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2007年5月

EUがワークライフバランス第2次協議

一方、昨日欧州委員会は、仕事と私生活と家庭のバランスに関する第2次協議を行いました。

http://ec.europa.eu/employment_social/emplweb/news/news_en.cfm?id=248

http://ec.europa.eu/employment_social/social_dialogue/docs/reconciliation2_en.pdf

協議文書がいう優先課題は、父親が育児休業をとるインセンティブ、育児休業取得による差別の禁止、育児休業期間、分割取得などの柔軟性、対象となる子供年齢層(小学校卒業まで)、育児休業中の手当などです。

育児休業については既に労使団体間の協約がありそれがそのまま指令になっているという経過もあり、欧州委員会としては是非労使が交渉に入って欲しいという強い希望を示しています。

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規制改革会議第1次答申

というわけで、昨日めでたく規制改革会議の第1次答申が出されました。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2007/0530/item070530_02.pdf

目次を見るだけで笑えます。

Ⅰ.「規制改革推進のための第1次答申」の決定・公表に当たって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
Ⅱ.各重点分野における規制改革
1 質の高い国民生活の実現・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
(1)保育、福祉、介護分野・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
(2)医療分野・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
(3)生活・環境、流通分野・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
2 イノベーション・生産性向上・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
(1)教育・研究分野・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
(2)IT、エネルギー、運輸分野・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33
(3)住宅・土地分野・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50
3 国際・オープン経済・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61
(1)国際経済連携分野・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61
(2)基準認証、法務、資格分野・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73
(3)競争政策、金融分野・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77
4 再チャレンジ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88
(1)雇用・就労分野・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88
5 地域活性化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91
(1)農林水産業分野・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 93
(2)地域産業振興、国と地方分野・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 103
6 官業改革・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 110
7 基本ルール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 127

なぜでしょうか、「4 再チャレンジ」の所だけ、(1)があって(2)がありませんね。

もちろん、ここには「(2) 労働分野」というのが入るはずだったんですね。まあ、福井先生猛烈な自爆攻撃で既に「意見書」として発表していらっしゃるから、いまさら答申になんか入らなくても構わないんだい、ということなんでしょうか。

それにしても、こうして見事に民間労働分野がすっぽり抜け落ちた規制改革会議の答申というのも感慨深いものですな。もう労働法制に規制緩和は要らないということなのかな?

日本経団連がコメントを出していますが、

http://www.keidanren.or.jp/japanese/speech/comment/2007/0530.html

>会議発足からわずか4ヵ月という期間内に、新たな課題や積み残しとされてきた困難な課題に取り組み、第1次答申を取りまとめられた規制改革会議の草刈議長はじめ委員各位に、心から敬意を表したい。

本音を言ったらいかがですか。キチガイじみたことをさんざんぱら書きやがって、挙げ句の果てに全部消えてしまいやがった。積み残されたホワイトカラーエグゼンプションはどこへ行ったんだ。こんどこそきっちりとやってくれええ!

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労働3法案は成立困難に

というわけで、結局「与党は年金救済法案を優先審議 労働3法案は成立困難に」なったようです。

http://www.asahi.com/politics/update/0529/TKY200705280493.html

>政府・与党は28日、年金記録のずさんな管理で支給漏れがある人に全額を支払う救済法案を30日に提出し、週内にも衆院厚生労働委員会で審議入りする方針を固めた。25日に同委員会で審議入りしている労働関連3法案の審議をストップし、後回しにすることになる。これによって労働3法案の今国会での成立は困難になった。

労働国会というかけ声は何だったんでしょうね。これでは社保庁国会じゃないですか・・・、といってみても、政治のロジックというのはこういうものなのでしょう。

うまくいかないときは何ごともうまくいかないものですが。ただ、かつての労働省時代と違い、厚生労働省になっているので、今後のタイミングの測り方も難しいですね。連立多元方程式の一つの変数になってしまったようなもので、労働だけみて動ける時代ではないのですね。

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労働分野盛り込まず

朝日によると、「政府の規制改革会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)が月内にまとめる第1次答申で、原案にあった労働分野の提言を盛り込まないことが28日分かった」んだそうです。まあ、経済財政諮問会議におけるあの無視されようからすれば予想されたことではありますが。

http://www.asahi.com/politics/update/0528/TKY200705280291.html

>政府内や連合などから批判が噴出。答申に盛り込めば批判がさらに広がりかねないことから、同会議側が配慮を示した形だ。

>柳沢厚生労働相は22日の参院厚労委で「政府の一部門の末端の組織といえども、方向性において(政府方針と)まったく違うような意見表明をするのは適切さを欠いている」と批判。また、最低賃金の中長期的な引き上げを議論する政府の成長力底上げ戦略推進円卓会議に参加する連合からも「これでは円卓会議につき合えない」という反発も出たことで、政府内からも見送りを求める声が出ていた。

>ただ、いったん公表した提言を答申に盛り込まないことは、同会議の今後の推進力にも影響を与えそうだ。

まあ、「いったん公表」というのも、福井氏が勝手にタスクフォースの名前でやったことなわけで、傷口を広げたのは自己責任ではありますが。

個人的な希望申し上げますとですね、実はあの無謀きわまる意見の中味をそっくりそのまま答申に入れて欲しかったのでありますよ。入れてしまって、さすがにそんな馬鹿なものを閣議決定できないという状況に追い込まれてしまった方が、規制改革会議さんの今後の教訓になったのではないかと愚考しておるんですがね。

今回のような決着では、またぞろ同じようなことをしでかしてしまいような悪寒が・・・。

ま、なんにせよ、八代先生なき規制改革会議にも物事のバランスを分かって行動する方がまだいらしたということで、めでたしめでたしというところでせうか。

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ケーザイ学が悪いんじゃなくって・・・

Demilogさん経由で、こころ世代のテンノーゲームさんのブログに面白い記述があるのを見つけました。

http://d.hatena.ne.jp/demian/20070528

http://d.hatena.ne.jp/umeten/20070527/p3

>どうも経済学を学ぶ人間はその性格が「経済学的に正しい人間像」であるところの「経済人」になっていく、つまり利己的な人間になっていくというのだ。

>ブログ界隈を見ていても、経済学者や経済学畑の人間てのには、露悪的・罵詈雑言癖のある人格異常者が多すぎる。「経済学は学術界の頂点!未来を開く新しい研究であるのだー!」とでもいうつもりなのか。 露悪というか、高慢というか、蔑視的過ぎるだろ、常識的に考えて……

御説ごもっともといいたいところですが、ちょっと違うような・・・。

人格高潔でバランスのとれた労働経済学の専門家の方々をよく知っている身からすると、これって、要するに議論の対象のことを何も知らんで、初等ケーザイ学教科書嫁とばかり喚いている特定の類型の人々にしか当てはまらないのでは?

むしろ、素人がなまじケーザイ学というおとなのおもちゃに夢中になっていじくり回している状態が一番危なっかしいのであって。

そういう手合いがブログ界隈にたくさん棲息しているのは事実だし、近頃は政府の重要な審議機関にまで入り込んで、妙な意見書を出しているのは確かですが、自分の専門分野をきちんと持って対象のことをよく理解した上で経済学的知見に基づく政策を語っていらっしゃる皆さんにまで及ぶような批判の仕方はいかがなものかなあ、という感想を持ちましたね。

「社会学!」と一声叫べば市場が消えてなくなるわけではない。マーケットの失敗は基本的にマーケットメカニズムを利用する形で解決するのがいいわけで。

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大暴走はどこへ行ったの?

昨日の経済財政諮問会議に、規制改革会議の草刈議長が第1次答申の内容について報告をしているのですが、

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2007/0525/agenda.html

その「主な内容」の中に、日本の急進的リバタリアンの先頭を突っ走る我らが福井秀夫先生の渾身の力作が全然載っていません。

「以下の事項を含め前進のあった事項を盛り込み、5月末に第1次答申を取りまとめ。☆第1次答申で結論を得られないものは、追加課題とあわせ引き続き検討、本年中に第2次答申をとりまとめ。」だそうで、どうも結論を得られそうにないんでしょうかね。相手かまわず片っ端から殴りつけていれば、まとまるものもまとまるはずがないというのは、役人をちょっとでも経験していればわかるはずのことではありますが・・・。労働に関わることが何も書かれていないと言うことに、大きな意味があるわけです(公務員の年齢制限の話は大きく取り上げられていますが、こちらは福井氏の担当ではないですね)。大田大臣も、例の意見書の内容は一切無視しているようです。

ただ、もう一つ気になる話題があります。地方分権改革について有識者議員が提出した資料(国の出先機関の大胆な見直し)ですが、こんなことを書いています。

>B.地方に移譲可能な事務のうち、現在は主に国のみでその事務を行っているもの(例:労働基準監督)→ 仕事と人員の移譲を検討

をいをい、労働基準監督業務を地方に移せると思ってるの?ILO条約を読み直してね、と言いたいところですが、後ろの方を見ると、監督署の業務として、

>・解雇・賃金・労働時間などの総合労働相談

・労働保険に関すること(労災保険給付など)

・統計調査(賃金構造基本統計)

しか出てきていません。まさか、それだけだと思っているわけではないですよね。

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改正パート労働法成立

本日、改正パートタイム労働法が参議院本会議で可決成立したということです。

http://www.asahi.com/politics/update/0525/TKY200705250115.html

とりあえずはおめでとうございます。ご苦労様でした >短時間・在宅労働課の皆様

これが附帯決議だそうです。

http://www.jil.go.jp/kokunai/mm/siryo/20070525.htm

法制的な宿題は、

>差別的取扱い禁止の対象となる短時間労働者の要件については、雇用の実態を踏まえ、労使双方にとって公正な運用が行われるよう十分配慮しつつ、その範囲が明確となるよう、判断に当たって必要となる事項等を示すこと。

>いわゆるフルタイムパート(所定労働時間が通常の労働者と同じである有期契約労働者)についても本法の趣旨が考慮されるべきであることを広く周知し、都道府県労働局において、相談に対して適切に対応すること。また、我が国における短時間労働者の多くは、労働時間が短いことに加え、有期労働契約による問題が多い実態を踏まえ、有期契約労働者と通常の労働者との均等・均衡待遇の確保を進めるため、有期契約労働者に関わる問題を引き続き検討すること。

>正社員の労働条件について、本法を契機として合理的理由のない一方的な不利益変更を行うことは法的に許されないことを周知するとともに、事業主に対して適切に指導を行うこと。

といったところです。有期労働者の均等・均衡待遇の話は、労働契約法への宿題ですね。

その労働契約法を含む労働基準関係3法案は昨日衆議院本会議で審議入りしたようですが、今国会会期中に成立まで漕ぎ着けることができるかどうか、政治情勢は政治家の皆さんにしか動かせませんから、お祈りするより外にありませんね。

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ラヴァル事件に法務官意見

EUのサービス自由化と絡んで大きな問題になっていたラヴァル事件ですが、去る5月23日に欧州司法裁判所から法務官意見が出されました。

http://curia.europa.eu/jurisp/cgi-bin/form.pl?lang=en&newform=newform&Submit=Submit&alljur=alljur&jurcdj=jurcdj&jurtpi=jurtpi&jurtfp=jurtfp&alldocrec=alldocrec&docj=docj&docor=docor&docop=docop&docav=docav&docsom=docsom&docinf=docinf&alldocnorec=alldocnorec&docnoj=docnoj&docnoor=docnoor&typeord=ALLTYP&allcommjo=allcommjo&affint=affint&affclose=affclose&numaff=&ddatefs=&mdatefs=&ydatefs=&ddatefe=&mdatefe=&ydatefe=&nomusuel=&domaine=&mots=&resmax=100

