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2007年9月 4日 (火)

DIO西村論文

連合総研の機関誌『DIO』の9月号に、西村博史さんの「非正社員における格差の重層構造と労働組合の使命」が載っています。

http://www.rengo-soken.or.jp/dio/no219/houkoku_2.pdf

これは、連合総研の請負等外部人材の研究委員会メンバーが書くエッセイの一環で、私のは前号に載りました。

http://www.rengo-soken.or.jp/dio/no218/houkoku_2.pdf

西村さんは、「私たちが最優先で取り組むべき課題が2 つあることに思い至った。ひとつは、非正社員における格差の重層構造の問題であり、もうひとつは労働組合の果たすべき使命についてである」と述べます。

前者については、

>正社員、非正社員間の格差とは別に、今回のヒアリングで強く印象に残ったのは、非正社員の中においても厳然とした格差が存在していることであった。そしてその構造を固定化しているのが、雇用形態ごとの仕事と職場の実態である。特に格差は能力開発環境の差と正社員化の優先順位においてみられた。
例えば能力開発における格差では、ある部品製造企業は非正社員として期間従業員と派遣労働者を活用しているが、正社員への登用を視野に入れて採用される前者に対し、後者の業務内容は1 週間程度でマスターできる単純反復作業であり、正社員の補助作業であった。このケースを能力開発の視点からみると、同事業所の派遣労働者の場合、その単純定型業務をいくら積み重ねてもスキルアップに繋がらないことは明らかで、そして事業所側もスキルアップに期待していないのである。このように非正社員の中でも、採用時の担当業務の違いが能力開発の格差に繋がるという厳しい現実、格差の重層構造がある。
ところでこのようなケースは製造現場だけではなく、開発や設計など技術系職場でもみられた。
情報機器製造の事業所では、担当業務の格差は請負労働者と派遣労働者との間で大きかった。請負労働者は会社間の長年の業務契約により各開発部署の専門業務を担当していたが、短期派遣のケースもある派遣労働者の場合、その担当業務は開発というよりソフトウェアの動作テストやせいぜい既存ソフトウェアの改善に近かった。いわば技術的素養の必要なオペレーターという存在である。新製品を市場に出すためには必要な業務だが、正社員どころか請負の技術者でも担当しないレベルの業務であった。
このように非正社員の世界では、技能系、技術系にかかわらず、能力開発における格差の重層構造が存在している。いずれも非正社員を業務ニーズに応じて使い分ける事業所の経営戦略がこうした格差を発生させていた。スキルアップが期待できる業務から除外されている非正社員にとって、職業生活の将来に希望を持つことは困難である。
非正社員における能力開発、スキルアップの重要性は、有識者の誰もが主張してきたことである。しかし問題はその先なのだ。現実に働く職場と仕事内容を考慮すると、どのように能力開発を図ることができるのか、そして誰が、どの組織が責任(担当)を負うのか。コスト、時間的負担など取り組んで解決すべき問題は膨大である。これまで長期雇用の正社員をイメージして作られてきた人材育成システムでは、対応が困難なことはいうまでもない。特に能力開発を拒絶されている雇用形態の人たちに対し何ができるのかが問われている。
こうした能力開発における格差は、正社員登用における格差、すなわち選別に繋がっている。
先の部品製造企業では、正社員への登用は期間従業員に限られ、派遣労働者は基本的に除外されていた。同事業所の場合、製造現場への新規採用が困難となる中、期間従業員は正社員への登用含みで採用されているが、単純定型業務、正社員補助業務中心の派遣労働者の場合、能力でも、正社員登用においても期待されていない存在である。正社員登用制度があったにしても、制度の対象は特定の雇用形態に限定されている。正社員化のハードルは高く、結局恩恵にあずかれる人は少数である。
この結果、非正社員内の格差固定、格差拡大という現象が進行している。格差が正社員と非正社員との間だけでなく、非正社員の間にまで及んでいる。このようにどの雇用形態で入職したかにより、その後の職業生活が大きく異なることになるのである。
こうした構造的格差を是正するためには、小手先の対応策では意味がない。
言うまでもなく派遣、請負労働者では、長期雇用契約(安定した雇用状況)、社会保険への加入保障、そして何よりも時給アップへの期待は大きい。非正社員の時給の引き上げは、均等待遇を実現する上では当然であり、かつワーキング・プア層からの脱出のためにも必要であるが、最低賃金の水準見直し程度でワーキング・プアからの脱出が可能とは考えられない。また職業生活の生涯設計という視点からみた場合、一生時給暮らしをさせるつもりなのだろうか。さらに仮に均等待遇を実現するにしても、先にみたような非正社員の能力水準と能力開発の現状のもとでは、大幅な時給の引き上げは期待できない。
まずもって最優先で取り組むべき課題は、非正社員の職業能力の開発、スキルアップの実現である。長期契約など雇用を守り、時給を引き上げていくためにも能力の開発、スキルアップが必要であり、そのための環境整備に力を注ぐことが求められているといえる。

