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ハローワーク市場化テスト案

昨日のエントリーで紹介したハローワーク市場化テスト案が、昨日夕方開かれた経済財政諮問会議に提出され、了解されたようです。

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2007/0509/interview.html

大田大臣の説明では、

>民間議員から長年の懸案に対して、柳澤大臣からの英断で道が開かれてことを評価するという評価がありました。

>民間議員から、なるべく早く平成20年度に実施してほしいという要請が出されました。

>最後に総理から御発言がありました。ハローワーク本体業務の民間委託というのは、10年前から検討されているけれども実現できなかった課題である。柳澤大臣の提案は、官民が机を並べて、文字通りの官民競争が行われるわけで非常にわかりやすい仕組みである。明確な成果が出ることを期待したい。これは非常に改革の大きな一歩である。柳澤大臣や関係各位に感謝申し上げたい。今後も徹頭徹尾、利用者の立場に立って官民のイコールフッティングのもとで市場化テストが実施されるよう制度設計を行ってほしいという御発言がありました。

ということですので、恐らく2008年度から3年間テスト期間として実施されるということなのでしょう。

その中味ですが、

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2007/0509/item6.pdf

>○ハローワークの本庁舎内の職業紹介部門について、民間委託部門を併設する。
◆求職者は設置された官民の窓口を自由に選択。
◆雇用保険受給者も対象とするが、失業認定を厳正に行うための職業紹介は官が行う。
◆福祉機関等と連携した「チーム支援」の対象者(※)も官が行う。
※〔障害者、生活保護・児童扶養手当受給者、刑務所出所者〕の一部
【業務内容】
○職業紹介、職業相談
○その他、就職支援のための措置
【実施施設】東京(23区内) 2所
※官の職業紹介窓口の職員数を削減

ということだそうです。

重要なのが、「求職者選別・求人求職情報管理の問題」ですね。

>○民間事業者が求職者の選別(より就職が困難な者を官の窓口に回す、後回しにする、優良求職者を自らの取引先等に誘導するなど)を行わないための仕組みを整備。
◆窓口利用者に対するアンケートを義務づけ、求職者の選別の有無等を確認する(官民で実施)。
◆就職困難度が高い求職者(例:障害の種別・程度、年齢階層、離職の有無、個人の属性)の就職目標を設定した委託費の支給方式とし、ディスインセンティブ方式などを検討。その他の方策についても検討。
○民間事業者が得ることとなる求人求職情報の適正利用、守秘義務などについて受託終了後を含む厳格な行為規制を課す仕組みを整備。
◆求人求職情報の不適正利用(自らの営利目的事業への利用等)をチェックするためのシステムの構築を検討(求人・求職者への適正利用ルールの周知、相談・苦情窓口の設置、上記CD-ROMのコピー制限、利用後の回収など)。

という風に、かなり厳格に設計されています。「柳澤大臣からの英断」と喜んでいますが、某派遣会社も「売れない求職者は嫌よ」といえない仕組みになったわけで、さて、収支勘定をよく考えたら手を挙げた方が得なのか挙げない方が得なのか、よく考えてみた方がいいものになったのかも知れませんよ。

 ただ、逆に言えば、本気で就職困難者の就職促進に取り組もうと思うようなソーシャルな企業にとっては、思い切って参入する機会が開かれたということになるかも知れません。

最後に「その他」として、

>○テスト期間(3年間程度)の結果を踏まえ、その後の対象の在り方について検討。
○労働関係法令等違反企業、障害者雇用率未達成企業等は、入札から排除する。
○受託民間事業者は、窓口業務のために一定数の正社員を確保するものとする。
○契約途中でも問題があれば契約を解除。
○民と官のイコールフッティングを確保し、市場化テストの目的が十分に達成されるようにする。この観点が実質的に確保されるよう、官民競争入札等監理委員会で行われる「公共サービス改革基本方針」及び「実施要項」の審議を経て、市場化テストを実施する。市場化テスト実施後においても、業務の実施状況についてのフォローアップにおける同委員会の意見を十分に尊重し、必要な場合には、適切な改善措置等を講じるものとする。