結論は、組合側の主張をほぼ認めているようです。労働協約の一般的拘束力宣言の制度のない国(スウェーデン)では、外国のサービス提供者に実際の労働協約の賃金率を強制するために事業所封鎖や連帯活動のような集団的行動をとることが許されると述べています。

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労働組合の批判ですが・・・

世間をお騒がせしている規制改革会議労働タスクフォースの意見書ですが、連合、全労連がそれぞれ批判する声明を発表しています。

http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/danwa/2007/20070522_1179828732.html

http://www.zenroren.gr.jp/jp/opinion/2007/opinion070524_02.html

中味を批判しているのは当然ですが、この違いにご注目。

>同意見書は、すでに国会に上程されているパートタイム労働法にも言及し、政府の労働市場専門調査会が提起している「数値目標による就業率向上策」にも否定的見解を示すなど、無責任極まりない内容になっている。
この意見書で打ち出された内容が、心ある経営者や行政担当者たちの共感を呼ぶとはとても思えないが、今後の最終とりまとめにおいては、抜本的な見直しが行われ、良識ある方向が示されるべきである。(連合)

>その内容は、日本経団連が「御手洗ビジョン」(2007年1月)をもとに、5月15日に政府に提出した「規制改革の意義と今後の重点分野・課題」と題する要望書で、「雇用・労働法制の見直し」を求めた課題と符合するものである。政府の一審議会の検討グループが、労働法制という労使間の利害の対立する事項について、使用者側の主張を後押しする「報告書」を公表すること自体が不当である。検討に当たって、労働者側の意見を聴取もせずに取りまとめられている。このような手続き的な正当性を欠く「報告書」を認めることはできない。(全労連)

「心ある経営者」にどこまで含まれるかについては、人によって様々な見解があるところだと思いますが(誰が「心ない経営者」だとか言っているわけではありませんよ)、今回の意見書が「御手洗ビジョン」と符合するとか後押しするとか言われると、いささか異論のある経営者も多いのではないかと思います。

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外国人労働問題が焦点に・・・

というわけで、規制改革会議が大暴走、というよりほとんど自爆テロを敢行していますが、福井大先生に「ごく初歩の公共政策に関する原理すら理解しない議論を開陳する向き」とまで罵倒された労働法や労働経済研究者の入っている労働市場改革専門調査会-通称八代研-では、今度は外国人労働問題に焦点を当ててくるようです。

http://www.keizai-shimon.go.jp/special/work/08/work-s.pdf

これは5月11日の議事録ですが、

>(八代会長)本日から、第二次報告の取りまとめに向けて検討を始めたい。私としては、外国人労働問題を第二次報告の1つの大きな柱として考えているので、前半は、外国人が、地域住民として、日本人と交流を深め、協力し合うことを通じて、豊かな地域社会の構築を推進している群馬県新政策課政策主監の山口和美氏から、外国人住民の現状と課題について、群馬県の実状を踏まえて御報告いただく。後半は経済財政諮問会議の伊藤隆敏議員から、どのようにして外国人労働者を受け入れていくかについて御報告いただく。伊藤議員は、経済財政諮問会議の「21 世紀ビジョン」に関する専門調査会のグローバル化ワーキング・グループ主査として、平成17 年4月に、外国人労働の問題も含めた報告書を取りまとめていただいている。

この11日に厚生労働省が研修を実習にする提案をし、翌週経済産業省、長勢法相がそれぞれに提案をして、一気に話が盛り上がってきたことを考えると、時機を見て狙った的に的確に燃料を投下する八代先生のセンスには脱帽します。

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札幌の官民共同窓口

5月10日付の「ハローワーク市場化テスト案」へのコメントとして、「マッチングの重心2」さんが書き込まれた札幌の官民共同窓口の話、北海道新聞のHPには載っていませんが、読んでみるとこういう記事です。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_020a.html#comment-19049392

>全国で唯一官民共同で無料職業紹介を行っている札幌市就業サポートセンターが注目を集めている・・・。

ここに入っているのは、札幌のキャリアバンクという会社と、東京のリーガルマインドという会社です。ふむふむ、リーガルマインドさんねえ。例のLEC大学騒動のところですな。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89

http://ja.wikipedia.org/wiki/LEC%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E5%A4%A7%E5%AD%A6

実績を見ますと、

04年度(半年)で相談6030件、就職498人、

05年度で相談13612件、就職1287人、

06年度で相談14977件、就職1377人、

記事は「実績を上げつつある」と書いておりますが、そういえる数字なのかいささか・・・。

>ハローワークが実績、規模とも圧倒しているため、官民それぞれが運営するなかで特徴を生かした役割分担をしつつある

>民間二社はカウンセリングが中心で「1人1人にきめ細かく対応し、仕事に関するあらゆる相談に応じる。」と口をそろえる。

ものは云いようとも言えますが、考えてみれば当然の現象が起こっているだけとも言えます。

とはいえ、素晴らしい大学や大学院の運営をされていらっしゃるLECさんが、「カウンセリングが中心」というのも何となくブラックユーモアの気がないでもないですが・・・。

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週刊誌記事と団結権侵害

最高裁のHPに載っている新しい裁判例ですが、

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070518163139.pdf

原告はJR東労組の幹部、被告は週刊現代と記事を書いたルポライターです。メインの争点は、「テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」という連載記事が名誉毀損になるかどうかですが、併せてそれが団結権の侵害になると原告側が主張していて、この点についても判旨が若干触れています。

>本件連載は,JR総連やJR東労組の対立関係にある日本鉄道労働組合連合会(以下「JR連合」という)や「JR東労組を良くする会」の一方的。な主張や,虚偽の事実を並べ挙げ,JR総連やJR東労組がテロリスト集団であり,犯罪集団・反社会的集団であるかのように描き出している。これは批判という域を越えた労働組合組織への破壊攻撃といえる。労働組合においては,組合員の団結が生命であり,団結を維持することは個々の組合員にとって権利であり義務であるのだから,本件連載によるJR東労組への組織破壊攻撃があれば,原告の団結権は侵害されている。

という原告側の主張に対して、さいたま地裁は、

>労働組合は組合員の団結により構成されることから,個々の組合員の団結する権利や利益を侵害することで,損害賠償請求が認められることがあることはそのとおりであるが,労働組合の団結権ではなく,個々の組合員の団結権が侵害されたというためには,団結権侵害行為が個々の組合員に対し向けられていなければならないというべきである。しかし,前記のとおり,本件連載は原告に向けられたとは認められないことから,原告に対する団結権侵害行為があるとは認められない。よって,本件連載による原告の団結権侵害も成立しない。

と、正面から答えずにいなしています。

これは記事が向けられているのはJR総連やJR東労組であって、原告個人ではないから名誉毀損にならないという前段の結論からこう言っているんですが、そうすると、JR総連やJR東労組が原告となって訴えていたら、団結権侵害になり得たのでしょうか。

団結権侵害の主体になりうると考えられるのは、まずは使用者ですが、国も考えられます。しかし、週刊誌の記事(出版社やルポライター)が団結権の侵害主体になりうるというのは、よく理解できません。ていうか、この裁判官、あんまりそこまで考えてないのかも。

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OECD雇用見通し2006の最低賃金論

新聞各紙は規制改革会議が最賃を批判したというところに関心を集中しているようなので、世界の優秀なネオリベ系エコノミストを集めたOECDの最新の『雇用見通し2006』でこの問題をどう取り上げているかを紹介しておくのも無駄ではないでしょう。優秀なエコノミストの皆さんはもちろん「初等ケーザイ学教科書嫁」で話を済ませたりはしません。

http://www.oecd.org/document/38/0,2340,en_2649_37457_36261286_1_1_1_37457,00.html

86ページ以下でで最低賃金を論じていますが、

>単純な経済学の理屈は、法定最低賃金や高すぎる労働コストが低生産性労働者の雇用への障壁になると指し示す。しかしながら、最低賃金の結果としての雇用喪失の規模を図ることは困難であると証明され、各国で設定されている最低賃金によってどれだけの仕事が失われたかについては顕著な不確実性がある。実際、最低賃金の雇用に対する否定的な影響の経験的証拠は入り混じっている。・・・

>最低賃金は低技能者にとって仕事が引き合うようにする(make work pay)ことによって高労働力率をもたらしうる。しかし、それは広い貧困対策においては、過度に高い水準に設定することを避ける必要から、支援的役割のみを果たしうる。もう一つの重要な限界は、最低賃金で働く労働者が貧しくない(他の家族メンバーが働いているから)ことである。

>在職給付は最低賃金よりも低所得家族に焦点を当てることができる。さらに、穏当な最低賃金は、使用者が賃金水準を下げることによってこの給付を着服することを制限することによって、在職給付への有用な付加になりうる。

>最低賃金について重要な問題は税制との関係である。高すぎる最低賃金は雇用へのタックス・ウェッジの否定的な影響を拡大するからだ。低生産性労働者を雇用しようとする使用者は、労働者の生産性と最低賃金額と使用者が払う社会保険料を比較する。・・・

>(結論として)近年の経験が示唆するところでは、穏当な最低賃金は問題ではない。しかし若者や他の脆弱な集団の(最賃より低い)特例最賃への十分な手当が不可欠である。他の洞察は、良く設計された最低賃金が社会給付にとどまるよりも働く方がペイすることを保障することによって、高い就業率にむけた広範な戦略に貢献するという点である。しかしながら、否定的な政策の相互作用による危険性もまた確かであり、特に高すぎる最低賃金と高水準の労働課税の間にそれが見られる。

この他にも本書にはいくつか最低賃金に言及したところがありますが、近々樋口美雄先生の監訳で明石書店から出版される予定ですので、そちらのよりすぐれた翻訳でお読みいただいた方が宜しいかと思います。

いずれにしても、経済学の知見に基づき労働問題を分析するというのはこういうレベルのものを言うのだなあ、ということがよく分かる本です。政府の中枢機関の政策文書が「初等ケーザイ学教科書嫁」で済んでしまう極東の某国とはちょっと違いますなあ。

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三者構成原則について

意見書の記述のうち、「労働政策の立案について」のところは政策の中味ではなく、政策決定過程のあり方に関わる問題なので、エントリーを別に起こして論じておきたいと思います。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2007/0521/item070521_01.pdf

>第三に、労働政策の立案の在り方について検討を開始すべきである。現在の労働政策審議会は、政策決定の要の審議会であるにもかかわらず意見分布の固定化という弊害を持っている。労使代表は、決定権限を持たずに、その背後にある組織のメッセンジャーであることもないわけではなく、その場合には、同審議会の機能は、団体交渉にも及ばない。しかも、主として正社員を中心に組織化された労働組合の意見が、必ずしも、フリーター、派遣労働者等非正規労働者の再チャレンジの観点に立っている訳ではない。特定の利害関係は特定の行動をもたらすことに照らすと、使用者側委員、労働側委員といった利害団体の代表が調整を行う現行の政策決定の在り方を改め、利害当事者から広く、意見を聞きつつも、フェアな政策決定機関にその政策決定を委ねるべきである。

 まず根本的に、政府の一機関であるにもかかわらず、国際労働基準については国際的な基準として、国内における政労使三者協議体制がILO第144号条約によって要求されているという点を全く無視している点が驚くべきものです。同条約は、ILO条約を批准しないことで知られるアメリカを含め、ほとんど全ての先進国を含む120カ国によって批准されています。同様に批准している日本がこれを敢えて否定するという意図であれば、あらゆる先進諸国から厳しい批判を被ることを覚悟していると考えられますが、それでもよいのでしょうか、それとも単なる無知なのでしょうか。