また後者については、

>いま労働組合に対して問われている点は、組合員でない非正社員に対して労働組合に何ができるのかということであり、真剣に議論すべき点は、どのように組合が取り組むべきなのかということであろう。そして必要な取り組みは、あくまで派遣、請負労働者が就労する事業所、職場において行われるべきであろう。
連合をはじめとした労働組合全体の存在感を示すためには、抜本的対策のための政府・行政レベルの政策制度要求が必要不可欠だが、事業所、職場で働く非正社員にとってみると、事業所、職場の労働組合がすべてである。ボランティアや社会福祉、環境保護活動など、単組、産別レベルでの様々な社会貢献活動ももちろん重要な活動だが、労働組合にとって最も大事な使命は、働く労働者の権利と雇用、労働条件を守ることである。組合員でないからといって、自らの事業所、職場で働く就労者に働きかけずに、労働組合の存在意義を訴えることができるとは思わない。
労働組合を表現する、または期待するキーワードとして「働くものの仲間」、または「共感」「連帯」という言葉がしばしば用いられるが、労働組合を非正社員、とりわけ派遣、請負労働者といった外部人材の人たちからみた場合、組合はどのように映っているのか、この点について組合役員は真剣に考える必要があるといえるだろう。
予想外に非正社員は組合を注視していることに気がつく必要がある。数年前にオフィスで働く女性派遣労働者のヒアリング調査を行ったが、組合のある企業で正社員として就労した経験のある人は、長時間の残業で身体を壊してしまったのに、「組合は何もしてくれなかった」と訴えていた。そのため正社員は嫌になって、派遣会社に登録したのだという。組合員経験者である彼女は組合に対し強い拒絶感を持っていた。
今回ヒアリングさせていただいた組合役員の方の中には、派遣、請負労働者の人について「他社の従業員だから( 積極的に取り組むことができない)」と発言された方がいた。組合組織率の長期的下降に対する社会的関心の低さや、労働組合の希薄な社会的存在感は、こうした組合役員のも影響しているのではないだろうか。
大事なことは、雇用する企業の壁をどのようにして乗り越えるかということである。そのためには組合員に限らず、派遣、請負など他社従業員であっても事業所、職場で働く以上、就労者を対象とした組合運動という視点、発想への転換が必要である。すなわち自らの事業所で就労する労働者は、組合員-非組合員、直接雇用-間接雇用にかかわらず、組合の責任と取り組みの対象に入れるべきなのである。組合員であるかどうかにかかわらず、同じ職場で就労する人間である以上、先に触れた能力開発環境の整備を含めた労働条件の確保こそが組合の責務といえる。
この点からみると、いわゆる偽装請負の問題は、組合が取り組むべき問題のひとつにすぎないことがわかる。偽装請負が解消されて、現行の法律通りに請負労働者が就労しているのであれば、組合として取り組むべき課題はないのかというとそんなことはない。

>・・・派遣、請負労働者への現実的対応を妨げている大きな要因のひとつは、労働組合の主体的な意識と取り組みの欠如にあるといえるだろう。同労働者の抱える職場及び仕事上の問題については、できるかぎり参加してもらうシステムを組合はもっと工夫していくべきではないのか。そうした努力なしには、いかに政府、行政レベルの政策制度要求で訴えても、組合の存在意義が認められることはないし、評価も好転しないと思われる。派遣、請負労働者が就労する事業所の組合役員は、この点を十分自覚する必要があると思う。

なんだかほとんど引用しちゃったみたいですが、それだけ思っていること、考えていることがほとんど同じだということなのですね。

ついでに、というとなんだか失礼みたいですが、この西村さんの所属する労働調査協議会が、10月1日に第11回労働調査セミナーというのをやるのですが、

http://www.rochokyo.gr.jp/documents/semi_inv07.html

午後の部で、東洋経済の(あの!)風間直樹さんと不肖わたくしが講演を致します。

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