というのが載っています。最後の○は大田大臣が「私の方からぜひ入れて下さいとお願いして入れていただいた部分」だそうですが、その前の3つは、労働政策の一翼を担うわけですから、当然といえましょう。

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コメント

都内のハローワークの職員です。実際のハローワークを見たこともない人たちが、「官は非効率」というお決まりの結論を振り回している中で、ガチンコ勝負をしなければ理解してもらえないだろうと思っていました。
議論されてきた中では、今回の市場化テストの方法は良かったと思います。
もし、あるハローワークが包括的に民間委託された場合、私はその機関とは連携しません。競争しろ、というのですから、民間のように情報を囲い込み、自分に有利にするでしょう。その結果、不利益をこうむるのは国民です。
実は、障害者など就職困難者への対応は、ハローワーク間の連携は欠かせないのです。
そういう点から、全国ネットが崩れないまま市場化テストが行えるのは、われわれのメンタリティーからも良かったと思います。
マスコミは相変わらず、ハローワークが負けるという結論をもって記事を書いています。しかし、私は絶対にハローワークが勝つだろうと思っています。なぜなら、「大量に」「公正・公平に」というハローワークが持つ手法は、民間で行っているところはないからです。
しかし、日経新聞の社説にはあきれてしまいました。「フリーター」「ニート」問題が、あたかもハローワークのせいであるかのような論調は、「フリーター」「ニート」問題の何たるかをまったく理解していないことを露呈しています。例えば、「ニートには発達障害が多い」と指摘し、厚生労働省に対策を求めていったのはハローワークの窓口職員です。
以前、毎日新聞の社説には、「10年間ハローワークは何もしてこなかった」というようなことが書かれてありましたが、10年前のハローワークと現在のハローワークでは、中にいる職員にとってもまったく大きく変わっています。
新聞社にとって社説とは、特定の記者の観念、思いつきで書くものなのでしょうか。私には2つの社説とも、とても足を使ってハローワークの現場を調べている人が書いたとは思えません。
まあ、われわれに発言権はないのでしょうが。

投稿: 結論に異議あり | 2007年5月11日 (金) 01時16分

 少し古くなりますが、2005年に労働政策研究研修機構で「ホワイトカラー有料職業紹介事業の運営と紹介業務従事者に関する事例研究」(西澤弘氏)と題した研究報告がなされています。その第二章において、有料職業紹介事業の業務運営の類型化を試みています。類型化の指標のひとつに「マッチングの重心」があります。

>マッチングには求人要件を前提にして企業の求める人材像に適合する求職者を探す流れと、求職者側の情報を前提にして求人を探す流れがある。~大半の紹介会社では前者のマッチングが中心になっている。組織として後者のマッチングを重視している会社は少ない。

 この研究報告では、マッチングの流れを「求人→求職者」の方向と、「求職者→求人」の方向に類型化し、コスト回収の必要性から、大半の民間職業紹介会社が、前者のマッチングの流れを採用せざるをえないことを述べています。
 ハローワークに対する批判として「官でなくて民であれば、もっときめ細かいマッチングが低いコストで可能である。」といったものがあります。この批判はある意味まとを射ているといえますが、認識が片手落ちです。正確には次のように言い換えるべきでしょう。「官でなくて民であれば、求人者の要望に合わせて、もっときめ細かく求職者を選別することが、低いコストで可能である。」
 ハローワークのマッチングのシステムを洗練させていく必要があることに異論はありません。職員の資質向上も必要です。必要であれば、民間のノウハウからも学ぶべきでしょう。しかし、民であれば全てがうまくいくといった単純な発想は、マッチングのプロセスに関する分析、民間職業紹介事業者の現状の理解及びキャリアコンサルティングに期待されている社会的役割(例えば若年者に対して必要なのは、スーパーの職業発達論的視座等に立った、コスト意識にある程度縛られないキャリアコンサルタントです。)に関する思慮が不足しています。
 ハローワークに、全ての求職者を対象にしたセーフティネットとしての役割が求められる以上、求職者の選別はできません。「民間のノウハウはすばらしい。」という結論ありきで事が動いているようですが、求人者の要望に重心をおいた民間職業紹介事業者のマッチングのノウハウが、セーフティネットのなかで有効に機能するかどうかは全くの未知数です。求職者の選別ができない仕組みが厳正に確保されるなかで市場化テストが実施され、それでも民間にコストと実績で軍配があがるのであれば、民間開放を進めるべきでしょう。

