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2007年9月24日 (月)

半分だけ正しい知識でものを言うと・・・

池田信夫氏がブログで「労働組合というギルド」という小文を書いているが、

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/9edbf325d17cc62254dcf71ecc6395f1

典型的な半可通、というかなまじ半分だけ正しい知識でものを云うとどういうへんちくりんな結論になるかという実例。

いや、専門家にはいろいろと説があっていちがいに断定はできないものの、労働組合の源流が中世のギルドであるという認識はおおむね正しい。ただし、それはいかなる意味でも

>つまり労組は「正社員」による独占を守る組織なのだ。

ではありえない。逆であって、「組合員による独占を守る組織」なのである。

組合へのメンバーシップがキモなのであって、企業へのメンバーシップとはまるで方向が正反対。

これに対して日本の企業別組合というのは、企業へのメンバーシップ(これを「正社員」という商法上奇妙な言葉で称する)に立脚したものであって、まさに「正社員による独占を守る組織」なのである。この性格は先日のエントリーでも書いたように、戦間期から生じていたわけだが。

池田氏の見解そのものも

>若年層に非正規労働者が増えていること・・・を解決するには、労働組合の既得権を解体し、正社員を解雇自由にするしかない。

>解雇自由にする代わり、職業紹介業も自由化して中途採用の道を広げれば、みんな喜んで会社をやめるだろう。

と、まことに乱暴だが、賛成反対以前に、「労働組合の既得権」を標題に掲げるギルドとしての既得権とは全く正反対の企業メンバーとしての既得権という意味で使っている論理矛盾への意識がまるでないという点で既にしてアウト。

ギルド的労働組合は解雇規制などではなく、入職規制がキモであって、その点において「職業紹介業の自由化」と対立する。

とにかくこういうなまじ半分だけよく分かったような議論が一番始末に負えない。

いや「ギルド」などと知ったかぶりをせず、初めから現代の企業別組合の話だけしているんですといえば、賛成反対は別としてこういう苦情を言う必要はないのだが。

(追記)

ギルド的組合と正社員組合は違うんだよと云っているのにそれが判らないひとだな。企業別組合以外の組合を想像したこともないのだろうが。

労働問題の基本書嫁とは云わない。私のHPに載せてある講義録を嫁とも云わない。情報通信を追っかけるのに忙しくてそんな暇もないんだろうし。ただ、清家先生ではないが、当該分野については素人であることを弁えない自称玄人ほど始末に負えない者はないな。規制改革会議の某労働タスクフォース主査と同じだ。

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コメント

焼石に水ですが、非正規ユニオンみたいなものもありますし

それはともかく、こういう誤解が出てくること自体に現状の問題点が現れているように思います

逢坂なる人物のコメントは

「>つまり労組は「正社員」による独占を守る組織なのだ。
ではありえない。」

と書いておきながら、そのすぐ後に

「日本の企業別組合というのは、[...]まさに「正社員による独占を守る組織」なのである。」

と書いている。私の記事は「日本の企業別組合」について書いたのだから、彼は自分で自分の主張を否定しています。こういう支離滅裂な論理にもとづいて他人を「半可通」などと罵倒するコメントは、撤回して謝罪していただきたいものです。

失礼。逢坂氏からこの記事へのリンクが投稿されたので、彼のコメントと勘違いしましたが、これはhamachanの記事ですね。だとすれば、上のコメントはhamachanに進呈します。

池田氏の元記事はこれ:
>労働組合の始まりは、ギルドである(cf. Wikipedia)。
>組合員であることが就業の条件になる「クローズド・ショップ」が、その原型だ。
>つまり労組は「正社員」による独占を守る組織なのだ。

hamachan氏に好意的に解釈すれば、「ありえない」と言って言及されているのは、

・(労組の源流と目されている)中世のギルドは、「組合員による独占を守ること」に本質があり、

・中世のギルドと、(正社員・非正社員のうち)「正社員による独占を守る」ための現代日本の労組と同一直線状におくのは、

無理があるということでしょう。これに反論するには、中世にも非正社員がいて、彼らの利益はギルドから蔑ろにされていたと言えなくてはいけないですが、そのような事実の言及はないのでは。

「中世のギルドと日本の労組が同一線上にあるかどうか」などという問題は解釈の問題であって、池田氏の記事が主張している内容の当否とは関係ないでしょう。
池田氏はあくまで現代日本の労組を問題にしているのであって、仮に引き合いに出した中世ギルドとの類似性が怪しいものだとしても、それで池田氏の主張全体が損なわれるわけではない。
hamachan氏はご自分でも日本の労組は「正社員による独占を守る組織」と、池田氏と同じことを言っておられるわけで、それ以外の論旨については「まことに乱暴」との感想を言われるだけで、特になにか論理的に反論をされておられるわけではなく、身のある反論がないにも関わらず「半可通」という類の強い言葉を使っているのは、読者からすれば「要するにお前がキライだ」と言っているだけの文章としか受け取れないだろうという感想を持ちました。

あくまで、最初のhamachan氏の記事に即して言えば、
>いや「ギルド」などと知ったかぶりをせず、初めから現代の企業別組合の話だけしているんですといえば、賛成反対は別としてこういう苦情を言う必要はないのだが
ということなので、池田氏の議論の当否を問うというよりは、「ギルド」と気軽に結びつけたことの当否を問うている、そのことに十分自覚的なものいいをしているわけなので、ブログの一エントリとしては十分ありだと思いました。こちらも勉強になったし、ご馳走様ってな感じで。

>「要するにお前がキライだ」

というより、自分の専門分野を知らずに発言する奴が嫌いだ、ということでしょう。これについては留保ですね。労働史の知識が、社会全体においてどれだけ重要な位置を占めるか、占めるべきなのか。ここのブログ主は期待が高すぎるのかもしれません。

池田某はキチガイですからあまり気になさらない方がよいかと・・・。

 「半可通は永遠に、洒々然たるものである。天才の誠実を誤り伝えるのは、この人たちである。そうしてかえって、俗物の偽善に支持を与えるのはこの人たちである。日本には、半可通ばかりうようよいて、国土を埋めたといっても過言ではあるまい。
 もっと気弱くなれ!偉いのはお前じゃないんだ!学問なんて、そんなものは捨てちまえ!
 おのれを愛するが如く、汝の隣人を愛せよ。それからでなければ、どうにもこうにもなりゃしないのだよ。
 とこう言うとまた、れいのサロンの半可通どもは、その思想は云々と、ばかな議論をはじめるだろう。かえるのつらに水である。やり切れねえ。」

 今も昔もですねぇ。

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