労組と学者のフレクシキュリティ批判
ここ1,2年のEU労働政策でバズワード化しつつある「フレクシキュリティ」ですが、欧州労連(ETUC)がかなり全面的な批判のリーフレットを出しました。
http://www.etuc.org/IMG/icones/pdf-dist.png
もともと、フレクシビリティとセキュリティの両立という政策方向には賛成していたETUCが、ここにきて厳しい批判に踏み切ったのは、現在の欧州委員会の動きをバローゾ委員長率いるネオリベ派首脳部によるものと見切ったということでしょう。
欧州委員会第5総局(の担当官)は、フレクシビリティと言っても、雇用形態を多様化するオランダモデルや労働時間を柔軟化する(ドイツ)モデル、さらには企業内で配置転換する(日本型)モデルにシンパシーを示し、雇用保護規制については緩和に消極的な姿勢を示してきたのですが、首脳部からはそれだけじゃダメだ、もっと雇用を流動化する方向にしろと命じられて、それで出されたのが昨年11月の労働法グリーンペーパーであったと言うところまではここでも紹介してきました。
雇用を保護しつつ労働を柔軟にするという今までの第5総局の路線には(内部にいろいろ不満はあってもそれは抑えて)協調姿勢をとってきたETUCですが、ここにきてバローゾ路線とは対決するぞということのようです。このリーフでは、解雇規制が厳しい国ほど雇用は創出されないなんてウソだ、解雇が制約されている方がイノベーションや企業内のフレクシビリティを生み出し、労使の協調によって生産性の向上が図られるのだ、等々と書いています。
一方、欧州議会の雇用社会問題委員会は3月21日に、労働法に関する公聴会を実施したようで、それに出席した二人の学者のペーパーが、ダブリン財団の背景ペーパーとともにアップされています。
http://www.europarl.europa.eu/meetdocs/2004_2009/documents/dv/657/657769/657769en.pdf
http://www.europarl.europa.eu/meetdocs/2004_2009/documents/dv/657/657704/657704en.pdf
http://www.europarl.europa.eu/meetdocs/2004_2009/documents/dv/flexicurity/flexicurityen.pdf
このうち興味深いのは最初のロンドン大学のバーカッソン教授のペーパーで、こちらもETUCとくつわを並べてかなり痛烈な批判をしています。
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