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2007年7月

2007年7月31日 (火)

労働組合は意外に選挙に強かった?

さて、参議院選挙結果も出揃ったところですが、今後の政局とかいったたぐいはそういうのの好きな方々にお任せして、当選した方々の顔ぶれについて、労働関係者の目から見たコメントを。

まずは何よりこれを、

http://www2.asahi.com/senkyo2007/kaihyo/C02.html

民主党の比例区当選者20人のうち7人が労働組合出身で、しかも上位に集中しています。かつては参議院全国区といえば社会党、民社党とも労組関係者が大部分であったのですが、その後徐々に衰退し、組合の集票力もかなり疑問符が付けられるような状況になっていたのですが、今回は追い風に乗りながらうまく組織内候補を国会に送り出せたと言えそうです。

民主党結成以来、労組との関係はあんまりなめらかではなく、松下政経塾でお勉強しました的党首の頃は、なんだか抵抗勢力として足蹴にされてるような感じすらありましたが、組合叩きで人気を出そうなどという馬鹿げた手法はやめた方がよいということが分かったようです。なんと言っても、教科書嫁的お勉強しました型若手議員の多い衆議院では民主党はマイノリティに過ぎないのですから、政策的にも参議院がかなり主導していく可能性があるでしょう。

これに対して、自民党の方を見ると、

http://www2.asahi.com/senkyo2007/kaihyo/C01.html

かつて社会党・民社党の労組出身議員と並んで全国区を占めていた自民党の官僚出身議員の凋落ぶりが目立ちます、

元審議官とか元局長とか、やたらに下位の方に並んでいて、いささか哀れを誘います。まあ、首脳部が官僚を叩きまくっているのですから、やる気はなくなるでしょうなあ。

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資本主義の多様性

378 比較制度分析の世界では有名なホールとソスキスの『資本主義の多様性』が遂に翻訳されたようです。

版元のナカニシヤのHPから惹き句を引用すると:

福祉国家のミクロ的基礎
グローバル化とイノベーションの競争圧力の下で、各国の政治と経済は一つの共通のモデルの下に収斂していかざるをえないのか? 「福祉国家」の政治的経済的役割はもはや時代遅れのものとなったのか? 比較制度優位,制度補完性,企業中心的政治経済論を軸に、比較政治経済のための新しい分析視角を提供する「資本主義の多様性」論の基本文献、ついに登場。


「序文」より
新しい組織の経済学にもとづいて本書が展開するアプローチは、マクロ経済およびその諸制度を理解するためのものであり、「強い」国家と「弱い」国家もしくは「ネオ・コーポラティズム」社会と「多元主義」社会といった影響力ある区別の上に構築された従来の概念を超えるものである。本書のアプローチが政治経済の理解の中心に復権させるのは企業である。……本アプローチは、経済学の新制度主義とゲーム理論から引き出された概念を、国民経済を理解するさいの問題に適用するものであり、政治学は言うに及ばず経済学にとっても重要な、企業理論とマクロ経済概念の統合を生み出す。

ということで・・・。

目次は以下の通り。

日本語版への序文:資本主義の多様性と日本・・・・・・・・・ホール/ソスキス

第1章 資本主義の多様性論・序論・・・・・・・・・・・・・ホール/ソスキス

第2章 先進民主主義国における労働政治の多様性・・・・・・セーレン

第3章 金融政策と賃金・価格交渉における制度的部門的相互作用・・・・・・・・・・・・・・フランツェーゼ

第4章 社会保護と技能形成:福祉国家の再解釈・・・・エステベス‐アベ/アイヴァーセン/ソスキス

第5章 企業と福祉国家:経営者にとって社会政策が重要となるのはいつか、なぜか、そしてどのようにしてか・・・・・・・・・・マレス

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2007年7月30日 (月)

日本学術会議シンポジウム

ひと月ほど先の予定ですが、9月1日に日本学術会議の「より良き立法はいかにして可能か--立法の実践・制度・哲学を再考する」という公開シンポジウムに参加します。

http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf/39-s-1-1.pdf

「立法学の公共哲学的基盤構築」ってのが何のことなのか、実はよく分かっていなかったりしますが、まあどうなりますやら。

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民主制原理としての労働基本権

『時の法令』連載の「そのみちのコラム」、8月15日号は「民主制原理としての労働基本権」です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/kihonken.html

昨年11月15日のエントリーで、稲葉先生の憲法学のお勉強ノートに引っかけて書いた「プロセス的権利としての団結権」の話を、ちょいとモディファイして法律家向けの軽いエッセイにしてみました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_e39f.html

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2007年7月27日 (金)

ジョブカード構想

首相官邸HPにジョブカード構想委員会の中間報告の資料が掲載されています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/seichou2/job/chukan/chukan.html

これが「11のポイント」という資料。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/seichou2/job/chukan/siryou3.pdf

こっちがやや詳し目の資料です。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/seichou2/job/chukan/siryou4.pdf

後ろの方に実際のジョブカードのひな形みたいなのが載っていて、なかなか面白いです。

さて、こういうものでどこまで役に立つものができるのか、この辺はやはり労務屋さんの現場感覚に聞いてみたいところです。

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2007年7月26日 (木)

労務屋さんのキツい一発

労務屋さんの吐息の日々が山田久さんの「最低賃金見直しの視点 生産性底上げの突破口に」という論考を取り上げて批評しているんですが、

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20070724

本論よりも「余談」の

>余談ですが、『大失業』もそうですが、流行のテーマでハッタリをかましまくって後は知らん顔、というのもこの業界の処世術として必要なのでしょうか。まあこれは余談ですが。

がキツーい一発になっています。

確かに、この業界、そういうところはありそうな気が・・・。分かってる人は分かってるけど、分かってない人は分かってないという世界ですから。

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EU派遣労働指令が成立するかも

EUにおける派遣労働指令案をめぐる動向は、拙著等でも縷々書いているところですが、2003年以来閣僚理事会における審議が中断されたまま棚上げ状態が続いていました。その問題が、今年の理事会で決着するかもしれないという記事がEurActivに出ています。

http://www.euractiv.com/en/socialeurope/eu-edges-agreement-temporary-work/article-165791

今までこの指令案に反対し続けてきたのはいうまでもなくイギリスであったわけですが、姿勢を変えつつあるようなんですね。

イギリスの下院でマックファデン労相が、こう答弁したというのです。

http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200607/cmselect/cmeuleg/uc916-i/uc91602.htm

派遣労働者の均等待遇を定めるのならヨーロッパ中で適用すること、派遣事業の自由化をすること、そして均等待遇を受けるための必要な勤続期間について合意ができれば、イギリス政府としては派遣労働指令案に賛成するというような発言をしたようですね。

やっぱり、パート、有期と来て、派遣が塩漬けのままではちょっとまずいということですか。

日本の「労働国会」はいささか泰山鳴動気味に終わってしまいましたが、案外今年はEU労働法がかなり大きく動く年になるかも知れません。

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在宅勤務に関する議事録

労働市場改革専門調査会が6月29日に行った在宅勤務に関する議論の議事録がアップされています。

http://www.keizai-shimon.go.jp/special/work/10/work-s.pdf

資料に関するコメント等はこちら

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_a49b.html

大学教員をめぐるやり取りが結構面白かったりしますが、全体として問題の本質を捉えた的確な議論がされていると思います。

私も「事業場外労働の問題として取り扱っているのは、いわば結果的に事業場ではないということに着目して、そこに仮託しているような感じがある。もし大きく考えるのであれば、在宅勤務というカテゴリーを独立してとらえてはどうか・・・それは、まさに労使協定等で設計していくのが妥当で、新たな労使協定等に基づく「みなし」制みたいなものとして設計することが本来的には性質に合っているのかなという感じがする」という山川先生の意見に賛成です。

情報漏洩とか話がどんどん広がっていくのを、八代先生が必死になって押しとどめようとしているのが可笑しい。

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ハローワーク市場化テスト

柳澤大臣の記者会見で、ハローワーク市場化テストを実施する東京の職安が発表されました。墨田と渋谷の二カ所ですね。

http://www.mhlw.go.jp/kaiken/daijin/2007/07/k0724.html

>かねて私からも申し上げておりましたとおり、両方で並行して窓口を作りますので、あまり小さい所ではそういうことはできないということで、そうするとかなりの規模ということで、100名以上くらいのハローワークを一つの基本的な考え方で適当な場所を探しておりましたが、今回、渋谷と墨田ということで非常にある意味でテストをするのにはふさわしいということで決定させていただきました。以上です。

(記者)そのハローワークの関係ですけれども、今後の見通し、例えば1年とか2年とかでテスト結果が出て、その後どうなるかというあたりをご説明いただけますか。

(大臣)これは、20年度内にスタート、若干、いろいろ準備もかかるということで、20年度内にスタートするわけですが、これ、まさに窓口を並行して置きますのでかなり競争的な仕事ぶりということが期待できようかと。元々ですね、ハローワークの方も、他の市場化テストの時もそうですけれども、民間の方々が仕事を運ぶ、運営の仕方というのはやっぱりちょっと官が今までやってきたのと違いまして、なるほどなというところがかなりいろいろあるようですので、そういう意味では、非常に参考になるのではないかと考えています。いずれにいたしましても、この市場化テストというのは、ハローワークは、やっぱり全部民にするということが条約上できないんですね。そういう意味で、一定の制約があるんですけれども、しかし、その市場化テストの実はできるだけ上げていただきたいと考えています。

(記者)今おっしゃった市場化テストの実というところなのですが、どういうところを比較というか、評価の対象にしたいとお考えなのですか。

(大臣)これはですね、サービスの仕方も、実際に窓口に来られた時のサービスの仕方が、まずハローワークの大きなポイントかと思いますが、その前のいろいろ求人を出していただく際の、求人サイドとのいろいろな折衝というものあるわけでございます。これは、最近は、年齢制限というのはいろいろと法規上も手当てをしているわけですが、従来、自主的な努力をしているような時には、かなり説得して、その年齢制限の募集要項のところはいろいろ考え直していただくというようなことが実際にあったわけで、それで、今日、50%以上の、年齢制限をつけない求人というものが実現できたわけですが、それやこれやいろいろ、実際に企業から求人が出るところ、あるいは、企業から求人を出していただくところ、こういうようなところでもいろいろな働きかけが事実上行われる。官と民のアプローチの違いというか、そういったことがあって、それが結果にいろいろと反映するのではと、このように考えています。

