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2007年7月 6日 (金)

和田一郎氏の冤罪

夜明け前の水口弁護士のブログによると、毛塚勝利先生が例の規制改革会議労働タスクフォースの意見書の批判を労旬に書かれたそうです。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2007/07/post_1772.html

私は同誌を購読していないので現物は確認していませんが、恐らく批判の内容は適切なものに違いないと思います。ただ、一点、相手を間違っています。どうも、毛塚先生はこの意見書を書いたのは専門委員の和田一郎弁護士だと思いこんでいらっしゃるようですが、それは冤罪です。水口さんも主査は福井氏だと書いておられますが、あれはまさに福井秀夫氏の個人論文であって、あの内容について和田さんを責めるのは酷だと思いますよ。

まあ、莫迦殿がとんでもないことをしでかすのをお諫め申し上げることができなかったのは家老の責任、という考え方からすれば、和田さんにも一片の責任がないとは言えないかも知れませんが、水口さんもリンクを張っている第1回労働TFの議事録を見れば、一方が地球人の言葉を喋っているのに、もう一方が火星人の言葉を喋っているのが分かります。もちろん、経営法曹たる和田さんは地球人です。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/minutes/wg/2007/0308/summary0308.pdf

これは、前にここで紹介した日本経団連の紀陸さんとのやりとりとも共通するものがあります。もっとも、紀陸さんと比べると、本当は違うことを喋っているのに、火星人連中の言葉の切れ端にいささか迎合してそうですそうですと安易に言い過ぎてる嫌いはありますが、それにしても、

○和田弁護士 これはかなり労働側からの発想かもしれませんけども、解雇の金銭解決制度を、何ら規制を加えずに採用すると、やはり金を払ってクビを切るという風潮が生じないとはいえないと思います。・・・

○福井主査 個別の企業なり、個別の事業所と個別の労働者との間のできるだけフェアで対等な自由な交渉が促進されるという方向ではないかと思うんですが、その辺は先生の展望はいかがですか。
○和田弁護士 ただ、やはり使用者と労働者は対等ではないですよ。正直なところは。例えば、労働事件で、10 年、20 年勤めた人が原告になったような場合、その従業員の入社以来の記録は全部会社にあるわけです。入社時の履歴書その他の個人的情報まで。それに比べると、労働側の持っている会社側に関する情報は通常は微々たるものです。しかし、それでも裁判で会社が負けることがあるわけで、そういう事件では、会社の方がよほど具合が悪いということです。

○福井主査 逆に言えば、雇用契約の時にそういう人事情報なりもふくめて労働者と共有できる前提での雇用契約なのかどうかという点について今選択権が無いですね。それが選択できるようになれば、そこに拘る労働者は対等な関係を樹立した上で労働契約に入れるということもあり得るんじゃないですか。
○和田弁護士 ただ、そういう制度は、会社は原則として置かないと思います。ある人を是非採用したくて、その人がそう望むんだったら、例外的に仕方なく入れることはあっても。

とりわけ重要なのは三者構成原則の正統性に関するところです。

○福井主査 最近は税制調査会などもそうですが、利害当事者はメンバーではないという整理が為されているし、中医協でやはりいわれているのは、直接の医療費の決定に利害関係者である人が意思決定に関わるのはおかしいんじゃないか、という議論があるんですね。・・・規制改革の中でも、政策決定機関なり、フェアな裁定機関が利害当事者を構成員に入れているのはまずい場合があるかもしれないという問題意識が底流にあるんですが、そういう観点からみると労政審でもやはり同じ問題があるとうことになりますか。
○和田弁護士 問題があると思います。労使が、国の将来を長期的に考えて、当面は自分の陣営に不利な点も相互に受け入れて、妥協していけるならいいのですが、今回の労働政策審議会の労働条件分科会は、労使ともに自分の気に入らない点をそれぞれ削ぎ落とすことによって妥協しているわけです。・・・しかし、労使の利益代表を審議会の正式なメンバーとはしないとしても、現場から、すなわち労使から意見を聞いたり、事情を聴取したりする機会は、是非とも十分に確保するべきだと思います。

○福井主査 私が思うのは裁定者の立場、例えば司法で言いますと裁判官のような立場ですね。・・・-
○和田弁護士 それはあると思いますね。ただ、現場の意見等を聞くという点で、一言申し上げると、・・・学者だけで議論しているので、必ずしも実務を知らないわけです。・・・だから、最低限、やはり組合の人なり、経営者なり現場を知っている人の意見を聞きつつ議論をしないと、机上の空論と言っては失礼かもしれないけれど、アカデミックな議論はできても本当の現場のための議論はできないんではないかと懸念します。

まあ、和田さんも変に迎合的に喋っているために、

○福井主査 その意図は団体推薦はやめるということですね。

などと勝手にまとめられてしまっているので、責任がないわけではないのでしょうが。

和田さんの気持ちとしては、実は、

>審議会の場は、特に労働側は、経営側に理解のあるようなことを言うと、今度は後ろから鉄砲玉が飛んできますから、決まったことしか言えないようです。だから実のある議論になっていない。

というところに問題意識があるのだろうと思います。この辺は、労務屋さんも吐息の日々で指摘しておられたところです。先日の労働政策研究会議のパネルディスカッションの後の懇親会でも多くの方が指摘しておられた点でした。しかし、そのことと、「利害関係者を意思決定に入れるべからず」、「現場を知らない(ごく初歩の公共政策の原理を弁えていると自分で思いこんでいらっしゃる一部の)学者だけで決めるべし」ということとは全く別の話です。

(追記)

本文で書いたように、和田さんは冤罪だと基本的に思っていますが、李下に冠を正してみたり、瓜田に靴を入れてみたりしたことがこういう冤罪の嫌疑をかけられる原因の一つになっていることも事実でしょう。

例の「脱力」・・・じゃなかった、『脱格差と雇用法制』というトンデモ本に、和田さんも一章寄稿してしまっているんですね。中身は経営法曹の立場からのまともな論考であって、前の方の火星語で書かれた代物とは違うのですが、こういう手合いと一緒に本を出すような弁護士だから、中身も一緒に違いないと誤解されてしまうリスクはあらかじめ考えておくべきでしたね。

人によっては火星人と同じ類だと思っている人もいるようですが、やはり同書に一章寄稿している八代尚宏先生も、よく読めば地球語を喋っています。その辺の違いがわからずに、味噌も糞も一緒にけなしつけるような議論は却って有害です。

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