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2007年7月20日 (金)

鈴鹿国際大学事件

最高裁HPに載った最近の労働判例ですが、

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070713160229.pdf

被告は鈴鹿国際大学、原告は久保憲一教授です。新聞にデカデカ出てるんだから匿名にしなくってもいいでしょう。

この久保先生、比較憲法論と比較政治論の先生なんですが、マスコミでこういう発言をしたんだそうです。

>① 第二次世界大戦の敗戦国はすぐに自国の歴史を取り戻しているのに,我が国においてのみ戦勝国の史観が続いている,② 戦争においては当事国のどちらかが一方的に悪いと決め付けられるものではなく,先人の功罪を正しく見つめる必要がある,③ 県立施設であるC県人権センター(以下「人権センター」という。)の展示内容は,ほとんどが部落問題で占められ,残る2割ほどが反日,自虐史観に基づく展示であって,どういう子どもや日本人を育てようとしているのか疑問に感じる,④ 人権センターは一方的な歴史観の押し付けをやめるべきである,⑤ 歴史観がしっかりしていなければ政治を語ることはできないし,すぐに謝罪する態度では国際政治に通用しない,⑥ 台湾の歴史教科書は,我が国の植民地政策の功罪をはっきりと記述し,内容的にはむしろこれを評価している点が多い

これに対して学長(当時の学長は勝田吉太郎氏)は、「本件発言が大学に大変な迷惑を掛けたとして,繰り返し辞職を勧奨した」ということです。

ところが久保先生が辞職勧奨に応じなかったので、彼の「教員としての適格性審査委員会」というのを開いて、「本件大学の教員として不適切な人物と判断せざるを得ず,辞職してもらうのが適当であるとの結論に達した」そうです。その背景としては、「本件発言は学生募集や大学経営に深刻な影響を及ぼす可能性があるものであり,本件大学は現在廃校の危機に直面しているといっても過言ではない」という事情があったようです。

あと講義の中で、「東条英機に関する映画の鑑賞を強要するかのような指導」をやったり、「東条英機に関する映画を観た学生に加点した」り(例の『プライド』って奴ですね)、「講義において戦艦大和の大砲の音を収録した録音テープを再生した」りと、なかなか筋金入りでありますな。

その後、久保先生の弁護士から抗議を受け、当分の間教授を兼務させることとするが、教授会等には出席させず、授業を含む一切の教育活動をさせず、事務職員を兼務させて「本件大学短期大学部に新たに設けられた一室で学園史の英訳等の業務に従事すべき旨」を通告したようです。いかにもいじめ目的ですが、これはさすがに撤回したようです。

地裁では原告勝訴、高裁では被告勝訴と判断が分かれましたが、最高裁は再度判断をひっくり返し、久保先生勝訴としました。その理由は、

>前記事実関係等によれば,本件発言は,その見出しや発言内容に照らして,第二次世界大戦下において我が国が採った諸政策には功罪両面があったのであるから,その一方のみを殊更に強調するような歴史観を強制すべきではなく,そのような見地からみて,人権センターの展示内容には偏りがあるという上告人の意見を表明するにすぎないものと認められる。このような本件発言の趣旨,内容等にかんがみると,本件発言は,これが地元新聞紙上に掲載されたからといって,被上告人Y の社会的評価の低下毀損を生じさせるものであるとは認め難い。また,原審1が懲戒を基礎付ける事由として挙げる上記2(6)①ないし③の上告人の講義方法等についても,それが大学における講義等の教育活動の一環としてされたものであることなどを考慮すると,それのみを採り上げて直ちに本件就業規則所定の懲戒事由に該当すると認めるのは困難というほかない。
そうすると,本件戒告処分は,それが本件就業規則において定められた最も軽微な懲戒処分であることを考慮しても,客観的に合理的と認められる理由を欠くものといわざるを得ないから,懲戒権を濫用するものとして無効というべきである。

さらに、

>被上告人Y は,上告人が本件大学の教員と1して不適切な人物であり,辞職してもらうのが適当との判断の下に,執拗に辞職を勧奨し,上告人が同勧奨に応じなかったことから,懲戒に値する事由がないにもかかわらず,上告人を本件戒告処分に付した上,さらに,何ら業務上の必要性がないにもかかわらず,教授として最も基本的な職責である教授会への出席及び教育諸活動を停止する旨の業務命令である本件要請をし,かつ,本件訴訟提起後に撤回されたとはいうものの,本件大学短期大学部に新たに設けられた一室において,通常大学教授の本来的業務とは考えられず,上告人の専攻分野とも関連性のない学園史の英訳等の業務に従事させるという不利益を殊更に課したものということができるのであって,これは,制裁的意図に基づく差別的取扱いであるとみられてもやむを得ない行為である。そうすると,本件要請は,業務上の必要性を欠き,社会通念上著しく合理性を欠くものといわざるを得ず,業務命令権を濫用するものとして無効であることは明らかというべきである。

ということです。

やり方がやり過ぎなのはあきらかですから、まあ概ね妥当な判決といっていいとは思うのですが、とはいえ、一般論としてですが、大学の先生が外部でトンデモ発言をして、大学がそういう目で見られてしまうことのマイナスを被ってしまうことをどう評価するかという問題はいささか残るような気がします。一方で学問の自由というのもこれあるわけで、なかなか難しいところではあるんですが、そう一筋縄では行かないところがあるような気が・・・。

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コメント

はじめて拝見します。思い出したのですが、私が中学生の頃、高校の入試に出題されるからといってしきりに教師に朝日新聞を読むよう強要されたことがあります。これは考えようによっては大変問題があるのではないでしょうか。教師にもそうですが、出題する側にもわざわざ朝日新聞の‘天声人語‘からばかり出題するのは公立高校入試という性格上適切を欠くのではないかと思いました。

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この記事はhamachanさんの「鈴鹿国際大学事件」のパクリです。全文を引いているわけではないので、元のエントリもお読みになることをお勧めします。 [続きを読む]

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