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労働市場改革専門調査会が外国人労働問題を論議

経済財政諮問会議が6月8日に厚生労働省、経済産業省及び法務省の担当官を呼んでヒアリングし、ディスカッションした議事録が公開されています。

http://www.keizai-shimon.go.jp/special/work/09/work-s.pdf

前半は各省からの説明ですが、その後核心的な議論に入っています。

厚労省案と経産省案の相違点である研修生の労働者性の問題について、樋口先生の発言を皮切りにホットな議論が展開されています。

>(樋口委員) 八代会長のご指摘の第1点目について是非聞きたいが、経済産業省の研究会案では、1年目は研修制度として、ここは労働者性は認めないということであったが、労働者性を認めることの問題点はどこにあると考えているのか。更に、認めない場合には、最低賃金を含めて労働関連法は適用にならないが、実費程度の研修手当ということで問題点はないと考えているのかどうかお聞きしたい。

>(佐藤委員)今の樋口委員の1 点目の質問に関連して、経済産業省の説明では、この研修の仕組みを技能移転のためのものとしながら、同時にこれは建前であるとも言われた。その建前の下で労働力確保を図る仕組みとして考えているにもかかわらず、最初の1年は研修としている。それは一つの考えだとは思うが、技能移転のためのものだと考えたときに、どのような仕組みが良いかについて議論すべきだと思う。経済産業省は、技能移転は建前だが、他方で労働力確保が必要だと考えているのか、また、研修、労働力確保といいながら、賃金不払いや残業をさせているなどの問題を、先ほどご説明いただいた提案の中で解消できると考えているのかどうかを伺いたい。

>(経済産業省)それでは、経済産業省あての一番重要な質問は労働者性の点ではないかと思っている。まず、佐藤委員からの、研修生を実質的に労働者と見ているのかというお尋ねである。制度の趣旨としては労働者ととらえていないが、これは建前であり、実質的に中小企業を含めた生産現場の活性化に役立っているという点はそのとおりである。御参考までに、昨日の国会での議論をご紹介する。「外国人研修・技能実習制度は、国際貢献の制度といいながら、ものづくりの中小企業の格安労働力の確保のために使われているのではないか。」という質問に対して、大臣は、「あくまでも、この制度は相手国の発展に資するような技能移転を図っていくことが建前である。本当に建前化してしまっているのであれば、本音で労働力確保のためにやればいいとの指摘かもしれないが、中小企業といえども歯を食いしばって頑張るところは頑張ってもらわなければならないのであり、低賃金で3K職場のことは外国人にやらせようという精神は、国際社会の中で尊敬される地位を築かなければならない日本としては、歯を食いしばってもそういう策は取るべきではない」という認識であり、この建前を外してしまったときのダメージを非常に懸念している。

・・・この点については、この研究会での全体の認識としては、働いているときはうまく労働法規を適用して、研修時は適用しない。例えば研修時間の座学に最低賃金法を適用すると、おそらく中小企業はできるだけこれを減らしていこうというインセンティブになる。現在はそういうインセンティブになっていない理由は、研修中は住居費等も全額企業負担になっており、研修計画を定めて、それに対して一括して企業がお金を出す仕組みになっており、企業側にとって研修の有無でコストが変わってくるわけではないのである。他方、研修生も、例えば日本語研修をサボって働けばたくさん給料がもらえるわけでないので、そのようなインセンティブが働かないのである。そういう仕組みの中で、研修制度が成立しているのであり、悩ましいところではあるが、とりあえず今の研修制度を維持して、その研修がしっかりできる枠組みをつくっていこうという方向性の議論を出したということである。おそらく、ここの問題は、前述の趣旨をわかってきちんとやろうとしている企業にとっては研修型の方が明らかにいいということだと思う。ただし、ここはしり抜けしようとするとしり抜けできてしまうところがあるので、それを防止するためには労働者にしてしまった方がいいというところであり、なかなか中間的な解決が見つからなかったので、とりあえず、この研究会としては研修を維持することとしているが、それがベストの解決策だと思っているわけではない。

>(樋口委員)確認だが、「とりあえず」と、「ベストではない」との発言について、「とりあえず」ということは早晩見直す必要があると認識していると考えてよろしいか。

>(経済産業省)これは研究会報告だが、役所の立場としては、これを一つの足場として関係省庁と議論をするということであり、その過程で当然いいところをお互いに取り入れていこうという発想になると思っているので、そこがしっかりできればいいと思う。実際のところ、極めて争点だけをクリアーに言えば、座学研修は労働か否か、最低賃金が適用されるか否かという点の整理なのではないかと思う。

ぎりぎり突き詰めるとそういうことになるでしょうね。

このあとで、労働法学者のはずの小嶌委員がややピンぼけな発言をします。

>(小嶌委員)質問ではなく意見になるが、3省のお考えを聞くと、法務大臣も経済産業省も研修制度を存置と考えておられる。そうすると、研修制度はやはり意義があるのではないかという感じもする。研修制度を廃止することにより、本当の労働者保護になるのかどうかは疑問であり、最初の時点から労働者にしてしまうというのは、少し行きすぎではないかという感じがする。トレーニングは本来、無給であってもおかしくはない。最近の米国映画にも、6か月間完全に無給というものがあった。映画で取り上げられたのは外国人の研修ではないが、外国人だけ特別に扱っていいかという疑問があるのと、一般に研修という場合、工業高校の生徒が対象となる研修もあるし、大学生の研修もある。大学も研修生を受け入れているし、他大学に受け入れてもらうときもある。その場合に、最初から有償であって、かつ労働者として扱うという姿勢でうまくいくかどうか、つまり外国人の研修について労働者として扱うとした場合、他の研修にも影響が出ないかという懸念がある。その点だけ申し上げておきたい。

