公務員法制の方向
マスコミさんは例の人材バンクをめぐる霞ヶ関と永田町の綱引きをおもしろおかしく報じているだけですが、行政改革推進本部専門調査会では公務員の人事管理制度の在り方についてたいへん興味深い議論が行われています。
http://www.gyoukaku.go.jp/senmon/
で、ここにはまだアップされていないのですが、公務労協のHPには4月24日に専門調査会が取りまとめた「議論の整理」が掲載されています。
http://www.komu-rokyo.jp/info/rokyo/2007/2007rokyo_infoNo26.html
労働基本権関係では、
○ 公務員の労働基本権の制約については、国民主権、財政民主主義等を根拠として必要やむをえない限度で制限を加えることに充分合理的な理由があるとした全農林警職法事件最高裁判決があり、判例として定着している。しかし、この判決は、現行制度は憲法違反ではない旨を判断したものである。この間労使関係をめぐる環境も変化している。現時点において改めて、制約理由の意義を捉え直す必要がある。
○ 公務員の勤務条件の基本は国民の代表者により構成される国会が定める法律、予算によるべきであるとの判決の考え方は今日においても妥当であるが、公務員の地位の特殊性、職務の公共性、市場の抑止力については議論が分かれた。
○ このような観点から、公務員制度について、国民の視点にたって改革すべき点が多々ある。労働基本権を含む公務員の労使関係の問題についても、改革の方向で見直すべきである。
とした上で、今後労働基本権を付与した場合の具体的仕組みや諸課題の検討を、シミュレーション検討グループで集中的に行うとしています。具体的には、
・団結権については、制限の必要性、付与した場合の影響等に関し検討する。
・団体交渉権・団体協約締結権については、付与する職員の範囲、協約締結事項の範囲、交渉の当事者、団体協約の効力、交渉不調の場合の調整方法、人事院・人事委員会のあり方など付与した場合の具体的仕組みに関する複数のパターンを検討する。
・争議権については、付与した場合の国民生活への影響等に関し検討する。
ということです。
私としては、さりげなく書かれた「第1周目の議論において十分に検討できなかった公務員の類型化に関する課題については、仮に類型化を行うとすると、職務の性質による類型化とは別に、例えばドイツの官吏と非官吏のように公務員の種類による類型化も可能であり、引き続き検討を行う」というのが大変目を惹きます。
これはつまり、公務従事者の中に公法上の勤務関係である「官吏」と、民法上の雇用契約である「非官吏」を分け、後者は基本的に民間労働法制で規律しようという発想で、戦後フーバーに押しつけられたアメリカ型公務員法制の抜本的見直し(というか戦前型への回帰)になりうる話です。
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