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EU労働法グリーンペーパー協議結果

24日、欧州委員会は昨年行われた労働法の現代化グリーンペーパーによる一般協議結果をまとめたコミュニケーションを発表しました。

http://ec.europa.eu/employment_social/news/2007/oct/labour_law_en.pdf

つい先日の北の大地の講演会でも労使立法システムの変容にかかる最近の動きとしてご紹介した労働法グリーンペーパーですが、本文書の4頁でもこういう記述があります。

>労使団体、とりわけ労働組合にとっては、協議は条約138条に基づくEU労使団体への公式協議の形式をとるべきであった。彼らはグリーンペーパーという手段による労働法に関する公開協議の行為を、労使対話及び彼らの使用者と労働者を代表する枢軸的役割を引きずり下ろすものだと受け取った。欧州議会及び欧州経済社会評議会も欧州委員会の一般協議というやり方に留保を表明した。しかしながら、加盟国及び社会的NGOの大多数は協議過程の公開性を積極的に歓迎した。

これは、労使立法システムが加盟国から立法権限を奪うとともに、労使団体以外の市民社会団体を依然として無力な存在に置くものであることからすれば当然の反応とも言えますが、しかし、労働法がいかにあるべきかという議論において、最大のステークホルダーであるべき労使団体がその他大勢と同じ扱いでいいのかというのは大変疑問のあるところでしょう。

中味にはいると、労働組合と社会的NGOとは似たような反応を示しています。ただ、社会的NGOの主たる関心は、公正で十分な所得を保証するための労働法制、とりわけ最低賃金ということになります。貧困対策としての社会保護と並ぶ最低賃金という問題関心ですね。

労働組合や労働法学者は、個別雇用関係のみに着目して集団的側面がおろそかにされていると批判しています。これは、まさに最近の日本における議論の風潮とも共通するもので、水町勇一郎先生ではないですが『集団の再生』が必要なところですね。この辺は、日本のコンテクストでも重要なところです。

雇用労働と自営業の間をめぐる問題については、EUレベルで「労働者」の定義を設けることには賛否両論のようです。ただ、ILO198号勧告(雇用関係)をベースにすることは賛成が多いようです。両者の中間に「経済的従属労働者」という第3のカテゴリーを設けるという方向は、多くの加盟国や労使団体が反対しています。この道は難しそうですね。

派遣・請負などの三者間雇用関係については、派遣指令案を早く採択しろという意見が多いのは当然として、請負については意見は分かれているようですね。欧州議会といくつかの加盟国は、下請やアウトソーシングにおける悪用を防ぐために注文企業の共同責任を規制すべきだと主張するのに対し、他の加盟国は反対のようです。欧州労連はユーザー企業の「連鎖責任」を主張するのに対し、使用者側は反対です。ここも、日本におけるコンテクストとも絡んでたいへん興味深いところです。

今後の日程ですが、今年末の欧州理事会でフレクシキュリティの共通原則が採択され、来年さらに議論を進めるといっています。最後に5つの分野が挙げられていますが、ヤミ就労、生涯訓練、労働法と社会保護、雇用関係の性質、そして下請連鎖に関わる当事者の権利と義務の明確化というのが今後の課題だということのようです。

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