二つの最低賃金法改正案
昨日、政府は労働基準法改正案、労働契約法案、最低賃金法改正案を閣議決定しました。労働時間についてはさんざん書いてきたし、労働契約については書きたくなるネタがずっぽりぬけおしてしまったこともあり、最低賃金について書きます。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/03/h0313-3.html
まあ、中味は今まで書いてきたとおりなんですが、民主党が「格差是正緊急措置法案」というのを国会に提出しており、その中で最低賃金法の改正も提案しているので、むしろそっちをネタにしたいということです。
http://www.dpj.or.jp/news/dpjnews.cgi?indication=dp&num=9681
新聞紙上では最低賃金を一律1000円にすると報じられていて、さすがにマスコミからもちょっと行き過ぎでないかいという感じで論評されているようですが、もちろん金額自体は法案には出てきません。ただ、大変問題だと思うのは、現在の地域別最賃という枠組みを全国一律最賃に変えようとしているところです。
正確に言えば、原則は全国最賃にし、「一定の地域について、全国最低賃金を適用することが不適当であると認めるとき」にのみ地域最賃を定めることが出来るという仕組みにしようとしているのですが、これは大変不適切な提案だと思います。
法案の中に「最低賃金は、労働者及びその家族の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない」と規定してあるのですが、東京と沖縄の生計費のどっちを基準にして全国最賃を定めるのでしょうか。
現在、東京の最賃は719円、沖縄の最賃は610円ですが、生計費から考えたら、どっちが生活が楽か分かりません(というか、多分沖縄の方が楽でしょう。もっともその最賃にありつく機会が絶対的に少ないですが)。
地域格差の問題はそれとして重要な問題であるのは確かですが、それを最賃の水準の問題として議論しない方がいいと思います、それは筋が違う。何より、最賃をめぐる最大の問題である生活保護との均衡を考えたときに、生活保護水準自体地域によって差があるのですから、全国一律最賃というのはいかにもおかしいですね。
どういうところからこういう案になってしまったのかつまびらかではありませんが、いささかポピュリズムが過ぎるような気がします。もっとも、どうせ野党法案だから、まともに審議されるはずもないから景気づけに威勢のいいことを書いておいただけだというのならそれだけのことですが、政権担当能力のある野党としてはちょっといかがなものか、と。
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» 最低賃金 2007年その1 [労働、社会問題]
民主党の最低賃金法改正案(http://www.dpj.or.jp/news/files/houan.pdf)について、hamachanさんが次のように書かれています(http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/post_c3f9.html)。 [続きを読む]
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