが強調されていないか。
働き手から見た多様な働き方の実態に迫る。

はじめに 非正社員は不安定雇用か―実像を理解するために
第1章 短時間だが職場の主力を担う人々―主婦パート(パートはどんな人たちか;どこからパートへきたのか ほか)
第2章 正社員なみに働く人々―フリーター(フリーターはどんな人たちか;どこからフリーターへきたのか ほか)
第3章 定着した新しい働き方―派遣スタッフ(派遣はどんな人たちか;どこから派遣へきたのか ほか)
結章 増大する非正社員と人材活用上の課題(非正社員の実像;企業の人材活用策の変化とその背景 ほか)

という内容ですが、著者たちの問題意識をよく示しているのははじめにの一節なので、その部分を引用します。

>急増した非正社員については、正社員の雇用機会はないために、やむなく非自発的に非正社員の働き方を選択したものが多く、また不安定且つ低賃金の雇用であり、能力開発の機会も乏しく、働く人々にとっては望ましくない働き方であるとの意見も多い。とりわけ若年のフリーターに関しては、キャリアの初期段階で能力開発機会を欠いた雇用につくことで、将来のキャリア形成に大きなマイナスの影響を及ぼすことが危惧されている。社会的な「格差」拡大の主因が非正社員の増大にあるとの主張もある。こうした結果、望ましくない非正社員の働き方を削減し、非正社員が正社員に転換できるように支援することが社会的な課題として指摘されている。

このあたりは、私もある意味でそういうことを言ってきました。

>然し、、正社員と非正社員の働き方を比較すると、雇用機会の安定性、賃金水準、能力開発機会の質などに関して両者で重なる部分が少なくないことが明らかにされている。正社員であっても雇用が不安定で、賃金水準が低く、能力開発機会が乏しい働き方があり、他方、非正社員であっても雇用が安定し、賃金水準が高く、能力開発機会が豊富な働き方があるのである。更に、非正社員の全てが正社員の雇用機会がないために、やむなく非正社員の働き方を選択したわけではなく、自発的に選択したものも多いことが知られている。正社員の中に非正社員の働き方を希望する者もいる。また、職業生活の領域別に満足度を比較すると、正社員に比べ非正社員の方が満足度が高い領域やほぼ同水準となる領域も少なくない。例えば、労働時間や出勤時刻などの勤務体制、さらには仕事の内容・やりがいなどがこうした領域に該当する。

この「明らかにされている」のもJILPTの調査結果に基づくものですが、それはともかく、いわゆる正社員のイメージというのは、大企業の正社員のイメージであって、中小零細企業に行けば行くほど、実は両者の違いは小さくなっていくわけですし、労働時間のように非正社員の働き方の方がいいという領域があることも確かなんですね。

>上記の結果は、非正社員の働き方を選択した人の中には、正社員とは異なる働き方を非正社員の働き方に求めて積極的に選択した者が含まれている可能性を示唆する。仕事に対する志向或いは働くことに求める報酬の内容や優先順位が、正社員と非正社員で異なるのである。つまり、正社員として働いている人の志向や正社員の働き方を基準として非正社員の働き方を評価するのではなく、それぞれを異なる働き方と位置づけて、非正社員の働き方に関しては、それらに従事している人々の志向に即してその働き方の特徴や課題などと明らかにすることが重要となる。この視点からすると、非正社員の働き方の問題点をその働き方に即して理解すると共に、その改善もその働き方の特長を生かす形で行うことが必要なのである。

この考え方は、それ自体としてはまったくまっとうであって、私もその通りだと思います。ただ、下手な使い方をされてしまうと、「だから非正社員は好きでやってんだから、待遇改善なんかする必要ねえんだよなあ」というのにつながりかねないので、そこは注意が必要です。

これは、実は「正社員」「非正社員」という言葉のコノテーションの問題という面もありまして、正社員を例えばトヨタに代表されるような典型的な大企業正社員モデルで考えると、議論がつながらないのですが、それなりに不安定でそれなりに安月給な多様な正社員モデルで考えれば、つながってくる面もあると思うのです。久本憲夫先生の言う「正社員ルネサンス」と、実は裏腹の話であるようにも思われます。

この「それなりに不安定でそれなりに安月給」だけれども、今の非正社員に比べれば「それなりに安定しているしそれなりの給料もある」ような正社員モデルをむしろ今後のモデルとして考えていった方がいいのではないのでしょうかというのが、この下のエントリーで紹介している『福祉ガバナンス宣言』所収論文で述べていることでもあるんですね。

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コメント

この本を読みましたが、契約更新されないで事実上の首切りになってしまう実態を、どうやって「安定している」といえるのか、最後まで書かれていませんでした。結局、「不安定雇用という虚像」という書名は、単に売るためだけの便法だったんだな、というのが、読んでみた正直な感想です。

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