教員エグゼンプションの経緯
昨年6月に、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/06/post_fe11.html
教員に時間外手当を導入するとかいう記事をネタにしたことがありましたが、そもそも、それではなんで教員には時間外手当がないのか、言葉の正しい意味におけるエグゼンプションになっている理由は何か?というのを少し調べてみました。
これは、法律的には
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S46/S46HO077.html
「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」の第3条第2項で規定されています。
>第三条 教育職員(校長及び教頭を除く。以下この条において同じ。)には、その者の給料月額の百分の四に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない。
この法律は1971年に制定されたものですが、その時の解説書(宮地茂監修『教育職員の給与特別措置法解説』第一法規)を読むとなかなか根深い問題があったようです。
そもそも1948年の給与切り替え措置の際、文部省は超過勤務手当は教員には支給しないとかしたらしいのですが、いうまでもなく地方公務員には労働基準法は原則的に適用されますから、そんなの違法になります。
で、1949年に文部次官通達で「原則として超過勤務は命じないこと」としたのですが、そんなこと言ったって現実の学校で教師が「家族団らんだからサッサと帰る」なんてわけにいくはずがないわけで、翌1950年から全国各地で教員の時間外勤務手当をめぐる訴訟が頻発します。で、大部分は時間外手当を支払え、と。
そこで、これは立法で解決するしかないということになって、まず1967年に教育公務員特例法の一部改正法案を国会に提出したのですが野党が反対して廃案。
その後、誰の知恵か人事院を巻き込みまして、まずは1971年に人事院が「意見の申し出」というのを出しました。その中味がそのまま法律になったわけですが、要は「義務教育諸学校等の教諭等について、その職務と勤務の態様の特殊性に基づき、新たに教職調整額を支給する制度を設け、超過勤務手当制度は適用しないこととする」ということです。
その趣旨については、当時の佐藤人事院総裁が国会でこういう答弁をしています。
>普通の行政職員のような時間計測になじまない点があるということは事実でございます。したがって、時間計測に基づく何時間超過勤務をしたから幾らというような超過勤務手当の制度もこれまたなじまない。そこで先ほど申し上げましたような先生方の勤務の特殊性というものを根本的にこれをとらまえて、いわゆる勤務時間というものの内と外というような区別なしに、勤務時間の内外の超越した一つの再評価というものをしようじゃないか、そこでその再評価の結果として、これはたとえば時間の密度からいえば授業時間のあとは普通の行政職の場合に比べると密度が薄い、しかし授業時間内は非常に密度が濃い、あるいは夏休みの場合においてもこれは行政職の場合とは違った一つの時間の管理のもとに立っていらっしゃるというようなことにからめて、先生方の本来の職務のあるべき基本点は創意と自発性というものにあるものではないか、教育というものは教員方の創意と自発性というものにまつところが多いのじゃないかというようなその実質をも、それらも申しました点とからみ合わせて考えて、勤務時間の内外を問わず再評価いたしました結果・・・
この人事院の意見に基づいて法案を出したわけですが、そうはいっても労働基準法で明記されている時間外手当の権利を奪うわけですから、いちおう中央労働基準審議会で議論をしています。もっとも、労基法をいじるんじゃないからという理由で諮問はしていないんですね。それもなんだか変な気がしますが。
同審議会は「労働基準法が他の法律によって安易にその適用が除外されるようなことは適当でないので、そのような場合においては、労働大臣は、本審議会の意向を聞くよう努められたい」と不快感を示しています。
労働省も文部省との間にこういう覚書を交わしています。
>1.文部省は、教育職員の勤務ができるだけ、正規の勤務時間内に行われるよう配慮すること。
>2.文部大臣が人事院と協議して時間外勤務を命じうる場合を定めるときは、命じうる職務については、やむを得ないものに限ること。
>なお、この場合において関係教育職員の意向を反映すること等により勤務の実情について十分配慮すること。
どうもあんまり配慮されてはいないようです。
ちなみに言うまでもなくこれは公立学校の話で、私立学校は100%労基法が適用されます。
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