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2007年4月 2日 (月)

ハローワークとILO条約に関する懇談会報告書

日経が「ハローワーク、民間開放は可能・経財相懇が報告書」と報じています。

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070330AT3S3001W30032007.html

おや、たしか吾郷先生と逢見さんは反対と主張していたはずだったが・・・、と思いながら読んでいくと、

>報告書では5人の委員のうち厚労省とほぼ同意見だった連合出身の委員を除き、4人が「民間委託そのものは条約違反ではない」との見解で一致した。

とありまして、一応賛成反対列記のようです。それにしても、吾郷先生は賛成に回ったのかなと思って、実物を見てみると、

http://www5.cao.go.jp/koukyo/ilo/files/report1.pdf

この記事はいささかミスリード気味であることが分かりました。いや、ミスリードといえば、見出し自体が大変ミスリードですが。

最後のところに、小寺先生(国際法)、花見先生(労働法)、山本先生(国際法)の3人の賛成意見と並んで、吾郷先生(国際労働法)と逢見さん(連合)の意見が併記されていて、そもそも「ハローワーク、民間開放は可能」などという報告書にはどうみてもなっていないはずですが、まあ日経の記者が勝手に書いたのではなく、内閣府がそういうミスリードをするようなレクチャーをしたということなんでしょうね。

問題は吾郷先生の意見ですが、こういう風になっています。

>条約は、国の責任の下で、労使双方が適正に利用出来る無料の職業紹介機関のネットワークを整備し維持することを求めている。
また条約は、ネットワークを監督する国の機関の職員のみならず、ネットワークを構成する職業紹介機関で職業紹介業務に従事する職員についても、条約上の公務員であることを求めている。
条約上の職業紹介機関をそのまま民間事業者に委託した場合には、条約上の公務員以外の者が職業紹介業務に従事することとなるため、条約違反となる。
ただし、
① 民間事業者に委託した職業紹介機関を条約が義務づけるネットワークから切り離した上で、
② 残余の職業紹介機関(引き続き条約上の公務員によって職業紹介業務が実施される職業紹介機関)が、条約が義務づけるネットワークを構成し、かつ
③ 政府が、第4条又は第5条に基づく労使との協議を踏まえ、残余の職業紹介機関が第3条が求める数及び配置を満たすと判断する
場合には、条約違反とはならない。
このような解釈に立つと、民間議員提案については、一部のハローワークのすべての業務又はその職業紹介業務を民間に包括的に委託した場合において、上記の①~③のすべての条件を満たす場合には、条約違反とならない。
他方で、①~③のいずれかの条件を欠く場合には条約違反となる。特に③については、4条又は5条に基づく労使との協議を踏まえた政府の判断の結果次第では、現行のハローワークをすべてそのまま維持することが義務付けられる結果となることもある。

つまり、①②③のすべての条件を満たさない限りダメだといっているわけで、それを賛成論に分類して5分の4が賛成だというのはいかにもマスメディア操作向けだなあという感じですね。こんな記者発表して、吾郷先生から怒られたらどう言い訳するんでしょうか。まあ、トップがそう結論を決めているから、全部それに合わせるのが役人道というものなのかも知れませんが。

個人的には、ILO88号条約云々よりも、先日もここに書いたように求人開拓一つやりたがらないような民間営利企業にハローワークを渡して、本当に底辺の人々のためのセーフティネットになるのかどうか、大変心配です。そっちこそ最大の問題であって、条約でいう公務員でなければならないのがどこまでかとかいうのは、本当は本質的な問題ではないんじゃないかと思いますね。

儲けるために上澄みを舐めていたいところは上澄みだけ舐めていればいいので、丸ごととってしまおうなんて考えない方がいい。一方で、ヨーロッパなんかでも福祉事務所と職業安定所を統合したり、就労支援をさまざまなNPOに委託したりして多様化は進んでいるので、必ずしも今までのハローワークの仕組みを維持しなければならないわけでもないでしょう。重要なのは、自力ではなかなかはい上がれないような人々に対する労働市場のセーフティネット機能をどのように仕組むべきかで、職員が身分の保障された公務員でなければ云々というのは、世の中の流れからするといささか外れたところで議論している感もあります。というか、私は公務員である必要は別にないんじゃないのと思っているわけですが、そもそも公益サービスであるという前提を揺るがしてはいけないと思うのです。

もちろん、それは問題設定がそうなっているからそういう議論になってしまったわけで、議事録を見ると、政策論をやろうとした委員に対して、法律論だけやってくれというような言い方をしているんですね。そうすればこういう詰まらない話にしかならないのは分かり切ったことでしょう。

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コメント

よくぞ言ってくださったという気分です。
アメリカ流の過度の自由主義シンパの日経新聞と
内閣府との連合軍が決して目を向けようとしない
核心部分の議論こそ、現在必要なものなのですが・・

いずれにせよ、現在の市場化テストは、都心部の
儲けが出る安定所のみの切り離し民間委託を軸に
検討されているという噂を耳にしました。

儲けが出る部分のみの民営化・・・語るに落ちる
とはこのことですね。

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