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2007年11月 8日 (木)

工職身分差別撤廃のマクロ経済環境

大内兵衛著作集第6巻に「日本サラリーマンの運命」という小論が収録されています。1947年6月に書かれたものですが、おそらく書いた本人が思っている以上に興味深いものになっています。

>私は、ここではいわゆる勤労階級の一種である「頭の労働者」、インテリゲンチャ、日本の通俗語でいうサラリーマンのことについて一言しようと考えている。この種に属する勤労階級は、工場労働者よりも、戦争とインフレーションの影響をより強く受けているということ、そのうちでも高級なもの、すなわちより高い知的教養を持ったものが極めて強い影響を受けているということを極めて具体的に示してみたい。

>過去の日本では、こういう高級な地位の人々のサーヴィスの価格は、その生産費又は再生産費の何倍も何十倍もであった。従って彼らの生活なるものも又、必要最低生活費の何倍かの費用をもってなされていたものなのである。それが、急激に切り下げられて、彼らのサラリーが労働者の賃金よりも低くなる。しかもその労働者にしても戦前の生活費の三分の一以下で生活しなくてはならぬということになると、サラリーマンの運命の悲劇は、勤労者一般の問題の内で特に惨めな痛々しい面である。

で、具体的にどうなったのかというと、

>昭和12年に入社する大学卒業者は中学卒業者の倍、女学校卒業者の三倍半の月給が貰えたのに、今日では、彼は前者に比して僅かに二割しか余計に貰えない。後者に対しても僅かに五割増である。

>今日は教育の程度によってその収入の差は非常に小さくなっていることが明らかである。

ここでこの特権階級的マルクス主義経済学者はこう述べます。

>インフレーションとは、勤労階級の犠牲において少数の資本家が富む過程である。が、この過程において一番ひどい目に遭うのは、勤労階級の一種たるサラリーマンである。

インフレでひどい目に遭うのはもちろん金利生活者です。日銭を稼いでいる方がいい目を見ます。

>インテリのこの急激な没落、そのあまりにも甚だしい「平等化」は、社会層の構造変化としていろいろの問題を提出するであろう。蓋しこれは従来の教養ある中堅階層の地盤の地滑りであり、一切の文化の背骨の破砕であるからである。

>いうまでもないが、右の統計的事実はインフレ下の特殊なる事情ではある。しかし目下の情勢においてはインフレはもっともっと進行し、その停止までの期間は相当長く、たとえそれが停止して安定の時代が来ても、一旦下がったサラリーがそう高くなること、少なくとも工場労働者の賃金に比して高い地位に昇ること、特にその上級のそれが彼らの何倍かに上るようになることは、なかなか考えられない。

もちろん、大内兵衛氏は立派な「左翼」ですから、

>私はそのことが、日本デモクラシーにとって必ずしも悪いことのみを約束するものとは思わない。

とはいうのですが、東京大学経済学部教授としてインテリたちを世に送り出す立場として、

>いかなるインテレクチュアルな職業も、概して人間の生活に対する生活費を与えない社会において、文化などというものが栄えるとは考えない。と同時に、文化なきデモクラシーなどというものも可能だとも私は考えない。私は、戦争とインフレーションの社会的意義の一断面が、ここに露呈していると考える。

「ここに露呈している」のは、戦争とインフレの社会的意義だけではなく、大内兵衛というマルクス主義経済学者の階級的立ち位置そのものでもあるように思われます。

私は、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/hrm.html

の中で、戦時中の統制から戦争直後の労働運動によって、工員と呼ばれたブルーカラーと、職員と呼ばれたホワイトカラーの身分差別が縮小していったことを様々な観点から説明していますが、その視角はもっぱらミクロな職場と国や労働運動といった政策主体に当てられていて、インフレーションというマクロ経済環境がいかにその「大転換」を促進したかという側面については触れていませんでした。

この大内氏の小論は、このあたりの関係を非常に良く照らし出しているように思われます。

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