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2007年8月 8日 (水)

西部邁氏の正論

久しぶりにまた「正論」欄に載った正論を紹介します。今度は保守派論壇の重鎮西部邁氏です。

http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/seiron/070808/srn070808000.htm

参院選結果の評論なのですが、「カイカクに終止符を打て」というメッセージ。

>過ぐる参院選で自民党が大敗した真因は何か。

>その答えは、多くの選挙民が日本国家の現状に、漠たるものとはいえ根強い不平不満を、抱きはじめているということ以外ではありえない。

>小泉改革を頂点とする平成改革は、富者と貧者、大集団と小集団そして中央と地方それぞれのあいだに(国柄から外れているという意味で、過剰な)格差を、少なくともその感覚を、国民意識にもたらした。その被格差感は「公正と安定」から程遠いのが日本国家の現況なのではないか、との疑念をこの列島の津々浦々にまで広めた。

>安倍首相は「構造改革に疑義あり、平成改革は軌道修正さるべし」と、(おそらくは)本心を表明すべきではなかったのか。

>しかし「小泉継承」の立場にいた安倍首相には、平成の構造改革に対決する気力が乏しく、準備も足りなかった。

>かつて小沢一郎氏は「国民は自己責任で生活せよ、“小さな政府”へ向けてカイカクを断行せよ」と叫んでいた。その民主党代表が、今度の選挙では「生活が第一」と宣うていた。カイカクの“弊害”を減らすべく励んでいる安倍首相が、選挙となれば「カイカク断行」と叫ばざるをえなかった。

このへんは、西部氏の身びいきもあるとしても、そんなにポイントを外れてはいないと思われます。私もこのブログで、「安倍政権はソーシャルか?」と問うてみたこともありますが、再チャレンジ政策といった形で打ち出されてきた政策の背後には、ある種の連帯志向の社会政策思想があったことは確かであろうと思われますし、安倍首相自身が意識していたかどうかは分かりませんが、西欧社民主義勢力の中で展開されてきている権利と義務の相補性を強調する新たな福祉社会の考え方と通じるものもあったように感じられます。

ところが、選挙戦で我々が毎日見せられたのは「成長か、逆行か!」「改革か、逆行か!」という小泉・竹中時代張りの二者択一的絶叫で、いささか引いてしまった感はあります。その意味では、安倍政権の政策が否定されたわけではないと首相やその周辺の方々が思うのにも一理はあるのですが、それこそかつてグランドキャニオンに柵がないと偉そうに宣っていた小沢一郎氏に「生活が第一」といわれてしまったら、再チャレンジでは色あせるのも否めないところではあります。

何にせよ、この「正論」は言葉尻に文句をつければいろいろつけられるでしょうが、中味も結構正論です。特に最後に出てくる「保守思想の3つの要諦」は、保守主義者ではない立場から見ても、むしろ正しい改革を進めるべきという立場から見ても、かなり正鵠を衝いていると思います。

>第1に、人間の認識はつねに不完全なのだから、どんな改革にも「懐疑と議論」を差し向けよ。第2に、社会は有機体としての「自生的秩序」を持っているのだから、社会全体への構造改革は国家の自殺行為と心得よ。第3に、(国柄を)保守するための(現状の)「改革」は部分的で漸進的でなければならないのだから、「革命(レボルーション)」には、古き良き価値・規範を新しき状況において「再巡(レボルーション)」させるための〈技術知〉ではなく〈実際知〉が必要と知れ。

最後のところは、近頃の規制改革騒動を考え合わせると、むしろ「〈教科書知〉ではなく、〈現場知〉が必要と知れ」というべきところでしょうが。

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