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2006年12月26日 (火)

規制改革・民間開放推進会議最終答申

昨日、内閣府の規制改革・民間開放推進会議の最終答申が出されました。

http://www.kisei-kaikaku.go.jp/minutes/meeting/2006/10/item_1225_04.pdf

朝日の記事は「会議側にとって後退が際立つ内容となった。規制改革の推進と並んで「規律重視」も掲げる安倍首相のあいまいな姿勢が、微妙な影響を与えているようだ」と、叱咤激励しているみたいでもありますな。

http://www.asahi.com/politics/update/1225/008.html

例によって労働関係の部分について見ていきますが、各論の前に総論として「今後の規制改革の推進に向けた課題」というのがあり、その中に「多様な働き方と再チャレンジを可能とする社会の実現」という項目があるので、まずそこから見ていきましょう。

まずは「我が国の労働市場は今、働き方の多様性、労働市場での移動やステップアップのしやすさ、不公正な格差の是正を柱とする、複線型でフェアな働き方の実現に向けた労働ビッグバンともいうべき抜本改革が求められている」と、ビッグバンをかましていますが、ビッグバンというのがそういう不公正な格差を是正し、フェアな働き方を実現するものであるのなら、それは大変結構なことのはずです。

ここで主として論じられている派遣・請負法制の問題点には、かなりの程度同意できるところがあります。例えば、「派遣の場合、業務の種類によって派遣受入れ期間に区別を設けることは派遣で働く労働者、派遣先の双方から理解が得られにくい。一般事務は「臨時的・一時的」であるが、事務用機器操作はそうではないといった法令上の仕組みについては、企業の現場ではおよそ受け入れることが難しい」という批判は、全くその通りでしょうし、「他方、請負についても、現行の派遣と請負の事業区分に関する基準(大臣告示)は、もはや現状には適合しないものとなっている。その内容は、①請負事業主が自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用すること、②請負事業主が業務を自己の業務として契約の相手方から独立して処理することの双方を確保する観点から、文字どおりその具体的基準を定めたものに過ぎず、これを遵守したからといって、請負労働者の保護に資するわけではない」というのも、的確な批判です。

「労働者派遣法については、派遣労働を特別視した規制法から、真に派遣労働者を保護し派遣が有効活用されるための法律へ転換すべく、抜本的見直しを図るべきである」というのももっともなご意見ですし、「請負についても、以上にみた派遣法の改正に併せて、請負会社で働く労働者のスキルの向上と処遇改善のためには何が必要かという観点から、企業における自主的な取組に加え、現行の派遣と請負の事業区分に関する基準(大臣告示)の見直しを含めた法制度の整備が必要となる」というのも、まさに私が主張していることでもあります。

ところが、では派遣労働者や請負労働者の保護のために一体どんな具体的な措置を検討すべきと言っているのか、と見ていくと、「ステップ・アップを指向する派遣労働者のために、派遣元と派遣先を含めた三者間で、話合いの場を設けること等の手立ては十分に考えられる。法令による義務づけよりは、まず労使の間でその具体的な手立てを検討する。派遣先の労働組合が本来果たすべき役割は、そうした検討の場を積極的に設けることにあるともいえる」というところだけでして、つまり法律ではやらないから組合さん頑張ってね、ということのようでありますな、ふむふむ。

私自身の考え方は、前に連合の会合で喋ったメモにあるとおりですが、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/rengohakenukeoi.html

「一般的に事前面接を解禁し、かつ雇用申込み義務を削除する改正は、派遣先責任を大幅に強化する形での労働者派遣システムのモデル改造をもたらす可能性がある」と考えていますし、それは実は戦前の工場法モデルへの回帰という面があります。事業規制が一切なかった戦前期において、通牒は「工場ノ業務ニ従事スル者ニシテ其ノ操業カ性質上職工ノ業務タル以上ハ、雇傭関係カ直接工業主ト職工トノ間ニ存スルト或ハ職工供給請負者、事業請負者等ノ介在スル場合トヲ問ハス、一切其ノ工業主ノ使用スル職工トシテ取扱フモノトス」(大正5年11月7日商局第1274号)と、派遣であれ請負であれ、明確に工業主に責任を負わせていたのです。

入り組んでぐちゃぐちゃになっている派遣・請負制度をビッグバンするというのは、少なくともそういう派遣先責任、請負先責任の明確化ということであるはずだと、私は思っているのですが、「新たに派遣労働者や請負労働者のための法律を制定するとすれば、どのような法律が必要か。こうした未来志向が今、我が国には求められているのである」という、その未来志向の中に、そういう選択肢が意識されているのか、経済財政諮問会議に設置された専門調査会の議論が期待されるところです(皮肉じゃなく)。

後はまあ、今までも繰り返されてきた話なので、今さら「ホワイトカラーを中心に、自らの能力を発揮するため労働時間にとらわれない自律的な働き方を肯定する労働者も多くなっており、自己の裁量による時間配分を容易にし、能力を存分に発揮できる就業環境を整備するためには、そうした労働時間にとらわれない自律的な働き方を可能にする仕組みが強く求められている」って誰の話よ、まさか組織で働いたことのない大学のセンセを基準に考えてるんじゃないでしょね、ってな話もしません。明日労働条件分科会で最後の審議が行われることになっていますし・・・。

それより、ここには載っていない話、朝日によると「厚生労働省の反発で削除された」という「労組の団体交渉権について「従業員の一定割合以上を組織する場合に限るよう検討」とした項目」について、一言だけ。昨日のエントリーで引用した朝日の記事には「厚生労働省は「憲法はすべての国民に団結権や団体交渉権を認めている。少数組合を排除する理屈は成立しない」と反対していた」と書いてあります。

http://www.asahi.com/life/update/1225/003.html

もしこの記事が本当なら、厚生労働省の担当者に注意を喚起しておきたいことがあります。日本国憲法が施行されてそれほど経たない1948年に公共企業体労働関係法が施行されましたが、そこには明確に交渉単位制が規定されていました。同制度は1956年に廃止されますが、別に憲法違反だから廃止されたわけではありません。厚生労働省担当官殿は、この8年間は違憲状態にあったとでも主張されるのでしょうか。ご自分の大先輩が作った法律が、ですよ。

さらに、私の『労働法政策』に詳しく書いてありますが、1949年の労働組合法改正においては、不当労働行為制度とともに交渉単位制度の導入が検討されていました。この時の労働省試案は、厚労省のコンメンタールに載っていますからよく勉強された方がいい。いろんな事情があって、このときは交渉単位制は落とされて団交拒否の不当労働行為制度は導入されたたため、企業のすべての労働者を結集した労働組合が団体交渉を申し入れても、企業内のたった一人の労働者が外部の組合に駆け込んで団体交渉を申し入れても、企業は全く平等に団体交渉に応じなければならないというある意味で大変奇妙な制度になってしまったわけです。

あんまりうかつに「憲法違反」だなんて言わない方がいいと思いますがね。

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コメント

「労働者自立支援法」って名前をつければいいんですよw
「障害者自立支援法」とか「母子家庭自立支援策」とかと同じノリで・・・

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