市場化テストモデル事業の実績評価
標記実績評価書がアップされています。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/06/h0601-3.html
対象となったのは、キャリア交流プラザ事業、若年者版キャリア交流プラザ事業及び求人開拓事業の三つですが、どれにおいても民間側が負けているようです。
まずキャリア交流プラザ事業、
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/06/dl/h0601-3a.pdf
>事業実績を総括すると、就職率や定着率といった指標については、個々のキャリア交流プラザによる違いもあるが、概ね、国が民間を上回り、こうした傾向は、60歳以上の者や長期失業者等の就職が比較的困難とされる者について、より顕著に現れている。また、提供されるべきサービスの水準として目標に掲げていた就職率55%については、国全体として、これに近い水準を達成することができた(注。)
>民間実施地域における定着率が低かったことについては、民間事業者自身からも、目の前の就職を急いだ余り、早期退職を招いたケースが見られたとのコメントがあったところであり、就職率の向上を目標に掲げながらも、求職者のニーズを踏まえた適格な職業紹介を行うことが重要であることを、改めて認識する必要がある。
>また、職業紹介については、民間が運営するキャリア交流プラザにおいても、支援対象者の就職経路の半数近くはハローワーク経由となっており、民間事業者自身の紹介による就職は1割にも満たないものであった。結果として、民間事業者のノウハウを活かした支援を期待していた求職者からは、求人情報の提供や職業紹介が十分ではないという苦情も散見されたところである。
問題の求人開拓事業の様子を見ると、
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/06/dl/h0601-3c.pdf
>事業実績を総括すると、開拓求人件数、求人数、充足数、充足数1人当たりのコストといった全ての指標において、民間実施地域の実績は、比較対象とした国実施地域の実績に及ばなかったところである。
>その原因について受託事業者自身や事業を実施した労働局の分析からまとめると、各受託事業者によって状況は異なるものの、
・経費の削減を重視する余り、求人開拓に必要な体制が十分確保できなかったこと(契約社員や派遣社員を使ったため、人の入れ替えが多かった。また、そもそも、求人開拓推進員の数が少なかった等)
・また、そのため、求人開拓に必要なノウハウも十分蓄積できなかったこと(求人申込書の記載に不慣れであった等)
・求人開拓事業に対する理解が十分ではなかったこと(求人内容に関する確認項目の多さに対する認識不足等)
・民間事業者がハローワークの求人開拓を行うことについて、求人者の理解がなかなか得られなかったこと
・求人の確保だけで手一杯で、求人の質まで手が回らなかったこと(正社員求人の割合が低い等)
・地域の労働市場の状況や求職者のニーズが十分把握できていなかったこと(非効率な飛び込み営業等)
・全体として、求人開拓のノウハウが十分あるとは言えず、民間独自の工夫も余りみられなかったこと
などが考えられるところである。民間事業者にとっては、キャリア交流プラザ事業に比し効率的な求人開拓のためのノウハウの蓄積や求人者からの信用の獲得等特に当該事業を初めて実施することに起因する問題が大きかったことが窺える。
また、一部の受託事業者において、
・本来1つの求人を、就業時間帯ごとに分割して、複数の求人として受理した
・求人者の確認を取らずに、求人開拓推進員が勝手に求人年齢を書き換えてしまった
・求人予定があると聞いただけで、求人者に十分確認しないまま、勝手に求人を出してしまった
等の不適切な対応により求人者や求職者から苦情が出たケースも報告されているがこうしたトラブルは、受託事業者が、求人数を確保するために、求人開拓推進員に与えたインセンティブの仕組み(開拓求人の数が一定の基準を超えると報酬が与えられる仕組み)が過度に働いたことなども影響しているのではないかと思われる。
とうことです。
ちなみに、この評価委員会には、八代先生ご自身も参加しておられます。
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この実績評価において注目すべきは、 「定着状況」と「満足度」の両項目において、国が民間を上回っていることです。就職件数・就職率で国が民間を上回った場合、札幌の官民共同窓口の事例のように、民間側・マスコミが口を揃えて、「民間はきめの細かいカウンセリングを実施している。」という論点のすりかえがなされる可能性があるのです。しかし、民間事業者において、国よりも求職者に対してきめの細かいカウンセリングがなされているのであれば、定着率・満足度とも民間事業者の方が高い実績をあげるはずです。求職者の立場に立ったマッチングについては、民のノウハウが簡単には通用しないということでしょう。
一方、この度のモデル事業については、国がより高い実績をあげていますが、民間に大きく差をつけたものではありません。求人者ではなく、求職者の立場に立ったマッチングについては、官・民ともいまだ洗練されたシステムを確立できていないというのが実際でしょう。
投稿: マッチングの重心3 | 2007年6月 4日 (月) 10時06分