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2007年9月30日 (日)

山口浩一郎先生 on 法と経済学 and ホワエグ

経営法曹会議が出している『経営法曹』の154号は、第100回記念日本経団連労働法フォーラムの記録を載せていまして、冒頭の記念講演が山口浩一郎先生、そのあとの「労働国会その後の展望」というパネルディスカッションには、諏訪康雄、佐藤博樹、小嶌典明の各先生に、経団連の秋田進氏、経営法曹の和田一郎氏(毛塚先生に福井秀夫氏と間違えられて冤罪をかけられた方です)、司会が中山慈夫氏と、そうそうたる顔ぶれです。

冒頭の山口先生の講演がなかなかイケてます。

法と経済学が出てくるんですが、大学院で学生さんに法と経済学を教えている人よりもものごとを的確に説明しています。

>経済学はもともと価格理論から発達してきたと云うことですから、マーケット、市場の問題は解けるわけですが、組織の問題は解けないわけです。ところが、組織の問題をだんだん解くようになりまして、労働契約というのは、契約ではなくて、むしろ組織である。だから、労働契約の理論はワンスポットごとの取引の契約理論よりも、組織の中に入って、指揮命令を受けて仕事をしていくという権威的関係とイメージした方が分かりやすい。

>そうなってくると、実は基本的な権利関係もはっきりしてくるわけで、使用者がまず持っている基本的権利は指揮命令権です。これに似たような言葉は雇用の所にも書いてありますが、これは権利(請求権)だと考えているわけです。ですが、新しいlaw and economicsによる契約理論では-これは不完備契約の理論といいますが-継続的な契約関係だから、新しい事態が幾らでも起こってきますから、権利義務関係を事前に合意で全部決めておくことはできない。

>・・・そうしますと、労働契約というのは不完備契約の典型で、この不完備契約の理論が明らかにしているものを基本にすべきものだと私は思いますが、それが全く採用されていないどころか、意識もされていないのであります。

いやあ、「労働契約に将来起こりうることを全部書き込めばいいじゃないか」などとほざくお方が、規制改革会議労働タスクフォース主査として日本国の労働法をいじくろうという時代に、さすが大御所、いいことを云ってくれます。

ま、ここまでは一般的に誰が聞いても当然という話ですが、その次に労働時間法制について語っていまして、ちょっと私が引用すると「我田引水!」と叱られそうですが、ホワエグについてこう説明して居るんです。

>このホワイトカラーエグゼンプションが成り立っている前提というのは何かといいますと、実はアメリカの労働時間制度はもともとのイギリスの労働時間制度と同じ考え方で、軟性労働時間制度といわれております。ヨーロッパや我が国が取っているのは硬性労働時間制度です。

>軟性というのはどういう事かというと、労働時間といいますか、働く長さそのものを規制するのではなくて、基準を措いて、それを超えて働かせたら報酬を高く支払わせるという制度です。だから、アメリカで仮に1日8時間、1週40時間という制限がありましても、これを超えて働かせてはいけないと云うことでは全くなくて、それを超えたら割増賃金を払いなさいと云うことで、この割増率が高くなっているわけです。

>そうすると、当然、もともと収入の高い層は、何も労働時間についてうるさく言う必要はないという話になってきて、ホワイトカラーも収入さえ保証されていれば、労働時間の規制はそんなにうるさく云う必要はないという考え方が出てきます。ここが時間規制の基本的な政策が二つに分かれている考え方でありまして、日本の方は伝統的にヨーロッパ型で、法定労働時間を超えて働かせてはいけないという直接の規制に対して、罰則の適用もある。

>日本のように職務ではなくて地位で仕事をしていると云うところは、管理監督者エグゼンプション以外のものを導入するのは、ものすごく難しい。

>これで範囲が狭すぎるというのであれば、・・・それならば管理監督者の範囲を少し見直せばいいわけであります。

>弾力化の制度の具体化は労使協定、つまり労使自治に委ねる。・・・弾力化による労働と生活の調和は、EU指令のように休息時間(11時間)を法律で義務づける、とすべきであります。

ええ、なんというか99%私と同じ事を云っていただいていて(1%は「管理監督者」の問題。私は管理も監督もしていない人間を管理監督者と「みなす」よりも、管理監督者じゃないけど残業代なんか無くてもいい人という概念を作るべきだと思っています)、経団連のみなさまよくわかりましたか、というところです。

そのあと、立法過程の話についても、山口先生一流の皮肉の効いた言葉が続いていて大変面白いのですが、今日はここまで。

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