(記者)今の件ですけれども、テストの期間の目途というのはありますか、それと、他の地域への拡大なども考えておられますでしょうか。

(大臣)これは、少なくとも1年ぽっきりとかということではなくて、3年、そこでやっていただくということになろうかと思います。その後、拡大するかということについては、まだちょっと私ども考えておりません。元々、経済財政諮問会議の方は、東京都23区内というようなお話でしたので、なかなかこれ、先ほども言ったように、ILO条約があるものですから、そこの受け入れるかどうかというところで、かなり難しい問題があったのですが、踏み切ろうということでやりました。それを何と言っても、やってみての状況、実績、そういったものを見て、またいろいろ何か新しいことは考えるのだったら考えるべきだろうと、このように考えます。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/post_dec2.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_e43f.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/6_1c2d.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_300c.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_463a.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_5edd.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_9c5b.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_020a.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_2055.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/post_6614.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_fcf0.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_dee7.html

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2007年7月25日 (水)

「ワーク・ライフ・バランス」推進の基本的方向

内閣府男女共同参画会議の仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会から、標記の報告書が出たようです。

http://www.gender.go.jp/danjo-kaigi/wlb/pdf/wlb19-7-2.pdf

>本専門調査会では、現状の働き方がワーク・ライフ・バランスの妨げとなっていることが多いとの認識から、まず最初に、企業・組織における働き方を軸に検討を進めた

ということで、取り組みの方向としては、「ワーク・ライフ・バランス実現に向けた社会基盤づくり」と「多様な人材から高付加価値を生み出す企業・組織のマネジメント改革」の二つが上がっています。

この関係では、去る17日に「首相官邸で「ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議」の初会合を開」いています。

http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20070717AT3S1700P17072007.html

>個人が希望する形で仕事と生活を両立できる環境づくりを目指し、年内に官民共同で「行動指針」を作成する。労働時間の短縮に数値目標を掲げることなどが焦点になる見通しだ。

>会議には民間の代表者として、御手洗冨士夫日本経団連会長や高木剛連合会長らが出席した。

というわけで、こちらはしっかりと労使代表の入った三者構成になっています。

選挙期間中になかなか芸が細かいとも言えますが、公務員改革で妙に前のめりになるのよりは、国民のためになりますから大変いいことには違いありません。

http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20070725AT3S2402B24072007.html

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2007年7月24日 (火)

23年前のメモ

コンピュータのデータの奥から昔書いたメモが出てきました。1984年というともう23年も前になりますな。こんなことを書いていたのか、といささか懐かしい思いとともに、学生気分の抜けていない文体に気恥ずかしさも感じますが。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/shikirareta.html

ちょうど男女雇用機会均等法が成立する前夜の頃で、ちょいと斜め後ろ側から一言コメントしてみたという感じではありますが。

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2007年7月23日 (月)

雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令

先週金曜日に諮問答申されたものですが、これまでの雇用政策の基本的な考え方を若干変えたところがあるんですね。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/07/h0720-3.html

特定求職者雇用開発助成金は、高齢者、障害者、母子家庭の母などを雇い入れた事業主にお金を上げるよという制度ですが、今までは賃金の一定割合を助成するという制度だったのですが、「より利用し易くする観点から」「雇い入れた労働者一人当たり定額を支給する方式に変更」されてしまいました。

額はここに書いてあるとおりなんですが、なぜ今まで定率助成方式にしていたかというと、定額にしちゃうと、いくら高い賃金払ったってキックバックがその分増えるわけじゃねえや、というわけで、どうせ同額の助成金を貰うんなら安い賃金で雇っておこうぜ、ということになってしまうということからだったのです。

まあ雇用保険制度をめぐる諸般の情勢等を総合的に勘案すればやむを得ない改定ではあるのかなあという感じではありますが、なかなか複雑なところではあります。

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さて、2007年参院選も終わった終わった

おなじみ権丈節ですが、いささかパセティックな色合いが濃くなっているような・・・。

http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/korunakare99.pdf

何しろ、副題が「亡国の年金報道と争点のクラウディングアウト問題」ですからね。

>問題は、こうしたまったく不毛な「年金選挙」への道筋をメディアが作っていったことの犠牲として、この国で論じなければならないより重要な問題を考える機会を国民から奪い、結果、国民に迎合するしか生きていく術はない政治家からも、より重要な問題を論じる機会を奪ったことである。

>年金報道を書かせ続けた人や書き続けた人たちは、本当に、今日の医療崩壊問題よりも年金記録の問題や年金制度論の方を選挙の争点とする方が重要だと考えているのか? 本当に、社会保障へのスタンスを対立軸とした政策論争よりも、誰がやっても同じ解決策しかない年金記録問題や、毛針で魚を釣るに似た民主党の年金戦略を論じる方が重要だと考えているのか? 本当に、民主党の年金改革案を現行の年金制度と並べて比較するのに値する代物だと考えているのか?

>いずれも、イエスと答えるのであれば、勉強した方がいい。勉強し直した方がいいとは言わないでおく――イエスと答える人は勉強したことがないのであろうから。

>ここ数年、年金問題によって争点からクラウディングアウトされた(締め出された)問題は、この国の未来を考える上で極めて本質的、かつせっぱ詰まった問題であった。それゆえ、この国の年金報道を、わたくしは亡国の年金報道、この年金報道を書かせる人と書き続ける人を亡国の民と呼んでいるのである。

しかし一番の犠牲者は、きちんと勉強してまともな政策を提起してもマスコミに相手にされずに選挙に負け、こういうインチキなフレームアップをやると人気が急上昇して選挙に勝てるという条件反射を選挙の度に植え付けられてますますそういう風に定向進化していく民主党自身なのではないか、という気もしますなあ。

なにしろ、これで民主党が大勝すれば、その勲一等紫綬褒章は間違いなく長妻昭議員であるわけで、その同僚諸氏は宜しくその行動様式を見習うべしということになっていくわけで・・・。

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2007年7月21日 (土)

現代の理論

雑誌『現代の理論』といえば、日本における構造改革論のリーダーシップを取った名高き雑誌ですが(「聖域無き」とか云う形容詞のついた最近のバージョンではありません。念のため)、最近復刊されてまして、10月に出るその次号で「雇用・労働破壊とたたかう」というどこかで聞いたような特集をするようです。

http://www.gendainoriron.com/next/index07-13.html

そこでは「雇用格差社会からの出口戦略」を「具体的にかつ有効性のある政策として提起する」のだそうであります。さてさて、どんな方が登場するのでありましょうか。大変楽しみでありますね。

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2007年7月20日 (金)

最賃審の資料

先週13日に開かれた最賃審の資料がアップされています。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/07/s0713-9.html

国会の議事録とか、成長力底上げ戦略推進円卓会議の資料とかいろいろ並んでいますが、13日のエントリーで新聞報道を引いて紹介した「平成19年度の地域別最低賃金額改定の目安審議に際して留意すべき考え方」がこれです。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/07/dl/s0713-9r.pdf

>地域別最低賃金については、最低賃金法改正法案の考え方が尊重されるべきであるが、当面の平成19年度地域別最低賃金額改定の目安の調査審議に際しては、現下の最低賃金を取り巻く状況も踏まえ、以下のような考え方についても留意してはどうか。

>1 一般労働者の所定内給与に対する比率(平成18年度は37.2%)の過去の最高値(昭和54年、37.7%)まで(又は1ポイント)の引上げ

>2 地域別最低賃金の水準と高卒初任給(平均の80%又は小規模企業・女子の高卒初任給の第1・十分位数)の水準との格差縮小を図る引上げ

>3 小規模企業の一般労働者の賃金の中位数の50%の水準までの引上げ

>4 「成長力加速プログラム」の推進による労働生産性上昇(5年間で1人当たり時間当たり成長力を5割増)等を見込んだ引上げ

これに対して、

>使側委員から、初めから引き上げありきの一方的な審議ではなく、冷静な議論、実態を踏まえた議論をすべき、中小企業は厳しい状況にあり大幅な引上げに対応することは極めて困難である、生産性向上を図った成果としての引上げとすべきなどの意見が出された。

>一方、労側委員からは、平均50円の引上げを行い、影響率の向上を図るべきである、支払能力の議論を中心とするといつまでも最低賃金が上がらないなどの意見が出された。

とのことです。

今後は目安小委員会で審議し、8月3日には答申に漕ぎ着けたいという予定のようです。

ちなみに、日本商工会議所は早速、政策アピールを発表し、

http://www.jcci.or.jp/nissyo/iken/070718kakiseisaku.pdf

>画一的あるいは過剰な規制は企業活動を萎縮させ、経済成長の阻害要因ともなりかねない。特に、最低賃金の引き上げについては、企業の支払い能力を高めることがその前提である。無理な引き上げを強制しようとすれば、必死の努力により経営を維持している企業の存続自体が不可能となる恐れすらある。

と、ブラフを掛けています。この問題については支払能力のある大企業の集まりの日本経団連なんぞには任せておれない、という気分なんでしょうね。

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鈴鹿国際大学事件

最高裁HPに載った最近の労働判例ですが、

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070713160229.pdf

被告は鈴鹿国際大学、原告は久保憲一教授です。新聞にデカデカ出てるんだから匿名にしなくってもいいでしょう。

この久保先生、比較憲法論と比較政治論の先生なんですが、マスコミでこういう発言をしたんだそうです。

>① 第二次世界大戦の敗戦国はすぐに自国の歴史を取り戻しているのに,我が国においてのみ戦勝国の史観が続いている,② 戦争においては当事国のどちらかが一方的に悪いと決め付けられるものではなく,先人の功罪を正しく見つめる必要がある,③ 県立施設であるC県人権センター(以下「人権センター」という。)の展示内容は,ほとんどが部落問題で占められ,残る2割ほどが反日,自虐史観に基づく展示であって,どういう子どもや日本人を育てようとしているのか疑問に感じる,④ 人権センターは一方的な歴史観の押し付けをやめるべきである,⑤ 歴史観がしっかりしていなければ政治を語ることはできないし,すぐに謝罪する態度では国際政治に通用しない,⑥ 台湾の歴史教科書は,我が国の植民地政策の功罪をはっきりと記述し,内容的にはむしろこれを評価している点が多い

これに対して学長(当時の学長は勝田吉太郎氏)は、「本件発言が大学に大変な迷惑を掛けたとして,繰り返し辞職を勧奨した」ということです。

ところが久保先生が辞職勧奨に応じなかったので、彼の「教員としての適格性審査委員会」というのを開いて、「本件大学の教員として不適切な人物と判断せざるを得ず,辞職してもらうのが適当であるとの結論に達した」そうです。その背景としては、「本件発言は学生募集や大学経営に深刻な影響を及ぼす可能性があるものであり,本件大学は現在廃校の危機に直面しているといっても過言ではない」という事情があったようです。

あと講義の中で、「東条英機に関する映画の鑑賞を強要するかのような指導」をやったり、「東条英機に関する映画を観た学生に加点した」り(例の『プライド』って奴ですね)、「講義において戦艦大和の大砲の音を収録した録音テープを再生した」りと、なかなか筋金入りでありますな。

