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2007年5月20日 (日)

規制改革会議さん全開

ネットには載っていませんが、朝日の夕刊に「解雇の金銭解決求める 規制改革会議労働法制原案」というのが出ています。

この見出しを付けた記者は、解雇の金銭解決が最大の要求事項だと思いこんでこういう見出しを付けたんでしょうが、それは実は違うのです。

現在、規制改革会議で労働担当は福井秀夫氏ですが、彼は、そもそも解雇するのは使用者の当然の権利なのだから、カネを払わされるのはおかしい、という考え方で、ベストは一切カネなど払わず自由に解雇できるようにすべきだが、すぐにそうはできないので、とりあえず金銭解決するのもやむを得ないという思想なのです。その辺は、昨年出た『脱格差社会と雇用法制』ではっきり書いています。

金銭解決を重要課題として求めていたのは、今は経済財政諮問会議に移った八代尚宏氏の方です。で、わたしはそっちはそれなりに合理的な面もあると思っています。

福井氏は八代氏とは異なり、解雇自由原理を骨の髄から信奉していますから、金銭解決などという解雇不自由(カネを払わなければクビにもできない)は本当は嫌いなんですね。

こういうところは、雇用法制を巡る議論において極めて重要なポイントなのです。アメリカは解雇自由の国ですが、ヨーロッパの多くは解雇に正当な理由が必要ですが、概ね金銭解決で決着しています。日本のようにカネでも切れない国はあまりありません。

新たなメンバーの規制改革会議の危険性がどこにあるのかは、的確に認識しておかないと、この記事のようないささかピント外れの記事ばかり書いていたのでは、世の中をミスリードすることになります。

このあたりは、そのうちに某所で詳しく書く予定ですが、労働に関わるジャーナリストの皆さんも、もう少しこのあたりの微妙なセンスを感じていただけると有り難いのですがねえ。

(追記)

福井氏の「解雇規制は学歴差別を助長する」論については、労務屋さんこと荻野勝彦氏の懇切な批判があります。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20060428

これにつけた私の貧弱なコメントもどうぞ。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/post_6879.html

また、某所での会話も面白いですよ。

http://d.hatena.ne.jp/potato_gnocchi/20060507/p1

(再追記)

参考のために、21日に公表された意見書の記述を引いておきます。

>、解雇の金銭的解決については、判例により人為的に作り出された一種の「解雇権を排除する強力かつ不明朗な規制」を無批判に与件とする議論であることから、そうした規制自体の不条理を直視し、その強さの範囲を見直すことが先決であることを前提として、引き続きその見直しとの関連で検討すべきであるが、その道程に至るなかで、試行的な導入を検討することも考えられる。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2007/0521/item070521_01.pdf

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コメント

いつも注目しながら読んでいます。
まさに、ご指摘の通りですね。
自分も労働関係の記者ですが、見出し先行になりがちなので、金銭解決というわかりやすいところに食いついてしまうのです。記者も編集者も。

記者の方からのコメント有り難うございます。
今回のは、玄人の目から見ると面白い点がいっぱいなのです。

このブログでは今まで、規制改革派の言ってることと経営側が求めていることとは(一致するところも多いけれども)枢要のところでものすごく違うんだよ、ということを繰り返し説明してきたわけですが(このあたりは、労務屋さんのブログを見れば分かることですが)、今回の奴は、その同じ規制改革派に見えるかも知れないけれども、八代氏と福井氏が実はどれだけ違う土俵に立っているかが如実に出てきているという点が興味深いところなわけです。

それは、実をいえば今までの議事録を注意深く読んでいけばちらちらと垣間見えていた点ではあるんですが、これまではなんと言っても八代氏が規制緩和のボスでしたから、あんまり表面に現れていなかったのですね。

それにしても、厚生労働省や労働法学者、労働経済学者の悪口を言うのは結構ですけれど、同じ内閣府の中で調整してくれよな、という気分もありますね。

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