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2007年11月30日 (金)

派遣料金公開案の源泉

このブログに対するはてぶは、大変参考になるコメントが多く、いつも感服しておりますが、昨日の朝日記事に関するエントリーに対するはてぶコメントで、sarutoruさんが、

>自分の知る限り山崎元氏のJMMへの寄稿が発端ではないか、http://d.hatena.ne.jp/sarutoru/20070906#p1 で書いた「賃金周りに関する情報公開の促進」が実現される方向

と書かれています。

リンク先を見ると、

>山崎氏は、賃金情報公開の一例として、派遣労働者の場合、最終的な雇い主(派遣先)の企業が払う時給と、派遣元の企業が払う時給の公開を義務づけ、派遣労働の当事者が自己の労働の価値を判断できるようにすることを提唱している。これが実現すれば当事者は、派遣先・派遣元のピンハネ度を比較できるし、職務給的な発想で自分の仕事の価値を見つめなおすこともできる。派遣労働者は、格差社会論ではしばしば話題になるものの、非正規雇用者総数からすれば実際は数も少なく、処遇においても相対的に恵まれた層のはずだが、ここを突破口にして賃金の情報公開を進めることができればとても面白い。職務給的発想が広がり、労働移動可能な労働市場が醸成されるきっかけになる。

賃金情報はできるだけ広範囲に公開されるのが望ましいと思うが、かけ声だけではなにも進まないので、派遣業種から手をつけていくのに賛成だ。日本では派遣社員は法定年度での雇い止めを繰り返され、その身分に固定化される傾向があって、世間的には虐げられらた業種の典型のように思われている。最近GIGAZINEが派遣会社叩きのエントリーをアップしていて、まるでお門違いな認識を示していたが、言うまでもなく派遣会社を使う元請け会社こそが処遇格差を伝播させている元凶だ。派遣という雇用形態は、他の諸国では、正規雇用への転換を控えた一時的な雇用形態だとみなされている。正規・非正規間の障壁が低い労働市場では、派遣社員が日本のようにその形態に滞留し、不況期を超えても一方的に増加することはない。山崎氏の提案、「派遣労働者に対して、受入元から幾らの賃金が払われているのかに関しては、直ぐにでも情報公開を義務付けるべきではないでしょうか。」が、労組関係者らも含めて広く知られることを望みたい。

と、いう記述があり、その山崎さんの文章も引用されています。

>もう一つの方法は、間接的に、労働者の賃金に好影響を与えようとする方法です。それは、賃金周りに関する情報公開の促進です。たとえば、業者に派遣される労働者の場合、最終的な雇い主が払う時給と、派遣元の会社が支払う時給との間に、大きな乖離が存在する場合が多く、この情報を全ての当事者に判断材料として公開するように義務付けると、労働者は自分の労働の真の価値に近い数字を知ることが出来、条件の改善要求に対して自信を持つことが出来ますし、雇い主側も労働の真の価格に近い価格を知るので、現在大きく乖離している価格が上下から差を縮める効果が期待できます。

 労働者を集めて派遣するビジネスの主な付加価値は、主として最初の紹介の場面にあるでしょう。派遣会社が、それを果たした後も、「中抜き」による大きな利潤を得続けることが出来ることの理由の一部は、労働需給の当事者同士の情報不足にあるでしょう。情報を公開した上で、それでも当事者達にとって正当だと認識された上で、堂々と「中抜き」を続けるなら、何も問題はありません。公的な介入によって自由な取引を直接制限するのではなく、ただ、判断のための情報を増やすだけです。

 また、正社員の待遇と、非正規雇用の待遇についても、情報公開が進むことが望ましいでしょう。ある意味では、正社員がこれまでの好待遇を既得権的に確保し続けていることが、非正規雇用者の条件の悪化、ひいては正社員への転換を阻害してきました。同じ職場で働く両者が、正しい情報をお互いに知った上で、適正と思う賃金を交渉するようになれば、時間は掛かるかも知れませんが、両者の条件差は縮小に向かうのではないでしょうか。

 賃金情報の公開をどの程度まで行うのが現実的かは判断の難しいところではありますが(会社によっては、直ぐにでもやればいい)、派遣労働者に対して、受入元から幾らの賃金が払われているのかに関しては、直ぐにでも情報公開を義務付けるべきではないでしょうか。

なるほど、確かにここからインスピレーションを得た可能性はありますね。

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コメント

だいぶ時間が空いてしまったのですが、引用ありがとうございます。リンクもいただいており光栄だと思っています。
この機会にエントリーとは関係ないのですが、いつかご教示いただけたらなと思っていた問題をネタとして書かせていただきますと、小規模自営業者(インディペンデントコントラクターとかの類)の働き手としての権利保護に関して、欧米では日本と比較して、どのような制度や環境が整備されている状況で、かつ、どのような議論が現在進行形でなされているものでしょうか。ILOではけっこう争点になっているとは耳にしたことがあるのですが、自分は目ぼしい情報を追えていません。参考になるエントリーやサイト(海外含め)、研究者、政策形成の動向など関係する情報をご存知でしたら、ご教示いただければ幸いです。
日本では小規模自営業者、いわゆるフリーランスとして企業と関ると、一般に業務請負と認識されてしまいます。しかし実質的には、そこで働くアルバイトや派遣で働いている、一般の非正規雇用者よりもはるかに深く業務に関与し、正規雇用者と同様の業務量で、低い処遇で働いている場合があります。しかしそういった場合、たいてい、働き手として納得できる権利保護を受けることはできません。雇用者であれ自営業者であれ、働き手として最低限保障される権利を、年収や取引先への従属性を要件に(ホワイトカラーエグゼンプションと逆の発想です)整備していく労働法制の方向性は無いものでしょうか。関連することで、なにか思いつくことありましたら、お暇なときにエントリーを書いていただけたら、ありがたいです。
先日の連合総研のフォーラムを拝聴した際(最後列にいたので皆さんの顔もわからない状態でした。聴講者の多さにこれが労組パワーの源泉かと感ずるところありました)、労組は正規雇用者だけの連帯にとどまらず、身近にいる非正規雇用者らとの連帯に目を向けよという趣旨の発言をされていましたが、自分は、個別労組のボトムアップの取り組みに期待するだけでなく、行政が上からトップダウンで、雇用者・自営業者(経営者含め)、いずれにも適用される、働き手として共通に適用される最低限権利保護の体系を構築することはできないだろうかと、夢想してしまいます。それこそ“労働基準法”の構築だと思ったりします。

コメント有り難うございます。
小規模自営業者というか、労働者と自営業者の間の人々(自己の労務を供給する自営業者)の問題については、私の書いたものでは、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/keizaijuzoku.html
(EUにおける「経済的従属労働者」の法政策(『生活経済政策』6月号原))

がありますが、各国の詳しい情報については、まさに近頃廃止が取りざたされているJILPTの報告書に、

http://www.jil.go.jp/institute/discussion/2004/04-007.html

http://www.jil.go.jp/institute/discussion/2004/04-010.html

http://www.jil.go.jp/institute/discussion/2005/05-011.html

http://www.jil.go.jp/institute/reports/2005/018.html

http://www.jil.go.jp/institute/reports/2006/067.htm

等々の詳しい研究成果があります。

ありがとうございます。よく読みこんでみたいと思います。

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