その後、久保先生の弁護士から抗議を受け、当分の間教授を兼務させることとするが、教授会等には出席させず、授業を含む一切の教育活動をさせず、事務職員を兼務させて「本件大学短期大学部に新たに設けられた一室で学園史の英訳等の業務に従事すべき旨」を通告したようです。いかにもいじめ目的ですが、これはさすがに撤回したようです。

地裁では原告勝訴、高裁では被告勝訴と判断が分かれましたが、最高裁は再度判断をひっくり返し、久保先生勝訴としました。その理由は、

>前記事実関係等によれば,本件発言は,その見出しや発言内容に照らして,第二次世界大戦下において我が国が採った諸政策には功罪両面があったのであるから,その一方のみを殊更に強調するような歴史観を強制すべきではなく,そのような見地からみて,人権センターの展示内容には偏りがあるという上告人の意見を表明するにすぎないものと認められる。このような本件発言の趣旨,内容等にかんがみると,本件発言は,これが地元新聞紙上に掲載されたからといって,被上告人Y の社会的評価の低下毀損を生じさせるものであるとは認め難い。また,原審1が懲戒を基礎付ける事由として挙げる上記2(6)①ないし③の上告人の講義方法等についても,それが大学における講義等の教育活動の一環としてされたものであることなどを考慮すると,それのみを採り上げて直ちに本件就業規則所定の懲戒事由に該当すると認めるのは困難というほかない。
そうすると,本件戒告処分は,それが本件就業規則において定められた最も軽微な懲戒処分であることを考慮しても,客観的に合理的と認められる理由を欠くものといわざるを得ないから,懲戒権を濫用するものとして無効というべきである。

さらに、

>被上告人Y は,上告人が本件大学の教員と1して不適切な人物であり,辞職してもらうのが適当との判断の下に,執拗に辞職を勧奨し,上告人が同勧奨に応じなかったことから,懲戒に値する事由がないにもかかわらず,上告人を本件戒告処分に付した上,さらに,何ら業務上の必要性がないにもかかわらず,教授として最も基本的な職責である教授会への出席及び教育諸活動を停止する旨の業務命令である本件要請をし,かつ,本件訴訟提起後に撤回されたとはいうものの,本件大学短期大学部に新たに設けられた一室において,通常大学教授の本来的業務とは考えられず,上告人の専攻分野とも関連性のない学園史の英訳等の業務に従事させるという不利益を殊更に課したものということができるのであって,これは,制裁的意図に基づく差別的取扱いであるとみられてもやむを得ない行為である。そうすると,本件要請は,業務上の必要性を欠き,社会通念上著しく合理性を欠くものといわざるを得ず,業務命令権を濫用するものとして無効であることは明らかというべきである。

ということです。

やり方がやり過ぎなのはあきらかですから、まあ概ね妥当な判決といっていいとは思うのですが、とはいえ、一般論としてですが、大学の先生が外部でトンデモ発言をして、大学がそういう目で見られてしまうことのマイナスを被ってしまうことをどう評価するかという問題はいささか残るような気がします。一方で学問の自由というのもこれあるわけで、なかなか難しいところではあるんですが、そう一筋縄では行かないところがあるような気が・・・。

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連合はなぜ過半数組合の権限拡大に反対したのか

昨日都内某所で某研究会。

そこでちょいと話題になったのが、昨年労政審労働条件分科会で、就業規則不利益変更の合理性判断を過半数組合や労使委員会の合意にかからせようという提案に連合が反対した件。

もちろん組合の立場からして、組合とは別の労使委員会なんて得体の知れないものに権限をやれるかという反応をするのはまあ当然で、別段不思議ではないのですが、不思議なのは過半数組合、つまり自分たち自身にそういう権限を与えようという提案をも、そんなのいやだといって蹴ってしまったことです。

ここにはいろんなファクターが絡んでいて簡単には論じられないのですが、労政審の特に終盤にいたって、労働者の集団的利益を擁護する労働組合自体の政策判断よりも、労働弁護士の個別労働者の利害を最優先する考え方が優越してしまったことの問題点は、きちんと総括しておかなければならない点だろうと思います。そしてその背後にあるのは、労働法をほとんど個別労働者の労働契約法だと考えるような今日の労働法学の偏りもあるように思われます。契約原理だけでいくんだったら民法があれば十分で、労働法なんて要らないでしょう。

今日、労働法を抜本的に見直す必要があるとすれば、それは何よりも忘れ去られつつある集団的労使関係法の原理を、誤って個別労使関係法だと思いこまれている就業規則法理に再注入することから始まるはずだと私は思うわけで。

これはだいぶ前にここにちらと書いたことがあります。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/02/post_45db.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/post_faba.html

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2007年7月19日 (木)

ちょっと煽られて・・・

いや別に労務屋さんに絡もうとかそういうんじゃないんですけどね。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20070712

>これは結局、社会保険庁職員の(すべてではないとしても、相当割合の人たちの)「仕事はなるべく楽に、給与はなるべく高く、それで一生安泰に暮らしたい」という、勤労倫理のかけらもない、意識のすさまじい腐敗ぶりを示すものといえましょう。当然ながら、ここに労組=国費協議会が深く関与していた、さらにいえば腐敗を促したことも想像に難くありません。

>いろいろな有難い理念や建前やあれやこれやは置いておいて、こんな労組に争議権を渡したらどんなことになるのか、と戦慄と悪寒を覚えるのは私だけでしょうか。これでもなお、連合(なりなんなりの労働諸団体)が公務員への労働三権付与を主張し続けるとしたら、およそ正常な神経を疑わざるを得ないと思うのですがいかがなもんでしょうか。

いやしかし、社会保険庁を解体して民営化して公務員じゃなくするということは、まさに「こんな労組に争議権を渡」すってことなんですけれど。

いや、争議でも何でもやってくれ、どうせ年金業務なんて一瞬の停廃も許されない公共的な業務なんかじゃないのだから・・・というのであれば、それも分かるのですが。

国鉄改革は、国労にオトシマエをつけるという政治的な意味だけではなく、そもそも公共交通事業を国営でやる必要性があるのかどうかというそもそも論があっての議論ですからね。だから、オトシマエとは関係なく、電電公社も郵政公社も民営化された(つつある)わけで。

社会保険庁のオトシマエが付こうが付くまいが、公務員の労働基本権問題は公務そのものの性質論としてきちんと議論しなければいけない話なのですよ。あんまりその時の気分でやらない方がいい。

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2007年7月18日 (水)

市場化テストとストライキ権

行政改革推進本部専門調査会の第11回(6月29日)の議事概要が公開されていますが、

http://www.gyoukaku.go.jp/senmon/dai11/gijigaiyou.pdf

この中でいささか聞き捨てならない台詞がありました。

>市場化テストの導入により、労働法制の異なる民間と公務員が同じ業務を行う事態が生じているが、この労働法制についてどのように設計したのかとの質問に対し、公共サービスをより低廉で効率的にということで制度化したものであり、労使関係そのものについて公共サービス法で規定していない、民間事業者にストライキ等何か不都合があって契約を解除する場合には、官がやるなり官民で入札を行うなりの措置で肩代わりすることになる、との説明があった。

をいをい、フルにストライキ権を有している民間労働者が、その当然行使しうる権利を行使したら「民間事業者にストライキ等何か不都合があって契約を解除する場合」になるのかね。

民間労働者に対して、当然有しているスト権を行使したら会社が国から契約を解除されるからストなんかやるな莫迦、と、こういうことを言うわけですか。

いや勿論、その業務は公共性がある業務のはずなんですよ。もともと公務員がやっていたんだから。そしてその時には当然スト権はなかったわけです。ストが起きることが「不都合」な業務だから、ストを禁止しているのであって、論理的に首尾一貫しています。

それをフルにスト権を有する民間労働者に委ねると云うことは、その権利を行使することは正常な事態として当然事前に認識していると云うことでなければならないでしょうね。ストが起こることを「不都合」などと云ってはいけないのですよ。労働基本権を保障する立場の国自身はね。

こういうお馬鹿な発言が平然と出てくると云うところに、この問題を論じている内閣府サイドの知性の低さがにじみ出ていますな。

渡辺大臣も会議の度に公務員に「協約締結権、争議権を一定の範囲で付与する方向でご検討頂きたいということを改めて申し上げる」と言い続けていますが、その意味がどこまで本当に分かっているのか大変心配です。権利を付与すると云うことは、それを「不都合」と云ってはいけないということなんですよ。使用者たる国としてではなく、一国の法秩序を護るべき立場の国としてはね。

まさか、公務員にスト権を与えてストをやらせてそれで「不都合」が出たからクビにする、なあんてことを考えているんじゃないんでしょうね。国はそんなことできないんですよ。ホントに分かっているのかなあ。て云うか、多分、内閣府の中に分かっている人がいるのかどうか。

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2007年7月17日 (火)

佐伯啓思氏の正論

柳の下の泥鰌じゃないですが、もう一遍産経新聞の正論をネタにします。今回は佐伯啓思氏。これも、ある意味における正論、というか、正確に言うと話が正論に入る直前で終わってしまっているんですが。

http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/seiron/070714/srn070714000.htm

話の大部分は、参院選が宙に浮いた年金などという詰まらぬ話で左右されるのは嘆かわしいという悲憤慷慨でありまして、それは全くそうではありますが、だから何か?というだけのことで、まあ「正論」欄にはふさわしくてもそれ自体改めて正論として取り上げるほどのものでもありません。

「憂うべき民主政治」をさんざん憂えた挙げ句に、佐伯氏はついでの如くにこう云います。

>ただ「宙に浮いた年金」ではなく、「年金」への不安が高まっていることは無視できるものではない。この「ムード」の変化は、確かに一昨年の衆院選とは大きく異なるもので、この一年強で何かが変わってしまった。景気は回復し、特に大きな失政はないのに「ムード」が変わったのである。人々の関心は、規制緩和、市場化、自己責任から、年金や格差社会の「不安感」へと変化したのである

まさにその通り。現政権はそこのところをつかみ損ねている。正確に言えば、再チャレンジ政策を打ち出したことでも分かるように、そういう「ムードの変化」を理解する感性を持ちながらも、それを前面に打ち出せずに小泉・竹中流ネオリベ路線の延長であるかのようなイメージをまとわりつかせてしまっている。

>そして、年金にせよ、医療にせよ、個人主義的な市場原理では解決できる問題ではない。むしろその制度の安心感が市場競争を支えている。「不安」は、市場競争や自己責任を進める結果、それを支えるはずの社会生活の基盤が崩壊するのではないか、というものだ。ここには、自己責任や市場主義による成長優先政策か、社会の共同生活の枠組みの安定か、という対立がある。「年金」不安はそのことを背景としている。

