職場のいじめ自殺と労災
毎日新聞の記事ですが、
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071016k0000m040070000c.html
>製薬会社「日研化学」(現興和創薬、本社・東京)の男性社員(当時35歳)が自殺したのは上司の暴言が原因だとして、妻が国に労災認定を求めた訴訟で、東京地裁は15日、請求を認め、静岡労働基準監督署の労災不認定処分を取り消した。渡辺弘裁判長は「上司の言葉が過重なストレスとなってうつ病になり、自殺した」と判断した。原告代理人によると、パワーハラスメント(地位を利用した嫌がらせ)を原因とした自殺を労災と認めた司法判断は初めて。
>判決によると、男性は当時、名古屋支店静岡営業所(静岡市)でMR(医薬情報担当者)として勤務。02年秋以降、上司の男性係長から「存在が目障りだ。居るだけでみんなが迷惑している。お願いだから消えてくれ」「仕事しないやつだと言い触らしたる」「給料泥棒」などと厳しい言葉をたびたび浴びせられた。男性は同年末から心身に変調を来し、03年3月に首つり自殺した。労基署は「発言は指導、助言」と判断し、労災と認めなかった。
>係長の発言について、判決は「キャリアばかりか人格や存在を否定するもので、嫌悪の感情も認められる。男性のストレスは通常の上司とのトラブルより非常に強かった」と指摘。遺書に記されていたことも踏まえ、係長の発言で男性がうつ病を発症したと認定した。
>妻は日研化学にも賠償を求め提訴したが、昨年和解が成立している。
>判決後、男性の妻は「勝訴にほっとしている。裁判をやったかいがあった」とコメント。原告代理人の川人博弁護士は「画期的な意義がある。国内では上司の嫌がらせの規制が立ち遅れており、改善を求める」と話した。
民事損害賠償事案では既にいくつか職場いじめ自殺について損害賠償を認めた判決が出ていますが、労災認定をめぐる事案としては川人さんの言うようにこれが初めてでしょう。
この記事には、自殺した男性の遺書が載っています。
>悩みましたが、自殺という結果を選びました。仕事の上で悩んでいました。入社して13年程になりましたが、係長に教えてもらうには手遅れで、雑談すら無くなりもうどうにもならなくなっていました。恥ずかしながら最後には「存在が目障りだ、居るだけでみんなが迷惑している、御願いだから消えてくれ!」とか「車のガソリン代ももったいない」「何処へ飛ばされようと俺が仕事しない奴だと言いふらしたる!」等、言われてしまいました。情けなくてどうしていいものかわからなくなり、元気もなくなり自分の欠点ばかり考えてしまい、そんな自分が大嫌いになってしまいました。先月からふと「死にたい」と感じ、家族の事や「このまま終わるか!」と考えると「見返してやる」思っていたのですが、突破口も無く係長とはどんどん話が出来る環境になりませんでした。しかし、自分の努力とやる気が足りないのだと、痛切に感じました。係長には「お前は会社をクイモノにしている、給料泥棒!」と言われました。このままだと本当にみんなに迷惑かけっぱなしになってしまいます。
>転職等、選択肢もあるし家族の事を考えると大馬鹿者ですが、もう自分自身気力がなくなりどうにもなりませんでした。
この問題は、私も数年前から関心を持っていろいろと調べたりしていますが、結局精神的に健全な職場環境を作ることが使用者の責務なのだというところに帰着するように思います。社員がお互いに健全な競争意識を持って頑張るようにすることと、精神的に追い込んでにっちもさっちもいかないようにしてしまうこととは全然別の話のはずなのですから。
ヨーロッパ諸国における職場のいじめ対策に関しては、あるところでこういうことを喋ったことがあります。
http://homepage3.nifty.com/hamachan/jisatsuken.html
また、いじめ自殺事案に関する判例評釈ですが、
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