 少なくとも、労使が最も重要な利害関係者(ステイクホルダー)であるがゆえに政労使協議体制を要求していることを踏まえれば、「利害当事者たる労使間における見解の隔たりは常に大きく、意見分布の埋まらぬままの検討により、結果は妥協の産物となりがち」などという見解は撤回されるべきものでしょう。労使の利害がもともと大きく隔たっているがゆえに、時間をかけた丁寧な協議によって徐々にその見解を接近させ、結果として労使の一方のみに有利な決着ではなく、双方がそれなりに納得しうる結果に到達しうるという点が、三者協議体制の最大のメリットであり、これは国際的にも確立されているのです。「妥協の産物」ゆえにけしからんとなどという論法は、ミクロからマクロまでおよそありとあらゆる政治的意思決定において必要とされる妥協というものの存在意義を頭から否定するということなんでしょうか。そのような妥協なき意思決定は、独裁国家においてのみ可能であり、さまざまな利害関係者の利害調整が民主的手続によって行われるべき先進国にふさわしいものではありません。

 もとより、議会制民主主義の原則からして、いかなる国でも最終的な意思決定は民主的に選出された政府がその責任で行うことに変わりはありません。しかし、その立法過程においては労使団体という利害代表者に特別の地位を与え、労使との協議を尽くすことが政策に正統性を与えるというのが先進国共通の基準であることを忘れるべきではありません。

 なお、今日の先進国の過半数が加盟する欧州連合においては、条約の明文において、労働分野の実質的立法権限を労使団体に委譲し、現実にも労使団体が自発的に締結した労働協約をそのままの形で指令として国内法に転換せしめています。

 もっとも、このような三者協議体制の正統性を認めた上において、現在の労働組合が主として正社員層を中心に組織していることから、それはフリーターや派遣労働者等非正規労働者の利害を適切に反映していないのではないかとの批判はありえます。八代先生は主としてここの点をちくちくと刺し込んでくるわけです。この点は、いくつかの観点から考える必要がありますが、まず現在の労働組合が非正規労働者をあまり組織していないといっても、他のいかなる種類の組織団体よりも非正規労働者を組織しているのが労働組合であることは否定できないでしょう。少なくとも、いかなる非正規労働者からもマンデートを得ていない学者や評論家に代表性がないのは明白ですし、そもそも利害が根本的に対立する派遣会社や請負会社に派遣労働者や請負労働者の利害代表性が認められないことは言うまでもありません。そして、今日いくつかの産別組織において、非正規労働者の組織化が積極的に進められ、その実績も上がってきていることを踏まえれば、やはり労働組合以外に彼らの利害を代表すべきものはないと言うべきです。

 もっとも、この点については例えば使用者側委員について一定人数を中小企業を代表する団体に割り当てていることなどを考慮すると、労働組合側の中に非正規労働者を代表する委員の枠を設定するなどの対策が考えられます。いずれにしても、重要なのは利害関係者を排除して意思決定を行おうとすることではなく、より的確な形で利害関係者の意見を意思決定過程に反映させていくことであるはずです。

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規制改革会議の大暴走

というわけで、ちらちらとニュー規制改革会議さんの暴走ぶりを眺めてきましたが、新聞記事という間接的な形ではなかなかニュアンスがつかめないなあ、ともどかしい思いを抱いておられた方も多いのではないかと思います。そこで、規制改革会議さんより出血大サービス、答申にとても入れられないような凄すぎる記述も全部まとめて大公開していただけることになりました。

昨日、規制改革会議再チャレンジワーキンググループ労働タスクフォースの名前で、「脱格差と活力をもたらす労働市場へ-労働法制の抜本的見直しを」という意見書が発表されたようです。「脱力をもたらす」と読んではいけませんよ。たとえ読んで脱力したとしてもね。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2007/0521/item070521_01.pdf

ちなみに、「再チャレンジワーキンググループ労働タスクフォース」の主査は、福井秀夫氏です。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/about/list/wg.html

この意見書の凄いところは、労働に関わりのある人々全てを敵に回そうとしているらしいことです。

>行政庁、労働法・労働経済研究者などには、このような意味でのごく初歩の公共政策に関する原理すら理解しない議論を開陳する向きも多い。当会議としては、理論的根拠のあいまいな議論で労働政策が決せられることに対しては、重大な危惧を表明せざるを得ないと考えている。

まあ、行政庁が何にもわかっとらんでアフォなことしとるというのは聞き飽きた悪口ですから今さら何にも感じませんし、労働法学者が硬直的でアフォの塊というのもまあよく聞かされる話ですから、ふむふむというところですが、そうですか、遂に労働経済学者の皆さんにも宣戦布告ですか。樋口先生や清家先生のように労働関係をうまく回すのに市場原理をいかに活用していくかを一生懸命考えておられる方々も「初歩の公共政策に関する原理すら理解しない議論を開陳する向き」だというわけですな。

東大法学部卒業の行政法専攻の元建設官僚ドノがそこまで言うと。

せっかくですから、いくつかコメントしておきましょうか。

>労働者保護の色彩が強い現在の労働法制は、逆に、企業の正規雇用を敬遠させ、派遣・請負等非正規雇用の増大、さらには、より保護の弱い非正規社員、なかでもパートタイム労働者等の雇用の増大につながっているとの指摘がある。

 いうところの「労働者保護」が何を指しているのか判然としませんが、労働者が人たるに値する最低限度の労働条件を確保するために、労働時間や賃金その他の労働条件についての最低基準を設定することを指しているのであれば、これはアングロサクソン諸国をも含め、いかなる先進諸国においても最低要件として確保されていることです。これを廃棄せよとの主張であるとすれば(後述の個別課題における記述からすると、そうである可能性も高いように考えられますが)、日本国政府の一機関たる規制改革会議として発出すること自体が国際的な糾弾の対象ともなるべき驚くべき主張であるといわざるを得ません。

 それに対し、「解雇規制を中心として裁判例の積み重ねで厳しい要件が課され」ている点を指しているのであれば、「労働者保護の色彩の強い現在の労働法制」という表現は極めて不適切でしょう。仮にこれを「判例法理」と解したとしても、それを「労働者保護の色彩の強い」とはいいがたいと思います。現在最高裁の判例で確認され、労働基準法において規定されている解雇権濫用法理は、アメリカを除くいかなる先進国にも共通して立法化されている不公正解雇の禁止に相当するものであり、使用者の恣意的な解雇を制約すること自体は国際的に見てもなんら過剰な規制といいうるものではありません。

>一部に残存する神話のように、労働者の権利を強めれば、その労働者の保護が図られるという考え方は誤っている。

これはおよそ社会科学に関わるものとしては信じがたいような無謀な見解ですね。ある特定の状況において、ある特定の権利を強化することが却ってそのものの利益にならないという逆説的な結果をもたらす「ことがあり得る」という命題であれば、社会科学においていくつかその例を示すことができるでしょうが、かくの如き一般命題を提示することができると考えているのであれば、およそ全ての労働者保護規制はことごとく労働者の利益に反すると考えていることになります。ここで挙げられている例で言えば、

>不用意に最低賃金を引き上げることは、その賃金に見合う生産性を発揮できない労働者の失業をもたらし、そのような人々の生活をかえって困窮させることにつながる。

今どきこんな単純素朴な議論を展開していると、OECDに行っても仲間はずれにされますよ。少なくとも、サッチャー時代に最低賃金を廃止し、ブレア政権下でこれを復活したイギリスの例においては、これが労働者の生産性向上に寄与し、少なくとも失業の増大につながってはいません。

また、現在日本で問題となっているのは生活保護水準との逆転現象であり、これは、働かなくても高い給付が貰えるのに、働くと低い賃金しか稼げない状況においては、労働者において敢えて働かないというモラルハザードが生じるのではないかという社会科学的見地からの懸念から論じられているのであって、国民経済全体における人的資源の効率的活用という観点を抜きにして論ずることは無謀でしょう。

>過度に女性労働者の権利を強化すると、かえって最初から雇用を手控える結果となるなどの副作用を生じる可能性もある。

これがかつての深夜業規制や時間外規制のようなものを念頭においているのであれば、男性労働者との均等待遇との関係において一定の正当性を有していると言えるでしょう。それ故に、累次の男女雇用機会均等法改正において、女性保護規定の緩和が図られてきたわけです。しかしながら、それはあくまでも女性労働者の機会均等の促進という政策目標のためであって、機会均等の権利強化は格段に図られてきているのです。機会均等面において「過度に女性労働者の権利を強化すると、かえって最初から雇用を手控えさせる結果となる」などという馬鹿げたことは、これまでの規制改革会議も含めていかなる者からも発せられたことはないと思いますが、敢えてそれを言うわけですか。是非内閣府内部できっちりと調整してきてくださいね。

>正規職員の解雇を厳しく規制することは、非正規雇用へのシフトを企業に誘発発し、労働者の地位を全体としてより脆弱なものとする結果を導く。

 この論点は、今日OECDの雇用戦略やEUのフレクシキュリティの議論においても論じられている点であり、上記とは異なり一定の論拠は存すると考えられます。ただし、上で見たように不公正解雇の禁止は先進国でほぼ共通の世界標準であり、問題は特に経済状況等による企業変動時等にどの程度まで雇用維持を要求するかのレベルにあると考えられます。この点については、今後労働契約法制の検討において、金銭解決の導入も含めて検討されるべきものでしょう。

>真の労働者の保護は、「権利の強化」によるものではなく、むしろ、望まない契約を押し付けられることがなく、知ることのできない隠された事情のない契約を、自らの自由な意思で選び取れるようにする環境を整備すること、すなわち、労働契約に関する情報の非対称を解消することこそ、本質的な課題というべきである。市場の失敗としての情報の非対称に関する必要にして十分な介入の限度を超えて労働市場に対して法や判例が介入することには根拠がなく、画一的な数量規制、強行規定による自由な意思の合致による契約への介入など真に労働者の保護とならない規制を撤廃することこそ、労働市場の流動化、脱格差社会、生産性向上などのすべてに通じる根源的な政策課題なのである。

これが上でいうところの「ごく初歩の公共政策に関する原理」なんだから笑っちゃいます。

ここには労働経済学や組織の経済学などの研究の蓄積による労働契約の特殊性-不完備契約理論についての考慮が全く見当たらないという点で真に驚くべきものと言えます。この文言からは、労働契約における唯一の問題は情報の非対称性であり、それは情報提供によって解決可能であって、それ以外に本質的な問題はないと考えているかの如くです。人間の主体的意思的行動自体が契約の目的であるため、すべてをあらかじめ契約で定めることが不可能であるということがなんら意識されていないということは、規制改革会議が想定する労働とは完全な単純労働のみであるということのようにも受け取れます。だとすれば、その見解はもっぱら単純労働者についてのみなされるべきでしょう。

こういう考え方は、この意見書を書いた福井氏の文章(『脱格差社会と雇用法制』所収)にも現れています。そこでは、不完備契約理論に対して、

>転職すれば教育訓練の効果が発揮できなくなるような、当該企業に固有の有益性しか発揮しない投資が現実に普遍的であるとはいえず

>他企業に一切移転することが可能でないような技術があるとしても、それは極めて限定的な領域にとどまる

などと、極限的な例を挙げて論駁したつもりになっています。そんな極端な投資や技術はないでしょうが、逆に転職しても100%ロスのない人的投資や技術があるかといえば、それも非現実的でしょう。真理はその中間にあり、ゼロでも百でもない転職ロスを極小化するためにいかなる制度設計が望ましいかが問題になるのではないでしょうか。

人間の意思的行動に基づく労働サービスそのものを契約対象とすることから、どんなに細かく定めても完備契約にはなり得ないというのが労働契約の特質であり、それをあえて規定しようとするとそのコストは天文学的なものとならざるを得ないがゆえに、労働契約規制は内容ではなく枠組みを定めることにとどまらざるを得ない、というのがまさに労働経済学や組織の経済学の教えてくれるところだと私は理解しています。

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規制改革会議さん全開その2

今日は毎日が規制改革会議さんのリーク記事です。

http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20070520k0000m040113000c.html