「成長か逆行か」などというスローガンを叫ぶこと自体が、「社会の共同生活の枠組みの安定」を破壊する側だという印象を与えることになってしまうのですよ。初等ケーザイ学教科書嫁厨の一派だという(恐らく本人にとっても不本意な)イメージを振りまくことになってしまうわけです。

本当をいえば、今頃になって格差がどうたらこうたら云いだしている某野党の党首の方が、自己責任や市場主義の大先輩なんですが(グランドキャニオンに柵がないとか得々と書いていましたな)、どのマスコミをそれを指摘すらしないしね。

そこまできちんと書いてこそ正論。佐伯氏は残念ながら正論の一歩手前の保守派にとって心地よい寝言を呟くところで立ち止まってしまっています。

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2007年7月13日 (金)

最低賃金の引き上げ方

9日に開かれた成長力底上げ戦略推進円卓会議で、「参加した有識者、産業界・労働界の代表者及び政府関係者は、以下の4点について合意した」といっています、

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/seichou2/dai3/3gijisidai.html

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/seichou2/dai3/3kaigigoui.pdf

>本会議は、働く人の格差の固定化を防止する観点から、中小企業等の生産性の向上と最低賃金の中長期的な引上げの基本方針について、今後継続的に議論を行い、各地域の議論を喚起しながら、年内を目途にとりまとめるものとする。

>最低賃金法改正案については、上記の趣旨に鑑み、次期国会における速やかな成立が望まれる。

>.政府は、労働生産性の向上に向け、「中小企業生産性向上プロジェクト」の施策の具体的な実施に全力をあげて取り組むべきである。

>中央最低賃金審議会においては、平成19年度の最低賃金について、これまでの審議を尊重しつつ本円卓会議における議論を踏まえ、従来の考え方の単なる延長線上ではなく、雇用に及ぼす影響や中小零細企業の状況にも留意しながら、パートタイム労働者や派遣労働者を含めた働く人の「賃金の底上げ」を図る趣旨に沿った引上げが図られるよう十分審議されるように要望する。

これをうけた中央最低賃金審議会が、本日そろそろ開かれる予定でありますが、

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/07/s0713-6.html

そこに提示される4つの案が今朝の朝日に載っています。

http://www.asahi.com/life/update/0713/TKY200707120474.html

>(1)案では、平均賃金に対する最低賃金の比率を、06年度の37.2%から過去最高の37.7%に引き上げるか、それをさらに上回る1ポイント分引き上げる。改定後は時給681~690円になる計算だ。

>(2)案は、高卒初任給の平均の80%(731円)か、小規模企業の女子の高卒初任給で最も低い水準(720円)との差を縮小する。

>(3)案は、小規模企業で働く労働者の賃金の中央値の半分(692円)まで引き上げる。

>(4)案は、労働生産性の伸び率を今後5年間で1.5倍にするという政府の計画に沿って688円に引き上げる。

というわけですが、これは実は上記9日の成長力底上げ戦略推進円卓会議に提出された「最低賃金の中長期的な引上げについて」という資料に示されている考え方を踏まえたものになっています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/seichou2/dai3/siryou6.pdf

この資料では、各委員のご意見を3つの案にまとめていて、第1案は生活保護水準への引上げを目指す、第2案は高卒初任給への引上げを目指す、第3案は平均賃金の一定割合への引上げを目指す、となっています。

さらにその後ろに、中小企業の生産性向上を先行させるべき、最低賃金引上げと中小企業の生産性向上を同時に進めるべき、という2つの意見を書いていますので、そういうのを踏まえて報道のような案にしたということでしょうか。

法案が与野党の皆様方の暖かいお志のお陰で継続審議になってしまったため、法案に明記されていた生活保護水準への引上げというのは逆に出せなくなってしまったということでしょう。もちろん、法的にはそんな規定なくたって可能なんですが、そうすると次期国会で通さなければならないという理由がなくなってしまうのがつらいところなわけで。

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労働法の現代化に欧州議会決議

去る11日、欧州議会の総会が、労働法の現代化に関する決議を採択しました。

http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?Type=TA&Reference=P6-TA-2007-0339&language=EN

これについては、雇用社会問題員会に提示された原案が大変規制緩和よりでけしからんとETUCが反発していたのですが、膨大な修正案を取り入れて下の者とは全く違う文章になっています。

ETUCもこれに対しては、

http://www.etuc.org/a/3840

バランスのとれたアプローチになっていると満足の意を表しています。

一方、ビジネスヨーロッパの方も、

http://212.3.246.117/docs/1/KKCPGHICICLKKOFOOKDHPACBPDB39DWDBY9LI71KM/UNICE/docs/DLS/2007-01001-EN.pdf

欧州議会は労働市場改革への明確な指示を示した、と歓迎しています。

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2007年7月12日 (木)

長谷川三千子女史の正論

産経新聞の正論欄に載った論説だから定義上正論なのですが、内容的にもある意味における正論であるという意味で紹介しておきたいと思います。

http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/seiron/070709/srn070709000.htm

>先日の中間報告は、少子化の原因は産みたいのに産めないといふ「希望と実態の乖離(かいり)」にあると分析してゐる。ところが、ではそれをどう解決すべきかといふ話になると、たちまち女性の仕事と子育てを両立させられる社会へと変革しなければならぬといふ、実態をはなれた処方箋(せん)が持ち出されてくる。

>実際には「今後子どもが欲しいと考えている女性」のうち約8・4割が、子供が3歳になるまでは常勤で働きたくないと考へてゐるのである。つまり彼女たちが求めてゐるのは、保育所や社内託児所の充実ではなくて、むしろ2人の子供を産み育ててゐる5、6年の間、一家が安心して暮らせるだけの賃金を夫が得られることの保証なのである。また事実、さうした保証を得ることのできない非正規雇用の若い男性の結婚意欲と結婚率はきはめて低い。そもそも子供を産むといふことは、それだけでも女性の身体にたいへんな負担のかかる大事業なのであつて、その時期も外で常勤の働きをせよといふのは酷な話である。

官民のフェミニスト諸氏からすると、この長谷川三千子さんという方は女性の権利の天敵みたいな扱いのようなのですが、ひたすらリベラルな男女イコールフッティングの自由競争を唱道するリベフェミ諸氏の弱点というか、欠落した部分を的確に指摘している面があって、これをけしからんと喚いているだけでは却ってあなたの方が女性の天敵になりますよ的なところがあり、この問題のいいリトマス試験紙になるんですね。

実をいえば、この長谷川女史自身が埼玉大学教授として長年仕事と家庭を両立させてきているはずで、それが「実態を離れた処方箋」ということ自体ご自身の生き方を裏切っている面があるのですが、にもかかわらず子供を育てている間一家が安心して暮らせるだけの所得保障をしなければ子供を産む気になどなるわけないではないかという点は、全く言葉の正確な意味における正論なのであって、今までの日本社会はそれをその夫の賃金を生活賃金体系とすることによって実現してきたことには間違いがないわけです。それを実現したのが終戦直後の時代に当時共産党の秘密党員だった佐々木良作書記長の指導する電産が作り上げた電産型賃金体系であったこともまた歴然たる事実であるわけで。

長谷川女史の論述にはいささか曖昧なところがあり、「子供が3歳になるまでは常勤で働きたくないと考へてゐる」ということと専業主婦になることを推進せよということは異なるなずですし、彼女自身そういう人生の選択はしてきていないわけですが、にもかかわらず「このやうな問題はほとんど完全に素通りされ、ただ「ワーク・ライフ・バランス」なる標語が連呼されるだけ」といういい方をするのはやや政治的な思惑が感じられないでもないですが、それにしても、全く市場原理の上に立って男女イコールフッティングで競争しさえすればパラダイスが来るかのようなフェミに擦り寄るリベの論調に対する頂門の一針という意味は大いにあるように思われました。

問題は産経新聞を読んでいる人がどこまでこのインプリケーションを感じ取ったかということなのですが。

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2007年7月11日 (水)

日雇い派遣と雇用保険

最近、フルキャストが天引きしていた分を全額返すと発表し、グッドウィルの方は時効で2年だけだと回答してユニオンが裁判に訴えるという話になっているようで、厚生労働省も一斉指導にはいるとか、その動向も興味深いのですが、

http://www.asahi.com/life/update/0707/TKY200707070034.html

http://www.asahi.com/job/news/TKY200707070409.html

http://www.asahi.com/life/update/0706/TKY200707060441.html

私が関心を持っているのは、こういう日雇い派遣に雇用保険を適用するにはどうしたらいいのかということです。

実は、今年2月にフルキャストユニオンが締結した労働協約を見ますと、

http://www.zenkoku-u.jp/spothaken/fullcast-kyotei.html

>    会社は、日雇の派遣労働者について日雇労働保険を適用するため、日雇労働保険適用事業所の申請を行う。

というのがあるんですが、現行制度を前提とするとこれは多分無理だと思うのです。というのは、雇用保険法で言う日雇い労働被保険者とは、日雇い労働者のうち、日々公共職業安定所に出頭して失業の認定を受けることができる者でなければならないからです。山谷とか釜が崎とかのいわゆる古典的な日雇い地区だとこれが可能ですが、ケータイで連絡を受ける日雇い派遣の場合にはこれは困難です。

とはいえ、これだけ広がってきた就労形態をそのままに放置しておいていいのかという問題は重大なはずです。実際にやろうとすると派遣会社を通じてやるしかないと思われますが、それがモラルハザードを招かないようにするためには、派遣会社が毎日誰をどこに派遣したかという情報を職安サイドが全て確実に把握する仕組みを作らないといけないので、極めてむづかしい課題ではあるのですが。

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社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針

社会保障審議会福祉部会(平成19年7月4日)に出された標記指針の案です。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/07/s0704-5.html

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/07/dl/s0704-5c.pdf

言ってることは概ね正しいと思います。

だけど、「キャリアと能力に見合う給与体系の構築等を図るとともに、国家公務員の福祉職俸給表や他の産業分野における労働者の給与水準、地域の給与水準等を踏まえた適切な給与水準を確保すること」と言われたって、

肝心の介護報酬の設定が「給与、物価動向や地域間の給与の格差等を勘案しつつ、従業者の給与等の水準や事業者の収入の従業者の給与等への分配状況を含め、経営実態や従業者の労働実態を把握すること等を通じて、国民の負担している保険料等の水準にも留意しながら、適切な水準の介護報酬を設定すること」などと、あっちにも気を配りこっちにも気を配りしてなんだかよくわからない状態でどうしろというのだと言われそう。

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製造業の請負事業の雇用管理の改善及び適正化の促進

去る6月29日、厚生労働省の製造業の請負事業の適正化及び雇用管理の改善に関する研究会が報告書を取りまとめ、

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/06/h0629-6.html

同日、厚生労働省から通達が発せられました。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/other14/index.html

