平家さんへの再々答弁
平家さんから更に突っ込んだ再々質問をいただきました。
http://takamasa.at.webry.info/200711/article_10.html
まず、、
>登録型派遣の場合はすべて「派遣の依頼を受けてからそれに合わせて派遣元が雇い入れるわけですから、その人に着目しているものと考え」られるかという問題が残ります。
>派遣元の都合で労働者を入れ替えてもらっても、派遣先としては一向に構わないといケースです。この場合は原則、事前面接なしということになります。
>これは必ずしも日雇い派遣でなくとも、週雇い派遣でも、旬雇い派遣でも、月雇い派遣でもあり得る話です。
という論点について。
そこは仰るとおりでなのですが、期間のような外形的な基準で区分しておかないと、使用者側の内面的意思がどうだったかなんてことで判断するようにしたくはないわけです。
日雇い派遣といったのは、その人に着目していないもっとも典型的な例だと考えたからですが、確かに週雇いでも旬雇いでもあまり変わりはなかろう、といわれればそういうふうにも感じられますが、一方で、登録型派遣の場合1ヶ月契約ということにしておいてそれを次々に更新していくということも結構普通に行われていますから、それらも原則事前面接なしですねとやってしまうと、今の現実とかけ離れた姿と変わらなくなってしまいます。
ここはなかなか悩ましいところで、正直言ってバサリと斬るのは難しいのですが、まあ、問題意識を共有しているということが確認できたということで、もう少し引き続き考えていきたいと思います。
もう一つの論点、
>派遣業も労務供給業も使用者業務の代理業であると捉えて、使用者業務の代理は認めるけれども、使用者責任の回避は認めないというのが基本的なアイディアです。
>1 原則として派遣先、発注者が使用者責任を負う。
>2 ただし、派遣元、労務供給業者(代理業者)が使用者責任を果たす限りにおいて派遣先、発注元は使用者責任を免除される。
>この仕組みの下では、代理業者との契約で代理業者が担うこととされた使用者責任を代理業者が果たさなければ、派遣先、発注者が労働者に対して使用者の義務を果たした上で、代理業者に求償することになるでしょう。
考えていることはおおむねよく似ているように思われますが、「使用者業務」とか「使用者責任」という言葉の使い方において、いささかの齟齬があるような気がします。
雇用契約は労務の提供と報酬の支払いの交換契約とされていますが、派遣というのは労務の提供を受ける使用者と報酬を支払う使用者が分裂しているわけです。
労務の提供を受けているのは派遣先である以上、労務提供にかかわる使用者責任は全て一義的に派遣先にあると考えなければおかしいでしょう。現行法は、指揮命令は派遣先なのに、36協定は派遣元で結べとか、安全衛生は派遣先がやるのに、事故が起こったら補償は派遣元の責任といった風に、そこが歪んでいると思います。この部分については、派遣先職場にいない派遣元使用者に責任だけ押しつけること自体が無意味ではないかと思います、
一方、報酬の支払いの使用者責任は一義的には派遣元にある(少なくとも契約上は)わけですが、労務を提供したにもかかわらず派遣元が払わない場合に、派遣先に補充的な責任を認める必要があるように思います。ここはまさに平家さんの言う「代理業者との契約で代理業者が担うこととされた使用者責任を代理業者が果たさなければ、派遣先、発注者が労働者に対して使用者の義務を果たした上で、代理業者に求償する」という形が適切なように思われます。ここは、適切に報酬を支払っている限り、使用者機能のアウトソーシング自体を問題にする必要はあまりないでしょう。
実はここまでは、常用型でも登録型でもあまり違いがありません。
両者で位相が大きく異なってくる問題は継続性の問題です。期間の定めのある派遣労働契約を更新して長期間継続就労している状態において、それを継続しなくしたときに、誰がその期待権に対して補償すべきなのか。常用型であれば、そもそも派遣元の常用労働者なのですからこの問題は生じません。登録型固有の問題です。
これは、いよぎんスタッフサービス事件など、最近の派遣関連事件における重要なテーマでもあるわけですが、「派遣なんだからそんな期待権はそもそもありえねえ」というのはあまりにもひどいとして、じゃあどう考えるのがいいのか、現行法を前提にした解釈論としては派遣元との雇用契約が期間の定めなきものと実質的に変わらなくなったとするのがもっとも妥当なように見えますが、しかし、実質的に使用し続けていたのは派遣先であるわけで、どうも気持ちが悪い。ここにおける使用者責任を一義的に派遣先にあると考えるべきなのではないか、というのが、使用者責任論のコアのところです。
私は、更新を繰り返した後の派遣止めについて、派遣先に法定の金銭補償を義務づけてはどうかという風に考えていますが、ここはいろいろな考え方のあるところでしょう。
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