雇用保険部会報告素案
11月30日の労政審雇用保険部会に提示された報告素案が厚労省のHPに載っています。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/11/dl/s1130-13b.pdf
財務省の財政制度等審議会から、国庫負担を廃止しろ、雇用保険3事業も廃止の方向で見直せ、といろいろ言われ、今年成立した行革推進法でもそう書かれてしまって、外堀を埋められてきた厚労省ですが、この素案、結構正面から反論してます。
財政運営については、「雇用保険は必要不可欠なセーフティネットであり、将来にわたり安定的に機能するよう制度の健全な運営を確保することが何よりも重要である。その上で行政改革推進法等で指摘された課題に対応する必要がある」と、基本的な考え方を鮮明にした上で、「雇用保険制度の前身である失業保険法時代より国庫も失業等給付に係る費用の一部を負担しているのは、雇用保険制度におけるもっとも主たる保険事故である失業は、政府の経済政策、雇用対策と無縁ではなく、政府もその責任の一端を担うべきとの考え方によるものである。このような経緯や雇用保険の被保険者等の期待等を勘案すると、失業等給付に係る国庫負担の制度を全廃することは、国の雇用対策に係る責任放棄につながり、適当ではない」と、明確にこれを否定しています。
このあとに「ただし、行政改革推進法の趣旨を踏まえ・・・(以下P)」と、なっていて、この後に例の半分子ね、というのが来ることになるんでしょう。この辺が妥協点という判断です。
3事業については、雇用福祉事業を事業類型としては廃止するとともに、既存事業の規模を大幅に縮減し、各個別事業について引き続き不断の見直しを行うべきと述べた上で、「人口減少下において経済社会の停滞を回避し、働く意欲と能力があるすべての人が可能な限り働ける社会の構築を目指すため、特に雇用保険の被保険者となることを希望する若年者等についても、雇用安定事業等の対象として明確化すべきものと考える」としています。
本来保険原理からすれば、被保険者でない若年者を保険事業の対象とすることはおかしいということになりますが、雇用政策手段の観点からすれば若年者対策にこそ雇用保険事業による資源を投入すべきであるわけで、この部分を「雇用保険の被保険者となることを希望する」というロジックでクリアしようとしているわけですね。
この辺の方向性は基本的に全く賛成です。頑張れ。
また、適用関係で、短時間労働者の被保険者区分をなくし、一般被保険者として一本化するとともに、これに伴い受給資格要件(一般は6ヶ月以上、短時間は12ヶ月以上)も一本化し、その際循環的な受給や安易な給付を未然に防ぐ観点から、解雇・倒産等による離職の場合には6ヶ月、自己都合離職や期間満了の場合には12ヶ月と、離職理由で差をつける、という方向も適切でしょう。
ちょいと文句があるのは、教育訓練給付のところです。もともと1998年にできたときには費用の80%、上限30万円の大盤振る舞い。2003年改正で費用の40%、上限20万円に縮小。それを今回は費用の20%、上限10万円にして残そうというのですが、もういい加減やめたら?という感じです。
糞の役にも立たない英会話教室やパソコン教室ばかりを太らせると批判されて、それももっともなのですが、それよりも何よりも問題なのは本当に教育訓練を必要としている人が使いにくく、遊び半分の人間ばかりが使いやすいという制度設計でしょう。まあ今回、若年労働者の定着率の向上等のため、初回受給者については当面被保険者期間を3年から1年に短縮することを求めていますが、やっぱりそもそもの制度思想が間違っているんだと、私は思うのですよ。
このブログでも何回か言ったけど、これってフリードマンの教育バウチャーの変形なんですね。この給付ができるときも、バウチャーバウチャーと喚く莫迦がいてこういうのができたんですが、そういう自己啓発万能主義は90年代の迷妄としてすっきり別れを告げた方がいいと思うのですがね。
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