これに請負事業主向け及び発注者向けのガイドラインがついています。偽装請負けしからん一辺倒のマスコミ報道に比べ、請負労働者の置かれた状況の問題点の把握が的確で、多くの人に熟読玩味して貰いたい内容です。

>製造業の請負事業が広がりを見せ、製造現場で大きな役割を果たしている中で、請負労働者(請負事業主(請負事業を営む者をいう。以下同じ)に雇用され請負事業で。就業する労働者をいう。以下同じ)については、雇用契約が短期で繰り返される等労。働条件、処遇その他雇用管理が必ずしも十分でなく、技術・技能が蓄積されないといった現状や、労働関係法令が徹底されていないといった現状があり、これらの改善により請負労働者が現在及び将来の職業生活を通じてその有する能力を有効に発揮することができるようにする必要がある。請負事業は、請負労働者の雇用等に関して、請負事業主が発注者(請負事業主が締結している請負契約の相手方をいう。以下同じ) 。からの影響を受けやすい特徴があり、その雇用管理の改善及び適正化の促進を実効あるものにするためには、発注者の協力が必要である。

募集採用について、

>請負事業主は、請負労働者が従事すべき業務の内容、当該業務に従事するに当たり必要とされる能力、労働条件を具体的かつ詳細に明示すること。また、請負事業主は、請負労働者を募集及び採用する時に、発注者が当該請負労働者にとっての使用者であるとの誤解を招くことがないよう、労働条件の明示に当たっては使用者を明確化する等の措置を講ずること。

雇用契約について、

>請負事業主は、請負業務の安定的な確保を図り、請負労働者の希望により、雇用契約の期間を請負契約の期間に合わせる、請負契約の期間を超えるものにする等できるだけ長期のものにし、又は期間の定めのない雇用契約とすること。雇用契約の期間中に請負労働者を請負業務に従事させることができない期間が生じた場合についても、当該期間中教育訓練を実施する等により雇用契約を継続すること。

定着の促進について、

>請負事業主は、請負労働者との緊密な意思疎通を図り、その希望に応じて、職務経験の機会を付与したり、待遇の向上を図る等の措置を講ずること。

福利厚生について、

>請負事業主は、社宅・独身寮の整備等の福利厚生を充実すること。また、発注者と協力して請負労働者の福利厚生を充実すること。

等々、この他、請負事業主は、安定的な雇用関係の確保に配慮した事業の運営、キャリアパスの明示等、教育訓練等、職業能力の評価、法令遵守、労働・社会保険の適用の促進、適正な請負料金の設定、苦情の処理などが書かれています。

一方発注者に対しても、

>発注者は、給食施設等自社の福利厚生施設について、利用料を適切に設定する等により請負労働者の利用も可能とすること。

のほか、請負事業主の選定と取引関係の継続、請負契約の解除、中途採用における募集方法の明示等、教育訓練に係る協力、教育訓練施設等の利用、法令遵守、労働安全衛生法等の遵守、労働・社会保険の適用の促進等が書かれています。

これはもちろん通達レベルのガイドラインであり、法令ではありませんし、拘束力などありませんが、労働行政が労働者派遣ではない業務請負に対して包括的に政策を打ち出したという意味で極めて重要な意味があります。

ある意味では、現代日本の法制の最大の問題は、請負が民法の典型契約として規定されているだけで、請負という業務形態を直接する規制が存在しないという点にあるわけですから、小さな出発点ではありますが、これがやがて大臣告示になり、さらにはやがて法律として発展し、請負労働者の保護が拡大されていくことを願いたいと思います。

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求人年齢制限禁止の例外、6項目に削減

今朝の朝日が、

http://www.asahi.com/life/update/0710/TKY200707100432.html

「募集・採用時の年齢制限を禁じた改正雇用対策法の施行を前に厚生労働省は10日、例外的に年齢制限を認める条件を現行の10項目から6項目に削減する省令改正案を公表した」と報じています。

いまのところ厚生労働省のHPにアップされていないようですが、先月22日に開かれた労政審雇用対策基本問題部会に提出された資料を見ると、内容はほぼそれに沿っているようです。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/s0622-5.html

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0622-5e.pdf

ここでは4つの項目が挙げられ、さらに注記として2つ挙げられていますので、計6つということですね。

朝日の記事をペーストしておきます。

>改正案によると、年齢制限を認めるのは(1)年齢制限の上限が定年と同じ場合(2)警備業務など、労働基準法が特定の年齢層の雇用を禁じている場合(3)経験不問で、新卒者と同じ待遇で正社員として採用する場合(4)高齢者の雇用を進めるため、60歳以上を採用する場合(5)社内のいびつな年齢構成を是正する目的で採用する場合(6)子役など、芸能・芸術分野で採用する場合――の6項目。

この後ろの方に、例外事由に係る具体的事例というのが上がっていて、なかなかおもしろ。

>35歳未満の方募集(職務経験不問)

というのはOKですが、

>35歳未満の方募集(○○業務の経験のある方)

というのはNG

>35歳未満の方募集(簿記2級以上)

は、実務経験を擁する資格ではないのでOK

という具合です。

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2007年7月 9日 (月)

笛吹けど踊らぬ鳴り物入り民間開放

最近、東洋経済が好調です。

http://www.toyokeizai.co.jp/mag/toyo/index.html

今週の特集は「ニッポンの公共サービスと公務員」。パート1は「霞ヶ関大激震」で、ブログ界隈ではこちらの方が関心が高いでしょう。

しかし、ソーシャル派としては渋い「行政破壊の現実 PART 2」に注目。社会保険庁の「現場むしばむ魔女狩りバッシングの不毛」とか「大混乱必至の「全件再入力」、住基ネット活用論も浮上」も興味深いですが、このブログの関心からいうとやはりこれでしょう。

>ハローワーク
笛吹けど踊らぬ、鳴り物入り民間開放

>経済財政諮問会議や内閣府等が総力を挙げて推し進めるハローワークの市場化テスト。だが、期待される民間事業者たちの関心が薄いのはなぜなのだろうか

本文中で引用されてる「人材紹介最大手のインテリジェンスの鎌田和彦社長は言い切る」というのが本質をズバリ衝いています。

>市場化テストへの関心は全くない。ハローワークが行っているのはセーフティネット。国が国として国民に保障すべき事業だ。それを忠実にやるのは官以外あり得ない。よほどの規模の経済性でもって展開しない限り、民間企業として成立しない。民間の職業紹介事業のビジネスモデルへのご理解が足りないのではないか

民間のビジネスモデルへのご理解が足りないのは、ご自分を民間企業の味方だと勝手に思いこんでいる内閣府の側であって、民間企業を邪魔する悪い奴らだと勝手に思いこまれているらしい厚労省の方ではないのですよ。

一事が万事です。こういうのが多いんですわ。自称企業側の味方ですさあ悪い組合や役所をやっつけませうとなどいう軽薄な手合いに限って、肝心の企業の側から見ても迷惑千万というケースが実に多い。

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2007年7月 6日 (金)

請負労働の本当の問題点は何か?

連合総研の機関誌「DIO」7月号に、私の標記文章が掲載されています。

リンク先はPDFファイルです。

http://www.rengo-soken.or.jp/dio/no218/houkoku_2.pdf

いろいろとご意見はあると思いますが、私としてはここに書いたように考えています。

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和田一郎氏の冤罪

夜明け前の水口弁護士のブログによると、毛塚勝利先生が例の規制改革会議労働タスクフォースの意見書の批判を労旬に書かれたそうです。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2007/07/post_1772.html

私は同誌を購読していないので現物は確認していませんが、恐らく批判の内容は適切なものに違いないと思います。ただ、一点、相手を間違っています。どうも、毛塚先生はこの意見書を書いたのは専門委員の和田一郎弁護士だと思いこんでいらっしゃるようですが、それは冤罪です。水口さんも主査は福井氏だと書いておられますが、あれはまさに福井秀夫氏の個人論文であって、あの内容について和田さんを責めるのは酷だと思いますよ。

まあ、莫迦殿がとんでもないことをしでかすのをお諫め申し上げることができなかったのは家老の責任、という考え方からすれば、和田さんにも一片の責任がないとは言えないかも知れませんが、水口さんもリンクを張っている第1回労働TFの議事録を見れば、一方が地球人の言葉を喋っているのに、もう一方が火星人の言葉を喋っているのが分かります。もちろん、経営法曹たる和田さんは地球人です。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/minutes/wg/2007/0308/summary0308.pdf

これは、前にここで紹介した日本経団連の紀陸さんとのやりとりとも共通するものがあります。もっとも、紀陸さんと比べると、本当は違うことを喋っているのに、火星人連中の言葉の切れ端にいささか迎合してそうですそうですと安易に言い過ぎてる嫌いはありますが、それにしても、

○和田弁護士 これはかなり労働側からの発想かもしれませんけども、解雇の金銭解決制度を、何ら規制を加えずに採用すると、やはり金を払ってクビを切るという風潮が生じないとはいえないと思います。・・・

○福井主査 個別の企業なり、個別の事業所と個別の労働者との間のできるだけフェアで対等な自由な交渉が促進されるという方向ではないかと思うんですが、その辺は先生の展望はいかがですか。
○和田弁護士 ただ、やはり使用者と労働者は対等ではないですよ。正直なところは。例えば、労働事件で、10 年、20 年勤めた人が原告になったような場合、その従業員の入社以来の記録は全部会社にあるわけです。入社時の履歴書その他の個人的情報まで。それに比べると、労働側の持っている会社側に関する情報は通常は微々たるものです。しかし、それでも裁判で会社が負けることがあるわけで、そういう事件では、会社の方がよほど具合が悪いということです。

○福井主査 逆に言えば、雇用契約の時にそういう人事情報なりもふくめて労働者と共有できる前提での雇用契約なのかどうかという点について今選択権が無いですね。それが選択できるようになれば、そこに拘る労働者は対等な関係を樹立した上で労働契約に入れるということもあり得るんじゃないですか。
○和田弁護士 ただ、そういう制度は、会社は原則として置かないと思います。ある人を是非採用したくて、その人がそう望むんだったら、例外的に仕方なく入れることはあっても。

とりわけ重要なのは三者構成原則の正統性に関するところです。

○福井主査 最近は税制調査会などもそうですが、利害当事者はメンバーではないという整理が為されているし、中医協でやはりいわれているのは、直接の医療費の決定に利害関係者である人が意思決定に関わるのはおかしいんじゃないか、という議論があるんですね。・・・規制改革の中でも、政策決定機関なり、フェアな裁定機関が利害当事者を構成員に入れているのはまずい場合があるかもしれないという問題意識が底流にあるんですが、そういう観点からみると労政審でもやはり同じ問題があるとうことになりますか。
○和田弁護士 問題があると思います。労使が、国の将来を長期的に考えて、当面は自分の陣営に不利な点も相互に受け入れて、妥協していけるならいいのですが、今回の労働政策審議会の労働条件分科会は、労使ともに自分の気に入らない点をそれぞれ削ぎ落とすことによって妥協しているわけです。・・・しかし、労使の利益代表を審議会の正式なメンバーとはしないとしても、現場から、すなわち労使から意見を聞いたり、事情を聴取したりする機会は、是非とも十分に確保するべきだと思います。