例によって、リバタリアン全開です。以下名言録をいくつか。

>ワーキングプアなど格差解消に向け取り組む最低賃金の引き上げについては「賃金に見合う生産性を発揮できない労働者の失業をもたらす」

>「労働者保護の色彩が強い労働法制は、企業の正規雇用を敬遠させる。労働者の権利を強めれば、労働者保護が図られるという考え方は誤っている

>女性労働者については「過度に権利を強化すると、雇用を手控えるなど副作用を生じる可能性がある。あらゆる層の労働者のすべてに対して開かれた平等な労働市場の確立こそ真の労働改革だ

これでも氷山の一角なんですが、なかなか凄まじいものではあります。これが「再チャレンジワーキンググループ」というのですから、なかなかのブラックユーモアの感覚がありますね。イナゴさん並みですな。

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規制改革会議さん全開

ネットには載っていませんが、朝日の夕刊に「解雇の金銭解決求める 規制改革会議労働法制原案」というのが出ています。

この見出しを付けた記者は、解雇の金銭解決が最大の要求事項だと思いこんでこういう見出しを付けたんでしょうが、それは実は違うのです。

現在、規制改革会議で労働担当は福井秀夫氏ですが、彼は、そもそも解雇するのは使用者の当然の権利なのだから、カネを払わされるのはおかしい、という考え方で、ベストは一切カネなど払わず自由に解雇できるようにすべきだが、すぐにそうはできないので、とりあえず金銭解決するのもやむを得ないという思想なのです。その辺は、昨年出た『脱格差社会と雇用法制』ではっきり書いています。

金銭解決を重要課題として求めていたのは、今は経済財政諮問会議に移った八代尚宏氏の方です。で、わたしはそっちはそれなりに合理的な面もあると思っています。

福井氏は八代氏とは異なり、解雇自由原理を骨の髄から信奉していますから、金銭解決などという解雇不自由(カネを払わなければクビにもできない)は本当は嫌いなんですね。

こういうところは、雇用法制を巡る議論において極めて重要なポイントなのです。アメリカは解雇自由の国ですが、ヨーロッパの多くは解雇に正当な理由が必要ですが、概ね金銭解決で決着しています。日本のようにカネでも切れない国はあまりありません。

新たなメンバーの規制改革会議の危険性がどこにあるのかは、的確に認識しておかないと、この記事のようないささかピント外れの記事ばかり書いていたのでは、世の中をミスリードすることになります。

このあたりは、そのうちに某所で詳しく書く予定ですが、労働に関わるジャーナリストの皆さんも、もう少しこのあたりの微妙なセンスを感じていただけると有り難いのですがねえ。

(追記)

福井氏の「解雇規制は学歴差別を助長する」論については、労務屋さんこと荻野勝彦氏の懇切な批判があります。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20060428

これにつけた私の貧弱なコメントもどうぞ。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/post_6879.html

また、某所での会話も面白いですよ。

http://d.hatena.ne.jp/potato_gnocchi/20060507/p1

(再追記)

参考のために、21日に公表された意見書の記述を引いておきます。

>、解雇の金銭的解決については、判例により人為的に作り出された一種の「解雇権を排除する強力かつ不明朗な規制」を無批判に与件とする議論であることから、そうした規制自体の不条理を直視し、その強さの範囲を見直すことが先決であることを前提として、引き続きその見直しとの関連で検討すべきであるが、その道程に至るなかで、試行的な導入を検討することも考えられる。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2007/0521/item070521_01.pdf

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研修・技能実習制度研究会中間報告書詳細版

月曜日に紹介した標記報告書ですが、その段階でリンクを張っていたのは概略版でしたが、厚労省のHPにPDFで詳細版がアップされたので、改めてリンクを張っておきます。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/dl/s0517-2a.pdf

以下、「おわりに」を転記しておきます。

>研修・技能実習制度は、アジア諸国の若者に我が国の技術・技能を付与し、これらの国の技術向上に寄与することを目的としており、21世紀の国際社会、とりわけ、アジアにおいて指導的地位に立つことが期待される我が国にとって益々重要な意義を持つ制度として、その発展が期待される。

>その一方で、一部の受入れ企業において、研修生・実習生が劣悪な居住環境・就労環境の下で拘束的な労働を強いられていたり、中には、セクハラ、暴力等の人権侵害を受けているなどの事案も発生している。こうした事態は、一刻も早く根絶する必要がある。

>これら現在発生している問題事案については、これをいたずらに放置することなく、迅速に対応することが必要であり、制度の適正化に係る提言内容については、可能なものから順次実行に移していくことを強く希望する。

>本報告においては、各論として、具体的な見直し内容の提言までに至らず、検討の方向性を示すにとどまったものもあり、これらの課題については今後引き続き議論を深めていくこととする。

>上記の見直しを契機に、研修・技能実習制度が本来の趣旨に立ち返って、アジア全体の技術力向上・経済成長に貢献する制度として発展することを期待するとともに、そのためには、政府、地方公共団体、労使団体、業界団体、個々の企業経営者等関係者の真摯な努力が不可欠であることを最後に指摘しておきたい。

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EUの移民政策

一昨日(5月16日)、欧州委員会が包括的な移民政策に関するコミュニケーションを発出したと発表しています。

http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/07/678&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en

今のところ、まだ文書そのものはアップされていないようなのですが、不法滞在する第三国民を雇用する使用者に対する罰則を定める指令案を提案したと書かれています。

その他の内容については、14日に出た内容のブリーフィングメモがこれですが、

http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/07/188&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en

これによると今年の9月に2つの指令案を提案する予定だそうです。一つは高度技能労働者の受入条件に関する指令、もう一つは合法的就労移民の権利に関する指令とのこと。

日本でも動きが急ですが、EUでも事態がいろいろと動いているようです。

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ベンチャー社長セクハラ事件

最高裁のHPに掲載された裁判例、平成19年04月26日京都地方裁判所 第3民事部 平成17(ワ)1841損害賠償請求事件(ベンチャー社長セクハラ事件)ですが、その会話を見ているだけで、この社長さんの人格識見が窺われて大変面白いです。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070515120227.pdf

「君はセックス要員で雇った。社長とセックスするのが君の仕事だ」

「それならハローワークの条件に書いておいてください」

「そんなこと書いたら誰もきいひんやろ」

「君はセックス要員で雇った」「社長のスケジュール管理とセックス管理をするのが秘書の役目だ」

「明日は同じホテルに泊まるんやで。分かっているな」

「セックスできないなら,最初から君を雇わない」「何でセックスできないのに俺に同行してグリーンに乗るんや。経費かかるわ」「セックスしないなら社長室を退け。お前は降りろ。うちの会社と関係ない」「セックスできないなら用はない」「君は社長秘書をはずす。一切降りろ」

「なんで(社長室にいる)他の二人(の女性職員)はセックスしなくていいのに,私だけセックスしないといけないのですか」

「そのために君を選んだからや」「90%仕事で頑張っていると認めても,あと10パーセント肉体関係がないと君は要らない」「セックスが雇用の条件。それを了解してもらわないといけない。セックスできなければ終わり。」

「家内とはずっとセックスをしてきた。しかし彼女はもうできない。淋しいから君に求めたという事はわかるでしょう。でも,できないと言うなら君はもういいわ「家内の代わりをするだけだから,これは不倫ではない」「君はセックス担当。秘書はセックスパートナーだ。A(得意先会社の社長の名前)とB(同社の秘書)との関係もそうだ」「C(社長室の女性職員の名前,Xが競え。俺の寵愛を受けてセックスした方が役員。給料も上げる「仕事を ちゃんとしていると言ってもそれは俺が判断することでポイントは俺とのセックスだね。君が出来ないと言ったらそれでいい。できないのだったら,じゃあ,もう辞めろ。ありがとう」

「Xを好きになってるんやけど,これ(男性性器)大変なことになってるで。手で出してくれ」

「君は社長室の主任次は課長役員やぞただしセックスが条件だ」

「もう会社に来るな。俺の寵愛を断ったら,君はもう終わりだ。辞めろ」「俺が君を雇ったのは君を抱きたかったからだ。それを断ったら君はもう仕事ないで」「仕事は俺とセックスするのが条件だ。しなかったら,もう良い」

「君は私の寵愛を拒んだから,もう用はない。一身上の都合で辞表を出しなさい「明日はもう来なくていい。ただ,考え直すなら話を聞く」

「お前何しにきたんや。ここではもう仕事はない。他の会社に行け。雇ってくれるかどうかは別やけど」「君を愛した。寵愛をした。でも君断ったやろ。だから終わりや。君もう社長室はだめや」「寵愛って知ってるか。社長に抱かれてセックスするのが,まずお前の責任。イヤやったらそれでいい。君に はもう辞めてもらう君はもう仕事ないでどうすんのえ全部D(社長室の女性職員の名前)に移転する。仕事ないんやもん,どうすんの」

「なんでDさんなら良くて,私ではダメなんですか」

「俺が君を雇ったのは君を抱きたかったからやそれだけそれを君が嫌やったらもう辞めろもう辞めなさい君,いてくれたら困る」

「仕事が出来たらいいじゃないですか」

「いや,君は仕事できない。君は頭がアホや。どっか行き「それは俺とのセックスの問題だけ。セックスしないと俺はもう厳しいからね」

「君を一番にしてやりたかったけど無理やと思う。辞めるか。しかし君はどこでも通用しない。君,辞めるか。君の学歴からしても社長室の主任は出来ない「君は終わり。俺が終わったら終わり。俺が切ったら君は必ず終わるよ。辞表持ってこい。辞めた方がいいよ,君は」

「解雇ですか」

「解雇というとおかしくなるから」

「社長はいつもセックスが出来なければ解雇,クビと言っていましたね」

「そうやね」「俺には支える人間がいるの。女がいるの「君は何をする。もう用がなくなってしまった「君は社長室の能力がない」「お前は一番になろうと思った。大変なことやけどそんなんもん出来ない,お前は。はっきり言うたるわ。お前には出来ない。お前,学歴考え
ろ」

「セックスできなかったら手で出せ」

「じゃあ辞めろ。そういう人を雇う」

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そういえば、解雇規制なぞという馬鹿げたものがあるから学歴社会になるんやてなことを得意げに書いていた御仁がいらっしゃいましたな。頭がアホで学歴が低くても社長様とセックスすれば出世できるのにねえ。

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法相の短期外国人就労解禁案

日替わりのように各省からいろんな案が出てきますな。

今度は長勢法務大臣が、外国人の研修・技能実習制度を廃止し、新たな短期外国人就労制度創設を柱とする私案を発表したんだそうです。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070515ia04.htm

>入国・在留管理、雇用管理の体制を強化する一方、専門的技術を持たない単純労働者受け入れを事実上解禁する内容で、法務省に検討を指示した。同省は関係省庁と協議して、制度改正に取り組む考えだ。

>新制度は、許可制による受け入れ団体が外国人の就労希望者を募集し、資金規模などによって定められた受け入れ枠の範囲で、国内企業に紹介する仕組み。受け入れ業種・職種、技能能力などは問わず、就労期間は3年間。再就労は認めず、長期滞在や定住にはつなげない。

>現行の研修・技能実習制度は「外国人労働者への技術移転による国際貢献」を建前としているが、実態は単純労働者受け入れの温床となっている。法相の私案は、単純労働者受け入れを事実上解禁することで、「国内で必要な労働力確保」をはかる狙いがある。

