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2006年12月27日 (水)

パート法改正の建議

昨日の労政審雇用均等分科会で、パート労働法(正式には「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」です)の改正案に関する建議が取りまとめられました。

http://www.asahi.com/life/update/1226/011.html

現時点では厚労省HPに建議がアップされていないのですが、記事からすると、ほとんど12月8日の分科会に出された報告(案)と同じ内容のようです。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/12/s1208-11a.html

これについては、15日にこのブログで取り上げています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/post_e140.html

朝日の記事にはその前にも若干振り回されているので

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_890e.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/post_97bb.html

今朝の記事の文言にあんまり振り回されない方がいいのかも知れませんが、ちょっと気になったのは「仕事の内容や責任、人事異動の範囲や頻度などが正社員と同じで、長期にわたって継続的に働いているパートは、正社員との待遇面での差別を一切禁止する」という表現の中の「長期にわたって継続的に働いている」という部分です。何しろ、記事の見出しが「長期パートへの待遇差別禁止を提案 労働政策審」なんですから。本当にこんな条件が入ったとすると、一体その意味は何だろうか?と大変悩む所なんですが、これに対応するような所は、8日の報告案にはなかったはずなのですが、もしかしたら「雇用契約期間等」というのをこういう風に「意訳」しちゃった可能性もなきにしもあらずで、そうだとするとこれは陽炎みたいなものですね。日経の記事からすると、その可能性が大きいようです。

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20061227AT3S2602526122006.html

いずれにせよ、これで厳密に労働時間が短時間である労働者については建議が出ました。一方、若年フリーターについては既に職業安定分科会雇用対策基本問題部会の方で建議が出されています。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/12/dl/h1212-1a.pdf

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/post_5476.html

で、残った本丸が、今日建議が取りまとめられることになっている労働契約法制だったんですが、今まで見てきたように有期労働に関する部分はかなりスカスカになっております。斜体字の均衡考慮規定がどういう風になっているか、興味深いところですね。

ここで、ちょっと個別法律の話からもすこし大きなレベルの話をしますと、結局この手の話は日本型雇用システムをどう評価し、どうしていくのかということと密接不可分なんですね。このパート法の審議録なんかを見ますと、

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/11/txt/s1110-2.txt

これが11月10日の議事録なんですが、日本経団連の松井さんがこういうことを仰っているわけです。

>例えば短時間だからということで、差があるということの一つの極端な例を私としては思いつくのですけれども、今、高年齢者雇用安定法に基づいて定年年齢の引き上げ、あるいは60歳を超える年齢での再雇用制に対する義務づけというのが行われているのですけれども、その再雇用制を設けている企業の中には、全く同じ仕事をしていても、処遇が非常に低くなっているというケースがあります。さらに、その中でも短時間という仕組みで設けているケースがあります。こういうときに差別は禁止だと言われることはわかるのですけれども、では、再雇用制みたいなときに、この差別禁止的な法律が、いわゆる義務化あるいは理念系でも結構ですけれど、そうなったときに、私は、60歳を超えて何で給料が下がるのか、同じ仕事をしているなら同じ給料を払えと言っているではないかというようなときに、従業員の人あるいは労働組合全体として納得するのかどうかというそもそも論、疑問を感じるところです。そして、私はぜひ林弁護士にお聞きしたいのですけれど、こういう法律が仮にできたときに、労働組合あるいは労働者の方には、いろいろな方がいます。これは、「高年齢者雇用安定法に基づいた措置です」と会社側が言ったとしても、こういう法律が世の中には今あるではないかと。今まで日本の判例あるいは判決では、同一価値労働同一賃金ということは、あまり見ないという形で、私としては出てきていると理解するのですが、こういう法律が仮にできたときに、裁判官の頭の中は、どのような形で変わっていき得るのか、そして、出てくる判決が「いやそれはやはり差がついてはいけない」という形の結論になっていくのか。そこら辺をぜひ専門家の立場からお聞かせいただきたいと思います。最初、労働側から回答してもらいたいのですが。・・・

これはある意味もっともであると同時に、大変深刻な問題提起でもあるわけです。均等待遇にせよ、均衡処遇にせよ、それをジョブ型労働市場を前提にした同一価値労働同一賃金原則を前面に立てて論ずるのか、日本の雇用システムを根っこからひっくり返す気があるのか?労働側は、という話なんですね。

大変皮肉なのは、ここで松井さんが危惧している方向性というものは、ほかでもないその日本経団連会長が入っている経済財政諮問会議が打ち出そうとしている「労働ビッグバン」そのものであるわけで、ここでは表面上の敵味方と深層構造における敵味方とが入り組んでいるのです。内心、年功制が壊れては困ると思っている労働側委員に詰め寄ってみたって仕方がないんですよね、本当は。

斯くの如く、深層構造は複雑怪奇ではあるのですが、まあそれはともかく建議が出ましたので、雇用均等児童家庭局短時間在宅労働課の皆様方におかれては心安らかに新年をお迎えいただけることになったことを心からお慶び申し上げます。

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