○福井主査 私が思うのは裁定者の立場、例えば司法で言いますと裁判官のような立場ですね。・・・-
○和田弁護士 それはあると思いますね。ただ、現場の意見等を聞くという点で、一言申し上げると、・・・学者だけで議論しているので、必ずしも実務を知らないわけです。・・・だから、最低限、やはり組合の人なり、経営者なり現場を知っている人の意見を聞きつつ議論をしないと、机上の空論と言っては失礼かもしれないけれど、アカデミックな議論はできても本当の現場のための議論はできないんではないかと懸念します。

まあ、和田さんも変に迎合的に喋っているために、

○福井主査 その意図は団体推薦はやめるということですね。

などと勝手にまとめられてしまっているので、責任がないわけではないのでしょうが。

和田さんの気持ちとしては、実は、

>審議会の場は、特に労働側は、経営側に理解のあるようなことを言うと、今度は後ろから鉄砲玉が飛んできますから、決まったことしか言えないようです。だから実のある議論になっていない。

というところに問題意識があるのだろうと思います。この辺は、労務屋さんも吐息の日々で指摘しておられたところです。先日の労働政策研究会議のパネルディスカッションの後の懇親会でも多くの方が指摘しておられた点でした。しかし、そのことと、「利害関係者を意思決定に入れるべからず」、「現場を知らない(ごく初歩の公共政策の原理を弁えていると自分で思いこんでいらっしゃる一部の)学者だけで決めるべし」ということとは全く別の話です。

(追記)

本文で書いたように、和田さんは冤罪だと基本的に思っていますが、李下に冠を正してみたり、瓜田に靴を入れてみたりしたことがこういう冤罪の嫌疑をかけられる原因の一つになっていることも事実でしょう。

例の「脱力」・・・じゃなかった、『脱格差と雇用法制』というトンデモ本に、和田さんも一章寄稿してしまっているんですね。中身は経営法曹の立場からのまともな論考であって、前の方の火星語で書かれた代物とは違うのですが、こういう手合いと一緒に本を出すような弁護士だから、中身も一緒に違いないと誤解されてしまうリスクはあらかじめ考えておくべきでしたね。

人によっては火星人と同じ類だと思っている人もいるようですが、やはり同書に一章寄稿している八代尚宏先生も、よく読めば地球語を喋っています。その辺の違いがわからずに、味噌も糞も一緒にけなしつけるような議論は却って有害です。

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ニートの実態と支援策

厚労省の社経生への委託による「ニートの状態にある若年者の実態及び支援策に関する調査研究」が公表されています。座長は宮本みち子さんです。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/06/h0628-1a.html

それによれば、ニート状態にある若者の特徴として、

>出身家庭は非常に幅広く、あらゆる経済状況の出身者がいる

>中退者、長期欠席経験者、不登校経験など、学校教育段階で躓きを経験している者が多い

>多くが何らかの職業経験を持っているが、熟練を要しない仕事の経験者が多い

>学校でのいじめ、ひきこもり、精神科・心療内科の受診経験のある者が約半数

>対面コミュニケーションの苦手意識が目立つ。コミュニケーションの苦手意識が不登校、いじめ、ひきこもり、職場の人間関係のトラブルといったネガティブな体験につながり、苦手意識がさらに増幅されて就労が困難な状況に追い込まれたケースが多いと思われる。

>ニート状態にあることが精神的な負担になっている

>新入社員との比較においてニートの状態にある若者の意識面の特性は、「将来に希望がもてない」「対人関係の苦手意識」「仕事に多くを期待しない」ことに要約される。

が挙げられています。また、脱ニート者へのヒアリング結果として、

>脱ニート者に共通する人格的印象として、人や活動に対する「受動性」が挙げられる。具体的には、ものごとに対しての積極性のなさ、人の意見に身を任せるという点である。そうした受動性が、行動面において「特にやることがないから」家にいたり、「何をしたいとかがないから」就職する意欲がないというような行動として表出されている、と思われる。

>ヒアリングを行った事例に共通して、全般的に「生きていく」という意味での基本的欲求が希薄であるという印象を受けた。具体的には、自分の得た収入の使用目的を問われた際に、「特に買いたい物がない、取りあえず貯金する」と回答したり、これからの人生設計を問われた際も「今はさきのことを考えていない」と言うように、この年代の若者に見られるようなモノヘの欲求とか、将来への希望(野望)とかが希薄な点である。

>被調査者らの臨床的印象やニートの状態に至った経緯に対する‘見立て’として、面接者らが共通して挙げていたのが、「希薄な対人関係」である。彼らの示すこうした対人関係の特徴はこれまでも指摘されてきているところであるが、前述の受動性や基本的欲求の低さということにもつながる可能性がある。

>対人関係の希薄さの背景要因として彼ら自身の人との関係作りの弱さ、ネットワークの狭さが共通して見られた。それは、未就労期以前の交友関係のみならず塾生同士の交流の乏しさにも反映されている。仮にあっても、それをお互いに継続しようとする意欲がないため、場が異なってしまうと簡単に断絶してしまっている事例が少なくない。

つまり、意欲がない、野望がない、人とのつながりがない・・・ということですね。

ニート支援機関については、

>高度な心理技術というよりはむしろ、“親や友人ではない新しい他の人間”に認められ、温かみを感じるというごく素朴な地点が重要である。

>「乗り気でなかった」若者も自立塾での経験が肯定的なものに変わる

と肯定的な評価ですが、

>社会的認知を広める活動を実施するも個々の機関のみの努力には限界がある

とも指摘しています。

結論としていくつかの課題を挙げていますが、特に重要なのは「長期的展望に立った「ニート」を生まないための取組」というところでしょう。

>対人関係が苦手で学力の上でも苦手意識をもっている若者に対して、学校教育段階で「やれること」を発見する支援や、より具体性のある実学志向の教育を受ける機会ハンディを補うことを重視した教育・訓練が求められる。

>何らかの精神的問題や発達的問題を抱える若者に対する支援方法を開発するとともに、就労と福祉をセットにした支援の方法を見出していく必要がある。

>コミュニケーションが苦手と感じている若者の多さは、この世代の成長過程が、日本社会の孤立化の進行と重なっていたことと密接に関係している。この問題は、労働市場の景気動向や雇用のあり方とはいったん切り離して論じる必要のある問題である

>支援機関に来所しにくいが、困難な状態にあると思われる若者が存在している。これらの若者に対して、アウトリーチの支援がなければ世間から放置されかねない。日本では、原因を「意欲のないこと」に求め、「がんばればどうにかなるはず」という前提で、若年者対策が進められがちである。その結果、もっともサポートを必要としている若者には、有効性がない結果となりかねない。もっとも恵まれない若者層の貧困と社会的排除の固定化が進むことにならない対策が求められる

この太字で書かれたところは、分かっていない人々には熟読玩味して貰いたいところですね。

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2007年7月 5日 (木)

国会閉幕に当たっての連合談話

連合事務局長名で談話を発表していますが、

http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/danwa/2007/20070705_1183626917.html

>今国会は当初、「労働国会」と言われたように多くの労働関連法案が準備されたが、閣僚の自殺者まで出した「政治とカネ」問題と「消えた年金」問題が終盤では大きな争点となった。

>労働関連法案では、雇用保険法、雇用対策法、パートタイム労働法の改正が行われたが、最低賃金法、労働基準法、労働契約法は審議不十分なまま継続審議となった。特に最低賃金法が与野党の党利党略のため継続審議となったことは、最低賃金の大幅引き上げを待ち望んでいる低所得勤労者の期待に応えられず甚だ残念である。来たる臨時国会での成立を強く期待する。

その党利党略で最賃法を見捨てた民主党のために、

>何としても与野党逆転を実現させ、政権交代に向けて前進を図れるよう、連合は組織の総力を挙げて取り組みを展開する。

んですかああ?とチクチクいってみる。

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労働以外の差別禁止法制の提起

7月4日、欧州委員会が差別禁止に関する一般への協議を開始したと発表しました。

http://ec.europa.eu/employment_social/emplweb/news/news_en.cfm?id=270

EUは既に性別以外にも人種、民族、思想、信条、年齢、障害、性的志向に基づく雇用差別を禁止する指令を設け(人種・民族については既に労働以外にも適用)、各国で国内法となっていますが、今回の協議は、労働以外の分野にも差別禁止法制を拡大しようというもののようです。2008年にも提案をする予定のようで、そのための協議ということなんですね。

オンラインのクエスチョネアを見ると、

http://ec.europa.eu/yourvoice/ipm/forms/dispatch?form=Discrimination&lang=EN

>教育、社会保障、医療において、年齢、障害、宗教、性的志向による差別から守られるべきか

>商品、サービスや住宅の購入において、年齢、障害、宗教、性的志向による差別から守られるべきか

>労働以外の差別禁止はEUの優先課題か

といった質問が並んでいます。

ふうむ、年齢に基づいて進学すべき学校を定めるのは年齢差別なんでしょうか。大変優秀で大学入試に合格する学力を持っているのにまだ年齢が足りないからと入学させてくれないのは年齢差別だとか・・。

考えていくと夜寝られなくなりそうだし、私の所管分野ではないということで、それ以上考えるのはやめておきます。

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2007年7月 4日 (水)

JAMが規制改革会議を猛爆

JAMといえば、労働関係者には分かるでしょうが、そうでない人のために一応解説しておくと、機械金属関係の労働組合です。昔の全金同盟と総評全国金属という中小企業労働運動の伝統を受け継ぐところで、歴史を遡れば戦前の総同盟時代に連なる由緒正しい産別組織です。某アイドルグループのことではありませんし、日本模型鉄道の会の略称でもありません。

そのJAMが、ホームページで大々的に規制改革会議を猛爆しています。

http://www.jam-union.or.jp/

>JAMは、内閣府に対し6月27日午後、規制改革会議再チャレンジワーキンググループ労働タスクフォースが発表した「意見書」について、以下のことを申し入れ、糾した。

1.内閣府として規制改革会議の意見書に対する対応を明らかにすること。

2.最低賃金、解雇権濫用法理の見直し、労働者派遣法の見直し、労働政策の立案など四つの事項についての見解を明らかにすること。

3.規制改革会議の意見書に責任のある委員を解任すること。

>内閣府側は、

1.意見書は、タスクフォースが議論の出発点として考えをまとめたものだ。政府の方針ではない。

2.最低賃金など四つの項目については、今後論議を深めていくものだ。

3.委員の解任については、3年の任期がある

― などと答弁した。

ということです。

申し入れ内容は:

http://www.jam-union.or.jp/20070703ikensyo/ikensyo_mosiire.html

http://www.jam-union.or.jp/20070703ikensyo/4tuno_kumoku.html

さらに、

>JAMは、憲法と労働法を否定し、国の方針とも違う意見書が政府の公的機関から国民に対して出てくることが重大な問題だとして、規制改革会議の委員に公開質問書を送り更に追及している。