これって、かつて労働省が提唱し、法務省の猛反対にあってあえなく潰された雇用許可制の再版ではないんですかね。いろんな意味で、なんだか複雑な気持ちではありますな。

こういうことばかり書いていると、また続・航海日誌の人に、労働省の敗北の歴史を調べられたりして・・・。

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日本経団連の賃金制度論

日本経団連が本日付で「今後の賃金制度における基本的な考え方」を発表しました。

http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2007/039.html

読んでいくと、いやいやデジャビュが・・・。

>そもそも「賃金」の英訳には、「salary」と「wage」、その両方の意をもつ「pay」などがあるとされている。このうち、「salary」は、内容が必要に応じて変化したり遂行方法がマニュアル化されておらず、1カ月ないし1年を労働時間の単位として「月給」で支払われる賃金、一方、「wage」は、内容が明確で遂行方法がマニュアル化されており、1時間あるいは1週間を労働時間の単位として「時給・週給」で支払われる賃金とおおよそ解されており、諸外国ではこの両者は厳然と区別されている。

>しかし、日本企業では、この両者の考え方が混在しており、担っている仕事と賃金・労働時間管理の整合性がとれていない。その結果、1カ月単位以上での成果を期待する仕事に従事している従業員に対して、月給で賃金を決定しているにもかかわらず、時間単位での労働時間管理が存在している。一方、1時間単位で仕事の成果を計ることのできる仕事に従事している従業員に対して、時間給ではなく月給で賃金を決定している企業はきわめて多い。

>したがって、今後、担っている仕事と賃金、労働時間の関係を改めて考えることが必要である。このような視点は、労働時間等規制を適用除外とする制度について議論する際にも求められよう。

>いずれにせよ、仕事・役割・貢献度と賃金の整合性が図られることによって、企業の競争力が維持・強化され、従業員の雇用の維持・創出にもつながることを再認識する必要があろう。

うーむ、まさしくそういうことを言っていたわけですよ、わたくしは。そこんところをきちんと認識せずにホワイトカラーエグゼンプションなんぞを振り回すからああいうことになったわけでね。まあでも、的確な認識になってよかったです。

本筋の議論では、「今後の賃金制度においては、年齢や勤続年数に偏重した賃金制度から、「仕事・役割・貢献度を基軸とする賃金制度」とすることが望ましい」というのがまあ結論なんですが、そうはいっても現場の人事労務管理を進めていかなければならない立場からすれば、学者先生のようなきれい事の議論で済むはずはないわけで、こういう話になるわけです。

>仕事・役割・貢献度を基軸にする賃金制度に改めるにあたって、従業員の異動などを容易にするためには、1つの職務に1つの賃金額を設定する「単一型」ではなく、同一の職務等級内で昇給を見込んで賃金額に幅を持たせる「範囲型」の制度とすることが一般的である。

>さらには、職群ごとに賃金制度の基軸を変えるなど、自社の実情に合ったバランスのとれた制度とすることが望ましい。

>例えば、複数の仕事・役割を一人でこなしている場合や、複数の従業員によるチームワークが特に求められるような仕事の場合、経験年数・勤続年数と発揮される職務遂行能力との間に明らかな相関関係が認められる場合などにおいては、前述した「範囲型」の制度や経験年数・勤続年数や発揮した能力(貢献度)にウエートを置いた制度のいずれかを、企業の実態に即して選択することも考えられる。このような場合に経験年数・勤続年数要素を反映することは、従業員の働く上での安心感や企業に対する忠誠心の維持・向上にもつながろう。

日本的なフレクシビリティを維持しつつ仕事給原則を強めていくというまさに現場の感覚が必要になるわけです。

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経済産業省の「外国人研修・技能実習制度に関する研究会」とりまとめ

昨日のエントリーの続きというか、経済産業省がやっていた研究会の報告書がアップされているので紹介しておきます。

http://www.meti.go.jp/press/20070514005/gaikokujinkenshu-torimatome.pdf

まあ、役所同士の権限争いがどうとかいうことを別にすれば、基本的にはそれほどおかしなことは言っていません。特に、

>、この際、技能移転という制度趣旨を放棄し、外国人労働者受入に特化した仕組みとして制度を改編すべきとの意見も出されている。 しかし、こうした意見は、必ずしも現実を適切に見据えたものとはいえない。本制度から、「技能移転による国際貢献」という趣旨をとり去ってしまえば、受入企業等による技能教育や生活支援は担保されない。そのような支援が行われないまま長期間就労すれば、日本語の未習熟の問題、生活面での地域との摩擦、未熟練労働者から抜け出せない、などの問題が生じる可能性が大きい。また、労働者受入と受入側が割り切ってしまえば、低賃金労働者として酷使される恐れもあり、むしろ現在の悪用事例を制度的に追認することとなりかねない。

という指摘は、その通りだと思います。外国人労働力へのニーズを途上国労働者の技能向上という政策目的に引っかけることによって実現しようとした技能実習制度の目的そのものは必ずしも悪いものではなかったはずです。しかし、現実にはいろいろと問題が発生したことは事実なわけで、その観点からは、

>現在の制度の運用実態に鑑み、研修期間中の研修生の保護を強化することも課題となっている。これに関して、当初から研修生を労働者と考え(すなわち、当初から実習と位置づける)、労働法の適用により研修生を保護すべきとの考え方もある。現在、研修生に対して労働法規が明示的に適用されていないことが、研修生の酷使など趣旨に合致しない運用につながっているとの指摘もあり、一定の合理性がある。すなわち、罰則を伴う労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法等の適用対象となるとともに、明示的に労働基準監督署の指導対象とされることで、悪質な運用に対する抑止効果が期待できる。 他方で、このような取扱により、「研修生は労働者である」という認識が行き過ぎる場合には、技能移転による国際貢献という趣旨が弱まり、体系的な技能教育の実施や、宿舎の確保、生活指導、日本語教育等の支援を企業負担で実施する意欲の減退につながる恐れもないわけではない。 この点については、本研究会でも双方の議論があったところであるが、研究会の結論としては、現行の一年間の研修を継続し、その間の受入機関による「体系的な技能教育」、「日本語教育」、「生活支援」等の法令上の明確な義務づけ、研修生による申告・相談の仕組みの整備、罰則の強化等により、研修生の保護を図り、研修の内容を充実させるという考え方を採用した。なお、この場合、実質的に低賃金労働として酷使されていると判断されるような悪質な場合には、研修生であっても、積極的に労働基準監督署が指導・保護等を実施していくことも求められよう。(現行制度の下でも、研修生であっても、労働基準監督署が実態に応じて指導・保護等を行うことは可能である。)

というのはいささかどうかなという気がします。「研修生であっても、労働基準監督署が実態に応じて指導・保護等を行うことは可能」ということの趣旨がイマイチ不明ですが、もし、労働基準監督署は契約の文言ではなく就労の実態によって労働者性を判断しているのだから、研修生という名目であっても実質が労働者だとして摘発することができるはずだという趣旨でいっているのであれば、それは制度設計の議論としておかしなものだと思いますね。

初めから実態は労働者だとして摘発される可能性があるよという前提で、研修生は労働者に非ずという制度を作るのはおかしいんじゃないかということです。

「研修生は労働者である」という認識が行き過ぎる場合には・・・云々というのはもっとおかしい。それでは、今でも実習生は労働者と位置づけられているのですから、そのために体系的な技能教育が弱まっているんでしょうかね。というか、重要なのは、労働者としての保護をきちんと図りつつ、技能養成の要件をしっかりと守らせることだと思いますよ。

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研修・技能実習制度研究会中間報告

先週金曜日、厚生労働省の「研修・技能実習制度研究会」から中間報告が出されました。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/05/h0511-3.html

この問題については、マスコミも結構追っかけていろいろ突込んだ記事なんかを書いたりしているので、大体のことは皆さんもご承知でしょうが、

>実務研修中の研修生が実質的に低賃金労働者として扱われている等の問題が生じているが、組織的な労務管理体制が不十分な中小零細企業を中心に、「労働」とならないよう「研修」の性格を担保することは困難であることから、「研修(1年)」+「技能実習(2年)」については、最初から雇用関係の下での3年間の実習とし、労働関係法令の適用を図る

というのが、最大のポイントです。ある意味みんな「研修生が実質的に低賃金労働者として扱われ、残業までさせられている」と分かっていながらそうでないふりをしてきた問題に、きちんと対応しようということですから、適切な方向性だと思います。

また、やや興味深い点として、

>日本人の労働市場への悪影響を防ぐため、同等報酬要件の判断の前提となるガイドライン(目安)を設定し、実習生の賃金水準が目安に照らし著しく低い場合には同等報酬要件の遵守状況を調査し、必要な措置を講ずる

というのもあります。これは「受入れ企業の一部には、専ら人件費の削減を目的として、あえて日本人を採用せず、技能実習生を低賃金労働力として悪用しているケースもみられ、労働市場への悪影響が懸念されている」という実態に対処するためのものです。

「詳細な報告書については、追って公表することとする」とありますが、大筋はこの中間報告の方向で進められるでしょう。

これに対し、報道によると、経済産業省が(外国人労働問題についてどういう権限をお持ちなのかはよく分かりませんが)「外国人研修制度の維持求める」報告書案をまとめたのだそうです。

http://www.asahi.com/politics/update/0511/TKY200705110344.html

>研修制度の存続を前提にした上で、不正を発覚しやすくしたり、罰則を強化したりする施策の充実を提言。労働基準監督署などの窓口で研修生が母国語で相談できるようにすることや、不正行為をした受け入れ団体への罰則強化などを求めている

のだそうですが、労働者ではないという虚構の上に制度を組み立てるというのはもういい加減やめた方がいいと思いますね。

これは外国人研修生だけの問題でもないのです。

>研修医の4割が「過労死ライン」の80時間を超す時間外労働

http://www.asahi.com/life/update/0514/TKY200705140035.html

なんて記事を見ても、やっぱり「研修生」という意味不明の身分にしておくのは、いろんな意味で問題でしょう。この辺は、しばらくしたらちょっとまとめてみたいと思っていますが。

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戦後レジームの改革

安倍首相が愛好する「戦後レジームからの脱却」とか「戦後レジームの改革」という言葉が何を意味しているかについて、渡辺行革担当大臣がこう説明しています。

http://www.gyoukaku.go.jp/senmon/dai9/gijigaiyou.pdf

>労働基本権については、専門調査会の審議を踏まえ引き続き検討することとされており、今後とも議論をお願いしたい。本日はこれまでの議論を踏まえ、改革の方向で議論の整理をして頂けるとのことで感謝しているが、この問題は安倍内閣の戦後レジームの改革の重要な構成要素であり、協約締結権、争議権を一定の範囲に付与する方向で検討して頂きたい。

なるほど、そういうことだったんですね。官公労の皆さん、力を合わせてマッカーサーが押しつけた戦後レジームから脱却しましょう、というわけです。

これは、前に紹介した行政改革推進本部専門調査会の4月24日の議事概要です。

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雇用融解または奥谷禮子氏インタビュー完全再現版

26084 東洋経済の記者の風間直樹さんの『雇用融解』という本が出ています。

「異形の帝国」クリスタルに切り込んで名誉毀損訴訟を起こされた風間記者のルポとインタビューです。

クリスタルを買収した折口さんや、川崎二郎前厚労相、河野太郎前法務副大臣のインタビューもありますが、やっぱり本書の最大のウリは、あの「奥谷禮子」さんのインタビュー完全再現版でしょう。

奥谷さん自身、「東洋経済」に載ったインタビューは「真意が伝わっていない」とおっしゃっているので、皆様是非本書をお買い求め頂き、奥谷社長の真意をじっくりと読み取りましょう。

あんまり引用すると新刊書籍の販売妨害になりかねないので、一点だけ。

>-社長は審議会の席上でもILO(国際労働機構)に対して、かなり厳しいご見解をおっしゃっていますね。

>あれは後進国が入っているところで、ドイツにしてもアメリカにしても、先進国はほとんど脱退しているわけですよ。。何で労働側はILO、ILOと金科玉条の如くILOを出してくるかというと、それしかよりどころがないわけです。先進国は先進国なりのオリジナルなものを作っていくべきですよ。

おーーい、ILOの中の人!

