行政改革推進本部専門調査会報告
公務労協のHPに標記報告がアップされているので、そちらを見ながらいくつかコメントしておきましょう。
http://www.komu-rokyo.jp/info/rokyo/2008/2008rokyo_infoNo2.html
>責任ある労使関係を構築するためには、透明性の高い労使間の交渉に基づき、労使が自律的に勤務条件を決定するシステムへの変革を行わなければならない。しかし、現行のシステムは、非現業職員について、その協約締結権を制約し、一方で使用者を、基本権制約の代償措置である第三者機関の勧告により拘束する。このように労使双方の権限を制約するシステムでは、労使による自律的な決定は望めない。
よって、一定の非現業職員(三2(1)参照)について、協約締結権を新たに付与するとともに第三者機関の勧告制度を廃止して、労使双方の権限の制約を取り払い、使用者が主体的に組織パフォーマンス向上の観点から勤務条件を考え、職員の意見を聴いて決定できる機動的かつ柔軟なシステムを確立すべきである。
このシステムの転換を契機として、労使双方が責任感を持ってそれぞれの役割を果たし、職員の能力を最大限に活かす勤務条件が決定・運用されることを通じて、公務の能率の向上、コスト意識の徹底、行政の諸課題に対する対応能力の向上といった効果が期待できる。
一方で、基本権の付与拡大に伴い、交渉不調の場合の調整も含めた労使交渉に伴う費用の増大や、争議権まで付与する場合(二2(4)イ参照)には、争議行為の発生に伴う国民生活等への影響が予想される。こうしたコストの発生が、付与に伴うメリットに比して過大なものとなれば、改革に対する国民・住民の理解は得られない。また、安易な交渉が行われれば、パフォーマンス向上に対応しない人件費の増加を招くのではないかという指摘もある。そして何よりも、長期にわたる準備が必要である(四参照)。こうした改革に伴うコスト等に十分留意しつつ、慎重に決断する必要がある。
この「一定の非現業職員」が誰なのかが、実はこの報告では明確になっていません。
>「団体交渉権を有する非現業職員のうち、管理職員等以外の職員に付与すべき」との考えがある
>「団体交渉権を有する非現業職員のうち、権利義務設定・企画立案など、行政に固有の業務に従事する職員以外の職員に付与すべき」との考えがある。
>「権利義務設定・企画立案など、行政に固有の業務に従事する職員か否かという区分けにより、付与の可否を決めるべきではない」との考えがある。
と、幾つも意見を併記しているだけです。
また、交渉事項・協約事項の範囲についても、
>「任用・分限・懲戒に関する事項については、これらが成績主義(メリットシステム)、人事管理の公正性の確保という面を強く有することから、協約締結事項から除外すべき」との考えがある。
>一方で、「職員の関与により成績主義や人事管理の公正性が損なわれるという理由は成り立ちえず、民間と同様に、交渉事項の全部を協約事項とすべき」との考えがある。
と、両論併記。
また、難しい問題として、少数組合等の協約締結権の制限がありますが、これについても、
>「民間と同様に、少数組合・職員団体にも付与すべきである」との考えがある。
>「民間と異なり、少数組合・職員団体には付与しないこととすべきである」との考えがある。
と併記されています。
さらに、なお協約締結権を付与されない職員について、給与等の勤務条件決定の仕組みをいかにすべきかについても、
>「現行どおり人事院勧告等により定めるべき」という考えがある。
>「協約締結権を付与された職員の協約を踏まえ、当局が定めることとすべき」との考えがある
というわけで、ちょっと細部にはいると何も決まっていないに等しい報告ではあります。
前者だと、協約締結権のない公務員のために人事院を細々と残すということになるわけでしょうか。
少なくとも、
>責任ある労使関係の構築のためには、使用者が確立されなければならない。しかし、使用者としての立場に立たない第三者機関が、人事行政に関する事務を広範に担う現状では、使用者の確立は難しい。
このため、使用者として人事行政における十分な権限と責任を持つ機関を確立するとともに、国民に対してその責任者を明確にすべきである。
と言っている以上、現行の人事院は原則的には廃止され、現在の総務省人事恩給局あたりをコアにしてまさに「日本国政府の人事部」を設置するというビジョンだと思われるのですが。
> 使用者として人事行政における十分な権限と責任を持つ機関を確立することが必要である。このため、具体的にいかなる機関のいかなる権限が、責任ある使用者機関が担うべき権限として移管されるべきか、早急な検討が必要である。
「早急な検討」というレベルのようです。まあ、しょせん人事恩給局は中味はカラッポですから、実体は今の人事院になるんでしょうけど。
また、
>一定の非現業職員に協約締結権を付与する際には、国の中央レベル、各府省レベル及び地方支分部局レベル並びに地方公共団体それぞれにおいて、労使交渉に必要な体制を整備し、十分な準備期間を設けて、試行等により習熟していくことについて、検討が必要である。
というのももちろんですが、習熟しきれずに労働協約の締結に至りきれないという事態は十分に想定できるわけでして、その場合、どのレベルのどの機関が斡旋、調停、仲裁といった調整機能を担うのかというのも重要な論点です。この点については、
>争議権を付与する場合には、民間と同様に、第三者機関(民間の場合、労働委員会)によるあっせん、調停、仲裁(双方の同意が必要)の手続を設けるべきである。
また、争議権を付与しない場合には、民間と同様の手続に加えて、
・ 「現在の現業等と同様に、代償措置として、労使一方の申請等による仲裁を認める仕組みとすべき」との考えと、
・ 「現在の現業等の仕組みを基本としつつも、法律・条例事項について交渉不調の場合には、当局が組合・職員団体の意見を添えて法案等を提出し、国会・地方議会の判断に委ねることとすべき」との考えがある。
なお、交渉不調等の処理を担当する機関については、
・ 「民間と同様に既存の労働委員会が担当すべき」との考えと、
・ 「公務員関係の問題を特別に処理する機関を設けて担当させるべき」との考えがある。
と、二点にわたって両論併記となっています。
「法律・条例事項について交渉不調の場合には、当局が組合・職員団体の意見を添えて法案等を提出し、国会・地方議会の判断に委ねることとすべき」というのは、法律・条例事項は本来議会が決定すべき事項という考え方に基づくものなのでしょうが、それならそもそもなぜ労使が(議会の意向にかかわらず)勝手に合意した場合に、そちらが優先するのかというそもそも論に戻ってしまうような。
紛争処理機関については、これは人事院としては公務労働委員会事務局として形を変えて生き残るれか否かの瀬戸際ですから、そう簡単に「既存の労働委員会が担当すべき」とは言いたくないでしょうね。
また、目立たない点ですがけっこう重要なのが、
>交渉や仲裁の基準として、客観的なデータを第三者機関が調査収集する仕組みが必要か、検討が必要である。
という点で、この点についても、
>「詳細な独自調査が、なお第三者機関(人事院等又は交渉不調等の処理を担当する機関(三4(2)参照))により行われるべき」との考えがある。
>第三者機関による調査を必要としつつも、「毎年行う必要はない」、「詳細に行う必要はない」とする考えや、「第三者機関の調査は不要であり、交渉当事者が適宜、既存の調査の活用や独自調査を行うことで足りる」との考えがある。
と両論併記になっています。つまり、民間準拠という時の「民間はいくら貰っているのか」を誰がどういう形で示すのかという問題ですね。それこそ厚労省の統計でいいじゃないかという考え方もあり得ましょう。
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忘れたころにやっと報告文作成の2回分の議事録アップされました。もうわすれられた?
投稿: ふにゃ | 2007年11月12日 (月) 21時51分