ということで、ここに質問書も掲載されています。

http://www.jam-union.or.jp/20070703ikensyo/situmonsyo.html

中味については、このブログでも再三再四取り上げてきましたので改めてコメントしませんが、「規制改革会議の意見書に責任のある委員を解任すること」という要請に「3年の任期がある」というのは(役人として胸中はお察しするとはいうものの)いかにもピンぼけではありますな。税調の本間会長にも当然任期はあったわけですから、要は任期途中で解任するに足るだけの不祥事であると考えるか否かということであるわけで。もちろん、そんなこと、企画官如き身分でお答えできるものではありますまいが。

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格差社会の産業訓練

社団法人日本産業訓練協会というところが出している『産業訓練』という雑誌に、標記のようなエッセイを書きました。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/sangyoukunren.html

ちなみに、同じ7月号には川喜多喬先生の「組織内コミュニケーションの向上-壁を壊し橋を架けねばならぬ時代」が載っています。例によって痛快な川喜多節ですが、

>しかし、客に対してであれ社員に対してであれ、「我が社のコミュニケーション、どうもおかしい」と感じるのは、特段にコミュニケーションを取るために設けられたわけではない日常の仕事の場であり、その「おかしい」と感じる能力、これまた産業訓練されるべき必須能力ではないか。そうした能力を育てて発揮させるゆとりと道具を中間管理職に与えよ、さもなければますます組織にはパーティション(壁)が増え橋は減る(情報システムという名の橋だけが残る)と私は思う次第である。

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いいぞ権丈節!

>医療をどうしても変えたいのであれば、雨が降ろうが槍が降ろうが、はたまた空からミサイルが降ってこようが、今日の医療崩壊に手を打とうとしない政党には拒否権を発動するしか方法はありません。今展開されているのは、教育改革と社会保険庁解体で、その背後にある組織を抵抗勢力に仕立てあげて来年の参議院選挙をなんとか乗り切ろうという安っぽい政治戦略のように、わたくしにはみえます。こういう安っぽい戦略に騙されて、来年七月の参院選で、選挙当日に今日の医療崩壊を認めていない政党に思わず一票を投じないことです。

http://www.keio-up.co.jp/kup/webonly/law/nenkin/browse.html

とまで言い切って民主党に肩入れしていた権丈先生を、失望のどん底に叩き込むような民主党のお馬鹿な年金政策(もどき)に、権丈先生さすがにキレかかっています。

http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/korunakare89.pdf

>今回の参院選を民主党は「年金選挙」と銘打ちたいらしく、民主党の攻撃を与党も受けて立つ姿勢でいるらしい。となれば、年金をメインテーマとした90分党首討論をあと数回はやってもらいたいものである(笑)。与党は、2004年夏の年金選挙の後、野党の年金改革案を精査するという民主主義の運営コストを負担してこなかった。そのツケがいま出ているのであるが、まだ遅くはないと思う。

>>首相の数字を駆使した攻勢に、民主党関係者からは「首相があれほど、うちの政策を研究し、計算してくるとは想定外だ」と当惑する声も。

>民主党関係者は、なにをたわけたことを言っているのか(笑)。 マニフェスト選挙というのは、そういうものなんですよ。 首相が、「数字を駆使した攻勢」をかけるのを評して、

>>民主党の鳩山幹事長は「時の首相が相手の批判ばかりで、重箱の隅を突くようなことばり言っていた」と皮肉った。

>こんな皮肉しか言えない政治家は、マニフェスト選挙の時代には、生きていけないね。マニフェスト選挙の政治家は、重箱の隅を突くような議論をする能力も問われるわけで、なかなか大変な職業になる。ご先祖様が政治家だったから、じゃぁ僕もというわけにはいかなくなるわけだ。

ここに引用されている安倍・小沢論争(論争?)を読むと、確かに情けなくなりますな。

権丈節を若干修正すれば、「こういう安っぽい戦略に騙されて、来年七月の参院選で、選挙当日に年金制度の本質を理解していない政党に思わず一票を投じないことです」ということになってしまいますがな。

しかし、ここではこれだけまともなことを言って小沢氏を完膚無きまでに撃破しているというのに、マスコミはまともに取り上げず、次から次に妙ちきりんな事態が起こり続けるというのは、冒頭で権丈先生が指摘している与党側の「安っぽい政治戦略」の増幅作用もあるような気がします。

で、政治向きの話はそれとして、

最後の補論が実に味わい深くて、これはもう全文引用しかない!という感じ。

>補論――民主主義運営コストと研究者の政策批判コストとの関係

>この国では、研究者にとって政策批判をするコストがどうも低すぎるようなのである――他の表現をすれば、この国には、政策に対する批判の自由が過剰に保障されているようにみえる。たとえば、かつてのように年金政策をおかしな理屈で批判する研究者がいるとすれば、その批判への反批判をわたくしのような在野の者に任せるだけでなく、批判した研究者を厚労省が直接反批判するという「民主主義の運営コスト」を政策当局が負担することが必要だと思っている。

>政策当局がみずからの政策を世の中に理解してもらうためには、これまでは、 第一の手段 専門家のお墨付きを得たというかたちで正当性を担保してもらう そしてしばしば、第二の手段 わけのわからないことをいう研究者を審議会や委員会にいれて制度や歴史を勉強してもらって大人しくさせる

>という、二つの手段くらいしかとっていなかったように見える。 第三の手段として、官庁がシンクタンクとして思いっきり表に出て、研究者と論争をするという方法があっていいと思う。

>大衆向けの研究者に、安易に政策を批判するとその論拠が間違っている場合は選手生命が失われるほどに反批判されるということを知らしめ、自由は責任を伴う形でしか保障されないという、当たり前のことを自覚してもらう・・・結果、研究者の質も官庁のシンクタンク機能も両方が高まることになるから、一石二鳥ではないかなどと考えていたりもする。

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一人親方最高裁判決

6月28日に最高裁第一小法廷が下した一人親方の労災事案の判決(平成17(行ヒ)145)です。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070628130249.pdf

「作業場を持たずに1人で工務店の大工仕事に従事するという形態で稼働していた大工」の労働者性が争点でした。

結論は労働者性を否定しているのですが、その理由は、

>上告人は,Bからの求めに応じて上記工事に従事していたものであるが,仕事の内容について,仕上がりの画一性,均質性が求められることから,Bから寸法,仕様等につきある程度細かな指示を受けていたものの,具体的な工法や作業手順の指定を受けることはなく,自分の判断で工法や作業手順を選択することができた。

>上告人は,作業の安全確保や近隣住民に対する騒音,振動等への配慮から所定の作業時間に従って作業することを求められていたものの,事前にBの現場監督に連絡すれば,工期に遅れない限り,仕事を休んだり,所定の時刻より後に作業を開始したり所定の時刻前に作業を切り上げたりすることも自由であった。

>上告人は,当時,B以外の仕事をしていなかったが,これは,Bが,上告人を引きとどめておくために,優先的に実入りの良い仕事を回し,仕事がとぎれないようにするなど配慮し,上告人自身も,Bの下で長期にわたり仕事をすることを希望して,内容に多少不満があってもその仕事を受けるようにしていたことによるものであって,Bは,上告人に対し,他の工務店等の仕事をすることを禁じていたわけではなかった。また,上告人がBの仕事を始めてから本件災害までに,約8か月しか経過していなかった。

>Bと上告人との報酬の取決めは,完全な出来高払の方式が中心とされ,日当を支払う方式は,出来高払の方式による仕事がないときに数日単位の仕事をするような場合に用いられていた。前記工事における出来高払の方式による報酬について,上告人ら内装大工はBから提示された報酬の単価につき協議し,その額に同意した者が工事に従事することとなっていた。上告人は,いずれの方式の場合も,請求書によって報酬の請求をしていた。上告人の報酬は,Bの従業員の給与よりも相当高額であった。

>上告人は,一般的に必要な大工道具一式を自ら所有し,これらを現場に持ち込んで使用しており,上告人がBの所有する工具を借りて使用していたのは,当該工事においてのみ使用する特殊な工具が必要な場合に限られていた。

>上告人は,Bの就業規則及びそれに基づく年次有給休暇や退職金制度の適用を受けず,また,上告人は,国民健康保険組合の被保険者となっており,Bを事業主とする労働保険や社会保険の被保険者となっておらず,さらに,Bは,上告人の報酬について給与所得に係る給与等として所得税の源泉徴収をする取扱いをしていなかった。

>上告人は,Bの依頼により,職長会議に出席してその決定事項や連絡事項を他の大工に伝達するなどの職長の業務を行い,職長手当の支払を別途受けることとされていたが,上記業務は,Bの現場監督が不在の場合の代理として,Bから上告人ら大工に対する指示を取り次いで調整を行うことを主な内容とするものであり,大工仲間の取りまとめ役や未熟な大工への指導を行うという役割を期待して上告人に依頼されたものであった。

といったことから、

>上告人は,前記工事に従事するに当たり,Aはもとより,Bの指揮監督の下に労務を提供していたものと評価することはできず,Bから上告人に支払われた報酬は,仕事の完成に対して支払われたものであって,労務の提供の対価として支払われたものとみることは困難であり,上告人の自己使用の道具の持込み使用状況,Bに対する専属性の程度等に照らしても,上告人は労働基準法上の労働者に該当せず,労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しないものというべきである。

と結論づけています。考慮すべき要素やその判断についても、それほどおかしなことを言ってはいないのですが、というか労働者性が問題となる事案では多かれ少なかれそういうところがあるのですが、何か大事なものが抜け落ちてしまっているような感じが残るのですね。

結論のすぐ後に、

>上告人が職長の業務を行い,職長手当の支払を別途受けることとされていたことその他所論の指摘する事実を考慮しても,上記の判断が左右されるものではない。

とあって、まあ確かにそうなんですが、現場では組織の中の「職長」でもある一人親方であったのも確かなわけです。

もともと、現場の親方というのは、雇傭と請負の合いの子みたいな存在であって、なかなかすっぱりと割り切れないわけです。なんでも労働者にして保護すればいいというわけではもちろんありませんし、ここは悩みどころです。

夜明け前の水口弁護士は「最高裁に上告してから2年7ヶ月経過してからの上告棄却。上告棄却するなら、長すぎないか?」と皮肉っていますが、まあそれだけ悩ましい事案だったということでしょう。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2007/07/post_a66b.html