先進国はほとんどILOに入っていないんだってよ!

労働政策審議会の委員様がそうおっしゃっているよ!

一昨年、ジュネーブのILO理事会で先進国グループの会合に出てきていた、ヤンキー英語の人やドイツ語の人はどこの国のなに人だったんでしょうか。

(追記)

今月末から6月半ばまで、例によってジュネーブでILO総会(第96回)が開かれます。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/05/h0511-1.html

つきましては、是非労働政策審議会からの特別代表顧問として、我らが奥谷禮子女史にご出席いただき、脱退したはずのアメリカやドイツの使用者代表の皆様方と、労働政策の不必要性について、突っ込んだ議論を闘わしてきていただければ、大変有益かと存じます。

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ハローワーク市場化テスト案

昨日のエントリーで紹介したハローワーク市場化テスト案が、昨日夕方開かれた経済財政諮問会議に提出され、了解されたようです。

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2007/0509/interview.html

大田大臣の説明では、

>民間議員から長年の懸案に対して、柳澤大臣からの英断で道が開かれてことを評価するという評価がありました。

>民間議員から、なるべく早く平成20年度に実施してほしいという要請が出されました。

>最後に総理から御発言がありました。ハローワーク本体業務の民間委託というのは、10年前から検討されているけれども実現できなかった課題である。柳澤大臣の提案は、官民が机を並べて、文字通りの官民競争が行われるわけで非常にわかりやすい仕組みである。明確な成果が出ることを期待したい。これは非常に改革の大きな一歩である。柳澤大臣や関係各位に感謝申し上げたい。今後も徹頭徹尾、利用者の立場に立って官民のイコールフッティングのもとで市場化テストが実施されるよう制度設計を行ってほしいという御発言がありました。

ということですので、恐らく2008年度から3年間テスト期間として実施されるということなのでしょう。

その中味ですが、

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2007/0509/item6.pdf

>○ハローワークの本庁舎内の職業紹介部門について、民間委託部門を併設する。
◆求職者は設置された官民の窓口を自由に選択。
◆雇用保険受給者も対象とするが、失業認定を厳正に行うための職業紹介は官が行う。
◆福祉機関等と連携した「チーム支援」の対象者(※)も官が行う。
※〔障害者、生活保護・児童扶養手当受給者、刑務所出所者〕の一部
【業務内容】
○職業紹介、職業相談
○その他、就職支援のための措置
【実施施設】東京(23区内) 2所
※官の職業紹介窓口の職員数を削減

ということだそうです。

重要なのが、「求職者選別・求人求職情報管理の問題」ですね。

>○民間事業者が求職者の選別(より就職が困難な者を官の窓口に回す、後回しにする、優良求職者を自らの取引先等に誘導するなど)を行わないための仕組みを整備。
◆窓口利用者に対するアンケートを義務づけ、求職者の選別の有無等を確認する(官民で実施)。
◆就職困難度が高い求職者(例:障害の種別・程度、年齢階層、離職の有無、個人の属性)の就職目標を設定した委託費の支給方式とし、ディスインセンティブ方式などを検討。その他の方策についても検討。
○民間事業者が得ることとなる求人求職情報の適正利用、守秘義務などについて受託終了後を含む厳格な行為規制を課す仕組みを整備。
◆求人求職情報の不適正利用(自らの営利目的事業への利用等)をチェックするためのシステムの構築を検討(求人・求職者への適正利用ルールの周知、相談・苦情窓口の設置、上記CD-ROMのコピー制限、利用後の回収など)。

という風に、かなり厳格に設計されています。「柳澤大臣からの英断」と喜んでいますが、某派遣会社も「売れない求職者は嫌よ」といえない仕組みになったわけで、さて、収支勘定をよく考えたら手を挙げた方が得なのか挙げない方が得なのか、よく考えてみた方がいいものになったのかも知れませんよ。

 ただ、逆に言えば、本気で就職困難者の就職促進に取り組もうと思うようなソーシャルな企業にとっては、思い切って参入する機会が開かれたということになるかも知れません。

最後に「その他」として、

>○テスト期間(3年間程度)の結果を踏まえ、その後の対象の在り方について検討。
○労働関係法令等違反企業、障害者雇用率未達成企業等は、入札から排除する。
○受託民間事業者は、窓口業務のために一定数の正社員を確保するものとする。
○契約途中でも問題があれば契約を解除。
○民と官のイコールフッティングを確保し、市場化テストの目的が十分に達成されるようにする。この観点が実質的に確保されるよう、官民競争入札等監理委員会で行われる「公共サービス改革基本方針」及び「実施要項」の審議を経て、市場化テストを実施する。市場化テスト実施後においても、業務の実施状況についてのフォローアップにおける同委員会の意見を十分に尊重し、必要な場合には、適切な改善措置等を講じるものとする。

というのが載っています。最後の○は大田大臣が「私の方からぜひ入れて下さいとお願いして入れていただいた部分」だそうですが、その前の3つは、労働政策の一翼を担うわけですから、当然といえましょう。

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連合総研のDIO5月号

連合総研の機関誌「DIO」の最新号で、所長の薦田さんがキツいことを書いています。

http://www.rengo-soken.or.jp/dio/no216/kantougen.pdf

>「ハローワークとILO条約に関する懇談会」の座長は、懇談会の議事では政策論議を封じて法律論に限定させたが、諮問会議では、懇談会の議論の成果を正確公平に紹介することよりも、自身の持論である条約批准廃棄も含めた「政策論」の開陳に時間と精力を割いた。公開されている懇談会の議事記録も併せ読んでみると、要は、雇用情勢の悪い地域ではなく条件の良い東京都区部において、しかも種々の就職困難者は対象から除外して職業紹介事業の委託を受けたい業者、いわば、「クリームスキミングの鑑」に途を拓くことになる脱法的条約解釈論や、セーフティネット機能を軽視した「政策」論議が先走っている姿がよく分る。だからこそ、総理も担当大臣も胸を張って明快な指示をすることができないのであろう。

もっとも、労働市場改革専門調査会の第1次報告に「誤植もあるし」ではちょっとパンチがありません。「達成手段も含めた検討はこれからだ」というのはその通りですが、労働時間や就業率に数値目標を掲げたことは、それはそれとして素直に褒めればいいと思いますよ。

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職員・工員身分差の撤廃に至る交渉過程

日本労働研究雑誌の今月号は、「歴史は二度繰り返す」と題して大変面白い特集を組んでいますが、

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2007/05/index.htm

ここでは特集の中の記事ではなく、投稿論文を取り上げます。南雲智映さんと梅崎修さんの「職員・工員身分差の撤廃に至る交渉過程─「経営協議会」史料(1945~1947年)の分析」という論文ですが、実はほぼ同じものが、慶応大学産業研究所のサイトに載っています。

http://www.sanken.keio.ac.jp/publication/KEO-dp/104/DP104.pdf

これはある会社の経営協議会資料に基づいて、「日本のブルーカラー労働者の〈ホワイトカラー化〉が、いつ、どのように形成されてきたのか」「なぜ工員層は職員たちを同じ〈仲間〉として労働組合に受け入れたのか、言い換えれば、なぜ職員層は工員たちと同じ労働組合に参加しようとしたのであろうか」「また経営層は、なぜ労働組合側の〈身分差撤廃〉要求を結果として受け入れたのであろうか」という問いに答えようとした論文です。

私がホワエグの関係で追っかけてきた賃金制度については、こういう風に描かれています。

>A社では、終戦直後まで工員層は日給で、職員層は月給で給料が支払われていた。賃金体系上の職員と工員の違いは、〈職員・工員の身分差〉として不満の対象となっていた。先述したように1946 年2 月1 日の会社組合懇談会では、「工員ノ採用並ニ賃金決定ニ公平ヲ期スベシ」という工員組合幹部の声があり、工員組合から出された1946 年5 月10 日の要求書には、「昇給、賞与ヲ職員ト同等トスルコト」という意見が出されている。ここで主張される〈公平〉や〈同等〉は、職員と工員を一つの同じ賃金体系の下に位置づける方向へ向かった。

>ただし、職員と工員に同じ賃金体系を導入するには、経営協議会おける議論と調整を要する。まず、1946 年7 月24 日の第三回経営協議会では、「日給賃金ヲ次ノ通ニ改メ日給月給トス」と決まった。日給月給の仕組みは史料2に示される通りである。

>はじめに新日給(現日給×2+50 銭=新日給(A トス))を決め、同時に本給(A×{30+(残-欠)/8-事故無届日数})が設定された。また、本給以外の能率給や各種手当ははじめから月給として計算されている。工員の賃金体系が職員のそれに大きく近づいたといえるであろう24。ただし、支払いは月1回になったが、欠勤すればその分の月給は減少する。その意味では、日給月給は日給と変わりなかったといえる。

>賃金体系における職員・工員の〈差〉が完全になくなるのは、1947 年3月18 日の第十四回経営協議会に〈社員化〉が決定されてからである(史料3参照)。職員と工員が〈社員〉になったので、当然賃金体系も一つに統一され、元工員における日給月給は月給に統一された25。史料3に記された〈社員〉の賃金体系は、基本労働給として(1)基本給(本俸)、(2)能率給、および(3)勤続給があり、そのうち基本給は(イ)年令給と(ロ)能力給に分けられている。また、基本外労働給 として(4)家族給と(5)諸手当がある26。職員・工員の賃金体系統一は、日給月給という段階を経て〈社員化〉と同時に達成された。なお、賃金体系の統一は勤続期間と勤務日数の統一を伴って達成している。職員と工員には、年20 日と4日の休暇、定年は55 才と50 才という違いがあったが27、1946 年5月21 日の経営協議における組合要求に対する解答の中で、「休暇及忌引ノ日数ハ職員ト同一日数トス」と決まり、1946 年12 月23 日の第十二回経営協議会で工員の定年は55 才になった。

ところがこの結果、工員の欠勤が増えてしまったようなのです。

>「〔会社側〕…工職一本に当たってはずいぶん宣伝もしたが統一後ウントやらうと云ふ氣持ちが出るかと思ってゐたが組合側も其の後動きはなかった様に思ふ」(下線部筆者)ここでの発言は、工員を月給にしたことで欠勤が増えたことを問題にしており、〈職員・工員の身分差撤廃〉の一つの目的が労働意欲の向上であったことがわかる。ところが、会社側の「定休を取って仕舞ふと病欠で届出でる(ママ)。現在は定休が多い」という発言から推測すれば、実際の〈結果〉は当初の〈意図〉を離れたものであった。つまり、日給月給では病欠で給料は減るが、月給制では給料は減らないので、病欠で届け出る欠勤が増えたのである。要するに、経営側は、工員層の労働意欲向上を〈意図〉としていたのにかえって逆効果だったと発言している。

>経営側の以下のような発言からも、経営側の〈社員化〉意味と労働組合側の〈民主化〉の意味にズレが生じうる可能性が読み取れるであろう29。
「〔会社側〕組合員と社員との使ひ分けをやってはじめて人間となり得る。工職一本をやった以上月給者としての責任を振起したい 起ち直る(ママ)のは此の点からやらねばならぬ。」

この後ろに史料として経営協議会の決定事項というのがついていますが、それによると、まず導入された日給月給制には「〔職能給〕(4)早出残業及休日出勤手当(詳細略)」「〔諸手当〕(6)夜勤手当(詳細略)(7)当直手当(詳細略)」というのが明示的に示されていますが、職員の給与にはそんなものはありません。それに対し、「〔生活給〕(5)家族手当(詳細略)」は職員給与にも含まれています。

そして、その後で職員工員を社員に統一して導入された月給制には、上のように「基本外労働給 (4)家族給(5)諸手当」というのが入っているのですが、これらの用語が同じものを指しているという前提に立つ限り、この社員月給制は、それまでの職員の月給制に、工員にだけあった「〔諸手当〕(6)夜勤手当(詳細略)(7)当直手当(詳細略)」が付け加えられたものであって、「〔職能給〕(4)早出残業及休日出勤手当(詳細略)」は含まれていなかったと解釈できます。

