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2007年4月25日 (水)

日本版メイク・ワーク・ペイ?

読売に「労働意欲向上狙い、低所得者の税軽減本格検討へ…諮問会議」という記事が載っています。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20070425i301.htm

>政府の経済財政諮問会議(議長・安倍首相)が、低所得者層の家計負担を軽減するために、所得税を直接減額する「税額控除」と社会保障給付を組み合わせた制度導入の本格検討に入ることが明らかになった。

>民間議員が25日の諮問会議に税制改革の「基本哲学」を示して議論を開始する。所得格差の是正とともに、税引き後の手取りを増やして労働意欲を高める狙い。経済同友会も同制度の導入を提言しており、今後の税制改革論議の焦点の一つに浮上しそうだ。

この記事はこれを「負の所得税」と呼んでいますが、この記事からする限り、これは「低所得者の中にはせっかく働いて所得を得ても、税引き後の手取り額が、生活保護など社会保障の額より少なくなる場合があり、「働く意欲が失われる」との指摘が出ている」という事態に対して、「低所得者層の所得税額を軽減(控除)するだけでなく、社会保障に頼らず働いて収入を得た方が手取り額が大きくなるよう、一定の層に社会保障給付を組み合わせる仕組みを中心に検討する見通しだ」ということですから、むしろ日本版メイク・ワーク・ペイ政策と呼んだ方がいいでしょう。少なくとも、働いていてもいなくても一律に経済的メリットが与えられるベーシック・インカムの一種としての「負の所得税」とは別物と考えられます。

少なくとも、そのモデルにしているのがブレア政権が導入した制度なのですから、社会哲学としてはリバタリアン的というよりはむしろコミュニタリアン的なものというべきでしょう。

これもまた、ここ数年来私がEUの雇用戦略の柱として紹介してきたものの一つなんですが、八代先生にこうやってきちんと政策アジェンダに載せていただいて、心から感謝の気持ちでいっぱいです。本当に有り難うございました。

まあ、しかし、こうやって経済財政諮問会議が(今のところ)実にまともな政策を次々に打ち出すものだから、それに引き替え労政審が疲弊しているなどと書かれるわけで、なかなか難しいところではあるのですね、私も立場的に。

(追記)

と読売さんは報じたんですが、実際に経済財政諮問会議に出された「税制改正の基本哲学」は、

http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2007/0425/item2.pdf

>生産活動や就労への意欲を阻害しないよう、“広く薄く”の観点に立って、法人課税や所得課税を設計する

とか、

>受益と負担の双方を含めた制度全体の再設計を通じ、真に必要な人に必要な対応がなされるようにする

>世代を超えた格差の固定化を防ぐよう税制等の設計を行う

といったところがこの記事に対応しているのかなあ、という程度のようですね。

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