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2007年7月 4日 (水)

一人親方最高裁判決

6月28日に最高裁第一小法廷が下した一人親方の労災事案の判決(平成17(行ヒ)145)です。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070628130249.pdf

「作業場を持たずに1人で工務店の大工仕事に従事するという形態で稼働していた大工」の労働者性が争点でした。

結論は労働者性を否定しているのですが、その理由は、

>上告人は,Bからの求めに応じて上記工事に従事していたものであるが,仕事の内容について,仕上がりの画一性,均質性が求められることから,Bから寸法,仕様等につきある程度細かな指示を受けていたものの,具体的な工法や作業手順の指定を受けることはなく,自分の判断で工法や作業手順を選択することができた。

>上告人は,作業の安全確保や近隣住民に対する騒音,振動等への配慮から所定の作業時間に従って作業することを求められていたものの,事前にBの現場監督に連絡すれば,工期に遅れない限り,仕事を休んだり,所定の時刻より後に作業を開始したり所定の時刻前に作業を切り上げたりすることも自由であった。

>上告人は,当時,B以外の仕事をしていなかったが,これは,Bが,上告人を引きとどめておくために,優先的に実入りの良い仕事を回し,仕事がとぎれないようにするなど配慮し,上告人自身も,Bの下で長期にわたり仕事をすることを希望して,内容に多少不満があってもその仕事を受けるようにしていたことによるものであって,Bは,上告人に対し,他の工務店等の仕事をすることを禁じていたわけではなかった。また,上告人がBの仕事を始めてから本件災害までに,約8か月しか経過していなかった。

>Bと上告人との報酬の取決めは,完全な出来高払の方式が中心とされ,日当を支払う方式は,出来高払の方式による仕事がないときに数日単位の仕事をするような場合に用いられていた。前記工事における出来高払の方式による報酬について,上告人ら内装大工はBから提示された報酬の単価につき協議し,その額に同意した者が工事に従事することとなっていた。上告人は,いずれの方式の場合も,請求書によって報酬の請求をしていた。上告人の報酬は,Bの従業員の給与よりも相当高額であった。

>上告人は,一般的に必要な大工道具一式を自ら所有し,これらを現場に持ち込んで使用しており,上告人がBの所有する工具を借りて使用していたのは,当該工事においてのみ使用する特殊な工具が必要な場合に限られていた。

>上告人は,Bの就業規則及びそれに基づく年次有給休暇や退職金制度の適用を受けず,また,上告人は,国民健康保険組合の被保険者となっており,Bを事業主とする労働保険や社会保険の被保険者となっておらず,さらに,Bは,上告人の報酬について給与所得に係る給与等として所得税の源泉徴収をする取扱いをしていなかった。

>上告人は,Bの依頼により,職長会議に出席してその決定事項や連絡事項を他の大工に伝達するなどの職長の業務を行い,職長手当の支払を別途受けることとされていたが,上記業務は,Bの現場監督が不在の場合の代理として,Bから上告人ら大工に対する指示を取り次いで調整を行うことを主な内容とするものであり,大工仲間の取りまとめ役や未熟な大工への指導を行うという役割を期待して上告人に依頼されたものであった。

といったことから、

>上告人は,前記工事に従事するに当たり,Aはもとより,Bの指揮監督の下に労務を提供していたものと評価することはできず,Bから上告人に支払われた報酬は,仕事の完成に対して支払われたものであって,労務の提供の対価として支払われたものとみることは困難であり,上告人の自己使用の道具の持込み使用状況,Bに対する専属性の程度等に照らしても,上告人は労働基準法上の労働者に該当せず,労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しないものというべきである。

と結論づけています。考慮すべき要素やその判断についても、それほどおかしなことを言ってはいないのですが、というか労働者性が問題となる事案では多かれ少なかれそういうところがあるのですが、何か大事なものが抜け落ちてしまっているような感じが残るのですね。

結論のすぐ後に、

>上告人が職長の業務を行い,職長手当の支払を別途受けることとされていたことその他所論の指摘する事実を考慮しても,上記の判断が左右されるものではない。

とあって、まあ確かにそうなんですが、現場では組織の中の「職長」でもある一人親方であったのも確かなわけです。

もともと、現場の親方というのは、雇傭と請負の合いの子みたいな存在であって、なかなかすっぱりと割り切れないわけです。なんでも労働者にして保護すればいいというわけではもちろんありませんし、ここは悩みどころです。

夜明け前の水口弁護士は「最高裁に上告してから2年7ヶ月経過してからの上告棄却。上告棄却するなら、長すぎないか?」と皮肉っていますが、まあそれだけ悩ましい事案だったということでしょう。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2007/07/post_a66b.html

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コメント

 まあ、この判決は我々一人請負人にとっては身につまされるものです。公立ホール(公の施設である劇場)のような公務労働現場の委託契約も不定期で、元受業者から日雇いでよばれて働き、ギャラは完全に出来高払い。なお且つ主催者の都合(行政が行う“使用許可処分”という時間)で半日で終わっても14時間連続でも同じ日当です。
 本人がこれで働くことをオーケーしたからといっても、行政が支払う単価が常に一定ですから、再委託(個人請負)であるフリーの舞台技術者に業務の性質に起因する責任を自己責任であるとはいえないし、また、元受(行政からの受託者)に責任を全て転嫁するのもどうかと思います。
 もちろん、制度に則って「公の施設」を使用している主催者(舞台表現者)には、委託法人の労働問題は無関係でしょうから。
 やはり、このような事業を行っているリスクについて、親事業者たる「行政機関」の責任を明確にしなくてはならないと考えます。

 建設労働とは異なり、劇場・ホール等の住民・市民の使用状況に合わせた行政機関による人員配置があってしかるべきだと思います。

事故が起こったときに民事上の安全配慮義務違反を追及するという道はあるんですがね。
しかし本当は労災保険であらかじめ対応しておくべきものだと私は思います。
ぜにかねの話になると、独立した自営業という建前からなかなかそれ以上は難しいんでしょうが。

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