そうすると、この社員たちに時間外手当が払われるようになったのはいつなのか?という疑問が湧いてきます。

とかまあ、いろいろな意味で面白い論文です。

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ハローワーク官民競争、窓口並べ職紹介

今朝の朝日に、興味深い記事が出ていました。

http://www.asahi.com/life/update/0509/TKY200705080422.html

>政府は、これまで官が担ってきたハローワークの職業紹介事業について一部を民に開放する方針を固めた。官民双方が同じ場所でそれぞれ窓口を開き、業務の質を競う異例の「官民競争営業」方式を都内2カ所で導入する。柳沢厚生労働相が9日の経済財政諮問会議に方針を報告、6月の「骨太の方針」に盛り込み、関連法の改正を経て来年度中の開始をめざす。

>この方式では、ハローワークの職員数を削減し、庁舎のフロアの一部を職業紹介事業を展開する民間事業者に明け渡す。利用者は希望の職業を紹介してもらえそうな窓口を自由に選べる――というもの。官のサービスの向上効果も期待できるとみる。

これは面白い。どっちが求職者のためになるかを店を並べて競争するというのですから、まさに市場化テストです。企業の方も来た客が障害者や母子家庭の母だからといって断って官営窓口に連れて行くわけにはいかないでしょうし、役人の側も隣の窓口が開いているのに「本日の営業は終了しました。来週どうぞ」というわけにはいかないでしょう。

本日の夕方の経済財政諮問会議でどんな議論になるか興味深いですし、やった結果がどうなるかも大変楽しみです。

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ETUCが欧州議会の報告案に抗議

昨日紹介した欧州議会雇用社会問題委員会の報告案(保守系のプロタジエビッツ議員の起草によるもの)に対して、欧州労連がけしからんと抗議しています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_69a4.html

http://www.etuc.org/a/3635

なにが許せないのかというと、伝統的な労働法ではアウトサイダーを救えないから、正規雇用の保護を縮減すべきという発想を示しているところだというわけです。労働法グリーンペーパーがでるでないで揉めていたとき以来の、雇用保護論争ですね。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/unice_e674.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/post_c9c4.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_6a09.html

労働組合としては、アウトサイダーのために中の人の保護を減らすなんてことは受け入れられない。

ETUCのグリーンペーパーに対する批判はここで書きました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_fbf0.html

ところが、これもここで何回か紹介してきましたが、欧州社会党はデンマークの前首相が党首をやっていることもあり、このデンマークモデルに積極的なんですね。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/10_7fc9.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/post_5ecf.html

この辺のねじれが今後どういう風に展開していくか、たいへん興味深いところです。

(参考)

上記欧州社会党の10原則については、平家さんによる全訳がアップされています。

http://takamasa.at.webry.info/200703/article_1.html

http://takamasa.at.webry.info/200702/article_2.html

http://takamasa.at.webry.info/200702/article_3.html

http://takamasa.at.webry.info/200702/article_6.html

http://takamasa.at.webry.info/200702/article_8.html

http://takamasa.at.webry.info/200702/article_9.html

http://takamasa.at.webry.info/200702/article_12.html

http://takamasa.at.webry.info/200702/article_13.html

http://takamasa.at.webry.info/200702/article_15.html

http://takamasa.at.webry.info/200702/article_16.html

http://takamasa.at.webry.info/200703/article_2.html

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サルコジ氏の公約(労働編)

昨日の選挙でサルコジ氏がフランスの新大統領に当選したわけですが、日本のマスコミはアメリカ型のサルコジ対ヨーロッパ型のロワイヤルというまことに単純きわまる対比でしか報道してくれていないので、サルコジ氏の公約を見てみましょう。

http://www.sarkozy.fr/download/?lang=fr&mode=programme&filename=monprojet.pdf

この6ページ目の「失業を克服する」というのと7ページ目の「労働を再生(リハビリ)させる」というところがここで注目すべきところです。よく引かれるのが、35時間労働制を見直して時間外労働への課税をやめるというところですが、8ページ目の左側にこんなことが書いてあります。経済的理由で解雇されたものは雇用契約を失わない、従前賃金の90%で公共職業安定所に承継されるのだ、その代わりに正当な理由なく紹介を2回断ることはできない。雇い入れたくなるくらい柔軟で期間の定めがなく安定した単一の雇用契約を導入する、この辺は明らかに最近のフレクシキュリティの議論を反映しています。あと個人別訓練口座の創設とか、資本主義の倫理がどうしたとか、いろいろと書いていますね。

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なぜか学問ナビ

ナレッジ・ステーションというところにある「学問ナビ」という「学問理解を深めるおすすめ本」のコーナーに、何を勘違いしたか「国際(法律・政治・経済系)」という題目でhamachanの書評みたいなのが載っています。

http://www.gakkou.net/07ksbooks/g09006.html

思わず笑っちゃうね。あんたのどこが「国際(法律・政治・経済系)」やねん、「国際(労働系のみ)」やろが、といわれそうですが、まあせっかくの機会ですので畑違いの分野ですが紹介文を書かせていただきました。

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企業レベル交渉のすすめ

欧州議会雇用社会問題委員会のサイトに、労働法グリーンペーパーに対する報告の案が載っています。5月7日の委員会にかけられる案のようですが、

http://www.europarl.europa.eu/meetdocs/2004_2009/organes/empl/empl_20070507_1500.htm

その中に面白い記述がありました。

http://www.europarl.europa.eu/meetdocs/2004_2009/documents/pr/659/659979/659979en.pdf

第19項なんですが、「企業の生産性向上、ひいては雇用の拡大に企業レベル団体交渉が積極的な役割を果たすことを指摘し、企業レベルのそのような労働協約の役割を強化するために法律を変える可能性を指摘する」とあります。

これはまさに日本的な機能的フレクシビリティを慫慂する台詞ですね。久しぶりにこういうのを聞いた気がします。

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差別と格差の大きな差

『時の法令』5月15日号に掲載された「差別と格差の大きな差」というエッセイです。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/sabetutokakusa.html

中味は以前このブログに書いてきたことの要約ですが。

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野球部の職業レリバンス

日本学生野球憲章

http://www.jhbf.or.jp/rule/charter/index.html

>われらの野球は日本の学生野球として学生たることの自覚を基礎とし、学生たることを忘れてはわれらの野球は成り立ち得ない。勤勉と規律とはつねにわれらと共にあり、怠惰と放縦とに対しては不断に警戒されなければならない。元来野球はスポーツとしてそれ自身意昧と価値とを持つであろう。しかし学生野球としてはそれに止まらず試合を通じてフェアの精神を体得する事、幸運にも驕らず非運にも屈せぬ明朗強靭な情意を涵養する事、いかなる艱難をも凌ぎうる強健な身体を鍛練する事、これこそ実にわれらの野球を導く理念でなければならない。この理念を想望してわれらここに憲章を定める。

>第13条 選手又は部員は、いかなる名義によるものであっても、他から選手又は部員であることを理由として支給され又は貸与されるものと認められる学費、生活費その他の金品を受けることができない。但し、日本学生野球協会審査室は、本憲章の趣旨に背馳しない限り、日本オリンピック委員会から支給され又は貸与されるものにつき、これを承認することができる。

>選手又は部員は、いかなる名義によるものであつても、職業野球団その他のものから、 これらとの入団、雇傭その他の契約により、又はその締結を条件として契約金、若しくはこれに準ずるものの前渡し、その他の金品の支給、若しくは貸与を受け、又はその他の利益を受けることができない。

つまり、野球部は職業レリバンスなんかあってはいかんというわけですな。もっぱら「人間力」だけ養うんじゃ、と。なるほど。

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専務取締役の過労死

1月19日のエントリーで紹介した大阪高裁の判決ですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/post_8c63.html

最高裁のHPに判決文が掲載されたようです。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070502092244.pdf

問題の点についての判断は、

>いわゆる労使関係における安全配慮義務は,使用者が被用者を指揮命令下において労務の提供を受けるについて,雇用契約の付随的義務として被用者の生命及び健康を危険から保護するよう配慮すべき義務をいうところ,本件におけるFは,久しく被控訴人会社の取締役の肩書を付されていたとはいうものの,その職種,労務内容,勤務時間,労務の提供場所等の実態に即してみれば,取締役の名称は名目的に付されたものにすぎず,被控訴人会社との法律関係は,その指揮命令に基づき営業社員としての労務を提供すべき雇用契約の域を出ないものというべきであって,被控訴人会社がFに対し,一般的に上記安全配慮義務を負担すべき地位にあったことを否定することはできない。

ということです。

それから、興味深い点として、労働者の安全配慮義務が取締役の善管注意義務に含まれるという点です。

>旧商法266条の3は,株式会社内の取締役の地位の重要性にかんがみ,取締役の職務懈怠によって当該株式会社が第三者に損害を与えた場合には,第三者を保護するために,法律上特別に取締役に課した法定責任であるところ,本来,商法は商又は商事として定める法律事実をもって規律の対象とするものであるが,そこにおける労使関係は企業経営に不可欠な領域を占めるものであり,ここにいう取締役の会社に対する善管注意義務は,ただに,会社資産の横領,背任,取引行為という財産的範疇に属する任務懈怠ばかりでなく,会社の使用者としての立場から遵守されるべき被用者の安全配慮義務の履行に関する任務懈怠をも包含すると解するのが相当である。

あと、この判決は1月18日にいったん出しながら、ミスが見つかって23日に変更判決をしているんですね。

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フリーターが丸山真男をひっぱたきたいのは合理的である

ところで、朝日の『論座』の6月号で、赤木智弘氏がまたまた丸山真男をひっぱたきたいと言っている。

http://opendoors.asahi.com/data/detail/8090.shtml

これは当然なのだ。そして、彼が戦争を待ち望むのも当然なのだ。

実際、今から70年前、中学校以上を出たエリートないし準エリートのホワイトカラー「社員」との差別待遇に怒りを燃やしていた彼の大先輩たるブルーカラー「工員」たちを、天皇の赤子として平等な同じ「従業員」という身分に投げ込んでくれたのは、東大法学部で天皇機関説を説いていた美濃部教授でもなければ、経済学部でマルクスを講じていた大内教授でもなく、国民を戦争に動員するために無理やりに平等化していった軍部だったのだから。もちろん、それを完成させたのは戦後の占領軍とそのもとで猛威を振るった労働組合であったわけだが、戦時体制がなければそれらもなかったわけで。

このへん、戦前は暗かった戦後は明るくなった万歳史観では全然見えないわけで、そういう史観の方々には何が問題なのかもよく分からないのだろう。もちろん、戦争なしにそういう改革ができたのであればその方がよかったのかも知れないが(実際そういう国もないわけではないが)、戦争もなしに戦前の丸山真男たちがそれを易々と受け入れただろうかというのが問題になるわけで。

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野村正實大著の一部公開

野村正實先生のHPに、『日本的雇用慣行-全体像構築の試み』の初校が終わったという記事があり、その第4章「老婆心の賃金」の全文がアップされています。

http://www.econ.tohoku.ac.jp/~nomura/periphery.htm#070501

今までもちらりちらりと読ませていただいていたのですが、こうしてどんと出されると今さらながら凄いと思います。ミネルヴァ書房から7月には出るようです。

本書の意義については、こう語っています。

>日本的雇用慣行を終身雇用と年功制として理解することは、一面的である。そこで念頭に置かれているのは男性正規従業員のみである。言うまでもなく、会社には女性従業員がいる。女性従業員を含めて日本的雇用慣行を理解するならば、日本的雇用慣行は、1985年の男女雇用機会均等法以前においては、大卒女性を採用しないことであった。日本的雇用慣行は、短大卒女性を高卒女性と同じ待遇で短期間雇用することであった。

