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人権擁護法案再提出?

産経が、「人権擁護法案提出の動き再燃 法相が強い意欲」という記事で、大変批判的な観点から同法案再提出の動きを報じています。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/071028/stt0710281848003-n1.htm

>過去に自民党内の反対を受けて頓挫した人権擁護法案を、来年の通常国会に提出しようとする動きが政府・与党内で再燃している。鳩山邦夫法相が国会答弁で再提出への強い意欲を表明したためだ。しかし、2年前には人権侵害の定義があいまいなどの理由で自民党内の保守勢力が反発し、党を二分する騒動に発展した経緯があるだけに、すんなりと再提出できるかどうかは微妙だ。

 鳩山法相は24日の衆院法務委員会で「さまざまな問題点をクリアできる方法を考え、人権擁護法案は国会に再提出したいと考えている。日本に人権擁護法案がないというのは実に情けないことではないか」と答弁した。

 鳩山氏は19日の同委員会では「国会への再提出を目指すべきだが、与党内にもさまざまな議論があることから、真摯(しんし)に検討を進める」と述べるにとどまっていただけに、一歩踏み込んだ格好だ。

 鳩山氏は周辺に「自民党が人権擁護法案を通せば、選挙にも有利だ」と漏らしているという。これに連動するかのように「自民党内の人権擁護法推進派が水面下で再提出へと動き出している」と同党関係者は指摘する。

 鳩山氏が描く具体的な議論再開の時期や法案の修正内容は不透明だが、鳩山氏の「意欲」に対し自民党内では「新たな人権侵害を生む可能性をはらんだ法案には賛成できない」(中堅)と早くも警戒感が広がっている。

政府は平成14年3月、出生や国籍などを理由にした差別や人権侵害の防止と救済を目的に人権擁護法案を国会に提出した。だが、メディア規制も対象にしていることから自民党の保守派勢力などから反発が沸騰したため、15年10月の衆院解散に伴って廃案となった。

 17年には、自民党の現選挙対策委員長を座長とする与党の「人権問題等に関する懇話会」が中心となって修正案を提示したが、法務省の外局に新設する人権擁護委員会に令状なしの強大な調査権を与えることへの批判は収まらず、提出を断念している。

 与党懇は昨年8月にも、あいまいとなってい人権侵害の定義に「違法性」を加える修正を検討した。しかし、9月に法案反対派の安倍晋三前首相が政権トップの座に就くと、党内には前首相の思いを忖度(そんたく)する空気が強まり、法案を議論する党人権問題等調査会の会長ポスト自体が空席となった。調査会は現在も活動を停止している。

 ところが、福田政権が発足してから事態は急展開。党役員には推進派の古賀氏と二階俊博総務会長が名を連ね、逆に反対派の中川昭一氏が政調会長を退任した。反対派の議員連盟「真の人権擁護を考える会」を結成した平沼赳夫元経済産業相は郵政民営化反対で党を離れたままとなっている。

 もっとも、自民党内には、「法案再提出の動きが、退潮著しい保守勢力の結集のきっかけになりうる」(若手)との見方もあるだけに、展開次第では再び自民党内が混乱に陥る可能性もある。

混乱に陥って欲しいという産経新聞の願望が窺えますが、それはともかく、拙著『労働法政策』でも述べたように、私はこの法案は「これまでほとんど性別に基づく差別や嫌がらせに限られていた労働分野の人権法政策が、一気に人種、民族、信条、性別、社会的身分、門地、傷害、疾病または性的志向といった領域にまで拡大することとなり、労働人権法制と称すべき広範な分野が姿を現すことになるという点」で、是非とも実現に漕ぎ着けて貰いたいと思います。

その点で、産経の記事も意識的にか無意識的にかは判りませんが、この法案の適用対象を歪曲しているところがあるのが気になります。

この法案は、

http://www.moj.go.jp/HOUAN/JINKENYOUGO/refer02.html

を見れば判るように、「人種、民族、信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病又は性的指向」が対象で、どこを見ても「国籍」などという文字は出てこないのですが、なぜか「出生や国籍などを理由にした差別や人権侵害」などと言われて、排外主義的感情のおもちゃにされてしまっているのですね。

いうまでもなく、国籍に基づく異なる取扱いはどの先進国であっても行われていることですし、EUでもEU域内国民は差別してはいけませんが、EU域外の第三国民は原則として差別してもいいのです。主権国家体制である以上、それは当然というか、やるなら相互主義でやるしかない領域ですね。

問題は日本国民の間に、上記のような理由による差別をいつまでも残していっていいのかという問題のはずなのですが、この辺がいわゆるネットウヨ諸氏のよく判らないところです。

私は『季刊労働法』218号で「外国人労働者の法政策」について論じた際に、日弁連が先の雇用対策法改正で導入された外国人雇用状況報告制度を人種差別だ民族差別だと言って批判していることについて

>国籍と人種・民族をごっちゃにするなど論理的に齟齬があるのは言うまでもありませんが、それだけでなく現行日本法制が人種・民族差別を包括的に禁止する規定を有していないことがその原因となっているように思われます。

と述べました。外国人政策を適切に議論するためにも、それを人種・民族差別とは切り離して議論できるようにしておく必要があると思います。

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コメント

そもそも平和条約国籍離脱そのものが当時の周辺諸国を成立させるための便宜的なものであってご当人からすれば非常識きわまりなしの話である、ということが共通了解になっていないと解決できなさそうな。だからうじうじトゲになる、と。

投稿: 臆病者 | 2007年10月30日 (火) 07時34分

その点は、まさに上記『季刊労働法』論文で強調したところです。

>特別永住者(在日韓国・朝鮮人)の問題を含め、解決すべき問題を解決し切れていないことが、本来先進国共通の基準で遂行すべき外国人労働者政策に歪みを与えてしまう典型的な例と言えるのでしょう。

投稿: hamachan | 2007年10月30日 (火) 11時27分

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» 人権擁護法案returns [bewaad institute@kasumigaseki]
という動きがあるとのこと、ちらほら報道には出ていましたが、hamachanさんのエントリにて知りました。またぞろでたらめな同法案批判が出てくるかもしれませんので、それに向けての当サイトの過去エントリをサルヴェージしておきます。 人権擁護法反対論批判 faq編(200...... [続きを読む]

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