就労促進型福祉への転換
29日の経済財政諮問会議で重要な政策方向が打ち出されています。
大田大臣の記者会見での発言を引用しますと、
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2007/0129/interview.html
>2ページ目に「人材活用」というところがあり、趣旨を斜字体で書いてあります。そこに、「誰もが能力形成や資格取得の機会が得られる仕組みをつくり、「底上げ」によって格差の固定化を防ぐ」という文言がありますし、その下に集中的・効果的な能力形成支援プログラム」とか、「就労促進型福祉への転換」ということが書いてあります。この点は、緊急性を要する非常に重要な課題である。国会でもかなり議論されている。それで、なるべく早く検討する必要があるんじゃないかという御発言がありました。
これについて、そこで総理からの指示が出されました。ここに書かれているような「底上げ」によって格差の固定化を防ぐといったことは、安倍内閣が掲げる成長力の強化、成長力の底上げという点に非常に重要な点だ。働く人全体の所得や生活水準を引き上げて、格差の固定化を防ぐ必要がある。したがって、骨太方針を待たずに、ここは短期集中的に政策を議論していく必要がある。
そこで、官房長官と私、経済財政担当大臣は、この成長力の底上げをいかに進めていくか、その検討の進め方について至急具体化せよという指示がありました。官房長官となるべく早く、明日にでも打合せをしまして、この成長力の底上げについて検討の進め方を具体化していきたいと考えております。この「人材活用」のところに書かれました「集中的・効果的な能力形成支援プログラム」、それから「就労促進型福祉への転換」、つまり働きたい人に雇用機会を与えていく、この具体的なあり方について、早急に進め方を検討して、骨太方針の前に政策を打ち出せるようにしたいと考えております。
記者との問答の中でも、
>こういう、90年代の低迷期に社会に出た人たちがどうしたら能力形成できるのか、あるいは今、福祉の対象になっている生活保護とか母子家庭の人たちも、働きたい人には雇用機会を与えられる仕組みはどうしたらできるのか。あるいは、前回、民間議員からも出た最低賃金をどうするのかといったような一連の課題について、どういう方策が政府としてできるのか議論したいというふうに考えています。なるべく早く政策体系を打ち出したいと思っています。
今日、官房長官と私に指示がありましたのは、検討の進め方について早急に枠組みをつくれということです。当然、厚生労働省も関係いたしますし、再チャレンジも関係すると思います。そういう政府横断的な取り組みになりますので、どんな形で検討を進めていくのかという点について、明日にでも検討していきたい。そして、なるべく早く政策体系を打ち出せるようにしたいと考えています。なるべく早くですから、1カ月とかそこら辺で政策の大きい方向性は出せるようにしていきたいと思います。そうしませんと、「骨太」に近くなると短期集中とは言えませんので、早急にやりたいと思います。
ヨーロッパでワークフェアが議論されるようになってからもう10年以上経っていますが、ようやく政策決定の中枢に出てくるようになりましたね。
未だに、悔い改めずに、競争に負けた者は市場から退出して生活保護で面倒を見ればよいといった議論を平然と展開する連中がいますが(典型的なのが、福井秀夫・大竹文雄『脱格差社会と雇用法制』のいくつかの論文)、市場原理主義の本拠地と思われているOECDに行ってそんなこと口走ったら、白い目どころか莫迦かと思われますよ。少しは世の中の動きを勉強した方がいいと思うのですがね。
後ろの方で、例の八代先生の労働ビッグバンについての記者とのやり取りも興味深いです。
>(問)今の関連なんですけれども、労働市場の問題については、専門調査会ではビックバン、そういう名前を使うかどうかは別として、自由化というのを前提に長いスパンで……。
(答)何の自由化ですか。
(問)労働市場の自由化ですね。同一労働、同一賃金について、労働市場をなるべく自由化していくと。その観点から、基本法みたいなのをつくるというようなことを考えながらやっていると思うんですけれども、この総理指示は重なる部分もあると思うんですけれども、緊急にこういうものをやっていくとなると、ちょっと今の専門調査会の方向とはずれると思うんですけれども。もちろんあれは学者の集まりだから、ちょっと違うと言えば違うんですけれども、どういうふうにこの組織とかを立ち上げて、どういうふうに政策検討していくんですか。
(答)まず、私は自由化という観点で専門調査会の全体が構成されているというふうには思っていませんので、そこは若干違和感があります。同一労働、同一賃金の考え方を目指していくという点はそのとおりだと思いますが、それが即自由化ということではないんじゃないかなと考えています。
(問)いや、もちろん専門調査会の意見なのか、専門調査会を率いている八代さんの個人的な意見とのズレがあるのかもしれないけれども、基本的には自由化ですよね。労働組合の動きなどに今縛られているというようなものがあるわけですよね。
(答)私も経済演説で申し上げました今の労働市場の6つの壁、その6つの壁を克服するというところは明確に念頭に置いておりますけれども、それは自由化というだけではないと思います。
(問)だけじゃないと思うんですよ。だから、専門調査会との関係では、どうやって今後この政策を実現していくんですかということです。
(答)「自由化」という言葉は、八代議員も使っておられないと思いますが、ちょっとその点は自由化を前提に考えているわけでありませんので、労働市場専門調査会の受けとめ方が若干今のお話と少しギャップがあるように私は思います。
(問)「自由化」という言葉にはこだわりませんので、同一労働、同一賃金というのをやっているわけですよね、専門調査会で。
(答)その考え方を目指していくということですね。
(問)だから、ビックバンの考え方はあまりここのコメントには出てこないんですけれども。
(答)まず、専門調査会は将来の働き方のあり方、労働市場のあり方ですね。ただ、やはり今、現に90年代に社会に出た人たちが、正社員の道を閉ざされていますし、能力形成の機会も与えられてないわけですね。ここは緊急的に何かすべきであるということで、総理も施政方針演説の中でそのようなことを言っておられます。そこに対して、早急に何らかの政策を考えよという指示です。
いくつかコメントしたい点もありますが、とりあえずは素材提供ということで。
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