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2007年2月23日 (金)

雇用保障はワークライフバランスの敵か?

経済財政諮問会議の労働市場改革専門調査会の第3回会合の議事録が公開されています。

http://www.keizai-shimon.go.jp/special/work/03/work-s.pdf

大沢真知子先生がワークライフバランス社会の実現はなぜ必要かというプレゼンをしたところで、八代先生が、

>イギリスやアメリカの労働市場と日本の最大の相違点は、わが国は年功賃金制であり、正社員の解雇規制が厳しい点である。日本では、雇用保障を実現する1つの手段が労働時間調整であり、景気の良いときは超過勤務を行い、景気が悪くなるとまず労働時間を短縮することで当面の解雇を防ぐメカニズムが働いている。しかしながら、短時間正社員にはこのメカニズムが全く適用できないことから、仮に表面的な賃金率が同じであったとしても、雇用保障するためのコストが正社員に比べて相対的に高くなるのではないか。つまり正社員と非正社員は給料に差があるといわれているが、それ以上に雇用保障の目に見えないコストの有無という要素が大きいとすれば、これらのコストを考慮しなくてもいいアメリカやイギリスと、考慮しなければならない日本とでは、ワーク・ライフ・バランスを導入するコストは相当程度異なるのではないだろうか。

>今の日本的雇用慣行は、大沢委員が言われた一種のパッケージで、労働者から見てコストとベネフィットがある。したがってこのパッケージの中で、労働者にとっての最適な組み合わせとして、雇用保障は残したままで、ワーク・ライフ・バランスを重視するということを企業に要求した場合、企業がそれに耐えられるかどうかを考えることが重要と考える。

と、例によって、解雇規制を緩和し、雇用保障をなくせばワークライフバランスが実現するというロジックを述べておられます。

39472

最近の御著書『健全な市場社会への戦略』でも繰り返し論じておられる点ですね。

ところが、そのあとで、山川隆一先生が、

>イギリスとアメリカでも雇用保障の強さは違う。もし、仮に雇用保障が弱ければワーク・ライフ・バランスが強いといえるとすれば、イギリスよりもアメリカの方がワーク・ライフ・バランスは進捗しているといえそうであるが、実際にそうなのか。仮にそうだとすると、雇用保障が日本以上に厳しい面があるほかのヨーロッパ諸国においては、ワーク・ライフ・バランスは非常に弱いのか。つまり、この2つの要因のみによる分析が可能かという点について国際比較も交えて伺いたい。

と、鋭い指摘をしています。「伺いたい」も何も、雇用保障で言えば、

ヨーロッパ>イギリス>アメリカ

であり、ワークワイフバランスでも、

ヨーロッパ>イギリス>アメリカ

であることは分かっているわけです。日本が雇用保障はヨーロッパ並みに強いが、ワークライフバランスはアメリカ並みに弱いという変わった国であるだけで。

ホワイトカラーエグゼンプショと同じ間違いをまた繰り返そうとしているんですねえ。ホワエグも、解雇規制の緩和も、ワークライフバランスには関係ないのですよ。そういう何やらきれいな女性の人気が出そうな上っ面だけのロジックで解雇規制の話をやろうというのは、大変ミスリーディングだと思いますね。

そうすると、八代先生は、

>いきなり雇用保障とワーク・ライフ・バランスとをリンクさせるのは難しいかと思う。なぜならば、年功賃金、職務の不明確さという現状があるからだ。

>わが国では、能力に見合う賃金制度になっていないことから、なかなかワーク・ライフ・バランスが実現しないと考えてよいか。つまりワーク・ライフ・バランスの前提は生産性と賃金は等しいということであり、それが実現している国では導入が容易だが、日本では非常に難しいのではないか。解雇保障より、むしろ年功制が問題なのだろうか。

と、今度は賃金制度に矛先を向けます。

それもきちんと議論するとそう簡単には言えないと思いますが、それより、解雇規制の緩和は必要ないのですかねえ。私はむしろ、正規労働者と非正規労働者の均衡ということを考えるのであれば、解雇コストの平準化ということを考えるべきだろうと思っており、その意味では現在の解雇無効なら復職しかないというやたらに厳格な解雇規制はまさに緩和すべきだと思っているのですが、そういう論点はいいのでしょうか。

解雇規制の緩和は、ワークライフバランスなどという糖衣錠にくるもうとするのではなく、正面から労働市場の二重性の縮小のために必要なんだと主張すべきなのではないのでしょうか。少なくとも、八代先生がかつて勤務しておられたOECDが日本や大陸欧州諸国の厳格な解雇規制を批判する論拠はもっぱらそれが非正規労働者との格差を拡大するという点にあります。私もその議論に納得するところはかなりあります。

私はそういう正面切った規制緩和論は大いに歓迎したいと思います。インチキな議論でごまかしてやろうというのはやめた方がいいと思いますよ。

(労務屋さん江)

私は別に不必要に八代先生に対して「辛辣」になっているわけではありません。むしろ、彼が主張する規制緩和の相当部分については同意する面もあるのです。ただ、上のようなロジックの立て方は勘弁して欲しいのですよ。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20070221

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