医療派遣はケシカランと云ってたんじゃないの?
今年の6月にこんな通達が出ていたんですね。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/06/h0619-1.html
>「緊急臨時的医師派遣システム」における派遣医師の募集について
>厚生労働省では、地域医療の確保に寄与することを目的として、全国規模の病院関係団体、医療関係者等の協力を得て、国が中心となって必要な調整を行い、緊急臨時的に医師派遣を行うシステムを構築することとしました。
通達はこちら
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/06/dl/h0619-1c.pdf
この中にこういう文言があります。
>3 派遣の形態
医師派遣は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の適正な就業条件の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号)に基づく労働者派遣(以下「労働者派遣」という)等の形態で行う。
をいをい!
私の知る限り、この通達の発出に合わせて労働者派遣法施行令を改正したという事実はないようです。
ということは、この緊急臨時的医師派遣システムは、同施行令第2条に定める範囲内でのみ行うということなんでしょうか。通達上そのようには書いてありませんね。ということは、この通達は労働者派遣法違反の行為をそそのかしていると理解するしかないのですが、そういうことなのでしょうか。
あり得べき誤解を解いておきますと、私はそもそも医療分野において労働者派遣を禁止したり制限したりすることには何の理由もないと考えています。少なくとも、労働者派遣法サイドからすれば、港湾荷役や建設業務のような過去の曰く因縁が絡んでいる業界ゆえに派遣を禁止しているものとは異なります。実際、1999年改正までは医療関係業務はネガティブリスト業務ではありませんでした。それゆえ、ポジティブリスト体制にもとでも、高齢者派遣特例とか育児休業時の派遣特例といった制度においては、堂々と何の問題もなく医療分野の派遣が行えたのです。それが、なぜかほかの一般業務が解禁されるのと逆行して禁止されてしまうという訳の分からない事態になったわけですが、そういうことやらかしておいて、自分の方の都合が悪くなると自分がごり押しした法令を無視してこういう通達を出してしまうというのは、何とも信じがたい神経であります。
いうまでもなく、製造業の派遣は経済産業省の所管ではなく、交通産業の派遣は国土交通省の所管ではなく、通信産業の派遣は総務省の所管ではなく、金融業の派遣は金融庁ではありません(大蔵省時代にはいささか勘違いをしていた向きもあるようですが)。
医療関係業務の派遣がいかに同じ厚生労働省の中にあるからといって医政局の所管でないのは、鯨が魚でないのと同じであります。
まさかとは思いますが、これは営利を目的としてやるんじゃないから、労働者派遣法に云う労働者派遣ではあっても労働者派遣事業には当たらないなどと云う理屈ですり抜けているのではないと思いますが。
>(2) 「業として行う」の意義
イ「業として行う」とは、一定の目的をもって同種の行為を反復継続的に遂行することをいい、1回限りの行為であったとしても反復継続の意思をもって行えば事業性があるが、形式的に繰り返し行われていたとしても、すべて受動的、偶発的行為が継続した結果であって反復継続の意思をもって行われていなければ、事業性は認められない。
ロ具体的には、一定の目的と計画に基づいて経営する経済的活動として行われるか否かによって判断され、必ずしも営利を目的とする場合に限らず(例えば、社会事業団体や宗教団体が行う継続的活動も「事業」に該当することがある。)、また、他の事業と兼業して行われるか否かを問わない。
ハしかしながら、この判断も一般的な社会通念に則して個別のケースごとに行われるものであり、営利を目的とするか否か、事業としての独立性があるか否かが反復継続の意思の判定の上で重要な要素となる。例えば、①労働者の派遣を行う旨宣伝、広告をしている場合、②店を構え、労働者派遣を行う旨看板を掲げている場合等については、原則として、事業性ありと判断されるものであること。
>何卒、本趣旨をご理解の上、派遣医師としてご登録いただきますようお願いいたします。
これは「労働者の派遣を行う旨宣伝、広告をしている」ことにはならないのかしらん。
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