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2007年7月12日 (木)

長谷川三千子女史の正論

産経新聞の正論欄に載った論説だから定義上正論なのですが、内容的にもある意味における正論であるという意味で紹介しておきたいと思います。

http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/seiron/070709/srn070709000.htm

>先日の中間報告は、少子化の原因は産みたいのに産めないといふ「希望と実態の乖離(かいり)」にあると分析してゐる。ところが、ではそれをどう解決すべきかといふ話になると、たちまち女性の仕事と子育てを両立させられる社会へと変革しなければならぬといふ、実態をはなれた処方箋(せん)が持ち出されてくる。

>実際には「今後子どもが欲しいと考えている女性」のうち約8・4割が、子供が3歳になるまでは常勤で働きたくないと考へてゐるのである。つまり彼女たちが求めてゐるのは、保育所や社内託児所の充実ではなくて、むしろ2人の子供を産み育ててゐる5、6年の間、一家が安心して暮らせるだけの賃金を夫が得られることの保証なのである。また事実、さうした保証を得ることのできない非正規雇用の若い男性の結婚意欲と結婚率はきはめて低い。そもそも子供を産むといふことは、それだけでも女性の身体にたいへんな負担のかかる大事業なのであつて、その時期も外で常勤の働きをせよといふのは酷な話である。

官民のフェミニスト諸氏からすると、この長谷川三千子さんという方は女性の権利の天敵みたいな扱いのようなのですが、ひたすらリベラルな男女イコールフッティングの自由競争を唱道するリベフェミ諸氏の弱点というか、欠落した部分を的確に指摘している面があって、これをけしからんと喚いているだけでは却ってあなたの方が女性の天敵になりますよ的なところがあり、この問題のいいリトマス試験紙になるんですね。

実をいえば、この長谷川女史自身が埼玉大学教授として長年仕事と家庭を両立させてきているはずで、それが「実態を離れた処方箋」ということ自体ご自身の生き方を裏切っている面があるのですが、にもかかわらず子供を育てている間一家が安心して暮らせるだけの所得保障をしなければ子供を産む気になどなるわけないではないかという点は、全く言葉の正確な意味における正論なのであって、今までの日本社会はそれをその夫の賃金を生活賃金体系とすることによって実現してきたことには間違いがないわけです。それを実現したのが終戦直後の時代に当時共産党の秘密党員だった佐々木良作書記長の指導する電産が作り上げた電産型賃金体系であったこともまた歴然たる事実であるわけで。

長谷川女史の論述にはいささか曖昧なところがあり、「子供が3歳になるまでは常勤で働きたくないと考へてゐる」ということと専業主婦になることを推進せよということは異なるなずですし、彼女自身そういう人生の選択はしてきていないわけですが、にもかかわらず「このやうな問題はほとんど完全に素通りされ、ただ「ワーク・ライフ・バランス」なる標語が連呼されるだけ」といういい方をするのはやや政治的な思惑が感じられないでもないですが、それにしても、全く市場原理の上に立って男女イコールフッティングで競争しさえすればパラダイスが来るかのようなフェミに擦り寄るリベの論調に対する頂門の一針という意味は大いにあるように思われました。

問題は産経新聞を読んでいる人がどこまでこのインプリケーションを感じ取ったかということなのですが。

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コメント

私企業がどうするかはともかく、公的になんかするということであれば、子供(を持つ家族)を支援すればいいのでは
働く夫を経由する必然性が、謎。逆に言うと社内託児所の必然性も、謎
結局、どちらの陣営も少子化対策を口実に別のことを考えているんでしょう

子育て、出産、結婚のメインステージである若年層が貧困層に追いやられてきたことは長谷川氏の言うとおりの事実と思いますが、女性は子供が3歳になるまで常勤で働きたくないというくだりの3歳という数字に、産経が盲信する「3歳児神話」の臭気を感じ、とても好意的に読むことはできない記事です。

そもそも、少子化を口実とした家父長制の復活を公然と求める(林道義も以前、この欄でこの問題に言及しています)ような産経新聞を購読する層に、浜口先生ご指摘の概念を理解するだけのリテラシがあるとも思えませんが……

東北大の野村先生の「全部雇用」論と同じ趣旨でしょうか。

読んでいただければおわかりのように、私は「子供を育てている間一家が安心して暮らせるだけの所得保障をしなければ子供を産む気になどなるわけないではないか」というのが正論だと云っているのであって、「彼女たちが求めてゐるのは、保育所や社内託児所の充実ではなくて、むしろ2人の子供を産み育ててゐる5、6年の間、一家が安心して暮らせるだけの賃金を夫が得られることの保証なのである」というのが正論だと云っているわけではありません。

ただ、現在のフェミニズムの論客には、いささかエリート女性の臭気があるというか、あたしはばりばり働いてカネはあるんだから、しかるべく保育サービスを提供せよといわんばかりの傾向があるのは否定できないように思うわけです。

実際、少子化に歯止めをかけるべくシングルマザーとして必死に子供を育てている人々には、「夫が生活賃金を得られるように」などというのは意味がないわけですから、公的なメカニズムを考えなければ仕方がないわけで、長谷川女史の議論ではそういう要素は抜け落ちてしまうわけですが、では逆にそういうシングルマザーに「子供が3歳になるまでは常勤で働きたくないと考へてゐる」という要素がないのかといえば、それもまた一個のバイアスであって、それを3歳児神話と称して政治的にどう利用するとかしないとは別に、子供との密接な接触を可能にするようなワーク・ライフ・バランスを考えなくていいということにはならないのではないかということです。

長谷川三千子先生のような方の知名度を高める方法を考えてください。
フェミニストというあたりの良い用語を、結婚制度破壊主義者、のような言葉に言い換えられる良い方法はないでしょうか?
みんなで一生懸命に考えませんか?

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