投稿: マッチングの重心 | 2007年5月22日 (火) 21時28分

 追記です。市場化テストに先駆けて、札幌市北区で官民共同窓口のモデルケースを実施しております。ハローワークと民間職業紹介事業者二社が同じ場所で、職業紹介の実績を競うもので、さきに経済財政諮問会議で提案のあった東京のモデルと類似するものです。04~06年度の三年間実施されていました。本日付けの北海道新聞にその記事が掲載されております。(北海道新聞のサイトにはアップされていないかもしれませんが。)

 >~ハローワークが実績、規模とも圧倒しているため、官民それぞれが運営するなかで特徴を生かした役割分担をしつつある。~民間二社はカウンセリングが中心で「1人1人にきめ細かく対応し、仕事に関するあらゆる相談に応じる。」と口をそろえる。

 昨今の時勢のためか、ハローワークが実績において民を上回ったのにもかかわらず、「役割分担をしつつある」という評価で表現されております。仮にハローワークが負けていたとしたら、「ハローワークではカウンセリング中心です。」なんて言っても黙殺されるのでしょう。そもそもきめ細かいカウンセリングは、就職に結びつかないということでしょうか?

投稿: マッチングの重心2 | 2007年5月23日 (水) 09時31分

18年度のハローワーク市場化テストモデル事業の実績評価が厚生労働省のHPに掲載されましたね。昨年に引き続き、国が民間を上回る成績を残しています。就職率や定着率だけでなく、就職支援に関しての「利用者の満足度」においても、国が87.8%、民間が76.5%と、大きく差をつけております。

投稿: 市場化テスト結果 | 2008年3月25日 (火) 19時25分

7月10日に「公共サービス改革基本方針」が閣議決定されました。ハローワーク本体の市場化テストは記載がありません。求人開拓などの関連事業は記載がありますが、結果は明らかでしょう。決着がつきましたね。結局全てのモデル事業で官が連戦連勝したわけです。あの騒ぎはなんだったのでしょう。民間が入札に参加せず事業に空白期間ができたことさえありました。ハローワークをこきおろして事業を強引に推進した人・マスコミは、どう総括してくれるのでしょう。官民競争入札等監理委員会のホームページには落合委員長の気恥ずかしい談話が未だに堂々とアップされています。この談話が掲載された時点で現場の職員の削減は限界点にきていました。
>、「公共職業安定所(ハローワーク)」についての反応は、巨額の国費をもって膨大な人員と多数の施設を維持して実施されている現状の変更は一切認めないとするものであり、監理委員会としては、「公共サービス改革法」の趣旨に基づき、今後、時代の変化を踏まえた雇用のセーフティネットの質の維持向上と効率化をいかに実現するかとの観点から、当該府省等において国民の視点に立ったより前向きな検討がなされるように強く要望するものである。

投稿: 決着 | 2009年7月29日 (水) 14時35分

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「ハローワークの市場化テストとインセンティブスキーム その6」まで議論してきたハローワークの市場化テストが実施されることになりました。 [続きを読む]

受信: 2007年5月11日 (金) 23時29分

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