世界の労働市場改革 OECD新雇用戦略
およそ労働市場改革を論じようとする者であれば、必ず読まねばならぬものが毎年のOECD雇用見通し(Employment Outlook)ですが、膨大かつ中味が高度なため、実際にはあまり読まれていないようです。
そういう状況に大変有効なのが今回明石書店から刊行された標記書物です。これは、昨年改定されたOECD雇用戦略に、その分析ベースとなった2006年版雇用見通しの全訳をつけたもので、今日の日本における政策論争の基盤として使われることが期待されます。JILPTの戎居皆和氏の訳を樋口美雄先生が監訳しておられますので、安心して読めます。
http://www.akashi.co.jp/Asp/details.asp?isbnFLD=4-7503-2569-4
2006年6月に改定されたOECD雇用戦略。人口高齢化、経済のグローバル化が進む中、あらゆる人の就業機会を拡大し、より良き雇用と所得の増大に向けて、包括的な労働市場改革戦略を世界比較可能な図表をもとに提示する。
日本語版刊行によせて
監訳者序文
国名略語表
第1部 OECD新雇用戦略
第1章 雇用の拡大と質の向上、所得の増大をめざして:OECD雇用戦略の再評価から得られる政策的示唆
第1節 現状と課題
第2節 新たな証拠
第3節 政策パッケージ
第2章 改定版OECD雇用戦略
A.適切なマクロ経済政策を設定する
B.労働市場参加や求職活動に対する阻害要因を取り除く
C.労働需要への労働・製品市場障壁の解消に対処する
D.労働力の技能およびコンピテンシーの開発を促進する
付属資料1 1994年版雇用戦略:10項目の一般勧告
付属資料2 OECD雇用戦略新旧対照表
第2部 2006年版OECD雇用アウトルック
第1章 労働市場の短期予測およびOECD雇用戦略再評価の公表
第1節 最近の労働市場の展開および今後の見通し
第2節 OECD雇用戦略再評価
第2章 1994年以降の労働市場パフォーマンスと今後の課題
第1節 全般的な労働市場パフォーマンス
第2節 特定層の労働市場パフォーマンス
第3節 1994年以降の所得分配および労働条件の動向
第4節 現状および今後の課題
第3章 あらゆる人の就業機会を拡大する一般的な政策
第1節 マクロ経済政策と労働市場パフォーマンス
1.1 インフレと金融政策
1.2 財政政策
1.3 マクロ経済政策と構造政策の調整
第2節 福祉制度と労働市場プログラムが労働力参加や雇用に及ぼす影響
2.1 失業給付と求職インセンティブ
2.2 社会保護給付と税制の組み合わせが労働供給に及ぼす影響と就労を促す財政支援策
2.3 積極的労働市場プログラムと失業者に対する就業化戦略
2.4 就労可能要件を伴わない福祉給付に関連する政策課題
第3節 賃金設定、税制、労働市場・製品市場規制が労働需要および雇用に与える影響
3.1 賃金設定制度・政策
3.2 労働所得に関する税制
3.3 雇用保護法制
3.4 労働時間編成
3.5 製品市場規制
第4節 生涯教育・訓練政策
4.1 政策課題
4.2 政策的示唆
第4章 労働市場における特定労働力層に対する政策
第1節 就業率の低いグループの雇用見通しの改善
1.1 女性の労働力参加を拡大する措置
1.2 高齢者の労働力参加を拡大する措置
1.3 若年層の雇用見通しの拡大
1.4 移民の雇用見通しの拡大
第2節 条件不利地域の労働者支援
第3節 インフォーマル労働からフォーマル雇用への移行の円滑化
第5章 雇用の増大を目的とする政策の社会的示唆
第1節 所得不平等および貧困に関する動向:労働市場パフォーマンスの変化との関連性
1.1 所得不平等と失業率・就業率の推移
1.2 1990年代における貧困の発生率および継続性:全体・特定層
1.3 労働市場制度が世帯所得の不平等と貧困に及ぼす影響
1.4 結論
第2節 雇用安定とキャリアパスへの示唆
2.1 臨時・派遣雇用:証拠および政策的示唆
2.2 低賃金の発生率:傾向と政策的重要性
第6章 政策の相互作用と補完性の把握および改革戦略への示唆
第1節 労働市場政策・制度とマクロ経済環境
1.1 マクロ経済ショックと労働市場政策・制度との相関性
1.2 労働市場改革によってマクロ経済および財政パフォーマンスは向上する
第2節 政策間相関関係と政策パッケージ
2.1 既存の政策パッケージおよび雇用パフォーマンス
2.2 政策の相互作用
第3節 改革の政治経済
3.1 分配効果とタイミング効果
3.2 逆分配的効果とタイミング効果を克服する上での政策設計の役割
付属資料6. A1 政策の主成分分析と雇用パフォーマンス
第7章 政策・制度が労働市場パフォーマンスに果たす役割の再評価:定量分析
第1節 構造的失業の決定要因
1.1 政策、制度および失業:ベースライン結果
1.2 失業パターンの追加的決定要因:最低賃金、積極的労働市場プログラム、住宅政策
1.3 制度とマクロショックの相互作用
第2節 各層別就業率
2.1 男性・女性壮年層
2.2 高齢労働者
2.3 若年労働者
2.4 政策が就業率に及ぼす効果の要約
付属資料7. A1 ベースライン回帰モデル
参考文献
統計資料
資料 OECD新雇用戦略東京フォーラム:議長総括
訳者あとがき
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