これに対して、労働経済学者のはずの樋口委員が的確なコメントをしています。

>(樋口委員)おそらく外国人だから特別に扱うのではなく、研修が実態として研修ではないというところに今問題があり、それをどうするかは、やはり基本的な問題として考えていくべきだろうと思う。その上で、事実関係を確認したいが、先ほど経済産業省から、1年目は座学があるからなかなか実習として扱えない、労働者性をかけられないという説明があったが、日本人労働者についても企業の強制する座学については、労働者性がその間に発生していると思うが、そうではないのか。事実関係として、一般の企業で行う座学と企業が従業員に対して強制する座学を受ける期間はやはり労働者性が発生しているように思うが、いかがか。

>(経済産業省)まず山川委員の御質問だが、企業が強制する研修であれば当然、労働者として扱っているとの認識をしている。研修制度の場合の問題は、1つは要するに全研修のうちの3分の1という、かなりの時間を座学することになっており、それは国が強制をしている。それをどうすればうまくやれるかという部分だと思う。繰り返しになるが、この部分を突き詰めると、小嶌委員からも指摘があったが、その性格論はさて置き、理想の姿を言えば、研修としてしっかりやっているところはまさに研修として、それを実態として労働者として使っていれば、それは労働者として扱うというのが一番いいのだろうが、実際にこの整理をするのは極めて困難である中で、どちらを取るかという選択だと思う。その中でとりあえずだが、やはり研修という仕組みにした方が、技能移転がしっかりできるという当初の目的に沿っているという判断をしたということである。それが質問の1点目への回答である。

>(厚生労働省)先ほどの経済産業省への質問に関連して補足させていただくが、厚生労働省の研究会で命題となった実務研修中の保護についてだが、まさに実務研修はOJT訓練と何ら変わらない、そういうことから区別が付かず、研修生の保護を図る観点から、やはり労働法を適用することが求められるのだろうという結論である。一方、日本語教育等の座学については、当然この研究会でも必要だとしている。座学の部分の扱いは、これから制度設計をする段階で、また色々と検討しなければいけないと思っている。ただ、事実関係としては、経済産業省も回答しているように、日本の企業であれば、業務命令としての研修行為であれば、当然、労働基準法の適用があり、実態としては、日本人の若者も、給料を支給されながら研修を受けるのではないかと思う。

それが現行法の解釈としては正しいのです。

その他、より大きな問題として、井口委員が繰り返し「このローテーション方式が十分に機能していると考えているのか」「労働法を適用すれば、ローテーション方式が機能するようになるというような性質の問題ではない」と抜本的な見直しを求めているのに対して、各省ともリラクタントな姿勢で、いささか苛立った井口委員は

>(井口委員) 再度、2点質問させていただきたい。先ほどローテーション方式の件で質問したが、各省の認識は、まだ不十分だと思う。ローテーション方式の下では、研修生や技能実習生は、特定の企業に縛り付けられているので、ある意味で低い労働条件や賃金分野から動けないわけである。動けない背景には、受入れ先企業の分野では、国内で必要な人材を入手できないからこそ、研修生、技能実習生を受け入れている側面もある。そのように特定の企業に縛られているため、搾取的なことが起きやすく、東アジア諸国でも同様の問題が多発している。もし、特定の企業から動くことができるなら、自動車産業で働いている日系人のように、より高賃金の分野に行った方が得である。このことについては、第7回の専門調査会では、私のプレゼンテーションの中で、各種のデータや相関分析の結果を用いてご説明した。特定企業に縛り付ける方式であるからこそ問題が生じているのであるから、問題が起きたときには、早くこれをキャッチして、場合によっては、その企業から研修生や技能実習生を移動させることを考えないと、本当の意味の救済策にならない。労働法を適用して罰則をかけても、何か月もトラブルに巻き込まれた研修生本人たちを救済することにはならない。したがって、ローテーション方式の限界をしっかりと認識いただけないか、というのが1点である。2点目は、低労働条件の分野で研修を受けている人たちが多いのであるからこそ、とにかく、労働法あるいは最低賃金を適用することは、最低限の措置として必要ではないかと思う。その点について、各省が共通認識を持っていただけないものであろうか。例えば、繊維業と水産加工における低い労働条件を是正することはできなくても、少なくとも最低限の労働条件だけは適用するということで、各省間で合意していただけないのだろうか。しかし、労働法を適用するだけでは不十分なのは、山川委員もおっしゃっていたとおりである。

これに対して、

>(厚生労働省)・・・井口委員の御指摘に答えていなかったが、ローテーション方式の問題点は、確かに井口委員がおっしゃるとおり、二律背反的なものがあり、研修・技能実習だから企業が特定できる反面、そこがタコ部屋的になったり、悪質な拘束的な労働になっているケースがある。厚生労働省の研究会の委員からも、井口委員と同じように、やはり移動が認められないことが問題の大きな原因であるという指摘があった。ただし、移動を可能にすると、例えば、縫製業で働いている方が、どんどん賃金の高い業種に流れていくという現実も出てくるのではないかという状況があり、あとは現行制度の中でどうやって技能実習生、研修生が相談をしやすくする、あるいは監督指導をしやすくするかということをやっていかなければいけない。

この辺はあちらを立てればこちらが立たずで、なかなか難しい問題です。

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