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教育の職業的意義

『時の法令』7月15日号に載った「そのみちのコラム」です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/relevance.html

本田由紀先生をダシにしています。

ちなみに、原稿では「教育の職業的レリバンス」という題だったのですが、それでは一般の人にわかりにくいということで、こうなりました。

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2007年7月 3日 (火)

ソクハイユニオン

JILPTの内藤忍さんが、「メッセンジャーの労働組合」というコラムを書いています。

http://www.jil.go.jp/column/bn/colum079.htm

メッセンジャーというのは、「都心などにおいて自転車で緊急の書類を主に企業から企業へと運ぶ仕事をしている人々」だそうです。阿部真大さんが書いたバイク便じゃなくて、自転車便の方なんですね。彼女自身も「大学院生時代にメッセンジャーとして働いていたこともあり、この業界の就労実態には関心を持ち続けてきた」とのことで、その就労実態や組合結成のいきさつなどについて興味深い記述がされています。

やはり問題だなと思われるのは、

>メッセンジャーは、まず、本社のセンターから携帯電話で配送の仕事を指示される。事実上、彼らに諾否の自由はない。勤務時間は指定されており、営業所における朝礼が日課となっている。業務で使用する携帯電話は指定会社のものを使用しなければならず、最初に業務に就くときは、数日間の研修を受けなければならない。そして、本人に代わり他人が労務を提供することは契約で禁止されている。欠勤や遅刻をすればその日数に応じて歩合率が下がる。また、本人たちが手にする平均的な歩合報酬は、必要経費を引けば、時間単価で一般のアルバイトの時給と大して変わらないうえ、他社の業務に従事することは事実上困難である。さらに、服装や髪型などに関する細かい服務規程が存在する

と、労働者性が極めて高い就労実態であるにもかかわらず、

>彼らは会社と「運送請負契約」を結び、「個人事業主」として扱われている。したがって、仕事中に交通事故に遭っても労災補償は受けられず、そのため、個人で保険料全額自己負担の傷害保険に加入しなければならない。また、個人事業主扱いゆえに、雇用保険などその他の社会保険も一切ない。それどころか、仕事で使う自転車、その整備費用、携帯電話料金、地図やペン・メモ帳など全て、個人が自分で全額負担しなければならず、月にかかる必要経費は数万円にもなるという。また、一日の配送業務の終わりには、伝票整理作業を営業所で行うことになっているため、1日の実質的な拘束時間は 11時間以上に及ぶ。毎日 100km近く走って疲れきっても有給休暇の一日も与えられない

という状況にあることでしょう。そんな中で、

>今年 1月、連合東京のアドバイスのもと、バイク便大手の株式会社ソクハイで働く自転車便スタッフ(メッセンジャー)が中心となって、労働組合ソクハイユニオンが結成され、

>団体交渉を通じて、従来配送人が負担してきた費用(運送に伴う印紙税代)を会社負担とすることや、業務上事故に遭った配送人の一部につき、低額ではあるが会社から独自の補償を受けられることを合意した

というのは大きな一歩であることは間違いありません。

ソクハイユニオンのブログというのもあるようです。

http://sokuhai-union.blogspot.com/

ポケットベル使用料の天引きが不正ではないか、など他にもいろいろと問題があるようです。

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地獄への道はグッドウィルで敷き詰められて・・・

コムスンがこけて弱り目の折口氏にさらに祟り目とばかり、本業の日雇い派遣にいろいろとスキャンダルが噴き出ているようです。

http://www.asahi.com/national/update/0702/TKY200707020303.html

>グッドウィル・グループの子会社で日雇い派遣大手グッドウィル(東京都港区)から派遣された男性スタッフ(27)が、職業安定法に違反する二重派遣の状態で、労働者派遣法で禁止された港湾での荷物の積み下ろし作業をしていたことがわかった。男性が三井倉庫(同)の構内で労災事故にあったことで明るみに出た。グッドウィルが労災を適切に報告しなかった疑いもある。同じ状態で働く人は多数いるとみられ、厚生労働省はグッドウィルが違法派遣にかかわった可能性があるとみて調査し、違法性が確認されれば行政処分を検討する。

ということなんですが、この記事で私が引っかかったのは、

>港湾業務は安全面の問題などから労働者派遣が禁止されている。

という一文。違うでしょうが。安全を云うなら、製造業にも危険有害業務は山のようにあります。いや確かに「アブナイ」世界なんですが、安全衛生的にアブナイんじゃないんです。

もしかして、この記事を書いた記者の人は、港湾荷役というのがどういう歴史を背負った業界であるか、知らないで書いているのでしょうか。

山口組という大変高名な結社が神戸方面にありますが、これがもともとどういう事業をやっていたかというようなことは、最近はあんまり常識ではなくなってきているんですかねえ。

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2007年7月 2日 (月)

我々としては、得意分野でやらせていただきたい

5月23日に行われた官民競争入札等監理委員会の議事録がようやく今頃になって公開されました。

http://www5.cao.go.jp/kanmin/kaisai/2007/523/070523-7.pdf

ハローワークの市場化テストをめぐる業者さんがたの本音が微妙に垣間見えていて、なかなか公表しづらかったと云うことでしょうか。

パソナキャリアの斎木経営企画室長曰く、

>就職困難者も含めてになるかもしれませんけれども、民間が得意としているところと、厚生労働省さんが得意としているところを最初から分業するという考えがあってもいいのかなと思います。どちらも同じ土俵でと考えて、確かに市場化テストはあるのかもしれないけれども、そもそもハローワークさんは昔から建設・港湾労働を中心とした現業中心に強い部分と認識しています。昨今になって、リストラという言葉でホワイトカラーの人たちが出るようになって、その人たちもハローワークに来るようになったと。一方民間は、ホワイトカラーの人たちを中心にして人材紹介とかをやっていたということを考えると、やはり得意分野が分かれるのではないかと思います。

>それぞれが得意分野を明示して、それに対してサービスを受けたい人が判断して実施していった方が、結果的に経済的に効率的ではないかというのが個人的に思うことです。今回も、市場化テストで、就職困難者も、建設労働者も、港湾労働者も、同じ土俵でというふうにどうしても考えなければいけないのかというと、そうではないような気が、私自身はしているのですけれども、いかがなものでしょうか。一緒に考えた方がよろしいのでしょうか。その辺をちょっとお聞かせいただけたらと思います。すみません。御質問の返しになってしまったのですが。逆に言うと、我々としては、得意分野でやらせていただきたいと考えているということで御理解いただけたらと思います。

誰も、民間企業に対して得意分野だけでやっちゃいけないなんて言っていないと思いますが。民間企業が自らの費用負担と危険負担で得意分野の職業紹介に専念することは誰も否定なんかしていませんよ。

どうして民間企業が自分の得意分野の職業紹介だけすることを、全額国民の税金をフルに使って、国の施設を使って、やらなくちゃいけないのかが、誰も説明して下さらないだけで。

ブライトキャリアの森下社長も負けていません。

>一般の方の就職と、そういうチーム支援といいますか、障害者の支援というものを同時にやると、やさしい方に民間は流れてしまうという部分があると思います。事業を区分するといいますか、障害者の支援は、こういう仕組みで、こういう中身です、お金はこうですと、別に出していただいて、業者は別でもいいと思います。やはり専門性を持っている会社が障害者に対しては応募してくるというように、切り分けた方がうまくいくのではないかと思っております。

ふむふむ、障害者なんていう面倒くさい奴らは我々のような営利企業とは違う「専門性を持っている会社」にでもやらせろ、と、こういうわけですな。

日本語がよく理解できないのですが、

>森下社長 現実的な姿としては、今の厚生労働省さんの案が私は一番いいと思っているのですけれども、求人開拓をあわせてやるとか、お客様が来ないときに企業を訪問して、困っている方をなるべくお世話する。つまり後ろから一緒にサポートしないと、待っていては就職はできないという部分がありますので、そこら辺をもう少し自由にさせていただき、それで就職率で競争する。そのときに、就職困難者の人まで中に入っていると、やはり混乱が起こるのではないかと思います。優先順位をどんどんつけていきますので。

というのも似たような意味なのでしょうか。

なかなかみなさま正直に本音をぶちまけていらっしゃって、市場化テストの将来がますます楽しみです。

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在宅勤務と労働関係法

経済財政諮問会議の労働市場改革専門調査会が先週金曜日にやった会合の資料がアップされています。

http://www.keizai-shimon.go.jp/special/work/10/agenda.html

http://www.keizai-shimon.go.jp/special/work/10/agenda.html

小嶌典明先生が「在宅勤務と労働関係法」というテーマで話をしたようですが、資料はまさに資料でしかないものなので、議事録を見ないとどういう話だったかはよく分からないところがあります。ただ、はじめに「労働基準法の適用とその限界」として、いわゆる労働者性をめぐる論点があり、次に「家内労働法の適用とその限界等」を論じたようです。

基本的な「労働基準法適用のメリットとデメリット」に関する認識として、

>メリット・・・・契約の打切りや報酬の未払いといった場面では、労働基準監督署等のサポートを得ることが可能になる。

というのはいいのですが、

>デメリット・・・時間規制の対象:時間に縛られない自由な働き方ができなくなる。

なああんて莫迦なことを云ってるところが、依然として学者先生症候群が抜けていませんなあ、というところですな。

ただ、労働者性が問題になるような事案一般に云えることですが、限界領域は両方の性格を併せ持つような働き方であるのが実情なので、なかなかすぱっと割り切るのは難しいわけです。現行法制度の下では、ある点で労働者性を認めると言うことは他の点でも労働者性に基づく取扱いをしなければならないという結果をもたらすことになるので、あんまりうかつにやれないというのがブレーキになるのでしょう。その中で云えば、労働時間規制などは労働者であっても事実上適用除外にする手段はいろいろあるのでまだましなのですが、報酬の払い方や水準について労働基準法等が適用されてしまうときついというのは結構ありそうです。

この労働者性をめぐる問題は大変広がりがありまして、先週末最高裁が手間請け大工の労働者性を否定する判決をしたようです。まだ最高裁HPに載っていないようですが、出たらここでも取り上げてみたいです。夜明け前の水口弁護士も早速コメントしているようです。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2007/07/post_a66b.html

個人的には、先日の読売新聞販売店高裁判決のように、労働契約でなくても継続的契約一般に契約の打ち切りや更新拒否について正当事由が必要というような法理が確立するのであれば、あえて労働者性を主張しなくてもいいという方向もあるのかも知れない、と感じたりしていますが。既に安全配慮義務がそういう労働契約をはるかに超えた広い法理になっていますよね。労働者性フルセット主義よりも、そういうピースミールなアプローチの方がいいのかもしれないですね。

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