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2007年10月11日 (木)

『現代の理論』2007秋号

あんまりメジャーな雑誌ではありませんが、いちおう市販されている論壇誌の『現代の理論』の最新号(2007年秋号)が、「雇用・労働破壊とたたかう」という特集を組んでいまして、その中に私の「非正規雇用のもう一つ別の救い方」という文章が掲載されております。

現代の理論編集委員会のHPはまだ更新されていないようなのですが、既に発行されています。

http://www.gendainoriron.com/

全体としては『世界』の3月号の特集に似た感じですね。最初の座談会が熊沢誠、櫻井純理、中村研の3氏だし、本田由紀さんがその熊沢氏の『格差社会ニッポンで働くということ』を書評していたり。

その中でいささか異色なのが多分私の文章とそのすぐあとの小林良暢氏の「職種最賃設定が雇用格差解消の突破口」という文章でしょう。

私のは、下で紹介している『世界』11月号の文章のうち非正規のところを膨らましたようなものですが、小林さんのは私とはまた違う視角からですが、政策の方向を提示しています。小林さんはもともと電機労連の方ですが、今は労働市場改革専門調査会、通称八代研のメンバーの一人でもあります。労働界代表という意味もあるのでしょうが、八代さんや樋口さんと共通する職種別賃金制への志向があるというのも選ばれた理由ではないかと思います。

>格差社会といわれて、国民は何をもって「格差」を実感したのだろうか。それは「中流層」の「中の下」の層の年収が、雇用の「非正規化」によって100万円ずつダウンしているのを目にしたからである。格差社会の突破口は、「下流層」の年収を100万円ずつ殖やせばいい。それには職種別最低賃金という新戦略を、政府も経済界も労働組合も真剣に検討するときが来ている。

という御主張で、多分八代さんとは共通するところが大きいのではないかと思われます。『世界』11月号の私の最後のところをお読みになった方はおわかりのように、実はこの点で私は大変懐疑的です。ジョブのない日本の雇用社会で職種別賃金が可能かどうか。

ただ、いずれにしても、政府ケシカラン、財界ケシカラン、労組もケシカランと喚くだけのよくある文章とは一線を画し、雇用格差問題に一定の視点からの明確な処方箋を打ち出しているという意味で、読む値打ちは大いにあります。

あと、読んで面白かったのは徳永祐介さんの「働く若者のいま」というルポで、日雇い派遣で働く若者や工場で働く派遣労働者が出てきますが、最後のところでこういう台詞が出てきたのには胸を突かれました。

>取材では「なぜ学校では労働法をきちんと教えてくれないのか」という声をよく聞いた。彼らは法律を知らないために働く者の権利に気付かず、不満を感じても「努力してこなかったのだから」「自分が悪いのだから」と己を責めてしまいがちだ。それが結果として企業の違法・脱法行為を許している。・・・

中学校、高校の正規科目に労働法を入れるとともに、大学の卒業認定に労働法の単位取得を義務づけるべきですね。

まあ、そこまではいきなり行きませんが、いちおう厚生労働省の来年度予算要求の中に、

http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/08gaisan/syuyou2.html#02

>○ 学校段階におけるキャリア教育の取組支援

>職業への理解促進、就職活動の仕方などに関する講習を行う高校生向け就職ガイダンスについて、就職希望者が多い学校を対象に引き続き実施するとともに、労働関係法制に関する知識を付与する教育や情報提供のあり方について検討する

というのが入ってはいます。

キャリア教育はおおはやりですが、職業意識の啓発だとか何とか上から偉そうに訓示を垂れるようなものじゃなくて、労働法の知識のような実用性の高いものをやって欲しいですね。

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コメント

以前こちらのブログでも書かれていたように「現代の理論」は構造改革派系の雑誌です。小林さんは構改系の方々とのお付き合いが古いので呼ばれたのでしょう。
ちなみに全共闘華やかりし頃、「現代の理論」は構改系のなかでも統一社会主義同盟(学生組織はフロント:社会主義学生戦線)の機関誌として位置づけられていましたが、そのフロントの幹部のなかに、一部実務家から圧倒的な支持を得ている(このブログにもたびたび出てくる)法政大のKWKT先生がいたことはあまり知られておりません。たしか、現代の理論社から「レーニン以後のヨーロッパ・マルクス主義」という翻訳本も出版していたはず。本人にとっては触れられたくない過去なのかもしれませんが…。

いや、そんなことはないのではないですか。もともとマルクス・レーニン主義に嫌気がさして、ユーゴの労働者自主管理とかに希望を託していたけれども、それもアウチになって欧州社民主義に来たという方はけっこういますよ。別に隠したい過去でもないでしょう。

(「聖域なき」とかの形容詞のつかない真正の)構造改革論は、戦後日本の思想史における一つの重要な鍵なのだと思うのですが、常にサヨク業界では反主流的な立場に置かれていたこともあり、あんまり正当に評価されていないと感じています。

このウィキペディアの記述はよくまとまっていますが、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A7%8B%E9%80%A0%E6%94%B9%E9%9D%A9
昔の社会党のいわゆる江田路線が、社会党の中では虐められながらも、連合につながる労働戦線統一の一つの軸にもなっていったりもするわけで、その辺はそれこそ思想史研究者がもっと突っ込んで調べたら面白いネタがいろいろ出てくる領域だと思います。

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