日本経団連ビジョン「希望の国、日本」
日本経団連のHPに、1月1日付で「希望の国、日本」と題するビジョンが掲載されています。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2007/vision.pdf
御手洗ビジョンというわけですが、なんだか美しい作文が並んでいて、精神論が多くて、いまいちよく見えない感じがします。
私のような労働屋からすると、労働問題が1節すら割り当てて貰えずに、道州制と付け合わせでようやく1節という扱いはあまりにも不当ではないか、といいたくなるところはありますが、その分、とげも少なくなっています。
まず基本認識。「日本の労働市場は、長期雇用、企業内労使関係を前提として企業内調整を基本としており、安定性に富むものの、問題も多い。」よく読んで下さいよ。労働ビッグバンイケイケどんどんじゃないんですね。
日本経団連の労働政策の目標は「女性の就労支援、高齢者の活用、若年者を中心とした雇用のミスマッチの解消」により「全員参加型の社会を実現すること」だというのです。これは諸手を挙げて賛成ですね。
ではそのために何が必要かというと、「労働関係諸制度を総点検していく必要がある」と、規制緩和を持ち出すわけですが、そこもけっしてビッグバーーーンじゃないのです。曰く、「労働市場には、当然、財や資本の市場にはない規律が求められる。」そう、わかっているのです。ただ、「行き過ぎた規制・介入は、かえって雇用機会を縮小させ、再チャレンジの障害になる。」そう、行き過ぎた規制・介入はそうですが、行き過ぎた規制緩和や介入不足も、働く意欲を喪失させ、その目的であるはずの全員参加型社会の妨げになるということも、当然裏側に認識されているはずです。
その後に少子化対策が続きますが、「仕事と子育ての両立支援や働き方の見直し、若年世代の就労対策など」が必要といいながら、社会や家族の絆が大事とやや精神論に傾き、一応会員企業に「ワーク・ライフ・バランスの重要性についてさらに認識を深め」て貰うとはいいながら、具体的に雇用管理をどうするという話の代わりに、「社会の意識改革に向けた国民運動に取り組んでいく」のだそうです。うーっむ、国民運動なんて、企業からしたら一番懐の痛くない話ではないですか。企業にとってははじっこのメセナみたいな話でごまかさないで下さいね。人事労務の一番中心の話ですよ。
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労働者の権利なんて、全然守られてない世の中。
「労働問題専門の弁護士」さんでさえ、
長いものにはまかれてしまえと言う現実。
投稿: もり | 2007年1月15日 (月) 22時29分