6日の経済財政諮問会議結果
桜金造氏も外山浩一氏も含め、都知事選結果は無視して、6日の経済財政諮問会議の結果について書いておきたいと思います。そっちの方が遥かに重要ですから。
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2007/0406/report.html
これは大田大臣の会議レポートです。労働市場改革については、あまりにも労働者より(!?)の八代委員会報告に対して、
>ワークライフバランス憲章を踏まえて大きな国民運動にするために働き方を変える行動指針をつくるべきだという民間議員の提案に対し、そういうことをやると日本はキリギリスの国になる。働きたい人は働いて、休みたい人は休むのがいいわけで、働かないことがいいことだというのは自由主義に反する。そういう国家に日本をするのか。国家の方向として、週休2日とか有給休暇100%とか、そういうことを決めることには反対。日本が衰退する方向に向かうのではないか
という批判が出たようです。
いやいや、働かないのがいいなんて言ってないわけですよ。働けるのに働いていない、あるいは不十分にしか働いていない人々をもっと積極的に働かせましょうというのが就業率向上なんであって、働いている人の働きすぎを何とかしましょうというのがワークライフバランスなんであってね。
で、安倍首相から
>長時間労働を前提に経済が成り立つというのはおかしい。家族と時間を過ごすということも大事。
>ワークライフバランスを実現させるのは少子化対策の観点からも重要なテーマであり、安倍内閣として本格的に取り組みたい。
>民間議員から提案のあった働き方を変える行動指針というのは、政府部内で十分に連携して取りまとめていきたい。
と発言があったということで、記者会見によると、
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2007/0406/interview.html
(問)民間議員ペーパーの中には、その行動指針について就業率の向上とか時短ですね、数値目標を明確に掲げてあるんですけれども、これは今日の第1次報告に書かれている数値目標のことを指していると思うんですが、そうした行動指針にはこうした数値目標が、つまりこの1次報告に記されています数値目標を盛り込んでいくということでも合意が得られたということでよろしいでしょうか。
(答)そこまでの合意は得られておりません。つまり、行動指針の策定に向けて取り組んでいくということは了解されております・・・
(問)ですけれども、行動指針を策定するということでは合意を得たと。ただし、今日示されましたこの第1次報告に載っている各数値目標ですね、これを行動指針に載せるかどうかということは、今日はまだペンディングという、そういうとらえ方でよろしいでしょうか。
(答)格別の反対はありませんでしたが、それについて本当によろしいですかという議論をしたわけではありません。ただ、やはり行動指針ですので、何らかの目標は必要だというふうに考えます。
ということで、数値目標まで合意されたということではないようです。まだ議事録が出ていませんので、出た段階でもう一度検討してみたいと思います。
も一つのテーマが、このブログでも何回か取り上げてきたハローワークの民間開放の話です。
八代さん等の提案に対して柳澤厚労相が反論し、それに対して、
>提案しているのはハローワークの機能を壊すのではなく、高めること。
>フリーターなど、マッチングが難しい職業紹介が増えており、なぜ官でなければできないのか。
>人間的な信頼関係は、民でもつくれるはず。
>官のハローワークはきめの細かいサービスを提供しているという説明があったが、それは証明されていない。それを証明するのが市場化テスト。官民競争入札は、どちらのサービスの質が高いかを判定するので、もし民よりすぐれているのならば、それは市場化テストにかけて証明するべき。
>どんなふうにしたら、民間の活力を入れられるのかということを工夫すべき。
>貴重な公務員が窓口業務をやるのではなくて、民にできることは民に任せるべき。
といった意見があったと書かれています。繰り返しになりますが、めんどくさい求人開拓には応募しようとせず、就職困難者は外して受託したいというような「民間」の活力が、ほんとうに労働市場の改善になるのかというのが問題の本質でしょう。「民間」というと、営利紹介や派遣事業だけが民間のようですが、志のあるシビルのパワーをどう活用するかというのも、「官」に対する「民」の重要な要素であるという認識を持つ必要があると思います。
>ILO条約のいわば神学論争ではなくて、利用者にとってどういう運用が望ましいのかという視点が大事。民間が労働者のために情報を提供したり、サービスを提供することが重要。通常、民間の方がいいサービスを提供するではないか。
前半はまさにその通りですが、後半の「通常、民間の方がいいサービスを提供する」という判断自体、誰を念頭において考えているのか、営利企業が舐めたい労働者層だけを想定しているのか、それとも舐めたくない就職困難層を想定しているのかが問題でしょう。
上澄みのクリームだけを舐めようというんじゃないというのであれば、
>東京23区内に19のハローワークとその出張所があるが、そのうち数カ所のハローワークについて市場化テストを実施する。
などといいところだけやろうとするんじゃなくて、青森県や高知県のはじっこのハローワークでこそやってみるべきじゃないでしょうか。
ちなみに、どなたの発言か分かりませんが、
>ハローワークはもっと機動的にあるべきだと、かねがね思っていた。失業率5%だったときに、日曜日でもハローワークは開くべきだということを提案したら、けんもほろろにILO88号条約があるからだめだということを言われた。何のためにハローワークがあるのかということを考えて、民間の参入というのもやるべきではないか。
そんな莫迦なことを口走った人間がいるとは思えませんが、いずれにせよ悪い意味での公務員根性が柔軟性を制約しているのは確かでしょう。このあたりは、某組合方面でもよく認識していただきたいところではありますな。前車の轍とか他山の石とか、拳々服膺すべき諺は山のようにありますぞ。
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「派遣」を民間版ハローワークにすればいいんですよ、「紹介予定派遣」っていうのでしたっけ?こちらの機能を強化して、偽装請負もきっちり取り締まって、一定の「お試し」期間が過ぎたら正社員、ってことで、疑似ハローワークってことで、はい
投稿: ななし | 2007年4月 9日 (月) 21時13分