>これまで、日本的雇用慣行を論じる論者は、はっきりと対象を限定をしないまま、実際には製造業(manufacturing)の男性(male)生産労働者(manual worker)のみを論じてきた。いわゆる3Mである。そうした対象設定をする限り、日本的雇用慣行の本質は見えてこない。それが私の立場である。雇用慣行は経営秩序であり、男性と女性、職員と工員、大卒者と短大卒者・高卒者・中卒者というすべての従業員がそこに組み込まれている。そうした経営秩序を問うことこそが日本的雇用慣行論の課題でなければならない。これまでに日本的雇用慣行の全体像を分析した研究がなく、本書が全体像構築のはじめての試みとなる、というのは、この意味においてである。

私からすると、たとえばPDFファイルの初めの方に出てくるこういう記述が、まさにここ数年私が追いかけていた時間外手当とエグゼンプションの議論の起源と響き合っていて、興味深いものです。

http://www.econ.tohoku.ac.jp/~nomura/Chap4.pdf

>戦前には、「賃金」と「俸給」はまったく別の世界に属していた。そのため両者を包括する言葉はなかった。戦前においては、「報酬」という言葉は、多くの場合、会社の取締役(重役)に支払われるものを指していた。 戦前の会社身分制のもとにおいて、「社員」の給与は完全な月給制であった。月額が決まっており、欠勤しても、長引かない限り給与が差し引かれることはなかった。また逆に、一応の勤務時間は決まっていたものの、遅くまで働いても、今日の意味での時間外手当は支給されなかった。住友合資の「居残料」のように、「規定時間外勤務料ハ早出及居残共ニ一回ニ付五拾銭ヲ給与ス」(宮田[1927]94)と、実際におこなわれた時間外労働の時間とは関係ない形で若干の給付がなされた。 職工の賃金は、「日給」であった。日給については後にくわしく検討する。月給制と違って、職工には今日の意味での時間外手当が支給された。 戦時経済が本格化する中で、新しい勤労観として皇国勤労観が登場した。皇国勤労観は、勤労は皇国に対する皇国民の責任たると共に栄誉たるべき事である、と謳った。そこで、職工(工員)も職員も同じ「勤労者」ということで、大日本産業報国会(産報)関係者から、工員にも月給を支給する工員月給制度の実施が主張された。 しかし工員月給制にたいして大会社から強い反発があった。大会社を中心とした日本経済連盟会時局対策調査委員会産業能率増進委員会第二部会は、(1)月給制度では能率刺激ができない、(2)工員月給制度は、管理者が一人で広く従業員全部を知ることのできる小規模工場に限定される、とその反対理由を述べた(廣崎[1943]320-21)。結局、工員月給制は実際にはほとんどまったく普及しなかった。工員月給制を熱心に提唱した論者が、「工員月給制度実施工場の発見に努め相当長い期間を費やしたのであるが、今やうやく次の如き数工場の存することを知った」(廣崎[1943]19)という程度であった。 1942年2月24日に公布された重要事業場労務管理令は、「工員」と「職員」を包括する概念として「従業者」という言葉を用いた。「工員」と「職員」は別の世界に属しているという戦前の常識からすれば、両者が包括された「従業者」という法的概念は、たしかに大きな変化であった。しかしこの重要事業場労務管理令においても、「賃金及給料」(第11条)とか「賃金、給料」(第13条)のように、「賃金」と「給料」は別のものであり、両者を包括する概念はなかった。そして、「賃金」と「給料」を包括する概念がないということは、必然的に、「従業者」という概念を無意味化するものであった。事実、重要事業場労務管理令施行規則は、「賃金規則ニハ労務者ノ賃金ニ関シ左ノ事項ヲ記載スベシ」(第5条)、「給料規則ニハ職員ノ給料ニ関シ左ノ事項ヲ記載スベシ」(第6条)と、「労務者」と「職員」を区分している。それほどまでに、「賃金」と「俸給」は異なる世界に属していた。 敗戦後、「賃金」と「俸給」は一元化された。敗戦とともに、すさまじいインフレと食糧危機に見舞われた。ホワイトカラーであろうとブルーカラーであろうと、とにもかくにも生理的に生存することが最優先課題であり、もはや「賃金」と「俸給」の区分は無意味となった、と考えれれるようになった。さらに、敗戦後しばらくして、それぞれの会社単位あるいは工場単位に従業員組合あるいは労働組合と名乗る組合が結成された。こうした組合は、賃金と俸給の一元化を要求した。電気産業の会社ごとの組合が集まった日本電気産業労働組合協議会(電産協)が勝ち取ったいわゆる「電産型賃金体系」(1946年10月)も、賃金と俸給を一元化したものであり、それを賃金と呼んだ。こうして敗戦後まもなく、賃金と俸給が一元化し、賃金と呼ばれるようになった。それとともに、賃金、給与、給料、俸給という言葉が、若干のニュアンスの違いは残るものの、同じ意味で使われるようになった。 戦後の経営民主化運動は「身分制の撤廃」を要求した。「賃金」という用語は、差別されていたブルーカラーに適用されるものであっただけに、「賃金」という用語を廃止せよ、ブルーカラーにも「俸給」あるいは「給料」という用語を適用せよ、と要求して当然と思える。もしそうであったならば、戦後には賃金という言葉が消滅し、俸給はあるいは給料という言葉が一般に使われることになったであろう。しかし、そういう要求はなかった。戦後においてなぜ賃金という用語が戦前の「賃金」と「俸給」を含むようになったのか、資料的には確認できない。推測すれば、戦時経済と戦後直後の経済混乱の中でホワイトカラーの俸給水準が低下し、高級職員をのぞいたホワイトカラーが、自分たちの身分がブルーカラーに近づいたと感じたからかもしれない。そして、敗戦直後は左翼の影響力が大きかったため、「階級的労働運動」にふさわしい言葉として賃金という用語を選んだと思われる。 戦前と戦後において賃金という言葉の意味が大きく違うことを考えるならば、賃金という言葉を使うとき、戦前的な賃金概念で使用しているのか、それとも戦後的な賃金概念で使用しているのかをたえず明確にしておかなければならない。本書では、戦前のように俸給と区別された賃金を指す場合は、その旨を明示する。それが明示されていない賃金という言葉は、戦後において戦前的な賃金と俸給が一元化されたものを指すこととする。

1章丸ごと公開しちゃっていいのかな?と他人事ながら気になりますが、逆にこれを読むとほかの章も読みたくなることは間違いありません。

後ろの方に出てくる『給料袋の国際比較』も大変面白く、通念的な議論のいい加減さがよく分かります。

>欧米の賃金は職務給であるが、日本の賃金は属人的である。このイメージは、プジョーによって否定される。たしかにダイムラー・ベンツ、フィアットの基本的な賃金は職務給といってよい。しかしプジョーの基礎的な賃金項目は「賃金個人別化」によって、属人的な性格のものとなっている。

>欧米の賃金は労働への対価であるが、日本の賃金は生活保障給である。このイメージは、フィアットの賃金によって否定される。フィアットでは単位労働賃金率の半分余が「生活費変動補償」である。

>欧米ではブルーカラーとホワイトカラーは別々の賃金制度であるが、日本では両者が同一の賃金制度のもとにある。このイメージは、プジョーによって否定される。プジョーでは、一般のブルーカラーとホワイトカラーは同じ賃金制度の下にある。

>)欧米では賃金項目は数少なく賃金制度はシンプルな形態であるが、日本ではさまざまな種類の手当があり、賃金制度は複雑になっている。このイメージは、プジョーやフィアットによって否定される。たとえばフィアットでは、基本的な賃金項目である時給のほかに、勤務年数による定期増額、生活費変動補償、生産高プレミアム、有給食事休憩、能率報奨金、通常労働割増、超過労働、強化労働割増、湯治休暇、食事補償がある。

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職業補導

法務省令第32号

http://kanpou.npb.go.jp/20070427/20070427h04573/20070427h045730007f.html

更生保護の措置に関する規則の一部を改正する省令を次のように定める。

平成十九年四月二十七日

法務大臣 長勢甚遠

更生保護の措置に関する規則の一部を改正する省令

更生保護の措置に関する規則(平成八年法務省令第二十号)の一部を次のように改正する。

第五条第一号ハ中「職業補導」を「職業指導」に改め、同号中ホをヘとし、ニをホとし、ハの次に次のように加える。

ニ 職業訓練を行うこと。

いうまでもないことですが、「職業補導」とは職業訓練法制定前の職業訓練の呼び名です。職業補導を行うのは公共職業補導所であり、これが公共職業訓練校になるわけです。

一方、「職業指導」とは職業紹介とともに公共職業安定所が行うものです。この両者は、同一の機関が行うことはあり得ますが、概念的には異なるものです。

従って、「職業補導」は(職業訓練法制定から50年ほど遅れましたが)「職業訓練」に改め、これとは別に「職業指導」を規定すべきと愚考いたします。

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強制連行・労働における安全配慮義務

4月27日に最高裁が下した西松建設事件判決は、もちろん日中共同声明、日華平和条約、サンフランシスコ平和条約など国際法上の論点がてんこ盛りなので、私如きが口を出す余地はないようなものですが、実は労働法の観点からも興味深い点があります。

http://www.asahi.com/national/update/0427/TKY200704270091.html

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070427134258.pdf

それは、原審が「上告人と上記中国人労働者とは直接の契約関係にはないが,特殊な雇用類似の関係にあり,上告人は,その付随的義務として,安全配慮義務を負っていたというべきである。そして,上告人がこの安全配慮義務を尽くさなかったことは明らかであるから,債務不履行責任を免れない」と判示した点について、日中共同声明による請求権放棄の抗弁を認めなかった部分と異なり、「是認することができない」とか何とか言っておらず、法理として認めたように思われることです。

認定によればその状況は、

>本件被害者らは,家族らと日常生活を送っていたところを,仕事を世話してやるなどとだまされたり,突然強制的にトラックに乗せられたりして収容所に連行され,あるいは日本軍の捕虜となった後収容所に収容されるなどした後,上記のとおり,日本内地に移入させられ,安野発電所の事業場で労働に従事したが,日本内地に渡航して上告人の下で稼働することを事前に知らされてこれを承諾したものではなく,上告人との間で雇用契約を締結したものでもない。
本件被害者らのうち,被上告人X (移入当時16歳)は就労中トロッコの脱線1事故により両目を失明し,被上告人X (同18歳)は重篤なかいせんから寝たき2り状態になり,いずれも稼働することができなくなり,昭和20年3月に中国に送還された。亡A(同23歳)及び亡B(同21~22歳)は,上記(5)の大隊長撲殺事件の被疑者として収監中に原子爆弾の被害に遭い,Bは死亡し,Aは後遺障害を負った。亡C(同18~19歳)は,ある日,高熱のため仕事ができる状態ではなかったのに無理に仕事に就かされた上,働かないなどとして現場監督から暴行を受け,死亡した。

ということのようですが、要するに雇用契約関係にはなかったけれども「特殊な雇用類似の関係」にあったから安全配慮義務があり、それを尽くさなかったから損害賠償義務が発生するという理屈は、明示的にではありませんが最高裁も認めたということのように思われます。

ちなみに、同日付の日本軍による強姦事件判決についても、原審が「日本法上の不法行為責任についてみるに,国の公権力の行使に関してはいわゆる国家無答責の原則が妥当するが,上記加害行為は,戦争行為,作戦活動自体又はこれに付随する行為とはいえず,国の公権力の行使に当たるとは認められないから,国家無答責の原則は妥当せず,被上告人は,民法715条1項に基づく損害賠償責任を負う」とした点を否定していません。これもいろいろと面白い論点のあるところです。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070427165434.pdf

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