厚労省の社経生への委託による「ニートの状態にある若年者の実態及び支援策に関する調査研究」が公表されています。座長は宮本みち子さんです。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/06/h0628-1a.html
それによれば、ニート状態にある若者の特徴として、
>出身家庭は非常に幅広く、あらゆる経済状況の出身者がいる
>中退者、長期欠席経験者、不登校経験など、学校教育段階で躓きを経験している者が多い
>多くが何らかの職業経験を持っているが、熟練を要しない仕事の経験者が多い
>学校でのいじめ、ひきこもり、精神科・心療内科の受診経験のある者が約半数
>対面コミュニケーションの苦手意識が目立つ。コミュニケーションの苦手意識が不登校、いじめ、ひきこもり、職場の人間関係のトラブルといったネガティブな体験につながり、苦手意識がさらに増幅されて就労が困難な状況に追い込まれたケースが多いと思われる。
>ニート状態にあることが精神的な負担になっている
>新入社員との比較においてニートの状態にある若者の意識面の特性は、「将来に希望がもてない」「対人関係の苦手意識」「仕事に多くを期待しない」ことに要約される。
が挙げられています。また、脱ニート者へのヒアリング結果として、
>脱ニート者に共通する人格的印象として、人や活動に対する「受動性」が挙げられる。具体的には、ものごとに対しての積極性のなさ、人の意見に身を任せるという点である。そうした受動性が、行動面において「特にやることがないから」家にいたり、「何をしたいとかがないから」就職する意欲がないというような行動として表出されている、と思われる。
>ヒアリングを行った事例に共通して、全般的に「生きていく」という意味での基本的欲求が希薄であるという印象を受けた。具体的には、自分の得た収入の使用目的を問われた際に、「特に買いたい物がない、取りあえず貯金する」と回答したり、これからの人生設計を問われた際も「今はさきのことを考えていない」と言うように、この年代の若者に見られるようなモノヘの欲求とか、将来への希望(野望)とかが希薄な点である。
>被調査者らの臨床的印象やニートの状態に至った経緯に対する‘見立て’として、面接者らが共通して挙げていたのが、「希薄な対人関係」である。彼らの示すこうした対人関係の特徴はこれまでも指摘されてきているところであるが、前述の受動性や基本的欲求の低さということにもつながる可能性がある。
>対人関係の希薄さの背景要因として彼ら自身の人との関係作りの弱さ、ネットワークの狭さが共通して見られた。それは、未就労期以前の交友関係のみならず塾生同士の交流の乏しさにも反映されている。仮にあっても、それをお互いに継続しようとする意欲がないため、場が異なってしまうと簡単に断絶してしまっている事例が少なくない。
つまり、意欲がない、野望がない、人とのつながりがない・・・ということですね。
ニート支援機関については、
>高度な心理技術というよりはむしろ、“親や友人ではない新しい他の人間”に認められ、温かみを感じるというごく素朴な地点が重要である。
>「乗り気でなかった」若者も自立塾での経験が肯定的なものに変わる
と肯定的な評価ですが、
>社会的認知を広める活動を実施するも個々の機関のみの努力には限界がある
とも指摘しています。
結論としていくつかの課題を挙げていますが、特に重要なのは「長期的展望に立った「ニート」を生まないための取組」というところでしょう。
>対人関係が苦手で学力の上でも苦手意識をもっている若者に対して、学校教育段階で「やれること」を発見する支援や、より具体性のある実学志向の教育を受ける機会、ハンディを補うことを重視した教育・訓練が求められる。
>何らかの精神的問題や発達的問題を抱える若者に対する支援方法を開発するとともに、就労と福祉をセットにした支援の方法を見出していく必要がある。
>コミュニケーションが苦手と感じている若者の多さは、この世代の成長過程が、日本社会の孤立化の進行と重なっていたことと密接に関係している。この問題は、労働市場の景気動向や雇用のあり方とはいったん切り離して論じる必要のある問題である。
>支援機関に来所しにくいが、困難な状態にあると思われる若者が存在している。これらの若者に対して、アウトリーチの支援がなければ世間から放置されかねない。日本では、原因を「意欲のないこと」に求め、「がんばればどうにかなるはず」という前提で、若年者対策が進められがちである。その結果、もっともサポートを必要としている若者には、有効性がない結果となりかねない。もっとも恵まれない若者層の貧困と社会的排除の固定化が進むことにならない対策が求められる。
この太字で書かれたところは、分かっていない人々には熟読玩味して貰いたいところですね。
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